とが)” の例文
刑は公法なり、科の次第を幟に記し、其とがよばわる事、世に是を告て後来こうらいの戒とせんが為なれば、諸人慎んで之をうけたまわらん条、勿論なり。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
一枚の皿を傷つけたとがとして、自分を無慈悲に成敗する程の主人であれば、自分に対し深い愛情をもっていないことは判り切っている。
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ははあ。それで読めました。李厳の督しておる軍需増産の実績がここ甚だあがらないので、とがを丞相に転嫁てんかせんとしたものでしょう」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ほんに、たった一度でも、そのような日に生きることが出来ませば、はかないこの身、いかなるとがに逢おうともくやみませぬ」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
ねがはれ何卒なにとぞわたく御役御免下ごめんくださるべしといはれしかば何故退役たいやくねがはるゝやと申さるゝに大岡殿此度このたび煙草屋たばこや喜八裁許さいきよちがとがなき者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それはとにかくあなたのような立派なお方が何のとがで、ご勘当など受けなされたか、差し支えなければおついでにそれもお話しくださいますよう
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「隠しちゃためにならないよ。お組を預かったとがは知らなかった分にしてやるもあるが、それも、お前の出ようひとつだ」
わが社中すでにその術を得たる者は、貧苦を忍び艱難かんなんを冒して、その所得の知見を文明の事実に施さざるべからず。そのとがは枚挙にいとまあらず。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「ところが、おめがね違い、足もとから火が出たんですよ。ね、平牢ひらろうにもう半月ごし密貿易のとがで、打ち込まれていた若造があったでがしょう」
左なる二人の女は同楼の鴇手やりてと番頭新造にして、いづれも初花の罪をかばひしとがによりて初花と同罪せられしものなりと云ふ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
万事にかなう DS ならば、安助のとがせざるようには、何とて造らざるぞ。科に落つるをままに任せ置たるは、頗る天魔を造りたるものなり。
るしへる (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
とがを着せられての仕置に学校へゆけとはあんまりでしょう……などと直ぐだだを言うのであるが、今夜はそんな我儘わがままを言えるほど無邪気ではない。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
不幸ふこうな子だとおもって、大目おおめておいてやったのだが、なんとがもないかあさんや、きょうだいをのろうといては、ててはおけない。出ていけ。」
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
昌蔵には逃亡のまま斬罪のとがきまり、松室の家名は絶えた。本来なら当然その妻にも御とがめがなければならない。
柘榴 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「わしゃあ甲府の郷士の伜でね、江戸へ出るのはこんどが始めてだ。……それはそうと、いってえ、どんなとがであんなえれえ目にあっていなすったけえ」
顎十郎捕物帳:01 捨公方 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
学校の告知板の文書をてたとがで処分の教員会議が開かれた折、ひとり舎監室で謹慎してゐた川島先生は、通りがゝりの私を廊下から室の中に呼び入れ
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
今年になるまでくっついて居て、其の亭主が邪魔になるもんだから追出してしまいてえと思い、とがもねえ者へ不義の名を附けようとするだ、ふてい阿魔じゃねえか
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それを護送してゆく京都町奉行付まちぶぎょうづき同心どうしんが悲しい話ばかり聞かせられる。あるときこの舟に載せられた兄弟殺しのとがを犯した男が、少しも悲しがっていなかった。
高瀬舟縁起 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
彼がまだ十八歳のころに、この馬籠の村民が木曾山の厳禁を犯して、多分の木を盗んだり背伐せぎりをしたりしたというとがで、村から六十一人もの罪人を出したことがある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
薄情はくじやうもの義理ぎりしらずとおしくるめてのおことば道理だうりなれど御無理ごむりなり此身このみひとつにとががあらばたれもせんかれもせんひざともといふ談合相手だんがふあひてあそばしてよとなみだながらひかへるたもと
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
右之通下され、その品により帯刀苗字も御免あるべき間、たとひ一旦同類になるとも発言いたし候ものの名前申出づるにおいては、そのとがをゆるされ、御褒美下さるべし。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
其方そのほう儀、外夷の情態等相察すべしと、去る寅年異国船へ乗込むとがに依り、父杉百合之助へ引渡し在所において蟄居ちっきょ申付けうくる身分にして、海防筋の儀なおしきりに申しとな
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
ジエィン・エアに對して云ひ立てられたとがに就いてなされた穿鑿せんさくを報告し、ジエィンが全ての疑ひからまつたく潔白であると云ひ得る自分は最も幸ひだといふことを發表した。
