トップ
>
見透
>
みすか
ふりがな文庫
“
見透
(
みすか
)” の例文
四人は店口に肩をならべ合って、暗い外を
見透
(
みすか
)
していた。向うの
塩煎餅屋
(
しおせんべいや
)
の軒明りが、暗い広い街の片側に淋しい光を投げていた。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「まあ、」と飛んだ顔をして、斜めに取って
見透
(
みすか
)
した風情は、この
夫人
(
ひと
)
の
艶
(
えん
)
なるだけ、
中指
(
なかざし
)
の
鼈甲
(
べっこう
)
の
斑
(
ふ
)
を、日影に透かした趣だったが
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
有体
(
ありてい
)
に
見透
(
みすか
)
した叔父の腹の中を、お延に云わせると、彼はけっして彼女に大切な夫としての津田を好いていなかったのである。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
生活に對する
今日
(
こんにち
)
までの經驗が何事によらず
直
(
すぐ
)
と物の眞底を
見透
(
みすか
)
して興味を
殺
(
そ
)
いでしまふし、其れと同時に、路傍に聞く新しい
流行唄
(
はやりうた
)
なども
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
まさか六郎兵衛が知っていようとは予想もしなかったので、その名を云われたときは、心のなかを
見透
(
みすか
)
されたように思った。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
男湯と女湯との間は
硝子戸
(
がらすど
)
で
見透
(
みすか
)
すことが
能
(
でき
)
た。これを禁止されたのはやはり十八、九年の頃であろう。今も昔も変らないのは番台の拍子木の音。
思い出草
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
見て赤川大膳は心中に驚き
見透
(
みすか
)
されては一大事と氣を
勵
(
はげ
)
まし
何
(
いか
)
に
山内
(
やまのうち
)
狂氣
(
きやうき
)
せしか上に
對
(
たい
)
し奉つり無禮の
過言
(
くわごん
)
いで
切捨
(
きりすて
)
んと立よりて刀の
柄
(
つか
)
に
手
(
て
)
を掛るを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「何だ何だ?」と、小平太も心のうちを
見透
(
みすか
)
されまいと思うから、わざと威勢よく二人のそばへ顔を寄せて行った。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
由無
(
よしな
)
き者の目には触れけるよ、と貫一はいと苦く
心跼
(
こころくぐま
)
りつつ、物言ふも憂き唇を閉ぢて、唯月に打向へるを、女は
此方
(
こなた
)
より
熟々
(
つくづく
)
と
見透
(
みすか
)
して目も放たず。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
どうせ
見透
(
みすか
)
され
尽
(
つく
)
すのですから、なまじい夫に対する心のつくりかざりをせず、正直に
無邪気
(
むじゃき
)
にともに
暮
(
くら
)
すべし。
良人教育十四種
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
其癖
(
そのくせ
)
私は祖母を小馬鹿にしていた。何となく奥底が
見透
(
みすか
)
されるから、祖母が何と言ったって、
些
(
ちッ
)
とも
可怕
(
こわ
)
くない。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
無事ではあったけれども、こんなに
見透
(
みすか
)
されてしまった上に、これが肩書附きの人間であることがわかってみれば、決して気味のよい道づれではありません。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
が、この
出來事
(
できごと
)
は
私
(
わたし
)
の
眠氣
(
ねむけ
)
を
瞬間
(
しゆんかん
)
に
覺
(
さ
)
ましてしまつた。
闇
(
やみ
)
の
中
(
なか
)
を
見透
(
みすか
)
すと、
人家
(
じんか
)
の
燈灯
(
ともしび
)
はもう
見
(
み
)
えなくなつてゐた。F
町
(
まち
)
は
夢中
(
むちう
)
で
通
(
とほ
)
り
過
(
す
)
ぎてしまつたのだつた。
一兵卒と銃
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
大佐は孫軍曹の心の中を
見透
(
みすか
)
すように注目した。何処を見ているか分らないような気味の悪い眼である。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
何となく、人を
見透
(
みすか
)
しているような眼で。——藤吉郎には、
小癪
(
こしゃく
)
に思えて、余り交わりをしなかった。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
女優のしたあらゆる事が、殆どすべて見通しに女神によつて
見透
(
みすか
)
されてゐる。先生の神に對する憧憬と、近代的の女性に對する輕侮はかういふ處にも覗ひ知る事が出來る。
貝殻追放:017 泉鏡花先生と里見弴さん
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
毎日二時過ぎると小さなお
釜
(
かま
)
でお湯を
湧
(
わか
)
して、
盥
(
たらい
)
へ行水のお湯をとってくれた。私は裏からも表からも
見透
(
みすか
)
しの場処でのんきに盥の中へ座る。雨蛙にもお湯をぶっかける。
旧聞日本橋:12 チンコッきり
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
先刻
(
さっき
)
から覚めてはいるけれど、尚お眼を
瞑
(
ねむ
)
ったままで
