)” の例文
住持とは、お寺をり立てて行く坊さんのことをいうのです。和尚さんがそう言うものですから、小僧さんも子供心に考えまして
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
野田山に墓は多けれど詣来もうでくる者いと少なく墓る法師もあらざれば、雑草生茂おいしげりて卒塔婆そとば倒れ断塚壊墳だんちょうかいふん算を乱して、満目うたた荒涼たり。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし僕のりをした「つうや」はなぜかそれを許さなかった。あるいは僕だけ馬車へ乗せるのを危険にでも思ったためかもしれない。
追憶 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
勇蔵ゆうぞうわってあかぼうりをしながら、ボールをていた達吉たつきちみみへも、一人ひとり子供こどもんできて、伯父おじ災難さいなんらせました。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
押し問答を続けた末、結局、国枝氏は旧友の熱誠にほだされ、わば気違いのおりをする気で、療養所へ同行することになった。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
残されたことはただ一つ、婚約の二人の行手に待っている幸福にたいする信念を、一同の胸中にり立てて、シャンパンを飲むだけである。
「ようと笑いなさい。色恋かも知れん。年寄のおりばっかりしとると若い人が恋しゅうなる。子供でもよい。なあ七代さん。ホホホ……」
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「時務、軍務などは、いくら多端たたんでも何ともせぬが、先帝(後醍醐)のおりにはとんと手を焼いたぞ。佐々木、早よう何とかならんかな」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
姥竹は姉娘の生まれたときからりをしてくれた女中で、身寄りのないものゆえ、遠い、覚束ない旅のともをすることになったと話したのである。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
此の立つはわたくしならず、人ひとりるとにあらず、皇国すめぐにをただに清むと、正しきにただにかへすと、心からいきどほる我はや。
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
自分が姉を見上げた時に、姉の後にたすきを掛けたりのお松が、草箒くさぼうきとごみとりとを両手に持ったまま、立ってて姉の肩先から自分を見下みおろして居た。
守の家 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
おばあさんは私の家にくると、いつも私のおりばかりしていた。そうしておばあさんは大抵私を数町先きの「牛の御前ごぜん」へ連れて行ってくれた。
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
しゆの色の薔薇ばらの花、ひつじが、戀に惱んではたけてゐる姿、羊牧ひつじかひはゆきずりに匂を吸ふ、山羊やぎはおまへにさはつてゆく、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「イヤ、こいつは参った。まったく言われてみると、狂人のおりをしているわれらも、こう退屈では、いつのまにか気が変になろうも知れぬテ」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
生まれた直後、乳母を雇い、その乳母が私をりした。この女は隣村の越知おち村からきた。その乳母の背に負ぶさって乳母の家に行ったことがあった。
神聖な方としており立てしていきたかった宮様も、世間の女並みに浮き名を立てられておしまいになることがもってのほかに思われてならなかった。
源氏物語:39 夕霧一 (新字新仮名) / 紫式部(著)
こんないやなことばかり考えていましたので、セーサルは子どものおりを、つい忘れてしまっていました。
だから、逢引の相手だつて、おんば、りつ、下女、夜鷹と、その日の天氣具合で變つたさうですよ。佛樣の惡口を言つちや濟まないが、浮ばれねえ男で——
だって私は妹のりをすることもあるし、忙がしいのだから、一緒になるにはそれより方法がないからだ。
こんにゃく売り (新字新仮名) / 徳永直(著)
るがめてのたのしみなりれはのぞみとてなれば生涯しやうがいこの御奉公ごほうこうしてかたさま朝夕あさゆふ御世話おせわさては嬰子やゝさままれたまひての御抱おだなににもあれこゝろ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この頃、爺さんは袋町へも行かないで、終日家にこもってお位牌のおりをしていることが多い。
神楽坂 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
早く夫に別れて、年の行かぬ二人の子供をり立てて行ったのは、容易なことでなかったろう。
私の母 (新字新仮名) / 堺利彦(著)
白砥しらと小新田をにひた山のる山のうら枯れ為無せな常葉とこはにもがも」(巻十四・三四三六)等がある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
幼年時代をりしてくれた大河にたいする郷愁が、その散歩で多少和らげられた。ああそれはもちろん、かの父なるライン河ではなかった。かの全能的な力は少しもなかった。
娘のりにしてしまっては国元の親たちに済まぬという心づかいもあったらしいが丁稚一人の将来よりも春琴の機嫌を取る方が大切であったし佐助自身もそれを望んでいる以上
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
