“凄味:すごみ” の例文
“凄味:すごみ”を含む作品の著者(上位)作品数
中里介山9
吉川英治9
江戸川乱歩4
泉鏡花4
坂口安吾4
“凄味:すごみ”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.4%
文学 > 日本文学 > 日記 書簡 紀行0.4%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.2%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
いや、自然をかえりみない様な男に限って、この植物の持つ、ある凄味すごみには、一層きつけられるはずだった。
毒草 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
紀三井寺の入相の鐘のというところに妙に節をつけて——つまり鳴物入なりものいりで話にまた相当の凄味すごみがついた。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「髭のあった時分の顔には、なつかしみが有った。何だか髭を取ってしまったら、凄味すごみが出て来た」と言って笑うものがあった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
血走っているというわけでも、殺気がほとばしるというわけでもないが、なんとなく一道の凄味すごみが流れ出しました。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
妹 そんなことないわ。凄味すごみがあつたわ。もう出来ないか知ら。(やつて見る)ほら出来た。うまくうつつたでしよ。
ちょいと凄味すごみを見せようというつもりらしい。勝手にあががまちへ腰を下ろして、せいぜい苦味走って控えながら、
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
殊更うれいを含む工合ぐあい凄味すごみあるに総毛立そうけだちながらなおくそこら見廻みまわせば
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
小鬢こびんの所に、傷痕きずあとのある浅黒い顔が、一月に近い辛苦で、少しやつれが見えたため、一層凄味すごみを見せていた。
入れ札 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「待てったら、待て。」とドス声を渋くかすめて、一つしゃくって、頬被りから突出すあご凄味すごみを見せた。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
堂のうしろの笑い声が消えた次の一瞬——同じ場所からこう鋭い——何ともいえない凄味すごみをもった老婆のしゃがれ声がしたのであった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そういう下地がある上に、彼は一旦物事をり出すと、その成績にえて凄味すごみが出るほど徹底した。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
白い細かい歯並を見せて笑う。七兵衛をして、こいつがその鼠小僧ではあるまいかと思わせるくらいに、ちょっと凄味すごみの利く代物しろもの
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
信一郎は、そう云いながら、何事もないように、笑っている夫人の美しさに、ある凄味すごみをさえ感じた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
どっちもきざで鼻持ちがならないのみか、凄味すごみというものが不足だから、これっぱかしのことをただすにもこの騒ぎだ——と見ている態度だ。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは別段大きくはないのだけれど、いやに底光りがして、何とも云えない凄味すごみが差すのであった。
壁の眼の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
がんりきの百蔵は、充分に凄味すごみかせたつもりで、煙草盆を提げてやって来るには来たが、
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
先にもいった通り、覗き眼鏡で見る景色は、丁度水中に潜って目を開いた世界の様に、異様によどんで、いうにいわれぬ凄味すごみを添えているのです。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
思出し笑いに、凄味すごみというようなものが加わって、その眼の中にいっぱいのこびが流れる。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
眼に凄味すごみがあるばかり、れい刺青いれずみもして居らず、毛繻子けじゅすえりがかゝった滝縞たきじま綿入わたいれなぞ着て居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
盛り場だけに、この公園の夜更よふけは、一層物さびしく、変てこな凄味すごみさえ感じられた。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そこの常客に、や無頼漢肌の土地の好男子の連れて来る、凄味すごみ掛かった別品がいる。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
び沈んだ、一種の凄味すごみを帯びた正木博士の声は、ここで一寸ちょっと中絶した。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
——よく神降りをやる巫女が、いちど悶絶もんぜつして、それから、うわ言のように、神のことばをしゃべり出す——あのときの凄味すごみをもった顔なのである。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「全く人相は争われない、剣難の相はどこかに凄味すごみがある、女難の相は鼻の下が長い」
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
——呼声は朱鞘しゅざや大刀だんびら、黒羽二重、五分月代ごぶさかやきに似ているが、すでにのさのさである程なれば、そうした凄味すごみな仲蔵ではない。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
窓から首を出して見ると、一帯の松林のの間から、国府津こうづに特有な、あの凄味すごみを帯びた真蒼まっさおな海が、暮れ方の光を暗く照り返していた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
