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磨
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す
ふりがな文庫
“
磨
(
す
)” の例文
その
外廓
(
がいかく
)
は、こう軍艦の形にして、船の側の穴の処に眼鏡を
填
(
は
)
めたので、容堂公のを模して足らないのを駒形の眼鏡屋が
磨
(
す
)
りました。
諸国の玩具:――浅草奥山の草分――
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
女が心づいて、水指の中へ墨を
磨
(
す
)
って入れておいた、平中はそうとは知らず、その墨の水で眼を濡らしたので、女が平中に鏡を示して
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
須貝 (火を
磨
(
す
)
ってやりながら)そうなりますね。僕は、始めにステージの仕事を片づけて、後でロケの方をやりたいつもりです。
華々しき一族
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
「でも、
先刻
(
さっき
)
帳場を覗いて見ましたが、汚い
硯
(
すずり
)
の中に、何日前に
磨
(
す
)
ったか、腐って臭くなった磨りかけの墨がうんと溜って居ましたよ」
銭形平次捕物控:242 腰抜け彌八
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
一
分
(
ぶ
)
二分ずつ、
磨
(
す
)
り減らされてゆくのではあるまいか——どう
倫
(
りん
)
を絶した使い手にしろ、疲れぬ肉体というものを持っている筈がない。
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
磨
(
す
)
りあげて立派な学者になれるなら、誰にでも出来る。わしにでも出来る。ビードロやの主人にでも出来る。ああ云う事をする者を
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
職人は暫くそんな
悪戯
(
いたづら
)
をしてゐたが、最後に
袂
(
たもと
)
を探つて、マツチを取り出したと思ふと、ぱつと火を
磨
(
す
)
つて虱の背に当てがつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
小包をあけて見たら、その通りにちゃんと
揃
(
そろ
)
っていた。どうも少し驚いたが、唐墨の試験に絶好の機会と、早速
磨
(
す
)
って色を見ることにした。
南画を描く話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
「今薬局で芫菁を
磨
(
す
)
っているのですが、どんなに我慢をしても、あれには
叶
(
かな
)
いません」とのことで、それから
暫
(
しばら
)
く外へ出て休んでいました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
だんだんその事情を取調べると、閩中には
茉莉花
(
まつりか
)
を飲めば仮死するという伝説がある。茉莉花の根を
磨
(
す
)
って、酒にまぜ合わせて飲むのである。
中国怪奇小説集:17 閲微草堂筆記(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それは二時
比
(
ごろ
)
で、外には絹糸のような雨が降っていた。広栄はやがて算盤を置いて、傍の
硯箱
(
すずりばこ
)
を引き寄せて墨を
磨
(
す
)
りだした。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
頭の上を風の吹き過ぎるごとに、楢の枯れ葉の
磨
(
す
)
れ合う音ががさがさとするばかり。元来この楢はあまり風流な木でない。
小春
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
軈て智惠子は、昨日來た友達の手紙に返事を書かうと思つて、墨を
磨
(
す
)
り乍ら考へてゐると、不圖、今日初めて逢つた信吾の顏が心に浮んだ。……
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
松年先生はよく私に墨を
磨
(
す
)
らせた。墨は男がすると荒つぽくていかぬが、女の子が磨るとこまかでいいと言はれて、よく私は墨すりをやらされた。
写生帖の思ひ出
(新字旧仮名)
/
上村松園
(著)
セイロンで買って来た三匹の
猫いたち
(
モングース
)
を相手に「退屈だ退屈だ」と御託を並べながら、『決闘』の完成に「神経を一ポンドほど
磨
(
す
)
りへらし」たり
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
特に女の眼を
悦
(
よろこ
)
ばせそうな
冬菜
(
ふゆな
)
は、形のまま青く
茹
(
ゆ
)
で上げ、小鳥は肉を
磨
(
す
)
り
潰
(
つぶし
)
して、
枇杷
(
びわ
)
の花の形に練り慥えてあった。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「一羽の目白はんがな、一生懸命
磨
(
す
)
り餌を食べてはるしな、もう一羽のが盃の水の中へ頭入れて、行水つこてはるえ。」
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
私の心はもうたつた一つの場所にばかり住んでゐて、
磨
(
す
)
り
毮
(
へ
)
らされてゐます——
錆
(
さ
)
びた釘のやうに腐蝕してゐるのです。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
空は墨を
磨
(
す
)
ったように黒くなって日も暮れた。そのうち風が穏やかになり、雨が小降りになって星の光も見えてきた。
源氏物語:13 明石
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
シャベルの先をみると、土とはげしく
磨
(
す
)
り
合
(
あ
)
ったために、鋼鉄が磨かれて、うつくしい銀色に、ぴかぴか光っていた。
未来の地下戦車長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
マーキュ
出來
(
でき
)
た。
此上
(
このうへ
)
は
洒落競
(
しゃれくら
)
べぢゃぞ。これ、
足下
(
おぬし
)
の
其
(
その
)
薄
(
うす
)
っぺらな
靴
(
くつ
)
の
底
(
そこ
)
は、
今
(
いま
)
に
悉
(
こと/″\
)
く
磨
(
す
)
り
減
(
へ
)
って、
果
(
はて
)
は
見苦
(
みぐる
)
しい
眞
(
ま
)
ッ
赤
(
か
)
な
足
(
あし
)
を
出
(
だ
)
しゃらうぞよ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
そして皆が
