トップ
>
包
>
くる
ふりがな文庫
“
包
(
くる
)” の例文
「東京の靴屋へ送りたいと思つて……」内田氏は
包
(
くる
)
みかけた小包をまた
解
(
ほぐ
)
して、そのなかから穿き減らした靴を取り出して見せた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
お葉は
其
(
その
)
紙入から札と銀貨を
好加減
(
いいかげん
)
に掴み出して、数えもせずに紙に
包
(
くる
)
んだ。
之
(
これ
)
を
懐中
(
ふところ
)
に
押込
(
おしこ
)
んで、
彼女
(
かれ
)
も裏木戸から駈け出した。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼は古新聞紙の一片に自分の餌を
包
(
くる
)
んで来たのであったから。差当って彼も少年らしい当惑の色を浮めたが、予にも好い思案はなかった。
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼は子供を毛布にグルグルと
包
(
くる
)
んで、顔ばかり出し、口には出来るだけ柔かに猿轡をはめ、乳母を手伝わして
脊中
(
せなか
)
へしっかと結び付けた。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
初手
(
しよて
)
は
此
(
こ
)
の
毛布
(
けつと
)
に
包
(
くる
)
んで、
夜路
(
よみち
)
を
城趾
(
しろあと
)
へ、と
思
(
おも
)
つたが、——
時鳥
(
ほとゝぎす
)
は
啼
(
な
)
かぬけれども、
然
(
さ
)
うするのは、
身
(
み
)
を
放
(
はな
)
れたお
浦
(
うら
)
の
魂
(
たましひ
)
を
容
(
い
)
れたやうで
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
▼ もっと見る
先刻
(
さっき
)
帯の間へ
包
(
くる
)
んだままの時計を出して見ると、もう八時過ぎであった。私は帰ったなりまだ
袴
(
はかま
)
を着けていた。私はそれなりすぐ表へ出た。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
愛犬を品評するというよりもむしろ豪華な毛皮に
包
(
くる
)
まってそこに集まる貴婦人たちの服装の品評会であろう、なぞとゴシップせられるほど
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
事務員が、日当りの悪い三畳の
室
(
ま
)
に、薄い蒲団に
包
(
くる
)
まって、まだ寝ているうちに、叔父は朝飯の箸も取らずに、蒼い顔をして出かけて行った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
……身体じゅうずきずき痛んで顫えがやまぬ今こそ、小屋へはいって寝た方がいいのだが、小屋には
包
(
くる
)
まるものもなく、川岸にいるより寒いのだ。
追放されて
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「あの三ピンを、引っ
包
(
くる
)
んで
膾
(
なます
)
に刻んでしまえ! しかし殺しちゃアいけねえ。止どめはお若衆に刺させろ! やれ!」
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
暗い中に
嬰児
(
あかご
)
の泣き声がして女はお産をしたのであった。飛脚は嬰児を抱きあげてそれを
衣服
(
きもの
)
で
包
(
くる
)
んだ。嬰児は無心に手の中でぐびぐびと動いていた。
鍛冶の母
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ところが犯人は、そういう最も安全な方法を択ばないばかりでなく、現在見るとおり
木乃伊
(
ミイラ
)
みたいに
包
(
くる
)
んでいて、不可解な防温手段を施しているんだよ
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
やがて
呼鈴
(
ベル
)
が鳴つて幕が上つた。アーチの内部に、矢張りロチスターが一緒に選んだサー・ジョオジ・リンの大きな身體が白い敷布に
包
(
くる
)
まつて見えた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
そして、襟巻に
包
(
くる
)
まった小ボブ——実際彼には慰安者((註、原語では襟巻と慰安者の両語相通ず。))が必要であった、可哀そうに——が這入って来た。
クリスマス・カロル
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
鼈四郎のような生活の
些末
(
さまつ
)
の事にまで、タイラントの
棘
(
とげ
)
が突出ている人間に取り、性抜きの薄綿のような女は
却
(
かえ
)
って引懸り
包
(
くる
)
まれ易い危険があったのだった。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
暫くして赤ん坊がどうやら眠ったらしいので、彼女は赤ん坊の手足をのばして、暖く
包
(
くる
)
んでやってから、そうっと椅子へ腰をおろすと、涙がしきりに込みあげて来た。
小さきもの
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
と御機嫌を直しながら、旦那様は紫袱紗を
解
(
ほど
)
いて桐の小箱の蓋を取りました。白絹に
包
(
くる
)
んだのを大事そうに
取除
(
とりの
)
けて、畳の上に置いたは目も覚めるような
黄金
(
きん
)
の御盃。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
もし取り外しができるものならその「掌」をやわらかい真綿か何かへシッカリと
包
(
くる
)
んで、寝ン寝ンよおころりよと子守唄歌いながら毎晩抱きしめて添い寝してやりたかった。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
