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くら
ふりがな文庫
“
喰
(
くら
)” の例文
食物の品柄次第にて、にわかにこれを
喰
(
くら
)
いて腹を痛むることあり、養生法においてもっとも戒むるところなれば用心せざるべからず。
学者安心論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
「貴さまとは警官に向つて無禮だぞ!」巡査も少し身がまへをして、「おれをそんなに馬鹿にする氣なら、鐡拳を
喰
(
くら
)
はせて見せる!」
泡鳴五部作:02 毒薬を飲む女
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
馬に巧者な香川氏の友達は、言ひ訳ばかりに杯に唇をあてたが、香川氏は酒を見ると、何もかも忘れてしたゝか
喰
(
くら
)
ひ酔つてしまつた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
荷馬橇の馬は、
狭霧
(
さぎり
)
の様な
呼気
(
いき
)
を被つて氷の玉を聯ねた
鬣
(
たてがみ
)
を、寒い光に波打たせながら、風に鳴る鞭を
喰
(
くら
)
つて勢ひよく駈けて居た。
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
そのとき凄まじい勢いで再び窓が開いたものだから、乞食は面
喰
(
くら
)
って跳びのいた。百姓
爺
(
おやじ
)
が癇癪をおこして鉄砲を持ちだしたのである。
乞食
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
▼ もっと見る
逃げ出したのではない、
轟
(
とどろき
)
の源松これにありと知って、風を
喰
(
くら
)
って逃出しにかかったのでないことは、その気分ではっきりわかる。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
爾後
(
じご
)
、
餓
(
う
)
うるときは鉄丸を
喰
(
くら
)
い、
渇
(
かっ
)
するときは銅汁を飲んで、
岩窟
(
がんくつ
)
の中に封じられたまま、
贖罪
(
しょくざい
)
の期の
充
(
み
)
ちるのを待たねばならなかった。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
しかのみならず、多数の人が泡を
喰
(
くら
)
って大騒ぎに騒ぎ立てておる際、彼の言葉の辻褄の合わぬ事などに気の付く場合でなかった。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
京橋の河岸通から吹いて來る折からの風と共に目も
開
(
あ
)
けない
砂煙
(
すなけむり
)
を
喰
(
くら
)
つて、自分等二人は休むともなく其の邊のビイヤホオルに這入つた。
新帰朝者日記
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
また洞の外には累々たる白骨の、
堆
(
うずたか
)
く積みてあるは、年頃金眸が取り
喰
(
くら
)
ひたる、
鳥獣
(
とりけもの
)
の骨なるべし。黄金丸はまづ
洞口
(
ほらぐち
)
によりて。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
どっちの場合も、
人様
(
ひとさま
)
のおかげをもって、どえらい
傍杖的
(
そばづえてき
)
被害を
喰
(
くら
)
う
虞
(
おそ
)
れが十分に
看取
(
かんしゅ
)
されたものだから、どうして落付いていられようか。
時限爆弾奇譚:――金博士シリーズ・8――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
樽野は風を
喰
(
くら
)
つて部屋から飛び出した。彼は一目散に庭を横切り笹籔に覆はれた土堤を上へ上へと兎のやうに伝つて庚申堂の裏手に達した。
村のストア派
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
「
畜生
(
ゴッデム
)
‼」と叫びながら、ふいを
喰
(
くら
)
って倒れる奴、おかせず
飛掛
(
とびかか
)
ったが、なにしろ相手は大男の毛唐、
双手
(
もろて
)
で龍介君の首を掴むと見る間に
危し‼ 潜水艦の秘密
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
秋山男爵に乳の辺りに当身を
喰
(
くら
)
わせられて、それから後は前後不覚、只今貴方様のお声で始めて正気になりましたような次第でござりまする。
月世界競争探検
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
こうして飲まず
喰
(
くら
)
わず七日間寝ていた。八日目になると、やおら起きて衣をつけて山を降りた。毒虫の好餌となってゆがんだ顔で人に尋ねた。
現代語訳 平家物語:05 第五巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
「やい重吉、この三年三月の間、来る日も来る日も、よくもおれを虐げたな。今日こそ怨みをはらしてやる、これでも
喰
(
くら
)
え」
重吉漂流紀聞
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
鍬
(
くわ
)
の先に
掘
(
ほ
)
り
崩
(
くず
)
された
蟻群
(
ぎぐん
)
の一匹のごとく蠢めいている。
杓
(
ひしゃく
)
の水を
喰
(
くら
)
った
蜘蛛
(
くも
)
の子のごとく蠢めいている。いかなる人間もこうなると駄目だ。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ルピック氏は、こういうふうにして、息子たちに不意打ちを
喰
(
くら
)
わすのが好きである。手紙もよこさずにおいて、やって来る。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
×「殿様御免なすってから大きな声をして、
此奴
(
こいつ
)
ア少し
喰
(
くら
)
い酔ってるもんですから詰らん事を云って、
何卒
(
どうぞ
)
お構いなく
彼方
(
あちら
)
へお出でなすって」
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
なるほど噸数は一万噸、大砲は二十糎砲だからすごいには違いないが、憐れむべし、防禦力が
零
(
ゼロ
)
である。十五糎砲弾を
喰
(
くら
)
ったらすぐに穴があく。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
五十人もの男を
虱
(
しら
)
み
潰
(
つぶ
)
しに洗って見ろ、あの阿魔を殺したがっている野郎は五人や七人じゃねえ筈だ——俺が殺したというのか?
