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躓
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つまづ
ふりがな文庫
“
躓
(
つまづ
)” の例文
人間はすべて
躓
(
つまづ
)
き、すべてが絶望の苦悩を持つてゐるものであると、伊庭は云ふのである。どの人間も、絶望は長く、喜びは短い。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
馬車あまた火山の
坑
(
あな
)
より熔け出でし石を敷きたる街を
馳
(
は
)
せ
交
(
か
)
ひて、間〻馬のその石面の
滑
(
なめらか
)
なるがために
躓
(
つまづ
)
くを見る。小なる雙輪車あり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
襖
(
からかみ
)
を開けたも知らぬ。長火鉢に
躓
(
つまづ
)
いたも知らぬ。真暗で誰のだか解らぬが、兎に角下駄らしいものを足に突懸けて、渠は戸外へ飛出した。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「娘は路地の外で殺されてゐたのを、一足おくれて歸つて來たお袋が、
躓
(
つまづ
)
いて氣が付いた、まだ月は出なかつたし、昨夜は
自棄
(
やけ
)
に暗かつた」
銭形平次捕物控:097 許婚の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
花桐は殿中から下がって来る長い
渡殿
(
わたどの
)
の歩みのあいだに、胸がみだれてくることを感じ、歩みも、せかせかと悲しく不意に
躓
(
つまづ
)
きさえしていた。
花桐
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
▼ もっと見る
八つばかりの女の子が七面鳥に追ひかけられて逃げ切れずに
躓
(
つまづ
)
いたあとから、例の七面鳥がその兒の足をつついたのである。
少年の死
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
やがて
未練
(
みれん
)
らしく立留つて見たが、男の追掛けて來る樣子はない。先程
躓
(
つまづ
)
いた松の木の梢に梟か何かの鳴く聲がしてゐる。
或夜
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
お信さんは更に続けて言ひかけたが、その時突然石段に
躓
(
つまづ
)
いて、あはや前にのめり
転
(
こ
)
けようとした。丁度坂の中途だつた。
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
こちらの方はこれで良いと
諦
(
あきら
)
めていた矢さきの折だっただけに、梶はまだ断ち切れぬ糸も感じて、ふと
躓
(
つまづ
)
くよろめきに似た思いもするのだった。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
大理石の
爐
(
ろ
)
に
躓
(
つまづ
)
いたり、壞れて落ちた
蛇腹
(
じやばら
)
の破片に引つかゝつたりし乍ら。肩掛にくるまり乍ら、まだ私は見知らぬ赤ン坊を抱いてゐるのです。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
彼女は男と女との違ひはあつても、神谷のあの、ものにこだはらない、
躓
(
つまづ
)
くことを気にしない、転んでも平気で起き上る身軽さを羨ましく思つた。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
一寸
(
ちよいと
)
躓
(
つまづ
)
いても
怪我
(
けが
)
をするのに、
方角
(
はうがく
)
の
知
(
し
)
れない
山
(
やま
)
の
中
(
なか
)
で、
掻消
(
かきけ
)
すやうに
隠
(
かく
)
れたものが
無事
(
ぶじ
)
で
居
(
ゐ
)
やう
筈
(
はづ
)
はないではないか。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
脚の弱つて居た田中は、
躓
(
つまづ
)
いて前へ倒れた。余り急に、姿勢を転じたので、騎兵は馬もろ共横に倒れた。還幸の行列は桜田門を指して粛々と進んだ。
政治の破産者・田中正造
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
