姫様ひいさま)” の例文
旧字:姫樣
腰元共も彼女のそんな様子を見ると、「奥方様」と呼ぶのが滑稽こっけいな気がして、つい「お姫様ひいさま」と云う言葉が口元まで出そうになった。
「お姫様ひいさまのお部屋へやへご機嫌伺きげんうかがいにあがりまして、お話をうけたまわっておりますと、照彦てるひこ様がぜひ相撲すもうをとるとおっしゃって……」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「お連れ致さずともお姫様ひいさまはすぐお殿様のお目の前においで遊ばすのでござります」島太夫はふるえながら手を上げて几帳きちょうかげを指差した。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お粥腹のお姫様ひいさまを饂飩で口説いて、八頭を見て泣いたって、まるでお精霊様しょうろさまの濡場のようだね。よく、それでも生命いのちがあって帰って来たよ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ソーれおなされ姫様ひいさまほかのことにかけては姫様ひいさまがおえらいかれぬが、うまことにかけては矢張やはりこのじいやのほうが一まい役者やくしゃうえでござる……。
そして、敦賀つるがの港に、船を廻して待っていましょう。もうお姫様ひいさまが幸福の御生涯は船出の支度をととのえて彼方に待っているのでございます
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
姫様ひいさまから、御長男様まで、御三人とも、奇怪な死方をなされた上は、一応、軍勝図を秘伝致す牧へ御取調べがあっても、不念ぶねんとは申せますまい。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
けば聖書バイブルかてにする道徳家だうとくかが二十五銭の指環ゆびわ奮発ふんぱつしての「ヱンゲージメント」、綾羅りようら錦繍きんしゆう姫様ひいさま玄関番げんくわんばん筆助君ふですけくんにやいの/\をんだはての「ヱロープメント」
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
そのうちにだんだん近寄って参りますと、香潮と思ったのは間違いで、の夢の中で見た美留女姫に寸分違わぬ、凄い程美しいお姫様ひいさまがたった一人、静かに歩いて来るのでした。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
奥方には最愛の姫様ひいさまがあって、容貌きりょうも気質もすぐれて美しいお方であったが、その美しい姫様は明けて十七という今年の春、疱瘡ほうそう神に呪われて菩提所の石の下へ送られてしまった。
半七捕物帳:07 奥女中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
御贔屓ごひいきになる縁の初まりで、殿様が侯爵になってからも、邸内にM屋出張所を設け、毎日店員が伺候しこうして新柄珍品を御覧に入れ、お料理してたてまつる玉子しか御承知のない、家附女房のお姫様ひいさま
青バスの女 (新字新仮名) / 辰野九紫(著)
平民かと問へばどうござんしようかと答ふ、そんなら華族と笑ひながら聞くに、まあさうおもふてゐて下され、お華族の姫様ひいさまが手づからのお酌、かたじけなく御受けなされとて波々とつぐに
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あヽお姫様ひいさまられたのか。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
上のお姉様方はお二人ふたりとももうかたづいていらっしゃるから、お姫様ひいさまはこのおひと方だ。伯爵家ではお姫様方はみんなお成績がおよろしい。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
もし、姫様ひいさま書附がございましてね、町所ちょうどころが、ああ何とやら、みんなが申しましたっけ。何でも鮫ヶ橋の者だそうで、名が……そうそう黒瀬ぬい。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
じつ姫様ひいさまむかし可愛かわいがりになった、あの若月わかつき……あれがこちらの世界せかいるのでござります。わたくし何回なんかいかあの若月わかつきってりますので……。
「生れては、北条家の姫様ひいさまとして、たまのようにいつくしまれ、嫁いでは武田四郎勝頼様の御簾中とも仰がれた御身が……」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
姫様ひいさま、ばあや様、よう聞いて下さりませ、此の順慶と云う法師、いや、下妻左衛門尉と申した治部少輔殿の家来はな、折角君のお見出しにあずかりましたけれども
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「お姫様ひいさま」と老人は声を掛けた。深みのある濁った声である。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
第三番目のお姫様ひいさま、これはどうした事でしょう。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
家令かれいの富田さんさえ時折りしかられる。あとはみんな家庭教師で、三人の若様と一人ひとりのお姫様ひいさまにそれぞれ一人ずつついている。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
小遣こづかいが沢山あるから御馳走をするかわり、済みませんが、姫様ひいさまにおっしゃるように、奥さん、といいながら歩行あるいて下さい。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私は、月輪禅閤つきのわぜんこうの奥に仕える万野までのと申すものでございますが、御門跡様へお目にかけたいとて、室咲むろざきの牡丹を一枝、お姫様ひいさまの思し召で持参いたしました。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きっとお姫様ひいさまに会いたいと思し召して、お呼び寄せになったのでございましょうと云うのである。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「何をお姫様ひいさまおっしゃいますやら」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
