なら)” の例文
旧字:
わずかに数筆を塗抹とまつした泥画の寸紙の中にも芸衛的詩趣が横溢おういつしている。造詣の深さと創造の力とは誠に近世にならびない妙手であった。
このうち双趾類というは、足のゆびが双足の中線の両方に相対してならびあるので、豹駝ジラフ、鹿、牛、羊、駱駝、豚、河馬かば等これに属す。
小千谷をぢやより一里あまりの山手やまて逃入村にごろむらといふあり、(にげ入りを里俗にごろとよぶ)此村に大つか小塚とよびて大小二ツの古墳こふんならびあり。
こゝに享保年間下總國しもふさのくに古河こがの城下に穀物屋吉右衞門こくものやきちゑもん云者いふものあり所にならびなき豪家がうかにて江戸表えどおもてにも出店でみせ十三げんありて何れも地面ぢめん土藏共どざうども十三ヶ所を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
少しくこれを観察するときには裏面にはさらに富の世界あるを見、兵と富とは二個の大勢力にして「いわゆる日月ならかかりて、乾坤けんこんを照らす」
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
宇津木の家は代々の千人同心で、山林田畑でんぱたの産も相当あって、その上に、川を隔てて沢井の道場とならび立つほどの剣術の道場を開いております。
「天真正伝神道流」の流祖、飯篠長威斎家直いいざきちょういさいいえなおが当時東国第一の兵法者とされているのに対して、富田勢源せいげんが西に対立してならび称されて居たものである。
巌流島 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
二人ふたりの主人がならび立つようでは一藩のためにも幸福でないと悟り、のみならず生麦なまむぎ償金事件で失敗してからこのかた、時勢の自己おのれに非なることをみて取ったにもよる。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
侠は愛と其わだちならべつゝ、自から優美高讃なる趣致を呈せり、我が平民社界に起りしシバルリイは、其ゼントルマンシップに於て既に女性を遊戯的玩弄物ぐわんろうぶつになし了りたれば
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
……をんなざう第一作だいいつさくが、まだ手足てあしまでは出来できなかつたが、ほゞかほかたちそなはつて、むねから鳩尾みづおちへかけてふつくりとつた、木材もくざいちゝならんで、目鼻口元めはなくちもときざまれた、フトしたとき……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
浦賀の繁華はその律詩の中、「暮管朝絃声不断。西眉南瞼色無双。」〔暮管朝絃声断タズ/西眉南瞼色ならブ無シ〕の対句に言現されている。浦賀から再び船に乗って房州の高崎に著した。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
臙脂もめ、緑青の色もあせた今から見れば、かの高野山の二十五菩薩の大幅も、いかにも落ちついた、和かい色調のように見えるが、画かれた当時は艶麗ならびなきものであったであろう。
偶言 (新字新仮名) / 津田左右吉(著)
たまたま当時にならびなきたっとき智識に知られしを、これ一生の面目とおもうてあだよろこびしも真にはかなきしばしの夢、あらしの風のそよと吹けば丹誠凝らせしあの塔も倒れやせんと疑わるるとは
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
はなしたふむつゆのあしたならぶるつばさ胡蝶こてふうらやましく用事ようじにかこつけて折々をり/\とひおとづれに餘所よそながらはなおもてわがものながらゆるされぬ一重垣ひとへがきにしみ/″\とはもの言交いひかはすひまもなく兎角とかくうらめしき月日つきひなり隙行ひまゆこまかたちもあらば手綱たづな
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
小千谷をぢやより一里あまりの山手やまて逃入村にごろむらといふあり、(にげ入りを里俗にごろとよぶ)此村に大つか小塚とよびて大小二ツの古墳こふんならびあり。
ならぶるものなき劔術けんじゆつの大先生なり其上見懸みかけに依ず慈悲じひふかい御人にて金銀に少しも目を懸ずもし貧窮者ひんきうものや病人のある時は醫者いしやに懸て下されたり金銀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
お角は、駒井甚三郎なる人が、砲術の学問と実際にかけては、世にならぶ者のない英才であるということを知りません。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
左右にならびし大鶏の名をきくに、鉄石丸、火花丸、川ばた韋駝天いだてん、しゃまのねじ助、八重のしゃつら、磯松大風、伏見のりこん、中の島無類、前の鬼丸
蒼海遂に来らねば、老侠と我と車をならべて我幻境の門を出づ、この時老婆は呉々も我再遊のさきの如く長からざるべきを請ふに、この秋再びと契りて別れたり。行くところは高雄山。
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
老爺ぢゞいにも小刀こがたなうごく、とならんで二挺にちやうひかり晃々きら/\きらめきはじめた……たなそこえだは、小刀こがたなかゞやくまゝに、あたかひれふるふとゆる、香川雪枝かがはゆきえも、さすがに青年わかものであつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あきなひ未だ東西も知らぬ土地なれども櫛笄簪くしかうがひ脊負せおひ歩行あるくに名におふ大都會なれば日本一のまづしき人もあればまたならびなき金滿家かねもちもありて大名も棒手振ぼうてぶり押並おしならんで歩行あるく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しばしありてその岩に手鞠てまりほどにひかるもの二ツならびていできたり、こはいかにとおもふうちに、月の雲間くもまをいでたるによくみれば岩にはあらで大なる蝦蟇ひきがひるにぞありける。
天に二つの日を掛けたるがごとし、ならべるつのするどにして、冬枯れの森のこずえに異ならず、くろがねの牙上下にちごふて、紅の舌ほのおを吐くかと怪しまる、もし尋常よのつねの人これを見ば、目もくれ魂消えて
にこそそのかんばせは、爛々たるしろがねまなこならび、まなじりに紫のくま暗く、頬骨のこけたおとがい蒼味がかり、浅葱にくぼんだ唇裂けて、鉄漿かね着けた口、柘榴ざくろの舌、耳の根には針のごとききばんでいたのである。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
奇樹きじゆきしよこたはりてりようねふるがごとく、怪岩くわいがんみちふさぎてとらすにたり。山林さんりんとほそめにしきき、礀水かんすゐふかげきしてあゐながせり。金壁きんへきなら緑山りよくざんつらなりたるさま画にもおよばざる光景くわうけい也。