“縋:すが” の例文
“縋:すが”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花90
野村胡堂52
吉川英治38
夢野久作28
海野十三22
“縋:すが”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 演劇 > 大衆演芸25.8%
文学 > 日本文学 > 小説 物語13.4%
文学 > 日本文学 > 戯曲10.8%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
貫一の手にすがりて、たちまちその肩におもて推当おしあつると見れば、彼も泣音なくねもらすなりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
路地の角まで見送って、ややあって引返ひっかえした小芳が、ばたばたと駈込んで、半狂乱に、ひしと、お蔦にすがりついて、
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
糸子は帆村の手をふりきって、冷い父親の下半身にしっかりすがりつき、そしてまた激しく嗚咽おえつをはじめたのであった。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
圭一郎は溢れるやうな醉ひ心地でその版畫を恍惚と眺めて呼吸をはずませすがるやうにして獲がたい慰めを願ひ求めた。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
ドアのノッブにすがったままガタガタとふるえ出していることが、そのしまのズボンを伝わる膝のわななきでわかった。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
此方こなたの蚊帳へ――廊下に事はあるものを、夫を力にそこへは出られぬ――腰を細く、乗るばかり、胸にすがった手が白く
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれども私は、わらひとすじにすがる思いで、これまでの愚かな苦労に執着しているということも告白しなければならない。
困惑の弁 (新字新仮名) / 太宰治(著)
垂乳根たらちねの母の垂乳たりちに、おしすがり泣きし子ゆゑに、いまもなほ我をわらべとおぼすらむ、ああ我が母は。
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
偃松の枝にすがって下を覗き込むと、赭黒い岩の膚が強烈な日光を浴びて、火にあぶられた肉塊のように陽炎が燃えている。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
が、人一倍感じの鋭い彼女は、アイスクリイムの匙を動かしながら、僅にもう一つ残つてゐる話題にすがる事を忘れなかつた。
舞踏会 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
お君は路地の口まで送って来て、姐さんの容体ようだいがどうもよくないから、あしたもきっと来てくれとすがるように言った。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
もしそのまわりに大勢の人の眼がなかったら、彼は大きい象の背中に飛びあがって、女の白い腕にすがり付いたかもしれなかった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
だからそんなものに、すがったって頼もしくはないし、そんなものに黙殺せられたって、悪く言われたって阻喪するには及ばない。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
わたくし、さっき、あなたの胸へ、一生懸命すがり付きましたわね。その時よっく計りましたのよ。ええあなたのお体をね」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その人こそ二人が、いやチーア卿もまた、はるばるこの地へやって来て、何とか取りすがろうという目的の大人物だった。
バーミンガムの駅で、あの女にすがられたときには、妻が二人出来たかと思って、すくなからずおどろいたのだった。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
私は兄の腰にシッカリすがりついていましたが、こわいもの見たさで、眼だけはその人間から一こくも離しませんでした。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それに追いすがるようにまた別の黒影――それこそ旗本のうちに剣をとらせては及ぶものなしと云われたる花婿権四郎だった。
くろがね天狗 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今は疑うべき心もせて、御坊様、と呼びつつ、紫玉が暗中をすかして、声するかたに、すがるように寄ると思うと、
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
高峰たかねへかかる雲を見ては、つたをたよりにすがりたし、うみを渡る霧を見ては、落葉に乗っても、追いつきたい。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だから、梯子はしご段から墜落して腰でも折ったやつが杖にすがって町を歩いていたりすると、あれあヴェルダンの勇士だろう。
すっかり周囲まわりを取り巻かれ二人の美しい若い男女がすがり合ったまま死んでいるという、そういう事実を聞かされた時には
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「はゝ、気まゝにするがい、――らば入交いれかわつて、……武士さむらい武士さむらい、愚僧にすがれ。」
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
市郎は自分の胴に巻いた毛綱けづないて、かたえの岩角に結び付けると、男はこれすがって登り初めた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「……でも! 安太郎さん、あなたのお力で、すがってください。……ね、安太郎さん、お珠が一生のおねがいでございます」
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は言われるままに、土のついた日和下駄ひよりげたを片手に下げながら、グラグラする猿階子をすがるようにして登った。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
かたむいた月明りにすかして見ると、三十五六の實直さうな男が、格子にすがり付いて泣かぬばかりに訴へて居るのです。
久六は愚直らしく、額を撫でたり、兩手をんだり、平次の聰明さにすがつて、女主人を何んとか助けてやりたい樣子でした。
――先頭の者の槍の柄に、あとの者がすがり、その腰に、その槍の柄にまたつかまってようやく三町余りのけんを踏み越えた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ドレゴ記者は、エミリーを毎日のように慰問に来るが、来るたびにエミリーにすがられてほとほと閉口の形だった。
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
遠目とおめの利く半七は〓子にすがってしばらく見おろしているうちに、なにを見付けたか急に与七を見かえって訊いた。
半七捕物帳:31 張子の虎 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「お、お、千里ちさと。ええも、お前は。」と姉上ののたまふに、すがりつかまくみかへりたる、わが顔を見たまひしが、