時折女中たちに目っかって喧嘩けんかの時に言いだされてしょげていたが、子供たちに威張いばるときは、円朝の凄味すごみで眼をしかめたり、声を低くしたりした。
びんの毛を乱して背後へなびかせ、これもぶつかる風に流れる、振り袖を長くひらめかして、走って行く鈴江のようすというものは、美女であるだけに凄味すごみがあって
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
夜の路次ろじなどで、この猫に出逢うと一種の凄味すごみをさえ感じさせられる。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
だが、それだけ、殺気が充実して、すべての面上、必殺の凄味すごみがあふれる。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
それがこだまして、一瞬この世の声ともおもえぬ凄味すごみに夜をつつんだ。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何か滑稽な言葉だけにかえって凄味すごみをはらんで「僕はまじめに脅迫します」
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
たゞ何心なく他をながむる眼にしてははなは凄味すごみを帯ぶ。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「やがて三十近い——どこか凄味すごみのあるせた男でございます」
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
トヨ公は、四十ちかい横太りの、ひたいが狭く坊主頭で、眼がわるいらしく、いつも眼のふちが赤くてしょぼしょぼしていましたが、でも、ちょっと凄味すごみのきく風態の男でした。
女類 (新字新仮名) / 太宰治(著)
作家の部屋と云うものは、なんとなく凄味すごみがあって気味が悪い。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
南蛮寺なんばんじおくのほうから、ジャン、ジャン、ジャン! 妖韻よういんのこもったかね——そして一種の凄味すごみをおびたかいがひびいてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄ちゃん、少しせたわね。ちょっと凄味すごみが出て来たわ。
律子と貞子 (新字新仮名) / 太宰治(著)
空襲にえる動物の感じで、然しあんまり凄味すごみのある猛獣ではなさそうで、取りすまして空襲を見物している私自身の方がよっぽどたちの悪い、毒性のある動物のような気がしていた。
魔の退屈 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
ウワルプルギスナハトには思ったような凄味すごみはなかった。
異郷 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
特殊の私娼窟であるがために何となく凄味すごみに眺められた。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「さぞ美味でごわしたろう」と、凄味すごみのある声でいった。
凄味すごみに冷え入る剣幕けんまくをおさよへあびせた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
碧々へきへきたる湖上に浮んで居るところの朦朧もうろうたる山脈の間から正月二十六日の弦月が上りかけたその美しさ……かすかなる光が湖面に映って何となく凄味すごみを帯びて居りますが
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
すらすらと歩を移し、露を払った篠懸すずかけや、兜巾ときんよそおいは、弁慶よりも、判官ほうがんに、むしろ新中納言が山伏に出立いでたった凄味すごみがあって、且つ色白に美しい。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
止れアレテ!」と、縮みあがるような凄味すごみのある声でどなりつけた。たちまちセエヴル焼の人形のようにこわばってしまった二人の前へ駆け寄って来た兵士、今度は何を立腹したのか、いきなり、
崖の離屋はなれでは三人の男が顔をあわしていた。三人のうちの一人は四十四五で、素肌へ茶の縦縞の薄い丹前たんぜんていたが、面長おもながの色の白い顔のどこかに凄味すごみがあった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
村正といえば、相当の凄味すごみのある名ではあるが、この通客はあんまり凄味のない村正で、諸国浪人や、新撰組あたりへ出入りのとも全く肌合いが違い、まずていのいいお洒落しゃらくに過ぎない。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「惡人はもう少しノツペリして凄味すごみがあるな」
瞰下みおろす目に凄味すごみが見えた。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その与右衛門の眼には凄味すごみがあった。
累物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「女!」ズンと凄味すごみのある声だ。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又、死者の枕頭ちんとうに刃物を置く習慣は、その刃物の光鋩こうぼう、もしくは、その形状の凄味すごみより来る視覚上の刺戟暗示を以て、この種の夢遊病者の幻覚を破るに有効なるものありしより起りし習慣に非ざるなき
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
まもるに値いする血など有る筈がないのだ、と放言する咢堂に至っては、いささか悪魔の門を潜ってきた凄味すごみを漂わしているのであるが、僕の記憶に間違いがなければ、咢堂夫人はイギリス人であった筈で、こうなると意味が違う。
咢堂小論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
ややともすれば強請ゆすりがましい凄味すごみな態度を示すに引き比べて昔ながらの脚半きゃはん草鞋わらじ菅笠すげがさをかぶり孫太郎虫まごたろうむし水蝋いぼたむし箱根山はこねやま山椒さんしょうお
ついて来やがるな、だが、お見受け申したところ、啖呵も切れないが、凄味すごみかない奴等だ、あいつらの器量では、せいぜい、いやがらせをしてみるくらいのもので、腕出しをするだけの度胸はない、万一、何か手でも出しゃがッたら
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「そういう役は、わたしとはまるで縁がない筈ですよ。それにしても、わたしの舞台に、そんな凄味すごみが出るようでは、芸が未熟な証拠です。矢っ張り道楽でならった武術の方が、表芸にたたってくるのですねえ。有難いことを聞きました」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
