何程なにほど)” の例文
其時そのとき貴方あなたひとに、解悟かいごむかひなさいとか、眞正しんせい幸福かうふくむかひなさいとかこと効力かうりよくはたして、何程なにほどふことがわかりませう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
こゝはや藪の中央ならむともとかた振返ふりかへれば、真昼は藪に寸断されて点々星にさもたり。なほ何程なにほどの奥やあると、及び腰に前途ゆくてながむ。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
従って魔法を分類したならば、哲学くさい幽玄高遠なものから、手づまのような卑小浅陋せんろうなものまで、何程なにほどの種類と段階とがあるか知れない。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
其時そのとき日本帝國にほんていこく』から何程なにほど利益りえき保護ほごとをけてゐるのかとはれたら、返事へんじには當惑たうわくするほどのミジメな貧乏生活びんばふせいくわつおくつてゐたくせに。
其方儀主人しゆじんつま何程なにほど申付候共又七も主人のつき致方いたしかた有之これあるべき處主人又七にきずつけあまつさへ不義ふぎの申かけを致さんとせし段不屆至極ふとゞきしごくに付死罪しざいつく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
まへにもいへるごとくちゞみは手間賃てまちんろんぜざるものゆゑ、がおりたるちゞみは初市に何程なにほどうりたり、よほど手があがりたりなどいはるゝをほまれとし
似而非えせ賢者何程なにほどのことやあらんと、蓬頭突鬢ほうとうとつびん垂冠すいかん短後たんこうの衣という服装いでたちで、左手に雄雞おんどり、右手に牡豚おすぶたを引提げ、いきおいもうに、孔丘が家を指して出掛でかける。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
けれど何程なにほどのことがあらうと運命うんめいてんにゆだね、夢中むちうになつてけだしました。それからのことは一さいわかりません
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
しかし、まとまらなければまとまらないでも結構だ。それで一人一人の頭に何程なにほどかの準備ができればいいのだから。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
文「道理で……宜しい/\あなたが道楽につかうのでない立派なことです、何程なにほど御入用……それで済みますか五十金……おっかさまお貸し申しましょうか」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
脛押すねおしか。』と轟大尉とゞろきたいゐかほしかめたが、けぬ大尉たいゐ何程なにほどことやあらんとおなじく毛脛けずねあらはして、一押ひとおししたが、『あた、たゝゝゝ。』とうしろ飛退とびのいて
従って何程なにほど古手の思想を積んで見ても、木地の吾は矢張やっぱりもとのふやけた、秩序だらしのない、陋劣ろうれつな吾であった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
かれ何程なにほど節約せつやくしてもつひにじり/\とへつくのみである財布さいふすがつて、すゝきいたやうぢたくちなんでもころしてるのだといふ容子やうすをしてその々々ときざんですごした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たとへば日雇賃ひようちんにても借家賃しやくやちんにても其外そのほかもの貸借かしかり約束やくそく日限にちげんみないづれも一ウヰークにつき何程なにほどとて、一七日毎ひとなぬかごときりつくること、我邦わがくににて毎月まいつき晦日みそかかぎりにするがごとし。その一七日のとなへごと
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
あのあかはだかにかれたとりがヒヨイ/\あるくのをるほど、むごいものはいとおもひました。とうさんは子供心こどもごゝろにも、そんな惡戲いたづらをするむら人達ひとたち何程なにほどにくんだかれません。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
昼餐ちうざんを運ばれ、服薬を致しなどせしのち何程なにほどの時のにてもなくさふらへど、意地悪き迄の深き眠りに落ちしにさふらふ。目覚めさふらひしは前の甲板かふばん、上の甲板かふばんに起りし騒音の神経を叩きしにてさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
そのとき貴方あなたひとに、解悟かいごむかいなさいとか、真正しんせい幸福こうふくむかいなさいとかうことの効力こうりょくはたして、何程なにほどうことがわかりましょう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
むらさき袈裟けさをかけて、七堂伽藍だうがらんんだところ何程なにほどのこともあるまい、活仏様いきほとけさまぢやといふてわあ/\おがまれゝばひといきれでむねわるくなるばかりか。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何程なにほど取たイヤサ何程取て頼まれたと申事よと有ければ多兵衞は否々いや/\金子きんすは少しももらひませぬと云へば大岡殿馬鹿ばかな事を云へ金でももらはずに其樣そんな事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
仲間の者が「亥太郎何程なにほど強くっても此の門跡の家根から転がりおちることは出来めえ」と云うと「出来なくって」と云っての家根からコロ/\/\と堕ちたから
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
従て砲術をろうと云う者もなければ原書を取調べようと云う者もありはせぬ。れゆえ緒方の書生が幾年勉強して何程なにほどエライ学者になっても、とんと実際の仕事に縁がない。すなわち衣食に縁がない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
はらすべしと其夜近所きんじよ合壁がつぺき寢靜ねしづまりたる頃藤重が家にしのび行て見るに是は如何に何程なにほどひらかんとしてもくぎにてそとよりつけて有ば少しもあかず内の樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
初めてうけたまわった、侍が犬の供を召連めしつれて歩くという法はあるまい、犬同様のものなら手前申受もうしうけて帰り、番木鼈まちんでも喰わしてろう、何程なにほど詫びても料簡は成りません
又母が連れ帰ってくだされば金子きんす何程なにほどでも差上げると云うと、お前は親分や友達に済まんと云えば、いつまでもお話は押付おっつかんが、った処は文治郎が重々悪いから
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
重「あの姉さん少しお待ちなさい、貴方あんたの方のお払いは何程なにほどたまって居りやすか」
かめ「申し旦那、いけませんねえ、是から北牧きたむくまで何程なにほど有りますかえ」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)