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
笹村の手にすがって、廊下の方へ出たお銀は、「あなた私もう駄目よ。」と、泣き声を出してじきにそこへ倒れてしまった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
葬式さうしき姻戚みより近所きんじよとでいとなんだが、卯平うへいやつつゑすがつてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
とおすがると、どうしたのか、我を忘れたように、わたしは、あの、低い欄干らんかんへ、腰をかけてしまったんです。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大水の時蛇多く屋根に集まり、わずかに取りすがりいる婦女や児輩が驚き怖れて手を放ち溺死する事しばしばあったと聞く。
尊者聞いてすなわちち、杖にすがって彼所に往きその履工を訪うと、履工かかる聖人の光臨に逢うて誠に痛み入った。
お蔦 いいますよ。(きれぎれに且つ涙)別れる切れると云う前に、夫婦で、も一度顔が見たい。(胸にすがって、顔を見合わす。)
湯島の境内 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
吹きつけてむ風で、さっあかつまからむように、私にすがったのが、結綿ゆいわたの、その娘です。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
腰をなよなよと汀に低く居て――あたかも腹を空に突張つッぱってにょいと上げた、藻を押分けた――亀の手に、すがれよ、引かむ
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
目をほかの岩片いはくづにとめ、これよりかの岩にすがるべし、されどまづその汝を支へうべきや否やをためしみよといふ ―三〇
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
父が、おどろいて引き止めようとする前に、狂気のように室内に飛び込んだ瑠璃子は、早くも兄の左手ゆんですがっていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「あのひところしてください。」――つまはさうさけびながら、盜人ぬすびとうですがつてゐる。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
私は後支索にしっかりとすがりついていなければならなかったが、何もかも私や眼の前で眩暈めまいするほどぐるぐる〓っていた。
その執着の一念が悪相の限りを凝らして彼の剣に凝っており、すがり得るあらゆる物に縋りついて血路をひらこうとしているだけだ。
青春論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
小平太はすぐに身支度をして、例の状箱を受取って立ち上った。何と思ったか、勘平も後から追いすがるように送ってでて、
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
「わつ、」といて、雪枝ゆきえ横様よこざますがりついた、むね突伏つゝふせて、たゞおのゝく……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
松の根に這いすがって見ましたがの、潰れた屋のむねの瓦の上へ、いっちさきに、何処の犬やら、白い犬が乗りましたぞい。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あの、……(わたしゃ蔭でもいといはせぬと、すがるおとせ)……何ですか、もんくでも私の口からだとあつかましい。」
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この正月、五条大橋で彼が見つけた時も、武蔵は、若い娘にすがられて、往来中で泣かれていた。今見れば、またこのていだし、
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そんないさかいはもうお互いに捨てたんだ。俺は、あの親友にすがって、これから江戸へ行って真面目に身を立てるつもりだ」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後ろからすがり付くお小夜を蹴返けかへして、金色の處女を小脇に痛む足を引摺つて外へ飛出す平次、――それと同時に、
たまりかねた繁代、恥も外聞も忘れて飛出しました。ひしすがり付いた兄の手、危うく口火から、火縄を遠ざけるのが精一杯、
江戸の火術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
所が泣き伏した女をあとに、藪の外へ逃げようとすると、女は突然わたしの腕へ、気違いのようにすがりつきました。
藪の中 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼の遁走の中途、偶然この寺の前に出た時、彼の惑乱した懺悔の心は、ふと宗教的な光明にすがってみたいという気になったのである。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
すると時江には、もうこのうえ手段と云って、ただ子供のようにあねの膝に取りすがり、哀訴を繰り返すよりほかにないのだった。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
生れ附き飛び離れた食辛棒くいしんぼうなのだろうか、それとも意趣があって懸命にこの本能にすがり通して行こうとしているのか。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「この大雪には城兵といえども、門をひらいて追っては来まい。追いすがる敵のないを知って殿を望むは卑怯であろうぞ」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
胸の奥に軽く生暖かい疼きを感じながら、彼は繊細なもののかげや、甘美な聯想れんそうにとりすがるように、歩き廻っていた。
秋日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
一所懸命にすがり付いていた腕を引き抜かれて、ハズミをくらった私は、固い人造石の床の上にドタリと尻餅しりもちを突いた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
手に触れた硯箱すずりばこを追いすがって来る小女めがけてタタキ付けると、書類を蹴散らしながら机の上を一足飛びに玄関へ出た。
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と膝の下にある懐剣を抜くより早く、咽喉のどへガバリッと突き立てましたから、孝助はびっくりし、あわてゝすがり付き、
わしやぶの下でまちつけて、御新造様ごしんぞさましっかりなさりまし、と釣台にすがったれば、アイと
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とそこに一人つくねんと、添竹そえだけに、その枯菊かれぎくすがった、霜のおきなは、旅のあわれを、月空に知った姿で、
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こう言って女の子が、杖とも柱とも竜之助一人にすがりつく時に、一方盲法師の弁信は、いよいよ群集の中へ深入りしてしまいました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「どこも怪我はしませんか。」と人目も構わず、紅絹を持った男の手にすがらぬばかりに、ひたと寄って顔をのぞく。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