糞
(
くそ
)
でも
喰
(
くら
)
え
銭形平次捕物控:200 死骸の花嫁
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
宮田が、不意を
喰
(
くら
)
って、少したじろいた腕の下をくぐると、倭文子は矢のように階段をころび落ちるように、かけ下った。
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
是
(
これ
)
を
粟稗
(
あはひえ
)
などにまぜ、又は
杤
(
とち
)
ばかりも食とす、又
餅
(
もち
)
にもする也。(もちにする杤は別種なりとぞ)
楢
(
なら
)
の実も
喰
(
くら
)
ふ、そのしかたは杤に
似
(
に
)
たりとぞ。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
一四
生
(
しやう
)
を殺し
鮮
(
あざらけ
)
を
喰
(
くら
)
ふ
凡俗
(
ぼんぞく
)
の人に、法師の養ふ魚
一五
必ずしも与へずとなん。其の絵と
一六
俳諧
(
わざごと
)
とともに
天下
(
あめがした
)
に聞えけり。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
「そうです。一里半少し遠いか。」と、
喰
(
くら
)
い
肥
(
ふと
)
った方が言った。体格から、言葉から兵役に行って来た男らしく見える。
遠野へ
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
大喰岳「信飛界、大喰岳、嘉門次」とは、群獣のこの附近に来て、食物をあさり
喰
(
くら
)
うので、かくは名づけたのであると。
穂高岳槍ヶ岳縦走記
(新字新仮名)
/
鵜殿正雄
(著)
瞬間の
衝撃
(
ショック
)
を
喰
(
くら
)
うと、かえって
痺
(
しび
)
れた方の腕が動いて、
瓶
(
びん
)
を窓から河の中へ投げ捨てたと云う面白い例が載っているぜ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
するとすべての亡者たちがその深淵に飛び込んで、魔法使の屍に蝟集しながら、てんでに歯を剥いてそれに
喰
(
くら
)
ひついた。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:03 怖ろしき復讐
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
酒五斗に、大きな羊を、丸焼きのまま銀盤に供えて
喰
(
くら
)
わせた。左慈は、ぺろんと平げて、まだ物足らない顔していた。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一所懸命に
縋
(
すが
)
り付いていた腕を引き抜かれて、ハズミを
喰
(
くら
)
った私は、固い人造石の床の上にドタリと
尻餅
(
しりもち
)
を突いた。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
熟々
(
つら/\
)
考
(
かんが
)
ふるに
天
(
てん
)
に
鳶
(
とんび
)
ありて
油揚
(
あぶらげ
)
をさらひ
地
(
ち
)
に
土鼠
(
もぐらもち
)
ありて
蚯蚓
(
みゝず
)
を
喰
(
くら
)
ふ
目出度
(
めでた
)
き
中
(
なか
)
に
人間
(
にんげん
)
は
一日
(
いちにち
)
あくせくと
働
(
はたら
)
きて
喰
(
く
)
ひかぬるが
今日
(
けふ
)
此頃
(
このごろ
)
の
世智辛
(
せちがら
)
き
生涯
(
しやうがい
)
なり。
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
すぐまた反対の側から同様のを続けて
喰
(
くら
)
うと出かかった悲鳴も声にはならず、もう
不貞不貞
(
ふてぶて
)
しい覚悟でさらに飛び散る弾の中を踊り
潜
(
くぐ
)
ってゆくのだった。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
竹操りのこの人形も、美しい御婦人でござりますで、爺が、この酒を
喰
(
くら
)
います節も、さぞはや
可厭
(
いや
)
であろうと思いますで、遠くへお離し申しておきます。
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
めり拳を
喰
(
くら
)
わす時の実用のため——が、あちこちに毒々しくちらついて、ぺっと唾をして靴でこすりながら——。
踊る地平線:08 しっぷ・あほうい!
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
おれが
喰
(
くら
)
い込んでもお前にはとばっちりが行くようにはしたくないで、打ち明けないのだ。どこに行っても知らない知らないで一点張りに通すがいいぜ。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「うふッ」叩きつけられたように伏していた喬之助が、
噴飯
(
ふきだ
)
したのだ。「あははははは、御苦労な!