濃紅姫は
不図
(
ふと
)
気がついて眼を開いて見ますと、自分はいつの間にか、今まで見た事もない美しい
室
(
へや
)
の真中に
寝台
(
ねだい
)
を置いて、その上に白い布団に
包
(
くる
)
まって寝かされております。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
斯様に盲人に成った姿を見たら嘸嘆くことだろうから、今晩は帰る方が宜しいと、百両の金をそっと寝巻に
包
(
くる
)
んで、コソ/\帰ろうと致しまする処へ、音羽が合口を持って
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
眼の醒めるような派手な柄の友禅に
包
(
くる
)
まっているのが、なんと愛らしい事だ。
愛の為めに
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
海近く育ちて水に慣れたれば何のこわいこともなく沖の方へずんずんと乳の
辺
(
あた
)
りまで
出
(
い
)
ずるを吉次は見て
懐
(
ふところ
)
に入れし
鼈甲
(
べっこう
)
の
櫛
(
くし
)
二板紙に
包
(
くる
)
んだままをそっと
袂
(
たもと
)
に入れ換えて手早く
衣服
(
きもの
)
を脱ぎ
置土産
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
葉マキ虫の葉を
綴
(
つゞ
)
りて
寝
(
い
)
ぬる如く、一同皆
蒲団
(
ふとん
)
に
包
(
くる
)
まりて一睡す。
霧の不二、月の不二
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
私はそこで毛布に
包
(
くる
)
まれて、死んだようになって眠っていた。
妖影
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
馬衣に身を
包
(
くる
)
んで、一日ぢゆう祈祷に過したからである。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:04 イワン・フョードロヸッチ・シュポーニカとその叔母
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
癪気
(
しゃくき
)
と見て紙に
包
(
くる
)
んで帰り際に残しおかれた
涎
(
よだれ
)
の結晶ありがたくもないとすぐから取って俊雄の歓迎費俊雄は十分あまえ込んで言うなり次第の
倶浮
(
ともうか
)
れ四十八の
所分
(
しょわけ
)
も授かり融通の及ぶ限り借りて借りて皆持ち寄りそのころから母が涙のいじらしいを
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
その
中
(
うち
)
の一人が
何心
(
なにごころ
)
なく土産物の
包
(
くる
)
んであつた新聞紙を手に取つて見た。新聞紙は奈良のものだつたが、矢張り新しい事が載つてゐた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
起きるのに張合がなくて、細君の、まだ
裸体
(
はだか
)
で
柏餅
(
かしわもち
)
に
包
(
くる
)
まっているのを、そう言うと、主人はちょっと舌を出して黙って
行
(
ゆ
)
く。
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蒔繪
(
まきゑ
)
ではあるが、たゞ
黒地
(
くろぢ
)
に
龜甲形
(
きつかふがた
)
を
金
(
きん
)
で
置
(
お
)
いた
丈
(
だけ
)
の
事
(
こと
)
で、
別
(
べつ
)
に
大
(
たい
)
して
金目
(
かねめ
)
の
物
(
もの
)
とも
思
(
おも
)
へなかつた。
御米
(
およね
)
は
唐棧
(
たうざん
)
の
風呂敷
(
ふろしき
)
を
出
(
だ
)
してそれを
包
(
くる
)
んだ。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
綿に
包
(
くる
)
んで
燦然
(
さんぜん
)
たるダイヤ、
青玉
(
サファイヤ
)
、
紅宝石
(
ルビー
)
、
蛋白石
(
オパール
)
、
黄玉
(
トパーズ
)
、
土耳古石
(
ターコイズ
)
、
柘榴石
(
ガーネット
)
、
緑玉
(
エメラルド
)
……宝石の山! 金も白金も
眼眩
(
めくら
)
めかしく一杯に詰まっている。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
メイ・ハルミの手を経て横浜から買った、ヤンキイ好みの紺に
淡
(
うす
)
めな荒い
縞
(
しま
)
のある例の
外套
(
がいとう
)
に
包
(
くる
)
まっていたが、髪もそそけ顔もめっきり
窶
(
やつ
)
れていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そのうえ
駒下駄
(
こまげた
)
を
裏合
(
うらあわ
)
せにして新聞で
包
(
くる
)
んで作った枕の痛みも頭にあって、たしかに宵に寝たままの姿であった。
指環
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
諸大名方へのお出入りも出来、内弟子外弟子ひっ
包
(
くる
)
めると、およそ千人の門弟が
瞬間
(
またたくま
)
に出来上ってしまいました。
正雪の遺書
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼は子供をしっかと
上衣
(
うわぎ
)
に
包
(
くる
)
んで、ひしと抱きしめながら、
絹半巾
(
きぬハンケチ
)
を丸めて早速の
猿轡
(
さるぐつわ
)
とし三階へ駈け上った。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
同じようなのが二枚出来たところで、味噌の方を腹合せにしてちょっと紙に
