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ふだん
ふりがな文庫
“
平常
(
ふだん
)” の例文
写真入
(
しゃしんい
)
れとなったバスケットは、
茶
(
ちゃ
)
の
間
(
ま
)
のたなの
上
(
うえ
)
に
置
(
お
)
かれたのでした。
平常
(
ふだん
)
は、だれも、それに
気
(
き
)
をつけるものもなかったのです。
古いてさげかご
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
直ちに翌日からまるで「
葬式
(
とむらい
)
機関車」の奇妙な事件なぞはもう忘れてしまった様に、イケ
洒蛙洒蛙
(
しゃあしゃあ
)
と
平常
(
ふだん
)
の仕事を続け出したんです。
とむらい機関車
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
平常
(
ふだん
)
から心掛の良い、少し氣の弱いお吉が、どんなに
嫉妬
(
しつと
)
に眼が
昏
(
くら
)
んだにしても、そんな大それた事を仕出かさうとは思はれません。
銭形平次捕物控:006 復讐鬼の姿
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
それとも
平常
(
ふだん
)
の議論の
仇討
(
あだう
)
ちかしら。そんならなおひどいわ。こんな場合にそんな事をいわれちゃどんなに迷惑するか知れやしない。
ニッケルの文鎮
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
お父さんは水盃をした昔の癖の抜け切らない日本人は
一寸
(
ちょっと
)
のことにも見送りか出迎えが大袈裟で困ると言って
平常
(
ふだん
)
こそ
貶
(
けな
)
しているが
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
▼ もっと見る
襖
(
ふすま
)
ごしに聞える朱実の
囈言
(
うわごと
)
は、彼にも多少は
平常
(
ふだん
)
にあった侍の心がまえというものを、まったく泥舟が水へ
浸
(
ひた
)
ったように
覆
(
くつがえ
)
していた。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
春は団子などを置き、
平常
(
ふだん
)
は
鰑
(
するめ
)
の足か茹玉子ぐらいを
列
(
なら
)
べ、玉子はない事が多いが、塩煎餅は自分で拵えますから何時でもあります。
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そんなとき、眼に
平常
(
ふだん
)
の母らしいかさばった強い重い感じが現れた。が、なほ子はその間にも心痛の加るのを感じた。半分笑いながら
白い蚊帳
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
吾輩の主人の
我儘
(
わがまま
)
で
偏狭
(
へんきょう
)
な事は前から承知していたが、
平常
(
ふだん
)
は言葉数を使わないので何だか了解しかねる点があるように思われていた。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
平常
(
ふだん
)
おすすめ申してもなかなか人中へはお出なさらないくせに、明日という日は、進んで磔刑のおしおきを見物に行くのだという。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
呂昇なぞも、女義太夫としては
外貌
(
そつぽ
)
もよし、声もよいが、
平常
(
ふだん
)
咽喉を使ひ過ぎる
故
(
せゐ
)
で、首が
棒
(
ぼう
)
つ
杭
(
くひ
)
のやうにがつしりと肥つてゐる。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
夜は妻と——昨日までは兄の妻であり、今や私の妻である女と、少しも悟られる心配なく、
平常
(
ふだん
)
の兄と同じ態度で、面白く談笑しました。
双生児:――ある死刑囚が教誨師にうちあけた話――
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
然し梅子が
平常
(
ふだん
)
何人
(
なんびと
)
に向ても平等に優しく何人に向ても特種の
情態
(
こころもち
)
を示したことのないだけ、細川は十分この一念を信ずることが出来ぬ。
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
私は式から帰って来て、制服を
平常
(
ふだん
)
着に脱ぎかえております間に、茶の間で話しております両親の言葉を聞くともなく聞いて
終
(
しま
)
いました。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
こういう
癇癪
(
かんしゃく
)
の起きた時は、
平常
(
ふだん
)
より余計に立働くのがお雪の癖で、虫干した物を片付けるやら、黙って
拭掃除
(
ふきそうじ
)
をするやらした。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
聊
(
いさゝか
)
も
其
(
そ
)
の
平常
(
ふだん
)
の
化粧
(
けしやう
)
と
違
(
たが
)
ふことなかりしとぞ。
今
(
いま
)
の
世
(
よ
)
の
庇髮
(
ひさしがみ
)
、あの
夥
(
おびたゞ
)
しく
顏
(
かほ
)
に
亂
(
みだ
)
れたる
鬢
(
びん
)
のほつれは
如何
(
いかに
)
、
果
(
はた
)
してこれ
何
(
なん
)
の
兆
(
てう
)
をなすものぞ。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
平常
(
ふだん
)
から大きい美しい眼は、今にも、ちょっと物でも
触
(
さわ
)
れば、すぐ泣き出しそうに、一層大きくこちらを見張って、露が一ぱい
溜
(
たま
)
っている。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
ほんとにまあ!
