“掻巻:かいまき” の例文
“掻巻:かいまき”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花26
野村胡堂4
三遊亭円朝4
夏目漱石3
林不忘3
“掻巻:かいまき”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 演劇 > 大衆演芸9.7%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.9%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.1%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
長十郎は掻巻かいまきすそをしずかにまくって、忠利の足をさすりながら、忠利の顔をじっと見ると、忠利もじっと見返した。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
と云いながら側へ近寄ると、病人は重い掻巻かいまき退けて布団の上にちゃんと坐り志丈の顔をジッと見詰めている。
医師せんせいくつろいだ身の動作こなしで、掻巻かいまきの上へ足を投げて、綴糸つづりいとを手で引張ひっぱる。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
油じみた蒲団掻巻かいまきに包まれて、枕頭の坤竜をしながら、かれはいくたび眠られぬ夜の涙を叱ったことであろうか。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そしてあわてるように身を動かして、貞世の頭の氷嚢ひょうのうの溶け具合をしらべて見たり、掻巻かいまきを整えてやったりした。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
寝床の上に端然きちんと坐って、膝へ掻巻かいまきの襟をかけて、その日の新聞を読む——半面が柔かに蒲団ふとんに敷いている。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
枕を前に、飜った掻巻かいまきせなの力に、堅いもののごとくかいなを解いて、とそのびん掻上かきあげた。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、そこには掻巻かいまき格子模様こうしもようが、ランプの光に浮んでいるほかは、何物もいるとは思われなかった。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
これから、あの掻巻かいまきの中へ、すっぽりとくるまって、めまぐるしいこのごろの湖畔うみべりのやりくりの骨休めをすることだ。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
長いこと、蒲団ふとん掻巻かいまきにくるまってかがんでいた彼の年老いた身体が、た延び延びして来た。
刺繍 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
父が肩を抱いて、そっと横に寝かした。乳母が、掻巻かいまきせ懸けると、えりに手をかけて、向うを向いてしまいました。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蒲団ふとん掻巻かいまき真白まっしろな布をもっておおえる中に、目のふちのややあおざめながら、額にかかる髪のつや
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
優しい暖かさが、身にみて、心から、草臥くたびれた肌を包むやうな、掻巻かいまきなさけなかまなこを閉ぢた。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
花簪はなかんざし頭髪かみのけく、と、ふわりと胸へ乗って、掻巻かいまき天鵞絨びろうどの襟へ
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まあ、おっているなら、掻巻かいまきでも持って来てさし上げましたのに。……お風邪を引きやしませんか」
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
麻の掻巻かいまきをかけたおりつ氷嚢ひょうのうを頭に載せたまま、あちら向きにじっと横になっていた。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
がらりと障子を開けて、御客様の蒲団ふとんや、掻巻かいまきや、男臭い御寝衣ねまきなどを縁へ乾しました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
掻巻かいまきほどの紋付のすそを赤い太い手で持って、後見こうけんばあさんかかみさんに連れられてお辞儀じぎをして廻れば
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
なあというに至って、私は天窓あたまからこの掻巻かいまき引被ひっかぶって、下へ、下へ、とずり下って、寝床に沈んだが、なお聞える。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夜着よぎを掛けるとおますは重い夜着や掻巻かいまきを一度にはね退けて、蒲団の上にちょんと坐り、じいッと伴藏の顔をにらむから、
さてもそのは暑かりしや、夢の恐怖おそれもだえしや、紅裏もみうらの絹の掻巻かいまき鳩尾みずおちすべ退いて
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
枕許に坐って、そっ掻巻かいまきの襟へ手を懸けると、つめたかった。が、底にかすか温味あたたかのある気がしてなりません。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