ロミオ 信仰しんかうかたこのまなこに、かりにも其樣そのやう不信心ふしんじんおこるならば、なみだほのほともかはりをれ! 何度なんどおぼれてもにをらぬこの明透すきとほ異端げだうめ、うそうたとが火刑ひあぶりにせられをれ! なんぢゃ
『閑吟集』に「逢ふ夜は君が手枕、来ぬ夜は己が袖枕、枕余りに床広し、寄れ枕こち寄れ枕、枕さへうとむか」といい「とがもない尺八を枕にかたりと投げあてても、さびしや独り寝」
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
と光子はとがめるように言った。葉子は日頃ひごろから意地の悪い光子が好きでなかった。
先生の顔 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
「惣八郎何様なにようとがによりまして」ときいた。すると志摩はやや声を励まして
恩を返す話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「はあ。間諜であってくれゝば宜かったんですが、罪もとがもない良家の娘でした」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それから法廷を侮辱したとがによって、同時に罰金二十マルクに処せられた。
(新字新仮名) / オシップ・ディモフ(著)
四苦八苦を百苦に重ねて死ぬならば、生甲斐いきがいのない本人はもとより、はたに見ている親しい人も殺すが慈悲とあきらめられるかも知れない。しかしすやすやと寝入る児に死ぬべき何のとががあろう。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その詩に史上の事實をめ、聞くに堪へざる平字の連用をなしたるなど、皆むちうこらすべきとがなるを。我はまことに甚しき不快を覺えき。かゝる事に逢ふごとに、我は健康をさへ害せられんとす。
やっとのことで三日目に一人の男が親方の手紙をとどけて来た。その手紙によると、親方はこのつぎの土曜日に、警察権けいさつけん反抗はんこうし、かつ巡査じゅんさに手向かいをしたとが裁判さいばんを受けるはずになっていた。
お君は金より大事な忠兵衛さん、その忠兵衛さんをとが人にしたのもみんなこのわたしゆえと日に二十辺も朗唱するようになった。軽部は多少変態的な嗜好をもっていたが、お君はそれに快よくたえた。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
つら/\年月の移りこしつたなき身のとがを思ふに、ある時は仕官懸命の地を羨み、一度ひとたび仏籬祖室ぶつりそしつとぼそに入らむとせしも、たより無き風雲に身を責め、花鳥に情を労して暫く生涯のはかり事とさへなれば
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
これで俳句になつて居るつもりでは全く経験の足らぬとがであらう。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「お嬢さまには、すこしもとがはございません、どうぞてまえを」
円朝の牡丹灯籠 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
とがもなきいもをしかりしそののちのさびしきこころ夕雲をみる
小熊秀雄全集-01:短歌集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
かつて、みそらのはえばうじたるとがによりて
白鳥 (旧字旧仮名) / ステファヌ・マラルメ(著)
重いとがゆゑ死んだ人
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
とがあがなふ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
自分には何のとがが有ってこんな理非りひ顛倒てんどうの侮辱を受けるのであろう。考えれば考えるほど、冬子は口惜くやしくってたまらなかった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
汝らの義胆ぎたん忠憤ちゅうふんを、ことごとく無意味なものにしたのも、とがは、彼君かのきみにあるには非ず、みな家康の不明と手落ちにありといわねばならぬ。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「隱しちやためにならないよ。お組を預つたとがは知らなかつた分にしてやるもあるが、それも、お前の出やうひとつだ」
伯父九郎兵衞惣内の母諸共はゝもろとも九助が仕業しわざなりと訴訟うつたへ出しに依て召捕めしとられ晝夜拷問がうもんつよきにより九助は是に堪難たへがたおのれとがならぬ事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ハッと仰天した六兵衛が前後を忘れて飛び出して行ったのは親子の情として当然であろう。ところが行列を切ったとがで一刀のもとに殺されてしまった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
筆には決してとがのない事でございますからうか町役人共へお引渡しに相成りますれば有難い事に存じます
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「でも、てまえの密貿易のとがは、すでに長崎お奉行さまからご赦免になっているではござりませぬか!」
悪逆無道な、わなにかけ、父御ててごを破滅させ、母御まで死なせて置いて、罪もとがもない——商人の恒だとは!
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
故に女は男に比るにおろかにて、目前もくぜんなるしかるべきことをも知らず、又人の誹るべき事をも弁えず、我夫我子の災と成るべきことをも知らず、とがもなき人をうらみいか呪詛のろ
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かの少年に再會したさに我家に放火し、そのとがつて天和三年三月二十八日に十六歳で刑せられた。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)