)” の例文
荷物にも福澤と記さず、コソ/\して往来するその有様ありさまは、欠落者かけおちものが人目を忍び、泥坊どろぼうが逃げてわるようなふうで、誠に面白くない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かたわら卓子テーブルにウイスキーのびんのっていてこっぷの飲み干したるもあり、いだままのもあり、人々はい加減に酒がわっていたのである。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
げ、ばうり、ステツキはしなどして、わあわつとこゑげたが、うちに、一人ひとりくさおちをんな片腕かたうでたものがある。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
高尾の山の中まで水力電気でかきわしたり、努力、実益、富国、なんかの名の下に、物質的偏狂人へんきょうじん所為しょいを平気にして居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そればかりでなく、有松からの出迎人らしい者は一人も来ていないし、自動車もわしてないのにはちょっとがっかりした。
深夜の客 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
まだ、手に力がないので一生懸命にひねっても、独楽は少しの間立ってうのみで、すぐみそすってしまう。子供の時から健吉は凝り性だった。
二銭銅貨 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
その言葉が終るか終らぬうちに、塔の外で、烈しい銃声が起つて、人の叫びのゝしる声や、走りはる足音がしました。
ラマ塔の秘密 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
「画になるのもやはり骨が折れます」と女は二人の眼を嬉しがらしょうともせず、膝に乗せた右手をいきなりうしろへわして体をどうと斜めにらす。
一夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
水の中もわしたくらいなのですけれど、千住へ来るまでは怖くって口も利けなかったと言ってたそうです。
夜釣の怪 (新字新仮名) / 池田輝方(著)
今や其夏が来て巡礼の途に上りつつある私達の目の前で、南方の侵入者に勝手に引掻きわされることは、よしやそれが柔かな白い雲の手であるにしろ
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
う十年近く働いて居る独乙ドイツ種の下女と、頭取の妻君の遠い親類だとか云ふ書生と、時には妻君御自身までが手伝つて、目のふ程にせわしく給仕をして居る。
一月一日 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
大きい蟻の足を小さい蟻がくはへてどうしても離さない。大きい蟻が怒つて車輪の如くに体をまはす、小さい蟻はそのままにはされ、埃を浴びて死んだやうになる。
三年 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
それが職工たちを無遠慮にわした。皆は落付くことを忘れてしまった。休憩時間を待ちかまえて、皆が寄り集った。職長おやじさえその仲間に首を差しこんできた。
工場細胞 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
左様さよう。いや探偵たんていにしろ、またわたくしひそか警察けいさつからわされた医者いしゃにしろ、どちらだって同様どうようです。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そうして御自身は道楽半分ともいうべき古生物の化石を探しまわったり、医学とは何の関係もない、神社仏閣の縁起を調べてわったりしておられたような事でした。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
飲食店が営業して居た頃は闇の酒や焼酎をかつぎわって商売にして居たが、勇の転落は彼女の商売にも響き、現在では配給酒や麦酒ビール素人しろうとから買って転売する他なく
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
あの無量生産から寸時のすきなく引きずられこづきわされている人夫たちの沈黙の苦力と繁忙とは見る目も痛わしい。彼らは彼らの意志も呼吸も圧迫されどおしである。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
このまま薄く切ってロースのようにしても食べられますが丁寧ていねいにすれば別の鍋へバターを溶かしてメリケン粉を入れて杓子しゃくしわしながら色の黒くこげるまでよくよくいためて
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
坂の上の古い通路とおり二条ふたすじになっていて、むこう側には杉の生垣いけがきでとりわした寺の墓地があった。彼は右の方を見たり、左の方を見たりした。淋しい通路とおりには歩いている人もなかった。
赤い花 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
頭半分も後退した髪の毛の生え際から、ふらふらと延び上った弱々しい長髪が、氏の下駄穿きの足踏みのリズムに従い一たん空に浮いて、またへたへたと禿げ上った額の半分ばかりをわす。
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「さあ、いいが、おれうだうだうはんてみんなれ。」
鹿踊りのはじまり (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
饒舌しゃべりもし、飛びわりね廻わりして、至極しごく活溌にてありながら、木に登ることが不得手ふえてで、水を泳ぐことが皆無かいむ出来ぬと云うのも