聞くより早く掻巻かいまきを蹴って起き上った小物師与惣次、床の上から乗り出して藤吉の膝を抱かんばかりに、
胸がとどろいて掻巻かいまきの中で足をばた/\したが、たまらなくツて、くるりとはらばひになつた。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一つには、四つになる富太郎がスヤスヤと眠り、一つは今お雛が脱け出したまま、少しなまめかしく、紅い裏の掻巻かいまきをはね返しております。
掻巻かいまきこうべおおうに、さりとてはしからずうるわしきまぼろしの花輪の中に愛嬌あいきょうたたえたるお辰
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
頭から掻巻かいまきかぶったお銀様が、内から戸を押開いて、脱兎だっとの勢いで、その燃えさかる火の中へ飛び出したのはこの時であります。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「今日はだいぶいい」と床の上に起き返ってうしろから掻巻かいまきの半分までかけている。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
米屋の縄暖簾なわのれんを擦れ擦れに消えるあおい女房、矢絣やがすりの膝ばかりで掻巻かいまきの上からす、顔の見えない番町のお嬢さん。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かやともすゝきともあしともわからず……なか掻巻かいまきがスーとえる、とおほきへびがのたりと
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
掻巻かいまきをはおり、銀の捻煙管ねじぎせるを持ち「春の眺は」の前に「絶景かな/\」と云ふ句を加へ「眺ぢやなあ」までを正面を切て云ふ処立派なり。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
かの女の足音の階子段の下へ消えて行くのを聞きながら掻巻かいまきのかげで密にかれはこういった。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
毎晩掻巻かいまき一枚いちまい敷蒲団しきぶとんも敷かず畳の上に寝ることを始めた。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
がんりきは、手拭を畳んで頭から額の方へ載せ、掻巻かいまきを頭までかぶらせてカモフラージを試み、そうしてさも苦しそうに、うんうんと唸りつづけている。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
翌朝左枝は、全身が粉々になったような思いで、起き上がった。同じ布団、同じ掻巻かいまきにくるまって……電燈は消え、窓は雪明りでほんのりと明るかった。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
歌女寿は蒲団の上に寝蓙ねござを敷いて、うすい掻巻かいまきは裾の方に押しやられてあった。
半七捕物帳:05 お化け師匠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と客に云って、細君は、小児こども添乳そいぢの胸白く、掻巻かいまき長う、半ば起きて、
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おゝ、其ぢや、何とちょうどよからうがの、取つて掻巻かいまきにさつしやれいなう。」
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
というので台所を捜すと醤油樽がある、丁度昨日さくじつ取ったばかりの重いやつをげて来て裾の方に載せ、沢庵石と石の七輪を掻巻かいまきの袖に載せると、
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いつ煩っても、ごまかして薬をのんだ事のない人が、その癖、あの、……今度ばかりは、掻巻かいまき凭懸よりかかっていて、お猪口ちょこを頂いて飲むんだわ。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それも工合がいいかも知れません。じゃ風邪をひくといけませんから」と、ちょっと櫓を放して、隅に丸めてある掻巻かいまきを、むしろえてかけます。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがてくづるるやうに頬杖ほほづゑを倒して、枕嚢くくりまくらに重きかしらを落すとともに寝返りつつ掻巻かいまき引寄せて、拡げたりし新聞を取りけるが
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それだのに掻巻かいまきねて、写本を持ったなり、起直ったんです、私は……
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いながらすそかたに立寄れる女をつけんと、掻巻かいまきながらに足をばたばたさす。女房はおどろきてソッとそのまま立離たちはなれながら、
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
が、次の瞬間には頭から蒲団を被って掻巻かいまきの襟をしっかり噛み締めていた。
美人たおやめは其の横に、机を控へて、行燈あんどうかたわらに、せなを細く、もすそをすらりと、なよやかに薄い絹の掻巻かいまきを肩から羽織はおつて
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
