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叺
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かます
ふりがな文庫
“
叺
(
かます
)” の例文
あの一段高い米の
叺
(
かます
)
の積み荷の上に突っ立っているのが
彼奴
(
きゃつ
)
だ。苦しくってとても歩けんから、
鞍山站
(
あんざんたん
)
まで乗せていってくれと頼んだ。
一兵卒
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
蝋塗りに
螺鈿
(
らでん
)
を散らした、見事な
鞘
(
さや
)
がそこに落散つて、外に男持の
煙草入
(
たばこいれ
)
が一つ、
金唐革
(
きんからかは
)
の
叺
(
かます
)
に、その頃壓倒的に流行つた
一閑張
(
いつかんばり
)
の筒。
銭形平次捕物控:116 女の足跡
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
炊事場の掃溜場から、
叺
(
かます
)
を吊した例の棒を肩に掛けて腰を上げると、籾、羽二重、村長を呟くかわりに、爺は
斯
(
こ
)
う怒った様に喚くのである。
荷
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
というのだが、金田一先生はこの最後の一行を、「破れた
叺
(
かます
)
の皮のよう」と訳しておられる(『ユーカラ集Ⅰ』p。234-6)。[215]
えぞおばけ列伝
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
取散らした包紙の
黴臭
(
かびくさ
)
いのは奥の間の縁へほうり出して一ぺん掃除をする。置所から色々の
供物
(
くもつ
)
を入れた
叺
(
かます
)
を持ってくる。
祭
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
六茎を括りつけていないのはない、猟士の山帰りの
苞
(
つと
)
にも、岩魚を漁る
叺
(
かます
)
の中にも蕗が入れてある、同じく饗膳に上ったことは、言うまでもない。
梓川の上流
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
と仲間体の男はなにげなき
体
(
てい
)
で返事をして、お茶を飲んでしまうと懐中から
叺
(
かます
)
を取り出して、炭火で火をつけて
鉈豆
(
なたまめ
)
でスパスパとやり出しました。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それが
明日
(
あす
)
からといふ
日
(
ひ
)
に
彼
(
かれ
)
は
其
(
その
)
残
(
のこ
)
つた
煙草
(
たばこ
)
を
殆
(
ほとん
)
ど一
日
(
にち
)
喫
(
す
)
ひ
續
(
つゞ
)
けた。
煙草入
(
たばこいれ
)
の
叺
(
かます
)
を
倒
(
さかさ
)
にして
爪先
(
つまさき
)
でぱた/\と
彈
(
はじ
)
いて
少
(
すこ
)
しの
粉
(
こ
)
でさへ
餘
(
あま
)
さなかつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
盗まれた品物を調べてみますと、水深計の糸、五百発ばかりの弾薬ケース、九十発ばかりの小銃弾、麦粉一袋、砂糖の
叺
(
かます
)
など、大事なものばかりです。
アフリカのスタンレー
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
「十日
戎
(
えびす
)
の、売り物は」上り
端
(
はな
)
の二帖へいって、重吉は外を眺めながら、調子の狂った節で低くうたいだした、「——はぜ袋にとり鉢、銭
叺
(
かます
)
、小判に金箱」
ちゃん
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
抱くことも抱えることも出来ないので、頭骨も手骨も諸共に
叺
(
かます
)
にさらえこみ、土を運ぶようにして海へ流した。
重吉漂流紀聞
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
藁で造った一人用二人用の
叺
(
かます
)
の中に、夫婦親子が首から下を差し入れて、囲炉裏の四側にごろごろと寝ている。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
生の軸木を
掌
(
て
)
にとってしらべていた小山は、唾を吐くように、
叺
(
かます
)
にポイと投げて汚れた廊下をかえってきた。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