臥
(
ね
)
ているのは、閉じた
眶越
(
まぶたごし
)
にも
日光
(
ひのめ
)
が
見透
(
みすか
)
されて、
開
(
あ
)
けば必ず眼を射られるを
厭
(
いと
)
うからであるが、しかし考えてみれば
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
大藏は
四辺
(
あたり
)
を見て油断を
見透
(
みすか
)
し、片足
挙
(
あ
)
げてポーンと雪洞を
蹴上
(
けあ
)
げましたから転がって、
灯火
(
あかり
)
の消えるのを合図にお菊の胸倉を
捉
(
と
)
って懐に
匿
(
かく
)
し持ったる
合口
(
あいくち
)
を抜く手も見せず
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
すると、ほのかな闇を
見透
(
みすか
)
して居る彼の目に、柿の樹の幹のかげから黒い小さな人影が、不思議にも足音なしに現はれて来た! その人影が小さかつたことが彼をいくらか安心させた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
私は心を
見透
(
みすか
)
されたかと驚いた。戯談や洒落の解らぬ私は、いつも一概に
他人
(
ひと
)
の嗤ひといふものに戦きを強ひられる傾向であつたが、就中、自身の上に振りかゝつた嗤ひに身震ひを覚えた。
武者窓日記
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
外には女将が乗りつけて来た男爵お待受けの自動車が、雨上りの道へのつそり
匍匐
(
はひつくば
)
つてゐる。二人の男はお茶代を
弾
(
はじ
)
いてゐる女将の腹を
見透
(
みすか
)
したやうに、四五銭がとこ顔を
歪
(
ゆが
)
めて、一寸笑顔を見せた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
朝倉先生は、次郎の気持ちを
見透
(
みすか
)
すように、
微笑
(
びしょう
)
しながら言った。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
思わず、
忍音
(
しのびね
)
を立てた——
見透
(
みすか
)
す六尺ばかりの枝に、
倒
(
さかさま
)
に裾を巻いて、毛を
蓬
(
おどろ
)
に落ちかかったのは、虚空に消えた幽霊である。
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
物干台から家の中に
這入
(
はい
)
るべき窓の障子が
開
(
あ
)
いている折には、自分は自由に二階の座敷では人が何をしているかを
見透
(
みすか
)
す。
銀座界隈
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
人のところの世帯ぶりに、すぐ目をつけるお銀は、家へ帰ってからも山内の暮し方を、
見透
(
みすか
)
して来たように話した。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ろくろく口も
利
(
き
)
かないで、下ばかり向いている彼女の態度の
中
(
うち
)
には、ほとんど苦痛に近い或物が
見透
(
みすか
)
された。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
小平太が進んでこの危い役割を
引請
(
ひきう
)
けたのは、一つは心のうちを
見透
(
みすか
)
されまいとする
虚勢
(
きょせい
)
からでもあったが、一つにはまた、ここで一番自分の働きぶりを見せて
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
と、
左手
(
ひだりて
)
の
方
(
はう
)
に
人家
(
じんか
)
の
燈灯
(
ともしび
)
がぼんやり
光
(
ひか
)
つてゐた——F
町
(
まち
)
かな‥‥と
思
(
おも
)
ひながら
闇
(
やみ
)
の
中
(
なか
)
を
見透
(
みすか
)
すと、
街道
(
かいだう
)
に
沿
(
そ
)
うて
流
(
なが
)
れてゐる
狹
(
せま
)
い
小川
(
をがは
)
の
水面
(
みづも
)
がいぶし
銀
(
ぎん
)
のやうに
光
(
ひか
)
つてゐた。
一兵卒と銃
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
と息が止るようで、
後
(
あと
)
へ
退
(
さが
)
って
向
(
むこう
)
を
見透
(
みすか
)
すと、向の奴も怖かったと見えて
此方
(
こっち
)
を
覗
(
のぞ
)
く、
互
(
たがい
)
に見合いましたが、
何様
(
なにさま
)
真の闇で、互に
睨
(
にら
)
みあった処が
何方
(
どっち
)
も顔を見る事が出来ません。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
見透
(
みすか
)
さるゝ樣な物なり夫共事成就の上此伊賀亮は五萬石の
大名
(
だいみやう
)
に御取立になり貴殿は三千石の
御旗本位
(
おはたもとぐらゐ
)
是
(
これ
)
が御承知ならば伊賀亮
何樣
(
いかやう
)
にも計ひ對面すべしと云に
強慾
(
がうよく
)
無道
(
ぶだう
)
の大膳是を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
にこやかな
唇元
(
くちもと
)
と、心の奥を
見透
(
みすか
)
すような眼とを持って、武蔵は立った。小次郎もまた、笑みを持ってそれに応えようとしたが、意思と反対に、顔の筋は妙に硬ばってしまって、笑えなかった。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
右の縮緬の胴巻を
面
(
かお
)
へこすりつけるようにして、面と手をわななかせたり、また、急に思い出したように、忙しく前後左右、原、
藪
(
やぶ
)
、木立を
見透
(
みすか
)
したり、どうしても落着かないものになっている。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼の永才を見る眼は、心の底まで