明後日あさって出来るのかい、とお蔦がきりもりで、夏の掻巻かいまきに、と思って古浴衣の染を抜いて形を置かせに遣ってある、紺屋へ催促の返事か、と思うと、そうでない。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
掻巻かいまき引被ひっかぶれば、ふすまの袖から襟かけて、おおき洞穴ほらあなのように覚えて、足をいて、何やらずるずると引入れそうで不安に堪えぬ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
下にねたるその妻、さばかりの吹降りながら折からの蒸暑さに、いぎたなくて、掻巻かいまきを乗出でたる白き胸に、暖き息、上よりかかりて、曰く、なんじの夫なり。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その上寝ながら腹の上へ砂を掛ければ、温泉の掻巻かいまきができる訳である。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
茶と白の大市松の掻巻かいまきのごとき衣装で、青い蹴出けだしを前はだけに
乙女は肩当てが穢れた染絣の掻巻かいまきをはおり、灰のかたまった茶色の丸い瀬戸火鉢の上へヘラ台の畳んだのを渡したところへ腰かけ、テーブルへ顔を伏せてっとしている。
小祝の一家 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
寝床ねどこの上にすわったひざ掻巻かいまきけて居る。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
弥生は、掻巻かいまきの襟を噛むようにしてはげしくせき入った。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
貫一は無雑作に郡内縞ぐんないじま掻巻かいまき引被ひきかけてしけるを、疎略あらせじと満枝は勤篤まめやかかしづきて、やがておのれも始めて椅子にれり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
斯様かやうきようじたあと白地しろぢ浴衣ゆかた着換きかえて、あたらしい小掻巻かいまきしたやすらかな手足てあしよこたへた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と云ううちにも、掻巻かいまきの袖には枕が包まれ、布団の綴糸つづりいとに、待人の紙綟こよりが結ばっていそうだし、取残したすだれの目から鬢櫛びんぐしが落ちて来そうで
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ごろりとすぐに横っ倒しになり、掻巻かいまきを鼻のあたりまでゆすり上げてしまう。仕方が無いから五郎治はそろり/\と跡へ退さがる。一同気の毒に思い、一座白け渡りました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
猪牙船ちょきがそのお茶の水の真ッ暗な水上をすべって行くと、寝ていた黒い頭巾の男は、やおら掻巻かいまきねのけて、ふッ……とみよし舟行燈ふなあんどんを吹き消しました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
薄い掻巻かいまき一つでは足らず、毛布を出す夜もあった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
更紗さらさ掻巻かいまきねて、毛布をかけた敷布団の上に胡座あぐらを掻いたのは主の新造で、年は三十前後、キリリとした目鼻立ちの、どこかイナセには出来ていても、真青な色をして
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
「それはもう、親分さん、変ったことがあれば、黙って帰るような事はいたしません。——んでいるうちに、いびきをかき始めた様子だから、掻巻かいまきをお掛けして、そっと帰りました」
真個ほんとうはこの作家のものなどは、机に向って拝見をすべきであろうが、温泉宿の昼間、掻巻かいまきを掛けて、じだらくで失礼をしていても、たれ叱言こごとをいわない処がありがたい。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(そこらに掻巻かいまきがあろう、見てくれ、)とある。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
昔が思い出されまして、身体からだを煮られるような心持がして我慢が出来ないで、掻巻かいまきえりいついて、しっかり胸をいて、そして恍惚うっとりとなっておりますと、やがて
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
同時に、戸外おもて山手やまてかたへ、からこん/\と引摺ひきずつて行く婦人おんな跫音あしおと、私はお辻の亡骸なきがらを見まいとして掻巻かいまきかぶつたが、案外かな。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
若夫人が長襦袢ながじゅばんで、掻巻かいまきえりの肩からすべった半身で、画師のひざに白い手をかけて俯向うつむけになりました、背中を男が、でさすっていたのだそうで。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
隅「今寝るが、寒いから掻巻かいまきを」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
峰の上から見おろすと、傾斜面は青い草で、地の色も見えないほど、ふくらんで、掻巻かいまきでもかけたように温かそうである、が下り始めると、大きな石や小さな石が、草むらの底にひそんで爪先をこじらせたり
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