石炭を入れる
叺
(
かます
)
だの、鶏を入れるような、大きな、平ッたい竹籠だの、およそ野蛮な、ざッかけない、わびしい感じのするものが
堆
(
うずたか
)
くそこに積まれてあった。
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
火をつけてから手のひらの上へ載せてやって、自分も思い出したように帯の間にある紅い
琥珀
(
こはく
)
の
叺
(
かます
)
を抜き取ると、こはぜの附いた
蓋
(
ふた
)
の下へ白い小さな手の甲を入れた。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
叺
(
かます
)
と
鉈豆煙管
(
なたまめぎせる
)
を取出した亀吉は、もう一度にやりと笑うと、おつねの出してくれた煙草盆で二三服立続けにすぱりすぱりとやっていたが、頭から
夜具
(
やぐ
)
を
被
(
かぶ
)
った歌麿が
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
と、忽ちそこへ勘定方の武士に
率
(
ひき
)
いられた足軽たちが重そうに
銭叺
(
ぜにかます
)
をかついで来た。一荷や二荷ではない。何十という
叺
(
かます
)
の山、いや銭の山がまたたくうちに積まれた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこでその私の友人は、帰郷後さっそく、一日人夫を雇って、その「たらの芽」を採って貰い、それを贈るも贈る、一
叺
(
かます
)
荷造にして先日会食した一人の方へ贈り届けた。
自力更生より自然力更生へ
(新字新仮名)
/
三沢勝衛
(著)
「そうか」そして考えついて
叺
(
かます
)
の
莨入
(
たばこいれ
)
から
彼
(
か
)
の櫛を出して、「此の櫛なら、いくらか貸すだろう」
南北の東海道四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
猪之介は漸く上り
框
(
かまち
)
の端の方へ腰を掛けて、腰の煙草入れの
叺
(
かます
)
の破れかゝつたのを探りながら
兵隊の宿
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
財布に入れて懐中などは思いも寄らず、三両五両となると
叺
(
かます
)
に入れて三泣き車に載せて行く。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
といふ歌から、近くは明治三十五年に出版せられた若越方言集に、クヾツとは
叺
(
かます
)
なり。物を入るる物なりとあるまで、多くの書物にそれが一種の袋であることを証拠立てゝ居る。
くぐつ名義考:古代社会組織の研究
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
叺
(
かます
)
を卸して
秣
(
まぐさ
)
を
宛
(
あて
)
がってどっさり喰わせ、虫の食わないように
糸経
(
いとだて
)
を懸けまして、二分と一貫の銭を持って居りますゆえ、大概のものなら
駈落
(
かけおち
)
をするのだから路銀に持って
行
(
ゆ
)
きますが
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
老人は腰から
叺
(
かます
)
を抜き出して、一服つけた。私はこの機会を逸してはと考えた。
想い出
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
叺
(
かます
)
の煙草入を
懐中
(
ふところ
)
へ
蔵
(
しま
)
うと、
静
(
しずか
)
に身を起して立ったのは——
更
(
あらた
)
めて松の幹にも
凭懸
(
よりかか
)
って、
縋
(
すが
)
って、あせって、
煩
(
もだ
)
えて、——ここから見ゆるという、花の雲井をいまはただ、
蒼
(
あお
)
くも白くも
瓜の涙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
もっけもない事を言いましたので、何気なく手にとりあげて、とみつこうみつ打ち調べているとき、ころり、と
叺
(
かます
)
の中から下におちたものは、丁半バクチに用いる象牙細工の小さな
賽
(
さい
)
ころです。
旗本退屈男:03 第三話 後の旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
勘次は
叺
(
かます
)
を抱えて蔵の中から出て来ると、誰にも相手にされず、台石の上でひとりぼんやりしている安次の姿が眼についた。それは弱々しいとり残された者の感じで不意に彼の心に迫って来た。
