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曇
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くもり
ふりがな文庫
“
曇
(
くもり
)” の例文
章一は羽織と袴をとって
単衣
(
ひとえ
)
を脱ぐと女は
枕
(
まくら
)
を持って来た。しかし、章一は女の眼の下の
曇
(
くもり
)
の深い肉の落ちた顔が気になっていた。
一握の髪の毛
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
とろとろと、
曇
(
くもり
)
もないのに
淀
(
よど
)
んでいて、夢を見ないかと勧めるようですわ。山の形も
柔
(
やわら
)
かな
天鵞絨
(
びろうど
)
の、ふっくりした
括枕
(
くくりまくら
)
に似ています。
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
新吉は、それが渋柿だろうとなかろうと、何のかわりもなく、晴れた日の空の色と、ちっとも
曇
(
くもり
)
のない柿の実の光と、脱俗した枝ぶりとを愛した。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
取出し拔て
行燈
(
あんどう
)
の
火影
(
ほかげ
)
に
佶
(
きつ
)
と鍔元より
切先
(
きつさき
)
掛
(
かけ
)
て打返し見れども見れども
曇
(
くもり
)
なき
流石
(
さすが
)
は
業物
(
わざもの
)
切味と見惚て莞爾と
打笑
(
うちわら
)
ひ
鞘
(
さや
)
に納めて
懷中
(
ふところ
)
へ忍ばせ父の
寢顏
(
ねがほ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
透
(
す
)
きとほりて
曇
(
くもり
)
なき玻瓈または清く靜にてしかして底の見えわかぬまで深きにあらざる水に
映
(
うつ
)
れば 一〇—一二
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
▼ もっと見る
地気
上騰
(
のぼる
)
こと多ければ
天
(
てん
)
灰色
(
ねずみいろ
)
をなして雪ならんとす。
曇
(
くもり
)
たる
雲
(
くも
)
冷際
(
れいさい
)
に
到
(
いた
)
り
先
(
まづ
)
雨となる。此時冷際の寒気雨を
氷
(
こほら
)
すべき
力
(
ちから
)
たらざるゆゑ
花粉
(
くわふん
)
を
為
(
な
)
して
下
(
くだ
)
す、
是
(
これ
)
雪
(
ゆき
)
也。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
東京朝日新聞
(
とうきやうあさひしんぶん
)
の
記者
(
きしや
)
にして
考古家中
(
かうこかちう
)
に
嶄然
(
ざんぜん
)
頭角
(
とうかく
)
を
露
(
あら
)
はせる
水谷幻花氏
(
みづたにげんくわし
)
と
同行
(
どうかう
)
して、
余
(
よ
)
は四十一
年
(
ねん
)
十
月
(
ぐわつ
)
七
日
(
か
)
午前
(
ごぜん
)
九
時
(
じ
)
(
曇
(
くもり
)
)
鶴見
(
つるみ
)
の
電車停留場
(
でんしやていりうぢやう
)
に
到着
(
たうちやく
)
すると、
間
(
ま
)
もなく
都新聞
(
みやこしんぶん
)
の
吉見氏
(
よしみし
)
探検実記 地中の秘密:29 お穴様の探検
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
自分はすぐ新聞を
棄
(
す
)
てた。しかし五六分
経
(
た
)
たないうちにまたそれを取り上げた。自分は煙草を吸ったり、
眼鏡
(
めがね
)
の
曇
(
くもり
)
を
丁寧
(
ていねい
)
に
拭
(
ぬぐ
)
ったり、いろいろな
所作
(
しょさ
)
をして、父の来るのを待ち受けた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
五月十一日 日曜
曇
(
くもり
)
午前は母や
祖母
(
そぼ
)
といっしょに
田打
(
たう
)
ちをした。
午后
(
ごご
)
はうちのひば
垣
(
がき
)
をはさんだ。何だか
修学旅行
(
しゅうがくりょこう
)
の話が出てから家中へんになってしまった。僕はもう行かなくてもいい。
或る農学生の日誌
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
彼はツクルチ・ニニブ一世王の治世第何年目の何月何日の天候まで知っている。しかし、
今日
(
きょう
)
の天気は晴か
曇
(
くもり
)
か気が付かない。彼は、少女サビツがギルガメシュを
慰
(
なぐさ
)
めた言葉をも
諳
(
そら
)
んじている。
文字禍
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
其の語尾の怪しくも
曇
(
くもり
)
を帯べるに、梅子は
眸
(
ひとみ
)
を
凝
(
こら
)
して之を見たり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
汝
(
な
)
が
身
(
み
)
を
入
(
い
)
れたる
小
(
ちひ
)
さき
牢獄
(
ひとや
)
は
山葵色
(
わさびいろ
)
の
曇
(
くもり
)
にうち
歎
(
なげ
)
く。
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
十二日
曇
(
くもり
)
父の墓
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
晴
(
はれ
)
、
曇
(
くもり
)
、
又
(
また
)
月
(
つき
)
となり、
風
(
かぜ
)
となり——
雪
(
ゆき
)
には
途絶
(
とだ
)
える——
此
(
こ
)
の
往來
(
わうらい
)
のなかを、がた/\
俥
(
ぐるま
)
も、
車上
(
しやじやう
)
にして、
悠暢
(
いうちやう
)
と、
花
(
はな
)
を
見
(
み
)
、
鳥
(
とり
)
を
聞
(
き
)
きつゝ
通
(
とほ
)
る。……
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
曇
(
くもり
)
しらぬ
蒼空
(
あをぞら
)
より來るものゝ外光なし、
否
(
いな
)
闇あり、即ち肉の陰またはその毒なり 六四—六六
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
彼は一種の利害関係から、過去に
溯
(
さかの
)
ぼる
嫌疑
(