「寒くなった、掻巻かいまきをおくれ。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ばあさんが掻巻かいまきを着せてくれた。
不肖の兄 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
モジモジする徳三郎を顧みて、平次はそのまま長火鉢の前に引くり返ってしまいました。間もなく軽いいびき、お静は、掻巻かいまきをそっと掛けていると、そのままお勝手へ立って、夕飯の跡始末をしております。
それを逃れると、ひょろひょろしながらも、よろよろしながらも、ほとんど透間すきまもなく、やっと掻巻かいまきから抜け出したばかりのお銀様の腰を立て直す隙もあらせず、神尾が突っかけて来る槍は凄いばかりです。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
掻巻かいまきをば羽織らせ、毛布けっとひきかつぎて、高津は予がすそせな向けて、正しゅう坐るよう膝をまげて、横にまくらつけしが、二ツ三ツものいえりしに、これは疲れて転寝うたたねせり。
誓之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
源太はこれに打ち笑い、愛嬌のある阿呆めに掻巻かいまきかけてやれ、と云いつつ手酌にぐいと引っかけて酒気を吹くことやや久しく、おこって帰って来はしたもののああでは高が清吉同然、さて分別がまだるわ。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ほのかに湯気を吐いている鉄瓶……その蔭に掻巻かいまきを冠ったまま突伏している看護婦……そんなものの薄暗い姿を一ツ一ツに見まわした彼女は、その表情をすこしも動かさないまま、又、もとの通りにあおのけになって
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
今何かいいつけられて笑いを忍んで立って行く女のせなに、「ばか」と一つ後ろ矢を射つけながら、むすめはじれったげに掻巻かいまき踏みぬぎ、床の間にありし大形の——はかまはきたる女生徒の多くうつれる写真をとりて
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
前刻さつきせ、とつてめたけれども、それでも女中ぢよちゆうべてつた、となり寐床ねどこの、掻巻かいまきそでうごいて、あふるやうにして揺起ゆりおこす。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もし、三人の夢が、幻像を画いて通い合うとすれば、自分が帰った後の蒲団には、舞台姿の逢痴が横になっていて、その側から掻巻かいまきをかかげ、入り込もうとしている久米八は、さぞ自分が残した、ほのかみに眉をひそめることであろう。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
いえね、それについて、お前さん——あなたの前だけども、お友だちの奥さん、京千代さんは、半玉の時分、それはいけずの、いたずらでね、なかの妹(お民をいう)は、お人形をあつかえばって、屏風びょうぶを立てて、友染の掻巻かいまきでおねんねさせたり
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
米友は身をおどらして、その青い一団の光を捉えようとする途端に、大風が吹いて来て、その光を大空へ吹き上げたから、ハッとして眼をますと、自分の転寝うたたねをしていた身体の上へ、誰かふわりと掻巻かいまきを着せてくれた人がありました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
股や裾は、母親の手で僅かに隠されましたが、床を敷いて掻巻かいまきを引掛けて休んで居るところをやられたらしく、斑々たる上半身を起して見ると、首から顔へかけて、突き傷が三、四ヶ所、盲目突に突いた一と太刀が、偶然に頸動脈を切ったのが致命傷らしく
その一方に床の間を背にして、郡内ぐんないのふとんの上に掻巻かいまきをわきの下から羽織った、今起きかえったばかりの葉子が、はでな長襦袢ながじゅばん一つで東ヨーロッパの嬪宮ひんきゅうの人のように、片臂かたひじをついたまま横になっていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
こゝろつて、おもはず、ひたつたひざが、うつかり、そでおも掻巻かいまき友染いうぜんれると、白羽二重しろはぶたへ小浪さゞなみが、あをみづのやうにえりにかゝつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
猪之やなんにもありはしないわ、夢を見たのじゃ、さあ寒いに風邪をひいてはなりませぬ、床にはいって寝て居るがよい、と引き倒すようにして横にならせ、掻巻かいまきかけて隙間すきまなきよう上から押しつけやる母の顔を見ながら眼をぱっちり、ああこわかった、今よその怖い人が。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
箪笥たんすや鏡台なんか並んでいる店の方では、昨夜お座敷の帰りが遅かったとみえて、女が二人まだいぎたなく熟睡していて、一人ふとっちょうの銀杏返いちょうがえしが、根からがっくりくずれたようになって、肉づいた両手がまかれた掻巻かいまきを抱えこむようにしていた。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
夜見店よみせへ参りまして古着屋から小僧さんに麻風呂敷に掻巻かいまき三布蒲団みのぶとん背負せおい込ませ、長家の者に知れない様にお父さんに半纏を着せたいと云うので段々と狐鼠こそ/\買物をして参りますが、世間じゃアすぐに目が着きます、或る時例の姐子あねごが、
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)