南北
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
こんな日にはよく
蜆
(
しじみ
)
売りのお媼さんが来た。背中に大きな
叺
(
かます
)
を背負って、真白になってやって来た。蜆や蜆——とぼとぼとお媼さんは呼び声だけを後に残して、影絵のように雪の中に消えて行った。
立春開門
(新字新仮名)
/
河井寛次郎
(著)
片隅に積んであった
叺
(
かます
)
のうえへ、おさんどんをどさりと抛りだした。
ムツェンスク郡のマクベス夫人
(新字新仮名)
/
ニコライ・セミョーノヴィチ・レスコーフ
(著)
鉱石入りの小さな
叺
(
かます
)
を背負って腕組みをしながら登って来る人夫の姿が朧ろげに現れる、もう鼻と鼻とが擦れ合う程に近寄っている、互に挨拶の言葉をいい交わして、一歩下りさま振り返った時には
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
良い
叺
(
かます
)
であつたから
小熊秀雄全集-02:詩集(1)初期詩篇
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
蝋塗
(
ろうぬ
)
りに
螺鈿
(
らでん
)
を散らした、見事な
鞘
(
さや
)
がそこに落散って、外に男持の煙草入が一つ、
金唐革
(
きんからかわ
)
の
叺
(
かます
)
に、そのころ圧倒的に
流行
(
はや
)
った
一閑張
(
いっかんばり
)
の筒。
銭形平次捕物控:116 女の足跡
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
棒の両端に
叺
(
かます
)
を吊して、ぶらんぶらん担ぎ廻る例の「皆喰爺」が、寮の裏で見える度に、私は
尹書房
(
ユンソバング
)
を思い出すのだ。
荷
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
貝殻を投げ込み、薪を焚き、石灰が出来あがると、
叺
(
かます
)
に詰めて河岸へ運び出す。単純で少しの変化もない仕事。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼
(
かれ
)
が
什麽
(
どんな
)
に
惜
(
をし
)
んでも
叺
(
かます
)
の
中
(
なか
)
の
減
(
へ
)
つて
行
(
ゆ
)
くのを
防
(
ふせ
)
ぐことは
出來
(
でき
)
ない。
然
(
しか
)
も
寡言
(
むくち
)
な
彼
(
かれ
)
は
徒
(
いたづ
)
らに
自分
(
じぶん
)
獨
(
ひとり
)
が
噛
(
か
)
みしめて、
絶
(
た
)
えず
只
(
たゞ
)
憔悴
(
せうすゐ
)
しつゝ
沈鬱
(
ちんうつ
)
の
状態
(
じやうたい
)
を
持續
(
ぢぞく
)
した。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
越後地方では木を
刳
(
えぐ
)
って作った塩槽の上に塩を
叺
(
かます
)
のままで置き、その底にたまる
滷汁
(
にがり
)
をメダレと呼んでいた。
食料名彙
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
敷居の上へ腰を
卸
(
おろ
)
して煙草入れを引抜き、太い
煙管
(
きせる
)
を取り出して口にくわえ、
叺
(
かます
)
を横にしてはたいてみる。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
足軽に命じて、そこにある限りの
叺
(
かます
)
を、
悉
(
ことごと
)
く破らせると、銭の山は
雪崩
(
なだれ
)
をなして堤上をうずめた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それによごれた
叺
(
かます
)
を並べ、馬の餌にするような芋の切れ端しや、
砂埃
(
すなぼこり
)
に色の変った駄菓子が少しばかり、ビール
罎
(
びん
)
の口のとれたのに夏菊などさしたのが一方に立ててある。
嵐
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
お救い米を宛てにして、大勢の難民が子供を連れ在方から出てきたが、お救い小屋が廃止になったので、子供に食わせる道がなく、生きたまま
叺
(
かます
)
や俵に入れて川に流した。
ボニン島物語
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
本誌七巻三号の倉光君の報告せられた「
蒲
(
かま
)
とクグ」(五九頁)によると、今でも山陰地方では、山子・
木挽
(
こびき
)
・石屋等に限って、
叺
