亡鏡花君を語るなききょうかくんをかたる
明治二十四、五年頃ではなかつたかと思ふが、私が桐生悠々君と共に上京して、紅葉山人の横寺町の家を訪れた時には、鏡花君は既に其の二畳の玄関にゐた。私達と同郷で、特に私とは小学校が一つなのだが、クラスが違つたせいか、其頃には互ひに相識る機会もなく …