有っても無くてもいいよまいごとを書いて、これを文芸呼ばわりをし、前人の糟粕そうはくめては小遣こづかいどりをし、小さく固まってはお山の大将をり立てて、その下で小細工をやる。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
心の中を見れば、王だとて豚のりする豚飼もおなじこと、奴隷もおなじことである。
ウスナの家 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
誰があの人にケガのないようにおりをするの、誰が時間どおりに薬をのませるの? 今さら包みかくしたところでしようはないわ、わたしあの人を愛しています、そりゃ明白よ。
桜の園 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
付き添いのりの女が少女を抱き上げて、田川夫人の口びるをその額に受けさしていた。葉子はそんな場面を見せつけられると、他人事ひとごとながら自分が皮肉でむちうたれるように思った。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
散りこすなゆめと言ひつゝ、幾許こゝだくるものを、うたてきやしこほとゝぎす、あかつき心悲うらかなしきに、追へど追へど尚ほし鳴きて、いたづらに地に散らせれば、すべをなみぢて手折たをりて、見ませ吾姉子あぎもこ
浮標 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
筆でくちびるを真っ赤に塗った佝僂の子がそこの机のところに立ち、その子がおりをしなきゃならない小さな妹たちはあばれまわって、部屋の隅々すみずみまでよごしているというような有様なんです。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
さかひつはものも汝が翼を遮ることあるまじきぞ。その一裹は尊き神符にて、また打出の小槌なり。おのが寶を掘り出さんまで、事くことはあらじ。黄金も出づべし、白銀しろかねも出づべしといふ。
風呂ふろへ行くにも髪結いさんへ行くにも、何とかかとか言って、子供をりするふうをして幸ちゃんが付いて来るの。どこの主人でも、抱えとお客とあまり親密になることは禁物なんだわ。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
言いすてて武男はかつて来なれし屋敷うちを回り見れば、さすがにる人あれば荒れざれど、戸はことごとくしめて、手水鉢ちょうずばちに水絶え、庭の青葉は茂りに茂りて、ところどころに梅子うめのみこぼれ
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
内匠頭の舎弟しゃてい大学をりたてて、ならぬまでもお家の再興を計った上、その成否を見定めてから事を挙げようとするものと、そんな宛にもならぬことを当にして、便々と待ってはいられない
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
「あんたみたいに、かみさんのりをしてる人は、他のお宮へ參つても、まツさら他人のやうな氣がしましよまい。」と、酒も煙草も呑まぬ千代松は、三度目の急須きふすの茶を入れかへながら言つた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
十八、九のはてれかくしに自分ののかぼそい女の児を抱き上げて
巴里の秋 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
髪の毛の逆立っているクニ子のりをしながら祖母のかやは口ぐせに
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
三吉座みよしざという小芝居の白壁に幾筋かの贔負幟ひいきのぼりが風に吹かれているのを、一様に黒い屋根の間に見出した時はことに嬉しかった。芝居好きの車夫の藤次郎とうじろうが父の役所の休日やすみには私のりをしながら
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
「新吉、いつまでめしを食ってるんだえ。さっさとおりをしな。」
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
それからは、八幡様が村人の遊び場所となり、昼間皆がたんぼに出ますと、その間たぬきが子供達をりしてくれました。もし狸にあだするようなけものが来ますと、次郎七と五郎八とが鉄砲で打ち取りました。
狸のお祭り (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
久方の天のはらからむつびあひて親をるこそうらやましけれ
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
衆人敬ひ我に聽き、至上のヂュウス我をる。 175
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
酔ひ寝ては鼠がはしる肩と聞き寒き夜りぬ歌びとの妻
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
暫くもいかが忘れん君をる心くもらぬ三熊野の月
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
お前達は腐った根性をり育てている。4915
やからもの——忍辱にんにくるに道はなし。
小曲二十篇 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
須貝 僕がおりをしましたからね。
華々しき一族 (新字新仮名) / 森本薫(著)
惱みてわれはる沙門『不淨ふじやう
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
あめみや御垣みかきるに、いかなれば
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)