で
踠
(
あが
)
けば
躓
(
つまづ
)
き、躓いては踠き、
揚句
(
あげく
)
に首も廻らぬ
破目
(
はめ
)
に押付けられて、
一夜
(
あるよ
)
頭拔
(
づぬ
)
けて大きな
血袋
(
ちぶくろ
)
を
麻繩
(
あさなわ
)
にブラ下げて、
脆
(
もろ
)
くも
冷
(
ひやツこ
)
い體となツて了ツた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
旅魚屋の傳次は本堂へ出ましたが、勝手を知らんから木魚に
躓
(
つまづ
)
き、前へのめる
機
(
はず
)
みに
鉄灯籠
(
かなどうろう
)
を突飛し、
円柱
(
まるばしら
)
で頭を打ちまして
経机
(
きょうづくえ
)
の上へ尻餅をつく。
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
私はこれまでに随分長く、又随分多くさうした若い鍛練せざる心の
躓
(
つまづ
)
いたり、倒れたり、裏切られたり、空中楼閣のやうに
土崩瓦解
(
どほうがかい
)
して行くのを見た。
エンジンの響
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
最初の一手ぐらゐで
躓
(
つまづ
)
くやうな坂田の将棋ではない、無理な手を指しても
融通無碍
(
ゆうづうむげ
)
に軽くさばくのが坂田将棋の本領だといふ自信の方が強かつたのだ。
聴雨
(新字旧仮名)
/
織田作之助
(著)
君が私と同じ
躓
(
つまづ
)
き方をするなんて思ひも寄らない。女を愛さない君が! (中略)美は自分の不測の力の影響についていちいち責任を負つてゐる暇がないんだ。
三島由紀夫:ナルシシスムの運命
(旧字旧仮名)
/
神西清
(著)
なんでも
井戸浚
(
さら
)
への時かで、庭先へ忙しく通りかゝつた父が、私の持出してゐた
鍬
(
くは
)
に
躓
(
つまづ
)
き、「あツ痛い、うぬ黒坊主め!」と拳骨を振り上げた。私は
赫
(
かつ
)
とした。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
科学は政策に光明を与え、政策の方法を正しからしめ、その行手を照し指示する。科学の援助が無ければ、政策は一歩ごとに
躓
(
つまづ
)
きながら
跚
(
よろめ
)
き歩むことしか出来ない。
純粋経済学要論:01 上巻
(新字新仮名)
/
マリー・エスプリ・レオン・ワルラス
(著)
何方
(
どつち
)
へ行つても、見覺えた道へは出られなくつて、まご/\してゐるうちに、足は疲れて眠くもなつて、木の根に
躓
(
つまづ
)
いて
打倒
(
ぶつたふ
)
れたまゝ、前後も知らず眠つてしまつた。
雨
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
お專は見てお
前
(
まへ
)
裾
(
すそ
)
に血が付て居るは如何なされしやと問はれて傳吉は
驚
(
おどろき
)
ながら
打返
(
うちかへ
)
して見れば
裾裏
(
すそうら
)
所々に血の付て居る故是は
不思議
(
ふしぎ
)
なる事
哉
(
かな
)
昨夜河原にて物に
躓
(
つまづ
)
きけるを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
アメリカである百姓の飼つてゐる
牝牛
(
めうし
)
がものに
躓
(
つまづ
)
いて、脚を一本折つたことがあつた。百姓は人間ですら義足が出来る世の中に、牝牛に義足の出来ない筈はないと考へた。
茶話:06 大正十一(一九二二)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
赤土の道では油断をすると足を
掬
(
すく
)
われて一、二回滑り
落
(
おち
)
、
巌石
(
がんせき
)
の道では
躓
(
つまづ
)
いて生爪を剥がす者などもある。その上、
虻
(
あぶ
)
の押寄せる事
甚
(
はなはだ
)
しく、手や首筋を刺されて閉口閉口。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
僕 愛の為に? 文学青年じみたお世辞は
好
(
い
)
い加減にしろ。僕は唯情事に
躓
(
つまづ
)
いただけだ。
闇中問答
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
順作は女を
前
(
さき
)
に立てて走って線路を横ぎろうとした。女が
躓
(
つまづ
)
いて前のめりに倒れた。順作ははっと思って女を抱きあげようとした、と、そこには女の姿もなければ何もなかった。