姫様ひいさまこういらっしゃいまし。」一まず彼室かなたの休息所へ、しばし引込みたまうにぞ、大切なる招牌かんばん隠れたれば、店頭蕭条しょうじょうとして秋暮のたんあり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
きっと叡山へ登ると信念をもっていいました……で、お姫様ひいさまと心を決めて、お待ち申していたのでございます。私たちも、ふたたびお館へは帰れませぬ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お可愛らしいお姫様ひいさまじゃ」とか、「ようくり/\とお肥えになっていらっしゃいますな」
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「お姫様ひいさま! しがらみ様!」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
高位高官の貴夫人令嬢方、解らなけりゃ、うえがたの奥様姫様ひいさま方、大勢お弟子があるッさ、場末の荒物屋と一所にされてたまるもんか、途方もない。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
文金の高髷たかまげ銀釵筥迫ぎんさんはこせこ、どこの姫様ひいさまかお嬢様かというふうだが、けしからぬのはこのお方、膳の上に代りつきのお銚子ちょうしえ、いき莨入たばこいれに細打ほそうち金煙管きんぎせる
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
姫様ひいさま、それ/\、ほしひとつで、うめぢや。またゝきするに、十度とたびる。はやく、もし、それ勝負しようぶけさつせえまし。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「だまれっ、鎌倉衆の探題所はすぐそこだぞ。わめけば、すぐに役人たちが辻々へ廻るぞ。足もとの明るいうちに、その銘木を返せ、お姫様ひいさまにとっては、大事な品じゃ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鯉七 そこだの、姫様ひいさまが座をお移し遊ばすと、それ、たちどころに可恐おそろしい大津波が起って、この村里は、人も、馬も、水の底へ沈んでしまう……
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お姫様ひいさま、わたしを誰だと思いますか。おわかりですか? ……私の顔が」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「女中さん、降って来そうでございます、姫様ひいさまにおっしゃって、まあ、お休みなさいましな」と米は程合ほどあいを見計らう。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『——でも、姫様ひいさま、おかしいではございませんか』
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お嬢様がお一方、お米さんが附きましてはちょいちょいこの池の緋鯉や目高にを遣りにいらっしゃいますが、ここらの者はみんな姫様ひいさま々々と申しますよ。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お姫様ひいさま! あなたをお信じ申します」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
姫様ひいさまから、御坊へお引出ものなさる。……あの、黄金こがね白銀しろがね、米、あわわきこぼれる、石臼いしうす重量おもみが響きますかい。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おお、惚れたんだか何だか知らねえが、姫様ひいさまの野郎が血道を上げて騒いでるなあ、黒百合というもんです。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何が、この頃のひでりで、やれ雨が欲しい、それ水をくれろ、と百姓どもが、姫様ひいさまのお住居すまい、夜叉ヶ池のほとりへ五月蠅うるさきほどにたかってせる。それはまだい。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
談話はなしの邪魔がいるようだね。」「いえ、こりゃお姫様ひいさま。」「光子様は分ってる、まだ一人いやしないか。」「ほいふくろうのようだ。りますよ。」「誰だい。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それじゃあ生涯しょうがいありつけまいぜ。源吉とやら、みずからは、とあの姫様ひいさまが、言いそうもないからね」
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其時そのとき茫乎ぼんやりと思ひ出したのは、昨夜ゆうべの其の、奥方だか、姫様ひいさまだか、それとも御新姐ごしんぞだか、魔だか、鬼だか、おねやへ召しました一件のおやかただが、当座はただかっ取逆上とりのぼせ
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
お前を立派な女だ、姫様ひいさまだ、女房おかみさんだとしんから思ってしたことだよ。僕はお世辞も何にも言わない。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それでは御馳走をしてくれますか、」と背後うしろ腕車くるまで微笑みながらいったのは、米が姫様ひいさまと申上げた、顔立も風采ふうさいもそれにかなった気高いのが、思懸けず気軽である。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
薄 はい、お姫様ひいさまは、やがておりでござりましょう。それにつけましても、お前様おかえりを、お待ち申上げました。——そしてまあ、いずれへお越し遊ばしました。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
えゝ、お姫様ひいさまの! うやらいままでの乞目こひめでは、一度いちど一年いちねんかゝりさうぢや。おかげ私等わしらひもじうも、だるうもけれど、肝心かんじんたすらうとふ、奥様おくさまをおさつしやれ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さてこまつたは、さむければ、へい、さむし、あつければあつ身躰からだぢや、めしへば、さけむで、昼間ひるまよる出懸でかけて、ぬま姫様ひいさまるはえが、そればかりではきてられぬ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)