包
(
くる
)
んで、それでもう事は
了
(
りょう
)
した。
野道
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
やはり大きな長靴をはいた、小さな姪のアクーリカもいる。アレクセイは一杯機嫌だ。ヴァニカは笑っている。アクーリカの顔は見えない。すっかり
包
(
くる
)
んである。
グーセフ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
寒風に吹き
晒
(
さら
)
されて、両手に
胼
(
ひび
)
を切らせて、紙鳶に日を暮した二十年
前
(
ぜん
)
の小児は、随分乱暴であったかも知れないが、
襟巻
(
えりまき
)
をして、帽子を被って、マントに
包
(
くる
)
まって
懐手
(
ふところで
)
をして
思い出草
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
紋兵衛はそこで海苔を一枚焼かして、その飯だけの鮨を海苔に
包
(
くる
)
んで食べてしまった。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
と
独言
(
ひとりごと
)
を云いながら金包を手拭に
包
(
くる
)
んで腹掛のどんぶりに押込み、腕組をして、女と一緒だからまだ
其様
(
そんな
)
に遠くは行くまい、
田圃径
(
たんぼみち
)
から
請地
(
うけち
)
の
堤伝
(
どてづた
)
いに先へ出越せば逢えるだろう
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
黒いメリンスの風呂敷に
包
(
くる
)
まった十
燭
(
しょく
)
の電燈が、眼の前にブラ下がっている。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
肩に背負つた風呂敷包には、二宮金次郎の道徳のやうな、格安で、
加之
(
おまけ
)
に「お
為
(
た
)
めのいい」
石鹸
(
しやぼん
)
や
白粉
(
おしろい
)
がごたごた
包
(
くる
)
まれてゐた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
後悔をしても
追附
(
おっつ
)
かない。で、弦光のひとり寝の、浴衣をかさねた木綿
広袖
(
どてら
)
に
包
(
くる
)
まって、火鉢にしがみついて、肩をすくめているのであった。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一年のうちで、七、八の
二月
(
ふたつき
)
をその中に
包
(
くる
)
まれて、穴に入った
蛇
(
へび
)
のように
凝
(
じっ
)
としているのは、私に取って何よりも温かい
好
(
い
)
い心持だったのです。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
母親は、
喧嘩
(
けんか
)
の時は、そのことも言い出したが、不断は忘れたようになっていた。父親は
櫛
(
くし
)
など薄い紙に
包
(
くる
)
んで来て、そっと鏡台の上に置いてくれなどした。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
菊江は白い小さな歯をした青年の口元を浮べたところで、己の足がもう
野菜店
(
やおや
)
の店の中へ入っているので、驚いて三個の
褐腐
(
こんにゃく
)
を買って、それを
手巾
(
ハンカチ
)
に
包
(
くる
)
んで出た。
女の怪異
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
すると私はこの辺一体——もちろん砂丘も引っ
包
(
くる
)
めて土地の低いのに気が付いた。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
土耳古帽
(
トルコぼう
)
は
堤畔
(
ていはん
)
の草に腰を下して休んだ。二合余も入りそうな瓢にスカリのかかっているのを傍に置き、
袂
(
たもと
)
から白い
巾
(
きれ
)
に
包
(
くる
)
んだ
赤楽
(
あからく
)
の
馬上杯
(
ばじょうはい
)
を取出し、一度
拭
(
ぬぐ
)
ってから落ちついて
独酌
(
どくしゃく
)
した。
野道
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
まア
結構
(
けつこう
)
なお
薬
(
くすり
)
を
頂
(
いたゞ
)
くのみならず、お
料理
(
れうり
)
の
残余物
(
あまりもの
)
まで
下
(
くだ
)
され、
有難
(
ありがた
)
う
存
(
ぞん
)
じます、
左様
(
さやう
)
ならこれへ
頂戴
(
ちやうだい
)
致
(
いた
)
しますと、
襤褸手拭
(
ぼろてぬぐひ
)
へ
包
(
くる
)
んであつた
麪桶
(
めんつう
)
を
取出
(
とりだ
)
して、
河合金兵衛
(
かはひきんべゑ
)
の
前
(
まへ
)
へ
突出
(
つきだ
)
すのを
大仏餅。袴着の祝。新まへの盲目乞食
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
御婦人のある場所を
抉
(
えぐ
)
り取ったとみえて、これも白くカラカラに乾干らびきった皮膚が、ただ一掴みの毛だけはそのままに綿に
包
(
くる
)
まって出てまいりました時には、その場におりました者七
蒲団
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
ここにいても
包
(
くる
)
まるものはないが、せめても焚火ぐらいはできる。……
追放されて
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
包
常用漢字
小4
部首:⼓
5画
“包”を含む語句
風呂敷包
引包
紙包
一包
黄包車
上包
包物
金包
莚包
袱紗包
小包
菰包
二包
皮包
押包
藁包
竹皮包
革包
麺包
包囲
...