平常
(
ふだん
)
はなんとも思いませんが、こうしてお気の毒な旅の
方
(
かた
)
が、立寄って来られた時ばかりは、貧乏が悲しくなりますわい。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
幼いアデェルは私を見ると半分
狂氣
(
きちがひ
)
のやうになつて喜んだ。フェアファックス夫人は
平常
(
ふだん
)
の通りの打解けた親しみを以て私を迎へてくれた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
この三枝家が私の師匠東雲師の仕事先、俗にいう
華客場
(
とくいば
)
であったので、師匠は
平常
(
ふだん
)
当主の竜之介と
極
(
ごく
)
懇意にしておりました。
幕末維新懐古談:51 大隈綾子刀自の思い出
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
靴屋の安売——運動靴に、
平常
(
ふだん
)
靴に、雪靴に、金と赤のイヴニングシューズまで寄せて一円五十銭也と括りの紐の結び目に正札で下って居ます。
伯林の降誕祭
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
『
怎
(
どう
)
したけな?』と囁いてみたが返事がなくて一層
歔欷
(
すゝりな
)
く。と、
平常
(
ふだん
)
から此女の
温
(
おとな
)
しく優しかつたのが、俄かに
可憐
(
いじらし
)
くなつて來て、丑之助は又
天鵞絨
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
何百万光年、何億光年——そんな
遙々
(
はる/″\
)
とした距離の長さに考を向けてゐると、彼の
平常
(
ふだん
)
の尺度は混乱して、気の遠くなるやうな心地を感じるのだ。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
「いいえ、引っこんではいられません!」と、
平常
(
ふだん
)
のお妙とはまるで別人、彼女はその場に坐り込んで、あっという間に父壁辰の
脚
(
あし
)
に
纏
(
まつわ
)
り付いた。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
今は其れ程の水勢は無いが、水を見つめて居ると流石に凄い。橋下の水深は、
平常
(
ふだん
)
二十餘尋。以前は二間もある海の
鯊
(
さめ
)
がこゝまで上つて來たと云ふ。
熊の足跡
(旧字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
すると、その
頃
(
ころ
)
、
諸磯
(
もろいそ
)
の、
或
(
あ
)
る
漁師
(
りょうし
)
の
妻
(
つま
)
で、
平常
(
ふだん
)
から
私
(
わたくし
)
の
事
(
こと
)
を
大
(
たい
)
へんに
尊信
(
そんしん
)
してくれている
一人
(
ひとり
)
の
婦人
(
ふじん
)
がありました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
今は其れ程の水勢は無いが、水を見つめて居ると
流石
(
さすが
)
に
凄
(
すご
)
い。橋下の水深は、
平常
(
ふだん
)
二十余
尋
(
ひろ
)
。以前は二間もある海の
鯊
(
さめ
)
がこゝまで上って来たと云う。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
柔道初段の長田が(彼は学校を自分一人の学校のように
平常
(
ふだん
)
からあつかっていた)美少年の深井に、「
稚子
(
ちご
)
さん」になれ、と脅迫しているところだった。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
平常
(
ふだん
)
、ああいふ風に申し上げてあつたものだから、若しやとお思ひになるのでせうが、この通り、心臓はたしかなのですから、決して怖くはありません。
落葉日記(三場)
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
ひよつくり変てこな夢何かを見てね、
平常
(
ふだん
)
優しい事の一言も言つてくれる人が
母親
(
おふくろ
)
や
父親
(
おやぢ
)
や
姉
(
あね
)
さんや
兄
(
あに
)
さんの様に思はれて、もう少し生てゐやうかしら
わかれ道
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
それから——あァ
何
(
なん
)
だか
譯
(
わけ
)
が
解
(
わか
)
らなくなつて
了
(
しま
)
つた!
