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不味
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まづ
ふりがな文庫
“
不味
(
まづ
)” の例文
皿に手を附けずに居ると料理が
不味
(
まづ
)
いからだらうと云つて夫人の心配せられるのが気の毒なので、
我慢
(
がまん
)
して少しでも頂くことにして居た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
「
世話
(
せわ
)
つて、たゞ
不味
(
まづ
)
い
菜
(
さい
)
を
拵
(
こし
)
らえて、三
度
(
ど
)
づゝ
室
(
へや
)
へ
運
(
はこ
)
んで
呉
(
く
)
れる
丈
(
だけ
)
だよ」と
安井
(
やすゐ
)
は
移
(
うつ
)
り
立
(
た
)
てから
此
(
この
)
細君
(
さいくん
)
の
惡口
(
わるくち
)
を
利
(
き
)
いてゐた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
卯平
(
うへい
)
は
後
(
おく
)
れて
箸
(
はし
)
を
執
(
と
)
つたが、
飯
(
めし
)
は
暖
(
あたゝ
)
かいといふ
迄
(
まで
)
で
大釜
(
おほがま
)
で
炊
(
た
)
いた
樣
(
やう
)
に
程
(
ほど
)
よい
軟
(
やはら
)
かさを
保
(
たも
)
つては
居
(
ゐ
)
ないし、
汁
(
しる
)
も
其
(
そ
)
の
舌
(
した
)
に
酷
(
ひど
)
くこそつぱく
且
(
かつ
)
不味
(
まづ
)
かつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
殊に、白の
不味
(
まづ
)
さ加減は、今日の新劇の致命的特徴であつて、それをわざわざ、エキスパアトとしてトオキイに採用した監督の了見が僕にはわからぬ。
女優リイヌ・ノロのこと
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
「
黄金未出暗渠
(
わうごんいまだきよをいでず
)
——その中に五千兩なかつたら、——八、どうしよう、首をやるのは痛いが、
不味
(
まづ
)
い酒位は買ふぜ」
銭形平次捕物控:073 黒い巾着
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
そのむかし京役者の坂田
藤
(
とう
)
十
郎
(
らう
)
は江戸の水は
不味
(
まづ
)
くて飲めないといつて
東下
(
あづまくだり
)
をする時には、京の水を四斗樽に幾つも詰め込んで持つて往つたといふが
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
親父の場合よりも不気味な
不味
(
まづ
)
さはあつたが、それだけに心は反つて微妙な悪辣の光りを放つやうな気がした。
「悪」の同意語
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
『今井さんも今井さんだ。』と、目賀田は
不味
(
まづ
)
い顔をして言ひ出した。『俺のやうな
老人
(
としより
)
は死ぬ話は
真平
(
まつぴら
)
だ。』
道
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
不味
(
まづ
)
さうに
取揃
(
とりそろ
)
へられた
晝食
(
ひるめし
)
を
爲
(
な
)
し
終
(
を
)
へると、
彼
(
かれ
)
は
兩手
(
りやうて
)
を
胸
(
むね
)
に
組
(
く
)
んで
考
(
かんが
)
へながら
室内
(
しつない
)
を
歩
(
ある
)
き
初
(
はじ
)
める。
其中
(
そのうち
)
に四
時
(
じ
)
が
鳴
(
な
)
る。五
時
(
じ
)
が
鳴
(
な
)
る、
猶
(
なほ
)
彼
(
かれ
)
は
考
(
かんが
)
へながら
歩
(
ある
)
いてゐる。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
これ/\
膳
(
ぜん
)
を
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
な……お
汁
(
しる
)
を
熱
(
あつ
)
くして
遣
(
や
)
るが
宜
(
い
)
い……さア/\お
喫
(
た
)
べ/\
剰余物
(
あまりもの
)
ではあるが、
此品
(
これ
)
は
八百膳
(
やほぜん
)
の
料理
(
れうり
)
だから、そんなに
不味
(
まづ
)
いことはない、お
喫
(
あが
)
り/\。
大仏餅。袴着の祝。新まへの盲目乞食
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ただし、前もつてお断わりしておきますが、どうか、中途で話の腰を折らないやうにお願ひいたしたい。でないと、とんでもない
不味
(
まづ
)
いものが出来あがつてしまひますからな。
ディカーニカ近郷夜話 前篇:06 紛失した国書
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