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
倉蔵は目礼したまま大急ぎで庭の方へわった。村長は腕を組んで暫時しばらく考えていたが歎息ためいきをして、自分の家の方へ引返ひっかえした。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
(それをお渡りなさいます時、下を見てはなりません。ちょうどちゅうとでよッぽど谷が深いのでございますから、目がうと悪うござんす。)
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
烏は、また、鳴き叫びながら、空にあがって、二三町さきへおりた。そこにも屍があった。兵士はそれを追っかけた。
渦巻ける烏の群 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
左樣さやう。いや探偵たんていにしろ、またわたくしひそか警察けいさつからはされた醫者いしやにしろ、何方どちらだつて同樣どうやうです。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
官衙かんがや学校へあまねく配布されたばかりでなく、自分自身で木魚をたたいて、その祭文歌を唄いながら、その祭文歌を印刷したパンフレットを民衆に頒布はんぷしてわられたのです
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その代りが古賀君よりも多少低給で来てくれる。その剰余じょうよを君にわすと云うのだから、君は誰にも気の毒がる必要はないはずです。古賀君は延岡でただ今よりも栄進される。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
母屋おもやの畳は湿しとる程吹き込んだ。家内は奥の奥まで冷たい水気がほしいまゝにかけわる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
今日までに五六人のめかけをたくわえたに過ぎず、妻が亡くなってから、わしの身のわりの世話をした女は七年の間に三人きりしかなく、その新聞が書きたてた様に、おさすりと称して
(新字新仮名) / 富田常雄(著)
S署から「たらいわし」になって、Y署に行った時だった。
独房 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
「さあ、いゝが、おれうだうだうはんてみんなれ。」
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
中津に一人ひとりの女乞食があって、馬鹿のような狂者きちがいのような至極しごく難渋者なんじゅうもので、自分の名か、人の付けたのか、チエ/\といって、毎日市中をもらっわる。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
後藤へはるならはるとあさ自分が出る前にいくらでも言ふひまがあるじやアないかと思ふと、銀之助は思はず
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
……二人の関係は二三箇月前にチラリと聞いた事があるにはあったが、評判の美人と色魔だけに、いい加減に結び付けた噂だろう……なぞと余計なカンをわしていたのが悪かった。
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) / 夢野久作(著)
手當放題てあたりはうだい毆打なぐらなければならぬものとしんじてゐる、所謂いはゆる思慮しりよはらぬ人間にんげん
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
外国人と呼ぶだけならそれまでであるが、いろいろに手をわしてこの外国人を征服しようとする。宴会があれば宴会でひやかす。演説があれば演説であてこする。それから新聞で厭味いやみを並べる。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
親仁おやぢおほい苛立いらだつて、たゝいたり、つたり、うま胴体どうたいについて二三ぐる/\とはつたがすこしもあるかぬ。かたでぶツつかるやうにして横腹よこばらたいをあてたときやうや前足まへあしげたばかりまたあし突張つツぱく。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼奴きゃつが来ている、どうして彼奴は自分の先へ先へとわるだろう、ましい奴だとおおいしゃくさわったが、さりとて引返えすのはなおいやだし、如何どうしてくれようと
画の悲み (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
手当放題てあたりほうだい殴打なぐらなければならぬものとしんじている、所謂いわゆる思慮しりょわらぬ人間にんげん
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そうしてそのまま踏切を横切って、大急ぎで国道をわろうか。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼奴きやつる、どうして彼奴きやつ自分じぶんさきさきへとはるだらう、ま/\しいやつだとおほいしやくさはつたが、さりとて引返ひきかへすのはいやだし、如何どうしてれやうと
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
或日あるひ近所きんじよかはれふに出かけて彼處かしこふち此所こゝあみつてはるうち、ふと網にかゝつたものがある、いて見たが容易よういあがらないので川にはひつてさぐこゝろみると一抱ひとかゝへもありさうないしである。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)