荊棘いばらの中をくぐり潜った様子であるが、手を負うた少年のかいなすがって、懐紙ふところがみきずを押えた
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「さあ! 彼方あっちへいらっしゃい。お客様が皆、探しているのよ。」二三人彼のモーニングコートの腕にすがった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
アンガウル島へ燐鉱掘りに狩出されて行く良人を浜に見送る島民の女は、舟のともづなすがってよよと泣き崩れる。
南島譚:03 雞 (新字新仮名) / 中島敦(著)
その自殺も失敗に終ってしまうと、急にまた誰かに取りすがって一時の痛みや苦しみからのがれて息がつきたかった。
勝ずば (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
半次郎 (障子を開く、おむら、おぬいがすがっている)お袋も、妹も、諦めて放してくれ。やい来やがったのはだれだ。
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
と、すがるのを、その兵が、ぽかッとなぐりつけて、肩で風を切って行った。巡視中の藤吉郎が、ふと見つけたので、
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼等が御題目を唱えていたのは、所謂苦しい時の神頼みで、御祖師様の御袖にすがって娘を取戻して貰おうという訳だったのでしょう。
黒手組 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ッ」抱きおこした少女を前からのぞいた男が、顔色をかえて、背後の人の胸倉むなぐらすがりついた。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「御親切は有難う存じますが、見ず知らずのあなた様におすがり申しては何が何でもあまりぞんざいでございますから」
ビリング医師が一瞥いちべつしてほどこすべき策のないことをブラドンに告げると、彼は医師に取りすがって、何度も繰り返した。
浴槽の花嫁 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
峰から谷底へかけてどっと声がする。そこから夢中で駈け戻って、蚊帳かやに寝たわたくしすがりついて、
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
必死にとりすがられて、どうとその場に倒れると、もうホスゲンが肺一ぱいに拡がったのか、立ち上る力もないようだ。
空襲下の日本 (新字新仮名) / 海野十三(著)
すがりつくように、伸上って、お道さんが鍵を合せ合せするのが、あせるから、ツルツルと二三度すべりました。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
店もまだ開けないうちでございますが、目の見えないおふみまでも来て子供も死骸に取りすがって泣き出しまする。
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「あなた、どうなされました? 気でも狂ったのか、そんなものを手に持って!」と、やにわに男の腕にすがりついた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
前倒まへたふしにげて、ひし美女たをやめすがると、りもはらはず取添とりそへて、
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すると福富は、真面目な顔をして、貴方だつて何時いつか、屹度神様にすがらなければならない時が来ますと言つた。
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
夜明けんとする一刻前の文様あやめかぬ夜の山を、肩にすがりつ縋られつ、二人の男女は辿たどって行く。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すると、少年は、女の子のような、小さい美しい手をおずおずとあたしの腕にからませて、すがりつくような眼つきで見あげながら、
キャラコさん:08 月光曲 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
近常さんは幾度も幾度も課長どのへ逢いに行き、すがってもみたんだけれども、横へねた頬髯が、ぐったりと下って弱っているの。
庭の松千代は縁先にある人の袴の裾へ、背伸びして取りすがった。袴のすそで自分の顔を包んだりしてたわむれた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三十郎は立ち上がつて、平次の袖にすがり付かうとしましたが、興奮して見當が外れたものか、空を泳いで、ペタリと尻餅をつくのです。
銭形平次捕物控:315 毒矢 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
彼の仕事着をつかんで、彼の母は、つて一度も、子に見せた事のない程な、悲しい声をふるわせてすがった。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
怖いまぎれにお累は新吉にすがり付く、その手を取って新枕にいまくら、悪縁とは云いながら、たった一晩でお累が身重になります。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お秀はようやく安心したらしかった。その代り後は何にも云わなかった。お延はまだすがりついた手を放さなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
与一がオロオロ声になった。両眼が涙で一パイになった。ガラリと金剛兵衛を投げ出して昌秋の右腕に取りすがった。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
魂消たまぎるように叫びつつ身を起した。素跣足すはだしのまま寝台から飛び降りて、すそもあらわに私にすがり付こうとした。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いわんやその命を捧げた乾児こぶんどもが、先生とか、親分とかいって蝟集いしゅうして、たよりすがって来るに於てをやである。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ドーやら熱心ねっしん神様かみさまにおすがりする気持きもちになりかけたのは、ひとえにこの暗闇くらやみ内部なか
みると、置去りを食った海賊たちは、端艇のうえで、手を挙げ、足を踏み鳴らして去り往く本船に追いすがってくる。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
「過去」は運命之を抱きて幽暗なる無明に投じ、「現在」は暫らく紅顔の少年となりて、希望のたもとすがる。
国民と思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
と、その戸口の樫の扉がさっ戸外そとから開けられて、ひしとばかりに法服の袖へ、すがり付いた一人の女性にょしょうがある。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
呼吸いきを詰めて見透すと、白い、ほっそりした、女の手ばかりが水の中から舳にすがっているのであります。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、不平で学校を飛出しながら校長の恩にすがるような所為まね餓死うえじにしても二葉亭には出来なかった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
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