そしてジャガ芋の無味な、かゝはりのない冷やかな
不味
(
まづ
)
さが、彼女に静かな淋しい遠くはなれた心を与へた。彼女は結婚後の貧しい悲しみにみちた現実の生活を思ひ浮べたのであった。
晩餐
(新字新仮名)
/
素木しづ
(著)
「もうこれだけいたしましたらいゝんでございますけど、あんまり何にもございませんから、一寸あそこのおすしでもさう言つてまゐりませうか。——でも
不味
(
まづ
)
いおすしでございますわね。」
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
釣ランプを取り圍んで、老幼取りまぜて十人もの家族が、騷々しく食事をしてゐた。勝代は空いた席へ割り込んで、獨り生冷たい煑返しに柔かい菜浸しを添へて、
不味
(
まづ
)
い思ひをして
箸
(
はし
)
を執つた。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
お
腹
(
なか
)
が
減
(
へ
)
つてもう氣が遠くなつた私は、味なんぞ考へないで、私の分を一
匙
(
さじ
)
二
匙
(
さじ
)
貪
(
むさぼ
)
り食べたが
空腹
(
くうふく
)
のせつない苦痛が和らいで見ると、實に
不味
(
まづ
)
い食物を手に持つてゐることがはつきりして來た。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
赤ちやけた殺風景な
山巒
(
さんらん
)
、寒い荒凉とした曠野、汚ない不潔な支那人の生活、
不味
(
まづ
)
いしつこい支那料理、時には何うしてこんな不愉快な
塞外
(
さいぐわい
)
の地にやつて来たらうと思ふやうなことも
度々
(
たび/\
)
あつたが
時子
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
斯く思ふと自分はその座の酒さへ耐へがたく
不味
(
まづ
)
かつた。
古い村
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
「一反で三十八圓損するとごつうおますな。そいなら作らんとおく方がましや。……作らな、税だけの損で濟むんが、作ると汗水流して、もむない(
不味
(
まづ
)
いといふ事)もん
喰
(
くう
)
て、それで損するんや。……嘘やおまへんか、そんなこと。」
太政官
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
宗助
(
そうすけ
)
は
安井
(
やすゐ
)
を
此所
(
こゝ
)
に二三
度
(
ど
)
訪
(
たづ
)
ねた
縁故
(
えんこ
)
で、
彼
(
かれ
)
の
所謂
(
いはゆる
)
不味
(
まづ
)
い
菜
(
さい
)
を
拵
(
こし
)
らえる
主
(
ぬし
)
を
知
(
し
)
つてゐた。
細君
(
さいくん
)
の
方
(
はう
)
でも
宗助
(
そうすけ
)
の
顏
(
かほ
)
を
覺
(
おぼ
)
えてゐた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
巴里
(
パリイ
)
に
姑
(
しばら
)
く慣れて居た者が
倫敦
(
ロンドン
)
に来て不便を感じるのは、
悠悠
(
いういう
)
と
店前
(
テラス
)
の卓に構へる事の出来る
珈琲店
(
キヤツフエ
)
が
全
(
まつた
)
く無いのと、
食物
(
しよくもつ
)
の
不味
(
まづ
)
いのとである。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
州太 かういふ云ひ方をしては
不味
(
まづ
)
いな。しかし、今日、
家
(
うち
)
を出る時、お前はどうしてあんなにはしやいでゐたんだ。わしも、出来るだけ平静を装つてゐた。
浅間山
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
「
真実
(
まつたく
)
でございますよ、お坊さんの癖に、こんな物まで
啄
(
つ
)
つくなんて、お上人様方のお若い時分には、ほんとに
不味
(
まづ
)
い物ばかし
召食
(
めしあが
)
つてたぢやありませんか。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
ところが、野天に寢て、
不味
(
まづ
)
い物を食ふやうになつてから、不思議に彌三郎の病氣は
癒
(
なほ
)
つて行きました。
銭形平次捕物控:023 血潮と糠
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
それにやお
前
(
まへ
)
が
白状
(
はくじよう
)
して
畢
(
しま
)
つても
困
(
こま
)
るし、
自分
(
じぶん
)
の
畑
(
はたけ
)
がそつくりして
居
(
ゐ
)
ても
不味
(
まづ
)
いからね、それも
今
(
いま
)
に
成
(
な
)
つちや
何
(
なに
)
もそんなこと
仕
(
し
)
なくつても
善
(
よ
)
かつたやうなものだが
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
差上げて置きますから、食後に五六粒宛召上つて御覽なさい。え?