私
(
わたし
)
が
平常
(
ふだん
)
知
(
し
)
つてた
事
(
こと
)
を
皆
(
みな
)
知
(
し
)
つてるか
何
(
ど
)
うか
試
(
ため
)
して
見
(
み
)
やう。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
こんなことを云っても夫は
平常
(
ふだん
)
と同じような態度で、落ちつきのある返事をしながら旨そうに飯を
喫
(
く
)
った。
宝蔵の短刀
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
うちのお師匠さん、
平常
(
ふだん
)
はほんとうに申し分ないお人だけれど、私困ってしまうことがひとつだけあるの。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
大八の
片輪
(
かたわ
)
田の中に踏込んだ
様
(
よう
)
にじっとして、くよ/\して居るよりは外をあるいて見たら又どんな女に
廻
(
めぐ
)
り
合
(
あう
)
かもしれぬ、目印の柳の下で
平常
(
ふだん
)
魚は
釣
(
つ
)
れぬ代り
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
先生はじめ生徒達は、
平常
(
ふだん
)
の着物に着かえてしまいました。少女達は教室のそこここにかたまって、ひそひそと囁き合ったり、昂奮して話し合ったりしていました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
が、ふと其動作が吾乍ら誇張めいてゐるのに気がつくと、
平常
(
ふだん
)
舞台での大袈裟な表情が、此処まで食ひ込んでゐるやうな気がして、思はず
四辺
(
あたり
)
を見巡し乍ら苦笑した。
虎
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
作者が初め父太兵衛の口より
平常
(
ふだん
)
はかういふ家業の者にも似合はず理窟をいつて
尤
(
もっと
)
もらしいが、酒を飲むと人の
見界
(
みさかい
)
がなくなるから禁酒をさせ居るといふ筋を利かせ
明治座評:(明治二十九年四月)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
平常
(
ふだん
)
のように赤子を抱いたり、台所働きをしているお銀の姿は、笹村の目にもいたましげに見えた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
すると、その翌日
平常
(
ふだん
)
よりも早く起きたおくみは、何時になく鏡台の前で身づくろひをしてから
海の中にて
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
平常
(
ふだん
)
のときには弱い人も強い人と違いません。
疾病
(
やまい
)
に
罹
(
かか
)
って弱い人は
斃
(
たお
)
れて強い人は
存
(
のこ
)
るのであります。そのごとく真に強い国は国難に遭遇して亡びないのであります。
デンマルク国の話:信仰と樹木とをもって国を救いし話
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
後からきけば
種々
(
いろいろ
)
と、
平常
(
ふだん
)
に変ったことが多くあったのである。抱月氏でなくとも、彼女を愛する肉親か、女友達があったならその
素振
(
そぶ
)
りを見逃がさなかったであろう。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
仰
(
おっしゃ
)
って、いまは、透き通るようなお手をお組みなされ、
暫
(
しばら
)
く無言でいらっしゃる、お側へツッ
伏
(
ぷ
)
して、
平常
(
ふだん
)
教えて下すった
祈願
(
いのり
)
の言葉を二た度三度繰返して
誦
(
とな
)
える
中
(
うち
)
に
忘れ形見
(新字新仮名)
/
若松賤子
(著)
併しお房は、父が
無類
(
むるゐ
)
の
強慾
(
がうよく
)
にも似ぬ
華美奴
(
はでごのみ
)
であツたお
蔭
(
かげ
)
に、
平常
(
ふだん
)
にも
友禪
(
いうせん
)
づくめで育ツてゐた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
それほど、ほんとに、おさわは、
平常
(
ふだん
)
は嫌いで喰べたことのない、その野菜の煮込に感心した。
三の酉
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
片手で斬込んだ時
平常
(
ふだん
)
の練習で双手で斬込んだと同じ
効果
(
ききめ
)
があったら、数馬は矢張池田家中第一の美男子でおられたかも知れないが、不幸にしてこの心得が無かったため
鍵屋の辻
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
お
品
(
しな
)
はおつぎを
平常
(
ふだん
)
から
八釜敷
(
やかましく
)
して
居
(
ゐ
)
たので
餘所
(
よそ
)
の
子
(
こ
)
よりも
割合
(
わりあひ
)
に
動
(
うご
)
けると
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
るけれど、
與吉
(
よきち
)
と
巫山戯
(
ふざけ
)
たりして
居
(
ゐ
)
るのを
見
(
み
)
るとまだ
子供
(
こども
)
だといふことが
念頭
(
ねんとう
)
に
浮
(
うか
)
ぶ。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
何が、A子なんかに写せるものか! 私はさう云はうとしましたが、A子の写真の腕前は、
平常
(
ふだん
)
からよく知つてゐましたので、何だか気味が悪くなつて黙つてしまひました。
心配な写真
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
セラピオンの語は、わしを
平常
(
ふだん
)
のわしに帰してくれた。そして少しはわしの気も
鎮
(
しづま
)
つて来た。
クラリモンド
(新字旧仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
平常
(
ふだん
)
から快からず思う磯助役の今日の仕打ちは何事であろう、あまり客に親切でもないくせに、美しい人と言えばあの通りだ。そのくせ自分はもう妻子もある身ではないか。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
今でも
古典的
(
クラシツク
)
な舞踊、例へばムニユイ又は西班牙踊を踊る時には必ずこれを著けることになつてゐるやうである。又
平常
(
ふだん
)
でも艶美を増す為めに是を用ゐる婦人も少なくはない。
東西ほくろ考
(新字旧仮名)
/
堀口九万一
(著)
平
常用漢字
小3
部首:⼲
5画
常
常用漢字
小5
部首:⼱
11画
“平常”で始まる語句
平常着
平常衣
平常服
平常帯
平常底
平常心
平常穿
平常著
平常通
平常遣