(
かます
)
様の藁縄製の袋を携帯しているが、旧皮屋部落の青年が
くぐつ名義考:古代社会組織の研究
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
とここで、鐸を
倒
(
さかさま
)
に腰にさして、
袂
(
たもと
)
から、ぐったりした、油臭い、
叺
(
かます
)
の
煙草入
(
たばこいれ
)
を出して、
真鍮
(
しんちゅう
)
の
煙管
(
きせる
)
を、ト隔てなく口ごと持って来て、蛇の幻のあらわれた、境の吸う
巻莨
(
まきたばこ
)
で、吸附けながら
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
被
(
かぶ
)
っていた
桐油
(
とうゆ
)
を、
見世
(
みせ
)
の
隅
(
すみ
)
へかなぐり
棄
(
す
)
てて、ふところから
取出
(
とりだ
)
した
鉈豆煙管
(
なたまめぎせる
)
へ、
叺
(
かます
)
の
粉煙草
(
こなたばこ
)
を
器用
(
きよう
)
に
詰
(
つ
)
めた
松
(
まつ
)
五
郎
(
ろう
)
は、にゅッと
煙草盆
(
たばこぼん
)
へ
手
(
て
)
を
伸
(
の
)
ばしながら、ニヤリと
笑
(
わら
)
って
暖簾口
(
のれんぐち
)
を
見詰
(
みつ
)
めた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
煙草盆を引寄せて
叺
(
かます
)
の粉煙草を
捻
(
ひね
)
りましたが、火皿に足りさうもないので、苦笑ひに
紛
(
まぎ
)
らせてポンと煙草入を投ります。
銭形平次捕物控:114 遺書の罪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
貝殻を投げ込み、薪を焚き、石灰が出来あがると、
叺
(
かます
)
に詰めて
河岸
(
かし
)
へ運び出す。単純で少しの変化もない仕事。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
家の人々は
藁
(
わら
)
の
叺
(
かます
)
の中に入って
炉
(
ろ
)
の
傍
(
かたわら
)
に寝るのだと謂って、ちゃんとその様子が絵にかいて載せてある。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
果敢
(
はか
)
ない
煙草入
(
たばこいれ
)
の
叺
(
かます
)
の
中
(
なか
)
を
懸念
(
けねん
)
するやうに
彼
(
かれ
)
は
數次
(
しばしば
)
覗
(
のぞ
)
いた。
陰鬱
(
いんうつ
)
な
狹
(
せま
)
い
小屋
(
こや
)
の
中
(
なか
)
で
覗
(
のぞ
)
く
叺
(
かます
)
の
底
(
そこ
)
は
闇
(
くら
)
かつた。
僅
(
わづ
)
かに
交
(
まじ
)
つた
小
(
ちひ
)
さな
白
(
しろ
)
い
銀貨
(
ぎんくわ
)
が
見
(
み
)
る
度
(
たび
)
に
彼
(
かれ
)
の
心
(
こゝろ
)
に
幾
(
いく
)
らかの
光
(
ひかり
)
を
與
(
あた
)
へた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
張合いのないこと
夥
(
おびただ
)
しいが、こっちには計画があるから、予定を運んで、召捕った時に、彼が持っていた
穢
(
きたな
)
い財布——むろん沢山ははいっていないが——それと
叺
(
かます
)
の煙草入れ、鼻紙などを
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鐚銭
(
びたせん
)
に至るまで、あらゆる種類が網羅されてあり、それを山に積んで、右から左へ種類分けにして、奉書の紙へ包んでみたり、ほごしてみたり、
叺
(
かます
)
へ納めてみたり、出してみたりしている。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しかるにまた近来ニューヨークのソロモンという人が同じ考えを起して大仕掛けに資本をかけてこの法を用いる事になったそうである。
叺
(
かます
)
のような物に母貝を沢山に並べたのを一度に写真にとる。
話の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
“叺”の解説
叺(かます)は、袋の一種。藁蓆(わらむしろ)を二つに半折し、両端を縄で閉じて封筒状にした容器である。肥料、石炭、塩、穀物などを入れる。「かます」は蒲簀の意。なお「叺」は国字である。
(出典:Wikipedia)
叺
漢検1級
部首:⼝
5画
“叺”を含む語句
銭叺
叺莨入
叺詰
喇叺
塩叺
無喇叺
生叺
空叺
米叺
藁叺