然
(
さ
)
うです。今までの水藥と散劑の外にです。碎くと
不味
(
まづ
)
う御座いますから、
微温湯
(
ぬるまゆ
)
か何かで其儘お嚥みになる樣に。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
骨で
美味
(
おい
)
しいのは野禽のだけよ、それも髓をまだ誰も吸ひ取らないのでなくつちや駄目だわ。いろんなソースを混ぜあはせたのも、とても
美味
(
おい
)
しいけれど、
續隨子
(
ホルトさう
)
や青ものを入れたのは
不味
(
まづ
)
くつてよ。
狂人日記
(旧字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
織田信長が、ある有名な料理人を抱へた所が、始めて、其料理人の
拵
(
こしら
)
へたものを
食
(
く
)
つて見ると
頗
(
すこぶ
)
る
不味
(
まづ
)
かつたんで、大変
小言
(
こごと
)
を云つたさうだ。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
その時自分は京役者の坂田藤十郎が、江戸の舞台を踏む時、あちらの水は
不味
(
まづ
)
くて飲めないからといつて、
態々
(
わざ/\
)
京の水を樽詰にして海道筋を下つたといふ話をした。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
彼
(
かれ
)
は
只
(
たゞ
)
空腹
(
くうふく
)
を
凌
(
しの
)
ぐ
爲
(
ため
)
に
日毎
(
ひごと
)
に
不味
(
まづ
)
い
口
(
くち
)
を
強
(
し
)
ひて
動
(
うご
)
かしつゝあるのである。
疎惡
(
そあく
)
な
食料
(
しよくれう
)
は
少時
(
せうじ
)
からおつぎの
目
(
め
)
にも
口
(
くち
)
にも
熟
(
じゆく
)
して
居
(
ゐ
)
るので、
其處
(
そこ
)
には
何
(
なん
)
の
心
(
こゝろ
)
も
附
(
つ
)
かなかつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
たつた一つしかない樂屋の大部屋に、
不味
(
まづ
)
さうに煙草を喫んで居た座主の百太夫は、平次の姿を見ると、引つ掛けてゐた
丹前
(
たんぜん
)
を滑らせて、それでも丁寧に挨拶するのでした。
銭形平次捕物控:151 お銀お玉
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
実際英国の料理加減は
巴里
(
パリイ
)
の料理を経験して来た者に取つて著しく
不味
(
まづ
)
いのである。勿論自分達がビカデリイ附近で毎日昼と晩との食事を取つたのは
何
(
ど
)
れも
安
(
やす
)
料理屋であつた
所為
(
せゐ
)
もあらう。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
噛砕
(
かみくだ
)
くと
不味
(
まづ
)
う御座いますから、
微温湯
(
ぬるまゆ
)
か何かで
其儘
(
そのまんま
)
お
嚥
(
の
)
みになる様に。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「学生集会所の料理は
不味
(
まづ
)
いですね」と三四郎の隣りに坐つた男が話しかけた。此男は
頭
(
あたま
)
を坊主に刈つて、
金縁
(
きんぶち
)
の
眼鏡
(
めがね
)
を掛けた大人しい学生であつた。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
京都
俳優
(
やくしや
)
の随一人坂田藤十郎はよく江戸の
劇場
(
しばゐ
)
へも出たが、その都度江戸の水は
不味
(
まづ
)
くて飲めないからといつて、
態々
(
わざ/\
)
飲み馴れた京の水を幾つかの大樽に詰め込んで
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
あんまり
不味
(
まづ
)
いから、漢学の先生に、なぜあんなまづいものを例々と懸けて置くんですと尋ねた所、先生があれは海屋と云つて有名な書家のかいた者だと教へてくれた。
坊っちやん
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「はてな。」将校は小首を
傾
(
かし
)
げた。「ぢや、料理が
不味
(
まづ
)
いとでも言ふんだな。」
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
が偖出来
上
(
あが
)
つて、
壁
(
かべ
)
の
中
(
なか
)
へ
嵌
(
は
)
め込んでみると、想像したよりは
不味
(
まづ
)
かつた。梅子と共に部屋を
出
(
で
)
た
時
(
とき
)
は、此ヷルキイルは殆んど見えなかつた。
紺青
(
こんじやう
)
の波は固より見えなかつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
不味
(
まづ
)
いね。
欧羅巴
(
ヨーロツパ
)
の戦地ででもなくつちや、こんな珈琲は飲めないよ。」鼠骨氏はたつた今欧羅巴の戦場から来たやうな表情をして、
少僮
(
ボオイ
)
の顔を見た。「ところが、
生憎
(
あいにく
)
ここは日本でね。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
其音
(
そのおと
)
が
鴈
(
かり
)
の
鳴聲
(
なきごゑ
)
によく
似
(
に
)
てゐるのを
二人
(
ふたり
)
とも
面白
(
おもしろ
)
がつた。ある
時
(
とき
)
は、
平八茶屋
(
へいはちぢやや
)
迄
(
まで
)
出掛
(
でか
)
けて
行
(
い
)
つて、そこに
一日
(
いちにち
)
寐
(
ね
)
てゐた。さうして
不味
(
まづ
)
い
河魚
(
かはうを
)
の
串
(
くし
)
に
刺
(
さ
)
したのを、かみさんに
燒
(
や
)
かして
酒
(
さけ
)
を
呑
(
の
)
んだ。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
不味
(
まづ
)
い、何といふ不味い三鞭酒だらう。」
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
“不味”の意味
《名詞》
味がないこと。まずいこと。
(出典:Wiktionary)
不
常用漢字
小4
部首:⼀
4画
味
常用漢字
小3
部首:⼝
8画
“不味”で始まる語句
不味相