土偶人形
(
でくにんぎょう
)
の勢揃い……カッ! これでも
喰
(
くら
)
えッ!」
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
磁気学研究所ボルネオ支所の村尾健治によって爆撃を
喰
(
くら
)
い、彼らが永劫に安泰と信じていた球体は、原子系の中から叩き出されようとしているのです……。
宇宙爆撃
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
「まさか」と思っていた、面
喰
(
くら
)
った監督は、夢中になって無電室にかけ込んだが、ドアーの前で立ち往生してしまったこと、どうしていいか分らなくなって。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
函館停車場は
極
(
ごく
)
粗朴
(
そぼく
)
な停車場である。待合室では、真赤に
喰
(
くら
)
い酔うた
金襴
(
きんらん
)
の
袈裟
(
けさ
)
の坊さんが、仏蘭西人らしい
髯
(
ひげ
)
の長い宣教師を
捉
(
つかま
)
えて、色々
管
(
くだ
)
を捲いて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
第九
食物
(
しよくもつ
)
も
衣服
(
いふく
)
の
如
(
ごと
)
く
分限
(
ぶんげん
)
によるは
勿論
(
もちろん
)
なれど、
肉食
(
にくしよく
)
は
鮮
(
あざら
)
けく
新
(
あた
)
らしき
品
(
しな
)
、
野菜
(
やさい
)
は
稚
(
わか
)
き
柔
(
やわらか
)
なる
品
(
しな
)
を
擇
(
えら
)
ぶべし。よく
烹熟
(
にたき
)
して、
五穀
(
ごこく
)
に
交
(
まじ
)
へ
喰
(
くら
)
ふをよしとする
事
(
こと
)
。
養生心得草
(旧字旧仮名)
/
関寛
(著)
農は粗服を用い粗食を
喰
(
くら
)
い汗を流し耕作を
掙
(
かせ
)
ぎ、工はその職を骨折り、商人は御
静謐
(
せいひつ
)
の
御代
(
みよ
)
どもに正路の働きにて、
辱
(
かたじけな
)
くも御国恩を忘れざるよう致すべきの処
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
「誰がツて……野郎、又
威嚇
(
おどし
)
文句で、又兵衛(酒屋の主人)の
許
(
とこ
)
へ行つて、酒の五合も
喰
(
くら
)
つて来たんだ」
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
明日
(
あす
)
の晩の、ヹネチヤ
行
(
ゆき
)
の汽車の時間を
下部
(
ギヤルソン
)
に問うて二十三時二十分と答へられたのには
一寸
(
ちよつと
)
面
喰
(
くら
)
つた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
彼は咽喉を扼する力によつて相手の膂力は到底己れの敵對し得る所でないと知つた。突然背後から
喰
(
くら
)
つた昏倒するほどの打撃は相手が二人であることを彼に告げた。
無法な火葬
(旧字旧仮名)
/
小泉八雲
(著)
學生はスカを
喰
(
くら
)
ツて、前へ突ン
踣
(
のめ
)
ツたかと思ふと、
頭突
(
づつき
)
に一ツ、老爺の胸のあたりをどんと突く。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
大下組が街の
顔役
(
かおやく
)
とか、親方とかいう
一聯
(
いちれん
)
の徒党に対する政府の解散命令を
喰
(
くら
)
ってから、組の若い
者
(
もん
)
から、
三下
(
さんした
)
のちんぴらに至るまで
総
(
すべ
)
てが足を洗う様に余儀なくされた。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
「けんどお前は常時此處に居るんやし、お時さんは自分の家に居るんやさかい、どうしてもお前の方が憎まれる。……寢てるとこ咽喉笛に
喰
(
くら
)
ひ付かれたら
南
(
なん
)
まん
陀佛
(
だぶつ
)
や。」
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
「ボーイ!」と面
喰
(
くら
)
った支配人は金切声で呼び立てた「地下室の酒場に居られますそうで」
闘牛
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
言草
(
いひぐさ
)
が皆の気に入つて、帽子の上から
軽
(
かろ
)
く二つほど
喰
(
くら
)
はせて、酒の事はお流れになつた。
椋のミハイロ
(新字旧仮名)
/
ボレスワフ・プルス
(著)
枠
(
わく
)
に縛りつけられて、ヒンヒン鳴いている奴を、
薪割
(
まきわり
)
のようなやつで、
額
(
ひたい
)
を一つガンと
喰
(
くら
)
わせると、ころりっと参ってしまいまさあ、それを骨切り
鋸
(
のこぎり
)
で、ごそごそっと首を引けば
首を失った蜻蛉
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
喰
漢検準1級
部首:⼝
12画
“喰”を含む語句
漆喰
喰付
馬喰
喰込
喰物
大喰
酒喰
面喰
馬喰町
喰切
喰止
何喰
喰屍鬼
出喰
喰違
虫喰
漆喰壁
買喰
喰殺
喰気
...