けんぎ
)
を恐れて、森本の居所もまたその
言伝
(
ことづて
)
も主人夫婦に告げられないという弱味を
有
(
も
)
っているには違ないが、それは良心の上にどれほどの
曇
(
くもり
)
もかけなかった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
玄関の
格子戸
(
こうしど
)
がずりずりと
開
(
あ
)
いて入って来た者があるので、順作は
杯
(
さかずき
)
を持ったなりに、その前に坐った女の
白粉
(
おしろい
)
をつけた眼の下に
曇
(
くもり
)
のある顔をちょと見てから、
右斜
(
みぎななめ
)
にふりかえって玄関のほうを見た。
藍瓶
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
松が
枝
(
え
)
に
粉雪
(
こゆき
)
ちらつく日の
曇
(
くもり
)
何鳥か啼けりあはれ
陵
(
みささぎ
)
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
綾子は
頤
(
おとがい
)
を襟に
埋
(
うず
)
めぬ。
磨
(
みが
)
かぬ玉に
垢
(
あか
)
着きて、清き襟脚
曇
(
くもり
)
を帯び、
憂悶
(
ゆうもん
)
せる心の風雨に、
艶
(
えん
)
なる姿の花
萎
(
しぼ
)
みて、
鬢
(
びん
)
の毛頬に
乱懸
(
みだれかか
)
り、
俤
(
おもかげ
)
太
(
いたく
)
く
窶
(
やつ
)
れたり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
閃
(
ひら
)
めくは
聖体盒
(
せいたいごう
)
の
香
(
か
)
の
曇
(
くもり
)
、骨も
斑
(
まば
)
らに
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
谷戸
(
やと
)
の方は、こう見た
処
(
ところ
)
、何んの影もなく、春の日が
行渡
(
ゆきわた
)
って、
些
(
ち
)
と
曇
(
くもり
)
があればそれが
霞
(
かすみ
)
のような、
長閑
(
のどか
)
な景色でいながら、何んだか
厭
(
いや
)
な
心持
(
こころもち
)
の処ですね。
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
晴
(
はれ
)
か、
曇
(
くもり
)
か、
霙
(
みぞれ
)
か、
雪
(
ゆき
)
か
とんぼの眼玉
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
けれども、礼之進が今、外へ出たと見ると同時に、明かにその両眼を
睜
(
みひら
)
いた瞳には、一点も
睡
(
ねむ
)
そうな
曇
(
くもり
)
が無い。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
薄闇
(
うすやみ
)
ににほひゆく赤き
曇
(
くもり
)
の
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
舞台は居所がわりになるのだ、と楽屋のものが云った、——
俳優
(
やくしゃ
)
は人に知らさないのを手際に化ものの踊るうち、
俯向伏
(
うつむきふ
)
している間に、玉の
曇
(
くもり
)
を
拭
(
ぬぐ
)
ったらしい。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
曇
(
くもり
)
ににほふ暮あひや。
海豹と雲
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
ちらちらと春風にちらめく
処々
(
ところどころ
)
に
薄
(
うっす
)
りと蔭がさす、何か、もの
思
(
おもい
)
か、
悩
(
なやみ
)
が身にありそうな、ぱっと咲いて浅く
重
(
かさな
)
る
花片
(
はなびら
)
に、
曇
(
くもり
)
のある趣に似たが、風情は勝る、花の香はその
隈
(
くま
)
から、
幽
(
かすか
)
に
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その時は、ああして抱いて、もとは自分から起った事と、
膚
(
はだ
)
の
曇
(
くもり
)
に
接吻
(
キッス
)
をする。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
或
(
ある
)
ものは南の方へ、或ものは北の方へ、また西の方へ、東の方へ、てんでんばらばらになって、この風のない、
天
(
そら
)
の晴れた、
曇
(
くもり
)
のない、水面のそよそよとした、静かな、
穏
(
おだや
)
かな
日中
(
ひなか
)
に
処
(
しょ
)
して
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
傾
(
かたむ
)
いて
居
(
ゐ
)
るが
盡
(
こと/″\
)
く
一樣
(
いちやう
)
な
向
(
むき
)
にではなく、
或
(
ある
)
ものは
南
(
みなみ
)
の
方
(
はう
)
へ、
或
(
ある
)
ものは
北
(
きた
)
の
方
(
はう
)
へ、また
西
(
にし
)
の
方
(
はう
)
へ、
東
(
ひがし
)
の
方
(
はう
)
へ、てん/″\ばら/\になつて、
此
(
この
)
風
(
かぜ
)
のない、
天
(
そら
)
の
晴
(
は
)
れた、
曇
(
くもり
)
のない、
水面
(
すゐめん
)
のそよ/\とした
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
が海を
抱
(
いだ
)
いた出崎の隅だけ朗かな青空……でも、何だか、もう一
拭
(
ぬぐ
)
い
拭
(
ぬぐい
)
を掛けたいように底が澄まず、ちょうど海の
果
(
はて
)
と思う処に、あるかなし墨を引いた
曇
(
くもり
)
が
亘
(
わた
)
って、
驚破
(
すわ
)
と云うとずんずん押出して
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
やがて、
曇
(
くもり
)
は晴れたのである。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“曇(曇り)”の解説
曇り(くもり)とは空が雲で覆われていること。曇天(どんてん)とも呼ばれる。また、しばしば送り仮名が省かれる。
(出典:Wikipedia)
曇
常用漢字
中学
部首:⽇
16画
“曇”を含む語句
瞿曇
安曇
薄曇
微曇
阿曇
曇硝子
北安曇
日曇
曇天
優曇華
掻曇
南安曇
曇日
晴曇
悉曇
焼曇
烏曇鉢
梅雨曇
曇鸞
曇鸞大師
...