かゝと)” の例文
渠は紐で飾つた袍を着て、広い帯に剣を懸け、羽附きの高く尖つた帽を戴き、赤いたびかゝとの高い、花飾りの附いた靴を穿いて居ます。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
逃げ出した足跡なら、爪先つまさきに力が入つて深くめり込んで居る筈なのに、あの足跡は爪先が輕くてかゝとの方が深くめり込んで居ますよ。
山嵐のかゝとをふんであとからすぐ現場へ馳けつけた。喧嘩は今が真最中である。師範の方は五六十人もあらうか、中学は慥かに三割方多い。
坊っちやん (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
教場で背後から何ほど鉛筆で頸筋くびすぢを突つつかれようと、靴先でかゝとられようと、眉毛一本動かさずまたゝき一つしなかつた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
寒いって胼胝あかぎれだらけな足を上げて、たって居てかゝとをあぶるので、旦那はすっかり怒って仕舞って早々そう/\いとまになりました、実に女だけは江戸に限ります
うかとおもへば、おびからしたは、げつそりとふううすく、すそしまつたが、ふうわりとしてちからはいらぬ。かゝといて、う、うへかつげられてさうな様子やうす
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼等はよく私に「ラベル、ラベル」とくりかへしいふので、何のことだらうと最初のほどはトント合点がゆかなんだ。すると靴のかゝとのゴムを指すのであつた。
老残 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
彼の足跡あしあとを踏み傳ひて直く進みしかれの家族やからは全くその方向むきを變へ、指をかゝとの方に投ぐ 一一五—一一七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ロミオ (從者にむかひ)おれには炬火たいまつれ。かる陽氣やうき手合てあひは、舞踏靴をどりぐつかゝと澤山たんと無感覺むかんかく燈心草とうしんぐさこそぐったがよい。おれは、祖父ぢゝい訓言通をしへどほり、蝋燭持らうそくもちをして高見たかみ見物けんぶつ
勘次かんじ藁俵わらだはらへて、さうしてはししばつたちひさなわらたばまるひらいて、それをあしそこんでかゝと中心ちうしんあしとを筆規ぶんまはしのやうにしてぐる/\とまはりながらまるたはらぼつちをつくつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「何が美味うまいんだ、まるくつかゝとでも噛むやうなもんだ、ひどい目に会はせやがる。」
女 あたしに持たせるの? ぢや、かゝとが口ん中へはいつたつてしらないわよ。
五本使ふのよ。わたしねいま別に信一の靴下も編んでゐるんですけれどね、裏とかゝとには木綿をどし/\刺し込んでやるの。まあ山賊の靴下ね。だつて一週間に二三足といふ勢で、生優しく継げない穴を
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
それからの靴の請負うけおひの時はドウだ、糊付けのかゝとが雨に離れて、水兵は繩梯はしごから落ちて逆巻さかまなみ行衛ゆくゑ知れずになる、艦隊の方からははげしく苦情を持ち込む、本来ならば、彼時あのとき山木にしろ、君にしろ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
顏をかゝとにちよと挾む
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
と云われ真青まっさおになってぶる/\ふるえて傳助地びたへかゝとが着きませんで、ひょこ/\歩きながら案内をするうちに、団子屋のきんの宅の路地まで参りました。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ウ、フ、お前の鼻を見ると、指位突つ込みたくなるだらうよ。かゝとでなくて仕合せだ、まア、勘辧してやれ」
をんなはあとびつしやりをする、脊筋せすぢよぢらす。三俵法師さんだらぼふしは、もすそにまつはる、かゝとめる、刎上はねあがる、身震みぶるひする。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やがて又動く気になつたので腰をげて、立ちながら、靴のかゝとを向け直すと、岡ののぼぎはの、うすく色づいた紅葉もみぢあひだに、先刻さつきの女の影が見えた。ならんで岡のすそを通る。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「殿、覚えておはせ、御身おんみが命を取らむまで、わらはは死なじ」と謂はせも果てず、はたとかうべ討落うちおとせば、むくろは中心を失ひて、真逆様まつさかさまになりけるにぞ、かゝとを天井に着けたりしが
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
八五郎はそのかゝとを踏みさうにして立ち止りました。彌造が崩れて鼻の下が長くなります。
三四郎は其時の心持をいまだに覚えてゐる。すぐ帰らうとして、かゝとめぐらしかけたが、足がすくんで殆んど動けなかつた。土堤どてを這ひあがつて、座敷ざしきもどつたら、動悸が打ち出した。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
中肉中丈ちゅうにくちゅうぜいで、おしりの小さい、かゝとの締った、横骨の引込ひっこんだじょうものでございます。
かゝとくろいのを眞向まむきにせて、一ぽんストンと投出なげだした、……あたかよしほか人形にんぎやうなど一所いつしよならんだ、なかまじつて、其處そこに、木彫きぼりにうまごやしを萌黄もえぎいた、舶來はくらいもののくつ片隻かたつぽ
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
浪人者のかゝとを踏むやうに續いて入らうとすると、今度もまた見付かつて了ひました。
し遊ばせよ、あなたはあれ怜悧りこう思召おぼしめして目をけていらツしやいますが、今朝けさ合羽屋かつぱや乳母おんばさんが店でおばうさんを遊ばしてそばで、弥吉やきちが自分のかゝとの皮をいてべさせたりして
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
あの男の恰好ですよ。しんの出た帶を猫じやらしに結んで、淺黄あさぎの手拭の申分なく汚れたのがブラ下り、着物のすそが十二單衣になつて、かゝとに去年からのでつかいあかぎれが四つ五つ口を
おう」は普通ふつう乞食こつじきひとしく、かげもなき貧民ひんみんなり。頭髮とうはつ婦人をんなのごとくながびたるをむすばず、かたよりれてかゝといたる。跣足せんそくにて行歩かうほはなはけんなり。容顏ようがん隱險いんけんび、みゝさとく、するどし。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かゝとでしめながら歩くという剣呑けんのんな雪駄です。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
背後うしろむきにかゝとさぐつて、草履ざうり穿いて、だんりて、てく/\く。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
八五郎はかゝとに返事をさせるやうに、もう飛出してをります。