藍瓶
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
兎角練習の足りない人の思想は偶然と云ふ石に
躓
(
つまづ
)
き易い。それは
恐然
(
きようぜん
)
の法則、プロバビリチイの法則と云ふものを知らないからだ。あらゆる学科にあの法則で得た発明が沢山あるのだ。
病院横町の殺人犯
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
ただ鹿の仔が従順について来るのが可愛らしかつたので、ふりかへりふりかへり、石に
躓
(
つまづ
)
いたりしながら、ぢき近くの海の
汀
(
なぎさ
)
へ下りていつた。金ちやんと勝ちやんと豊ちやんもついて来た。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
わたくしは
躓
(
つまづ
)
いて転びました。その上へ兵卒が乗り掛かつて来ました。その兵卒の上へマカロフが飛び付きました。その時わたくしの顔へ、上の方から
温
(
ぬく
)
いものがだらだらと流れ掛かりました。
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
頭
(
あたま
)
から
落
(
お
)
ちてころ/\と
鐵砲玉
(
てつぱうだま
)
が
遠
(
とほ
)
く
轉
(
ころ
)
がつて
行
(
ゆ
)
くのを、
倒
(
たふ
)
れながら
逐
(
お
)
ひ
掛
(
か
)
けて
行
(
い
)
く
與吉
(
よきち
)
を
見
(
み
)
て
卯平
(
うへい
)
のむつゝりとした
顏
(
かほ
)
が
溶
(
と
)
けるのである。
與吉
(
よきち
)
は
躓
(
つまづ
)
いて
倒
(
たふ
)
れても
其
(
その
)
時
(
とき
)
は
決
(
けつ
)
して
泣
(
な
)
くことがない。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
遣
(
や
)
らじと
伸
(
の
)
べし
腕
(
かひな
)
は
逮
(
およ
)
ばず、
苛
(
いら
)
つて起ちし貫一は唯
一掴
(
ひとつかみ
)
と躍り
被
(
かか
)
れば、
生憎
(
あやにく
)
満枝が
死骸
(
しがい
)
に
躓
(
つまづ
)
き、一間ばかり投げられたる
其処
(
そこ
)
の敷居に
膝頭
(
ひざがしら
)
を砕けんばかり強く打れて、
踣
(
のめ
)
りしままに起きも得ず
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
煉瓦を運ばされるやうになつてからは、番頭が
喧
(
やか
)
ましくて、もう娘の分まで働いてやれなくなつたが、其代り娘が
躓
(
つまづ
)
きはせぬか、煉瓦の
重味
(
おもみ
)
に
潰
(
つぶ
)
されはせぬかと、始終
其様
(
そん
)
な事ばかり気にしてゐた。
椋のミハイロ
(新字旧仮名)
/
ボレスワフ・プルス
(著)
誰れよりも
唯
(
た
)
だ逸早く走らんとして
躓
(
つまづ
)
ける流れ星かな
註釈与謝野寛全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
躓
(
つまづ
)
いたり転んだりしてゐた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
盲
(
めし
)
ひたり、
躓
(
つまづ
)
かめ、
將來
(
ゆくすゑ
)
遠く
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
躓
(
つまづ
)
きや負ける
未刊童謡
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
躓
(
つまづ
)
き
太陽の子
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
と、
地面
(
じべた
)
に
匐
(
のたく
)
つた太い木根に
躓
(
つまづ
)
いて、其
機会
(
はずみ
)
にまだ新しい下駄の鼻緒が、フツリと
断
(
き
)
れた。チヨツと
舌鼓
(
したうち
)
して
蹲踞
(
しやが
)
んだが、
幻想
(
まぼろし
)
は
迹
(
あと
)
もなし。
赤痢
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
先
(
さき
)
にゆく菊枝どのいのう。菊枝どのいのう……はれ、聞えぬげな。(
躓
(
つまづ