剃り立て頭に頭巾をかむり、無地の衣裳にお納戸色なんどいろの十徳、色の白い鼻の高い、眼のギョロリとした凄味すごみのある坊主、一見すると典医であるが、実は本丸のお数寄屋すきや坊主、河内山宗俊こうちやまそうしゅんが立っていた。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
野山のやまに、によき/\、とつて、あのかたちおもふと、なんとなく滑稽おどけてきこえて、大分だいぶ安直あんちよくあつかふやうだけれども、んでもないこと、あれでなか/\凄味すごみがある。
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
トントン……と二階梯子はしごを響かせながら、酒膳しゅぜんを運んで来た女は、まアその色の黒きこと狸の如く、すす洋燈らんぷあかりに大きな眼を光らせて、むしろ滑稽は怖味こわみ凄味すごみ通越とおりこしている。
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
いや転ばなくても、次第によっては転ばせて、捕縄とりなわに物を言わせる凄味すごみの相手であることは、つい今頃、送られる身になって、ぴーんと来ていない限りはないのだが、草津の駅でがんりきをとがめたように、頭ごなしに咎められない。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
すでに、秘密の一端をもらした以上、不愍ふびんではあるが、お久良と新吉とを、このまま放してやることはなるまい——と、法月弦之丞の眸は、いつのまにか、けいとして、一脈の凄味すごみを帯び、お久良の返辞を、待たぬふうに待ちすましている。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
飛騨の国越えをして美濃の太田へ落着いた晩、この女も今晩のうちに殺してしまわなければならぬ女だ——と幾分の凄味すごみを見せたはずなのに、ずるずるべったりにここまで牛に引かれて来てしまって、寝物語云々うんぬんのいちゃつきにお相手をつとめている。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その証拠には蓋叫天がいきゅうてんが、宛然さながら日本の車屋のような、パッチばきの武松に扮するのを見ても、無暗に刀をふるう時より、何かの拍子に無言の儘、じろりと相手を見る時の方が、どの位行者武松らしい、凄味すごみに富んでいるかわからない。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
什麽どんなことするつて泥棒どろぼうはしねえぞ、勘次かんじれた目尻めじりに一しゆ凄味すごみつておつたがつたとき卯平うへいはのつそりと戸口とぐちおほきな躯幹からだはこばせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
然しながら、武蔵には、いわば悪党の凄味すごみというものがないのである、松平出雲の面前で相手の油断を認めると挨拶前に打ち倒してしまったりして、卑怯といえば卑怯だが、然し悪党の凄味ではなく、むしろ、ボンクラな田舎者の一念凝らした馬鹿正直というようなものだ。
青春論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
兇悪遂に身をほろぼした、かれの凄味すごみと、断末の無念そうな眉間みけんの影は消えていないが、頭巾をとれば年頃まだ三十に足らず、白蝋青隈はくろうあおくまの死相、ほつれ毛たれて耳朶みみたぶに一点の血、生ける時の兇相よりは、むしろ美男に見えたくらいである。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
木口が床柱を背負うと、安直がその次に居流れ、そこへまた例の御定連が程よく相並ぶと、やがて次から次、この界隈でも無職渡世と見えるのがせ集まって、いずれも膝っ小僧を並べて、長脇差を引きつけ、あんまりにらみの利かない眼をどんぐりさせながら、精々凄味すごみを作っている。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
畏怖いふというと仰山ぎょうさんすぎるし、同情というとまるであわれっぽく聞こえるし、この顔から受ける僕の心持は、何と云っていいかほとんど分らないが、永久に相手をあきらめてしまわなければならない絶望に、ある凄味すごみやさをつけ加えた特殊の表情であった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ではまた、時を改めて会うとしよう。ただし——その節には、このほうから、ちと所望するものがあるかもしれぬが」と天堂一角が、少し凄味すごみをみせた気で、弦之丞へ捨てぜりふを投げたのをきッかけに、お十夜、周馬の三人組、互に目くばせをし合って、スタスタと辻から横丁へ立ち去ってしまった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一応傾聴すべき論であり、日本人の血などと称して後生大事にまもるべき血などある筈がない、と放言するあたり、いささか鬼気を感ぜしむる凄味すごみがあるのだが、私の記憶に誤りがなければ彼の夫人はフランス人の筈であり、日本人の女房があり、日本人の娘があると、却々なかなかこうは言いきれない。
堕落論〔続堕落論〕 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
その半面よこがおを文三がぬすむが如く眺めれば、眼鼻口の美しさは常にかわッたこともないが、月の光を受けて些し蒼味をんだ瓜実顔うりざねがおにほつれ掛ッたいたずら髪、二筋三筋扇頭せんとうの微風にそよいでほおあたりを往来するところは、慄然ぞっとするほど凄味すごみが有る。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「見物がお二人では、役者の方で、不満かも知れません」明智はニコニコ笑って「しかし、恒川さんは、裁判所なり警察なりの代表者、三谷さんは畑柳家の代表者という訳ですから、このお二人に見物して頂けば、こんな好都合なことはありません。それに見物の人数が多くては、折角の奇怪劇に、凄味すごみが出ない心配もありますからね」
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ところが、ゴイゴロフのほうは、ひどく乗気になって、じつは、ちょっとした経緯いきさつがあって、おまえのようなもっともらしい顔をした禿茶瓶はげちゃびん相棒コバンがひとり欲しかったんだ。おまえにその気があるんなら、いい割をくれてやる。どうだ、はっきりしたところをぬかせ。わたしは、顔に、ちょっとこう凄味すごみをつけましてねえ、ニヤッと笑ってみせたんです。
犂氏の友情 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)