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倚
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よ
ふりがな文庫
“
倚
(
よ
)” の例文
大異は林の中へ入ってすぐそこにあった大木の根本へ坐って、幹に
倚
(
よ
)
っかかり、腰の袋に入れていた食物を
摘
(
つま
)
みだして
喫
(
く
)
いはじめた。
太虚司法伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
半ば渡りて立止り、欄干に
倚
(
よ
)
りて眺むれば、両岸の家々の火、水に映じて涼しさを加え、いずこともなく聞く絃声流るるに似て清し。
良夜
(新字新仮名)
/
饗庭篁村
(著)
前夜のとおり人々の注意は、今や明るくなって見えてきた街路の先端に向けられた、というよりそこに
倚
(
よ
)
りかかったと言ってもよい。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
文机、円テーブル、長椅子など、ことごとく上等なものであり、それに
倚
(
よ
)
って男女の人々が、麻雀だのポーカだのをやっていました。
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
狐の
妖魅
(
えうみ
)
をなす事
和漢
(
わかん
)
めづらしからず、いふもさらなれどいふ也。
我
(
われ
)
雪中にはあかりをとらんため、二階の
窓
(
まど
)
のもとにて
書案
(
つくゑ
)
に
倚
(
よ
)
る。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
▼ もっと見る
すると
趙
(
ちょう
)
の長者は、大いにまごついて、坐りかけた身を起し、禅椅に
倚
(
よ
)
っている魯達のそばへきて、彼の耳へ口をよせてささやいた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
五六
本
(
ぽん
)
屹立
(
きつりつ
)
した
樅
(
もみ
)
の
木
(
き
)
は
引
(
ひ
)
つ
扱
(
こ
)
いた
樣
(
やう
)
な
梢
(
こずゑ
)
が
相
(
あひ
)
倚
(
よ
)
つて、
先刻
(
さつき
)
から
明
(
あ
)
かるい
光
(
ひかり
)
を
厭
(
いと
)
ふ
踊子
(
をどりこ
)
を
掩
(
おほ
)
うて一
杯
(
ぱい
)
に
陰翳
(
かげ
)
を
投
(
な
)
げて
居
(
ゐ
)
たのであるが
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
時折りはその把手に
倚
(
よ
)
りかかり過ぎて、引っくりかえりそうになりながらも、催眠術にかかった人のようにフラフラと電車通りへ出た。
童貞
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
軍服ぬぎて
盥卓
(
たらいづくえ
)
のそばへ
倚
(
よ
)
らんとせしメエルハイムは、「かしこは若き婦人がたの居間なり、
無礼
(
なめ
)
なれどその窓の戸
疾
(
と
)
くさしてよ」
文づかい
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
女ふたりは爭ひかねて、顏を見合せながら手を弛むれば、半二は机に
倚
(
よ
)
りかゝかりて苦しさうに息をつく。お作はその脊を撫でる。
近松半二の死
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「しょっちゅうでしょ、女ならみんなそう思うだろうとおもうわ」女はそっと彼へ
倚
(
よ
)
りかかった、「——よかった、これで安心したわ」
おさん
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
夏の夜に
適
(
ふさわ
)
しい薄青い服を着て、ソファに
倚
(
よ
)
りながら、不安な動揺にみちた瞳を輝かしながら市街に起る雑多な物音に脅えていた。
勲章を貰う話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
岸を離れて見上げると徳二郎は
欄
(
てすり
)
に
倚
(
よ
)
つて見下ろして居た。そして内よりは
燈
(
あかり
)
が射し、外よりは月の光を受けて彼の姿が
明白
(
はつきり
)
と見える。
少年の悲哀
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
ぼんやりではあるが老婆が門に
倚
(
よ
)
って北の方を見ているのが見えた。やがて二人は王の家へ着いた。母親は美しい女を見て訊いた。
嬰寧
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
彼が椅子に
倚
(
よ
)
りかかって、さも冷静らしく自分の正気なることを論じているのを聞いていると、わたしは妙な心持ちになって来た。
世界怪談名作集:09 北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
平常
(
つね
)
の
部屋
(
へや
)
に
倚
(
よ
)
りかゝる
文机
(
ふづくゑ
)
の
湖月抄
(
こげつせう
)
こてふの
卷
(
まき
)
の
果敢
(
はか
)
なく
覺
(
さ
)
めて
又
(
また
)
思
(
おも
)
ひそふ
一睡
(
いつすゐ
)
の
夢
(
ゆめ
)
夕日
(
ゆふひ
)
かたぶく
窓
(
まど
)
の
簾
(
すだれ
)
風
(
かぜ
)
にあほれる
音
(
おと
)
も
淋
(
さび
)
し。