見透
(
みすか
)
しているように静かだった。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
物干台から
家
(
うち
)
の中に
這入
(
はい
)
るべき窓の
障子
(
しょうじ
)
が
開
(
あ
)
いている折には、自分は自由に二階の座敷では人が何をしているかを
見透
(
みすか
)
す。
銀座
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
わけても、旦那に顔を見られるたびに、あの眼が、何だか腹の中まで
見透
(
みすか
)
すようで、おどおどしずにゃいられない。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
大きい木戸から作り庭の
燈籠
(
とうろう
)
の灯影や、橋がかりになった
離室
(
はなれ
)
の
見透
(
みすか
)
されるような家は二軒とはなかった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
種々に
糺
(
たゞ
)
されける所さしも世に
轟
(
とゞろ
)
く
明奉行
(
めいぶぎやう
)
の吟味故
其言葉
(
そのことば
)
肺肝
(
はいかん
)
を
見透
(
みすか
)
す如くにて
流石
(
さすが
)
の平左衞門も申掠る事能はずと雖も
奸智
(
かんち
)
に
長
(
たけ
)
たる
曲者
(
くせもの
)
ゆゑ
忽
(
たち
)
まち答への趣意を變じて其身の
罪
(
つみ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
羞恥
(
はにか
)
ましくて、それと寧子の両親に会うと、改まって、用事でもないと、こちらの肚を
見透
(
みすか
)
されそうなので、ただ、彼女の家の門を、行きずりの人の如く装って、行ったり来たりしてみるだけで
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蒸暑い夏の
夜
(
よ
)
には、
疎
(
まばら
)
な窓の
簾
(
すだれ
)
を越してこういう人たちの家庭の秘密をすっかり
一目
(
ひとめ
)
に
見透
(
みすか
)
してしまう事がありました。今でも多分変りはあるまい。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そこに男の女を追いかけている姿がかすかに
見透
(
みすか
)
された。それが浅井とお今とであるらしかった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その日清戦争のことを
見透
(
みすか
)
して、何か自分が山の
祠
(
ほこら
)
の扉を開けて、神様のお馬の
轡
(
くつわ
)
を取って、
跣足
(
はだし
)
で宙を
駈出
(
かけだ
)
して、旅順口にわたりゃあお手伝でもして来たように申しますが
政談十二社
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
足許
(
あしもと
)
を
見透
(
みすか
)
している。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
紬
(
つむぎ
)
だか、何だか、地紋のある焦茶の被布を着て、その
胡麻塩
(
ごましお
)
です。眉毛のもじゃもじゃも是非に及ばぬとして、鼻の下に
薄髭
(
うすひげ
)
が生えて、四五本スクと
刎
(
は
)
ねたのが、
見透
(
みすか
)
される。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼の目はさういふ点で人間の滑稽味を、ずつと奥の奥まで
見透
(
みすか
)
してしもうので、その口にかゝつては、どんな
生真面目
(
きまじめ
)
な男でもカリケチユアライズされないではゐないのである。
亡鏡花君を語る
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
お千代は昨夜も
良人
(
おっと
)
の留守を窺って、またしても小日向水道町の家へ出掛けたので、婆さんが勧誘する事の意味に心付くと共に、昨夜のことまで
見透
(
みすか
)
されているような心持がして
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
これは、と思うと、縁の突当り正面の大姿見に、渠の全身、
飛白
(
かすり
)
の紺も
鮮麗
(
あざやか
)
に、部屋へ入っている夫人が、どこから
見透
(
みすか
)
したろうと驚いたその目の色まで、
歴然
(
ありあり
)
と映っている。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
水浅黄色の
暖簾
(
のれん
)
のかかった家の入口からは、
周
(
まわ
)
りに色硝子の障子の
嵌
(
はま
)
った中庭や、つるつるした古い
光沢
(
つや
)
のある廊下段階子などが
見透
(
みすか
)
された。芳太郎は時々そこらの門口に立ち停った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
お夏は人いきれに悩んだごとくうっかりして
彳
(
たたず
)
んだが、我知らずうるんだ目の
眦
(
まなじり
)
の切れたので
左手
(
ゆんで
)
を見ると、
見透
(
みすか
)
さるる庭の模様、百合の花にも、松の木の振にも、何となく見覚えがある
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
広々した
廓内
(
くるわうち
)
はシンとしていた。じめじめした
汐風
(
しおかぜ
)
に、尺八の
音
(
ね
)
の
顫
(
ふる
)
えが夢のように通って来て、両側の柳や桜の下の暗い蔭から、
行燈
(
あんどん
)
の出た低い軒のなかに人の動いているさまが
見透
(
みすか
)
された。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
見
常用漢字
小1
部首:⾒
7画
透
常用漢字
中学
部首:⾡
10画
“見”で始まる語句
見
見惚
見物
見出
見下
見上
見送
見做
見当
見廻