)
くが如く、二足三足下手の方に歩みよりて。)
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
この事件ももう山が見えたやうですが、思はぬところに
躓
(
つまづ
)
きがあつて、錢形平次をもう一つ
唸
(
うな
)
らせてしまつたのです。
銭形平次捕物控:300 系図の刺青
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
と言掛けまするが、
最
(
も
)
う
取上
(
とりのぼ
)
せて居りますから、木の根に
躓
(
つまづ
)
き倒れる処を
此方
(
こちら
)
は
駈下
(
かけお
)
りながら一刀浴せ掛ければ、惠梅比丘尼の肩先深く切付けました。
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
しかし、この統一乃至整理が、差別を認めない境に至るまでには、幾度か差別に就いて
躓
(
つまづ
)
かなければならない。
心理の縦断と横断
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
市に舞ふ人もこれに
躓
(
つまづ
)
く習ぞといふ。母上は半ば戲のやうに、さらばその福の車に、われも倶に登るべきか、と問ひ給ひしが、俄に打ち驚きてあなやと叫び給ひき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
旧
(
もと
)
の
処
(
ところ
)
には
矢張
(
やツぱり
)
丈足
(
たけた
)
らずの
骸
(
むくろ
)
がある、
遠
(
とほ
)
くへ
避
(
さ
)
けて
草
(
くさ
)
の
中
(
なか
)
へ
駆
(
か
)
け
抜
(
ぬ
)
けたが、
今
(
いま
)
にもあとの
半分
(
はんぶん
)
が
絡
(
まと
)
ひつきさうで
耐
(
たま
)
らぬから
気臆
(
きおくれ
)
がして
足
(
あし
)
が
筋張
(
すぢば
)
ると、
石
(
いし
)
に
躓
(
つまづ
)
いて
転
(
ころ
)
んだ
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
さうだらう? 大日向教もその伝でゆくつもりだ。何事も賑やかな明朗な宗教が、
躓
(
つまづ
)
いた人間に魅力があるもんだ。いまに大日向教の本殿で結婚式が始まるやうになる。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
私が植込みの根元にあつた如露に
躓
(
つまづ
)
いた時にも、これは音響としては人間の耳にとどく程の物ではなかつたのですが、それでも、夜の事でもあつたので私は驚いて夫人の方を
帆の世界
(旧字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
「幸運に見棄てられた者は、友にも常に忘らる。」と
閂
(
くわんぬき
)
を
外
(
はづ
)
して外へ出ながら、私は呟いた。私は障碍物に
躓
(
つまづ
)
いた。私は、まだ
眩暈
(
めまひ
)
がし、眼はかすんで、身體も力が拔けてゐた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
そして
幾箇
(
いくつ
)
の橋を渡ツて幾度道を回ツたか知らぬが、ふいに、石か何かに
躓
(
つまづ
)
いて、よろ/\として、
危
(
あぶな
)
く
轉
(
ころ
)
びさうになるのを、
辛而
(
やつと
)
踏止
(
ふみとま
)
ツたが、それですツかり
眼
(
め
)
が覺めて了ツた。
水郷
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
頼み夫より戻りの
途中
(
とちう
)
大井村の河原にて宵闇の
暗紛
(
くらまぎ
)
れに
躓
(
つまづ
)
きしにて
生醉
(
なまゑひ
)
の寢て居し事と存じ其儘罷歸り今朝見ればすそは血だらけ故
始
(
はじめ
)
て驚きまして御座ると云に理左衞門
其
(
そ
)
は
胡論
(
うろん
)
なる申條言解
暗
(
くら
)
いぞ茲を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「
老人
(
としより
)
は
躓
(
つまづ
)
くと
危
(
あぶな
)
うてな。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
躓
漢検1級
部首:⾜
22画
“躓”を含む語句
蹴躓
蹉躓
御躓
磋躓
蹶躓
躓石
躓跌