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
冬の夕暮、鍛冶の火高く燃えて、道ゆく百姓の立ち
倚
(
よ
)
りて手を温むるとき、我は家の窓に坐して、これを見つゝ、時の過ぐるを知らず。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
かくして彼は心置なく細君から
嬲
(
なぶ
)
られる時の軽い感じを前に受けながら、背後はいつでも自分の築いた厚い重い壁に
倚
(
よ
)
りかかっていた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
居合せたものはつり込まれて彼れの周囲に集った。女まで引張られるままに彼れの膝に
倚
(
よ
)
りかかって、彼れの
頬
(
ほお
)
ずりを無邪気に受けた。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
皆の
跫音
(
あしおと
)
が聞えた時、火鉢に
倚
(
よ
)
りかかって、時々こくりこくりと
居睡
(
いねむ
)
りをしていた母親は、あわてて目を
擦
(
こす
)
って仕事を取りあげた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その漢学者からは捨吉もまだ少年の時分に
詩経
(
しきょう
)
の
素読
(
そどく
)
なぞを受けたことのある人だ。茶の間の柱のところへも行って
倚
(
よ
)
りかかって見た。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
両親並びて、五六歳の
男児
(
おのこ
)
の父の膝に
倚
(
よ
)
りたるは、武男が幼きころの紀念なり。カビネの
一人
(
ひとり
)
撮
(
うつ
)
しの軍服なるは
乃舅
(
しゅうと
)
片岡中将なり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
そして晝間でも御殿の下の日当りのよい
石崖
(
いしがけ
)
に
倚
(
よ
)
りかゝって、晴れた秋の空を見上げながら
独
(
ひと
)
りぼんやりと幻を
趁
(
お
)
いかけたりした。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
もう一人のお客さんは、入り口の方に
倚
(
よ
)
りかかってこくりこくりやって
御座
(
ござ
)
ったが、やがて、アヴァランシュのような
大鼾
(
おおいびき
)
をかき初めた。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
徐々
(
おもむろ
)
に
黄昏
(
たそがれ
)
の光の消え行く頃には其の山も其の岩も皆遠く西の
方
(
かた
)
水平線の下に沈んで了ひ、食事を終つて再び甲板の欄干に身を
倚
(
よ
)
せた時
黄昏の地中海
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
そのままには帰らないで、溝伝いにちょうど
戸外
(
おもて
)
に向った六畳の出窓の前へ来て、
背後向
(
うしろむき
)
に
倚
(
よ
)
りかかって、
前後
(
あとさき
)
を
眗
(
みまわ
)
して、ぼんやりする。
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
用いているが、寄生植物のように、別種のものが、他種の本体に
倚
(
よ
)
りかかっているのでないから、これを寄生というのは、いかがかと思う
日本山岳景の特色
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
堯の心もそんなときにはなにか新鮮な喜びが感じられるのだった。彼は窓際に
倚
(
よ
)
って風狂というものが存在した古い時代のことを思った。
冬の日
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
そしてその窓に
倚
(
よ
)
りかかって、いましがたどちらの目から
滲
(
にじ
)
み
出
(
で
)
たのかも分らない熱いものが私の頬を伝うがままにさせながら
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
年をとつた僧正も、わしには「永遠」に
倚
(
よ
)
つてゐる神の如くに見えた。わしは実に、殿堂の
穹窿
(
きゆうりゆう
)
を
透
(
すか
)
して、天国を望む事が出来たのである。
クラリモンド
(新字旧仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
……自分こそ嫡男であると言いたて、追々に味方をつくり、大藩に
倚
(
よ
)
って謀叛でも企てるようなことになれば、それこそ国の大事、乱の基。
顎十郎捕物帳:01 捨公方
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
窓に
倚
(
よ
)
りかかり、庭を見下せば、
無花果
(
いちじく
)
の樹蔭で、何事も無さそうに妹さんが佐吉さんのズボンやら、私のシャツやらを洗濯して居ました。
老ハイデルベルヒ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
私は説明を続けようとしてふと若い男の方を見ると、彼は自席のところに
倚
(
よ
)
りかかって窓の外へ
腕
(
て
)
をぶら
垂
(
さ
)
げたまま、真蒼な顔をしていた。
ペルゴレーズ街の殺人事件
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
段々走つて白岩あたりに行くと、岸のさま湖のさまも物さびて、巨巖危ふく水に臨み、老樹
矮
(
ち
)
びて巖に
倚
(
よ
)
るさまなど、世ばなれてうれしい。
華厳滝
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
壁に
倚
(
よ
)
りかかって、大声でおばさんと話していた天願氏が何を思ったか突然立ち上った、手で一座を制するようなしぐさを繰り返しながら
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
そしてうしろへ
倚
(
よ
)
りかかった。外套の下に私は緑灰色のゴルフ服を着ていた、ゴルフ靴下の房も言うまでもなく緑灰色だった。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
執念
(
しぶと
)
い好奇心だけに
倚
(
よ
)
り
縋
(
すが
)
っていて、
朦朧
(
もうろう
)
とした夢の中で楽しんでいる——ともかく、そのほうが幸福なのかも判りませんわ。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
今日
(
こんにち
)
、
之
(
これ
)
を
復興
(
ふくこう
)
するを
得
(
う
)
べし、而して
其
(
その
)
復興
(
ふくこう
)
の
方
(
はう
)
たるや、
安楽椅子
(
あんらくいす
)
に
倚
(
よ
)
り
罹
(
かゝ
)
り、或は
柔軟
(
じうなん
)
なる
膝褥
(
しつぢよく
)
の
上
(
うへ
)
に
跪
(
ひざまづ
)
き
如何程
(
いかほど
)
祈祷
(
きたう
)
叫号
(
きうごう
)
するも
無益
(
むえき
)
なり
問答二三
(新字旧仮名)
/
内村鑑三
(著)
何
(
な
)
んでも或日、老人は門の扉に
倚
(
よ
)
りかかって、横木に手をかけた儘、堅く
死固
(
しにかたま
)
っていたということだ。今は、誰も門を護る人がないと見える。
薔薇と巫女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
かうした場合であつたが、突然彼が
倚
(
よ
)
りかゝつてゐた机から顏を上げて、かう云ふのを聞いて、私は少なからず驚かされた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
泥壁には地図のように割目が入っていて、
倚
(
よ
)
りかかると、ボロボロこぼれ落ちた。——由三は半分泣きながら、ランプのホヤを磨きにかかった。
不在地主
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
今夜も彼女はこの
卓
(
テエブル
)
に
倚
(
よ
)
つて、長い間ぼんやり坐つてゐた。が、
不相変
(
あひかはらず
)
彼女の部屋へは、客の来るけはひも見えなかつた。
南京の基督
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
圭一郎は溢れるやうな醉ひ心地でその版畫を恍惚と眺めて呼吸をはずませ
倚
(
よ
)
り
縋
(
すが
)
るやうにして獲がたい慰めを願ひ求めた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
私はいつか千代子と行き会ったかの橋の
欄干
(
おばしま
)
に
倚
(
よ
)
って、冬枯れの
曠野
(
ひろの
)
にションボリと
孤独
(
ひとりみ
)
の
寂寥
(
さみしさ
)
を心ゆくまでに味わうことも幾たびかであった。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
お兄様は、玄関の太い黒光りのする
大黒柱
(
だいこくばしら
)
に
倚
(
よ
)
りかかって、肋骨の附いた軍服のまま、奥へも行かずに立っていられます。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
貫一は無雑作に
郡内縞
(
ぐんないじま
)
の
掻巻
(
かいまき
)
引被
(
ひきか
)
けて
臥
(
ふ
)
しけるを、疎略あらせじと満枝は
勤篤
(
まめやか
)
に
冊
(
かしづ
)
きて、やがて
己
(
おのれ
)
も始めて椅子に
倚
(
よ
)
れり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
私は百合さんに
倚
(
よ
)
りかかるやうにしてやつと階段を昇つたのだつた。そして部屋へはいるとすぐベッドに倒れてしまはなければならなかつた。……
恢復期
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
「ああ、すみません。旦那の
倚
(
よ
)
っ
懸
(
かか
)
っているところにスイッチがありまさあ。それをちょっと右へひねってくださいな」
宇宙尖兵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
人なみに青い事務セエードを頭にかけて机に
倚
(
よ
)
つてはゐるものの、自分なぞする仕事が与へられず暇で困つてゐたのだ。
現代詩
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
こうして机に
倚
(
よ
)
りかかってぼんやりしてると、過ぎにし旅行のことが影絵のごとく、おぼろに思い浮かべられて、淡い淡い悲哀を覚ゆるのである。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
倚
漢検1級
部首:⼈
10画
“倚”を含む語句
倚掛
偏倚
倚凭
倚子
倚懸
安樂倚子
相倚
倚添
倚木
倚水楼
偎紅倚翠
倚託
半倚
山倚
彼此相倚
狂倚
竹倚
長倚子
倚頼
倚陶軒
...