搾
(
しぼ
)
られた
渣
(
かす
)
なんだ。俺達あみんな働きすぎたんだ。俺達あ食うために働いたんだが、その働きは大急ぎで自分の命を
磨
(
す
)
り
減
(
へら
)
しちゃったんだ。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
このくだものの天来の美味と本質とは、ほんのり吹き出た
粉
(
こ
)
が、市場に出す車のなかで
磨
(
す
)
りとれてしまうとともにうしなわれ、単なる腹ふさげとなる。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
そうして
身体
(
からだ
)
を動かす拍子に両肩と首すじがピリピリと痛むのに気が付いた。大方ハドルスキーに抱きすくめられた時に暴れて
磨
(
す
)
り
剥
(
む
)
いたのであろう。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「いや、墨はわしが
磨
(
す
)
らねばなりません、それ、お前さんは婿どのの前にその紙をひろげて——そう、わからんか」
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
半蔵はその足で二階の
梯子段
(
はしごだん
)
を登った。三郎や益穂をも呼んで、
硯
(
すずり
)
筆
(
ふで
)
の類を取り出し、紙をひろげることなぞ手伝わせた。墨も二人の弟子に
磨
(
す
)
らせた。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
戸外では寒いからっ風が勢いこんで吹きすさんでいるらしく、建てつけの悪るい障子が
磨
(
す
)
りへらされた溝ときしり合って、けたたましい音を立てていた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
母「かやや、
其処
(
そこ
)
に
硯
(
すゞり
)
があるから
朱墨
(
しゅずみ
)
を濃く
磨
(
す
)
って下さい、そうして
木綿針
(
もめんばり
)
の太いのを三十本ばかり持って
来
(
き
)
な」
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
課長のゆっくり書類を
portefeuille
(
ポルトフョイユ
)
から出して、
硯箱
(
すずりばこ
)
の
蓋
(
ふた
)
を取って、墨を
磨
(
す
)
るのを見ている。
あそび
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
と、
母親
(
ははおや
)
は
言
(
い
)
って
聞
(
き
)
かせました。
自分
(
じぶん
)
でもその
鰻
(
うなぎ
)
の
頭
(
あたま
)
が
欲
(
ほ
)
しかったと
見
(
み
)
えて、
嘴
(
くちばし
)
を
磨
(
す
)
りつけながら、そして
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
「はい」と云うと童子の紅丸、野宿の場合の用心に、いつも
燧
(
ひうち
)
石を持っている。カチカチと
磨
(
す
)
ると火を出した。木口に移して早速の松火。忽ち水路明るくなる。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
源助、宮浜の児を遣ったあとで、
天窓
(
あたま
)
を
引抱
(
ひっかか
)
えて、こう、風の音を忘れるように
沈
(
じっ
)
と考えると、ひょい、と火を
磨
(
す
)
るばかりに、目に赤く映ったのが、これなんだ。
朱日記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
美奈子が、小切手帳を持って来ると、荘田は、
傍
(
かたわら
)
の小さい
卓
(
デスク
)
の上にあった金
蒔絵
(
まきえ
)
の
硯箱
(
すずりばこ
)
を取寄せて不器用な手付で墨を
磨
(
す
)
りながら、左の手で小切手帳を繰
拡
(
ひろ
)
げた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
これはお歯黒をつけるには必ず必要の
五倍子
(
ふし
)
の粉を売っていた店で、店の中央に
石臼
(
いしうす
)
を
据
(
す
)
えて五倍子粉を
磨
(
す
)
っている陰陽の生人形が置いてあって人目を
惹
(
ひ
)
いたもの
幕末維新懐古談:12 名高かった店などの印象
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
仮にあの材料の石類がみな
手近
(
てぢ
)
かにあったとしても、あれを
斫
(
き
)
り
研
(
みが
)
き
磨
(
す
)
って穴をあける技術が備わるまで、頸に玉を貫いて掛ける風習が、始まらずに待っていたか。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「まあよかろう」土田は机の上へ書類をひろげ、
硯箱
(
すずりばこ
)
をあけて朱墨を
磨
(
す
)
りだした、「——郡奉行か」
饒舌りすぎる
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
森谷牧場と森谷農場とを目当てとしての、つまり、牧場と農場での労働に
身体
(
からだ
)
を
磨
(
す
)
り減らして余生を引き
摺
(
ず
)
る人々によって形成されている、唯一の商業集落であった。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
同じような人々は、同じような経過をとって、同じ障害にぶつかり、同じく身を
磨
(
す
)
りへらしていた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ただゴシゴシと砥石に鉞の刃の喰い込んで
磨
(
す
)
れる音が耳に入った。今三人の悪者の眼は等しく砥石と鉞の上に集められた。等しく三人の心は砥石の上に向けられている。
捕われ人
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
そして最初に
滑
(
なめら
)
かそうな処を
撰
(
えら
)
んで本という字を懸命に書いてみた。
草履
(
ぞうり
)
は
拭物
(
ふきもの
)
の代りをした。彼は短い白墨が
磨
(
す
)
り
減
(
へ
)
って来ると
上目
(
うわめ
)
をつかって、暫く空を見ていてから
火
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
匙
(
さじ
)
としては貝殼に
柄
(
え
)
を
付
(
つ
)
けたるもの用ゐられ、肉差しとしては獸骨を
割
(
わ
)
りて
磨
(
す
)
り
尖
(
とが
)
らしたるもの用ゐられしならん。肉差しの如き骨器は常陸椎塚の貝塚より數個出でたり
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
途中で曲つてゐる梯子段を踏み
過
(
あやま
)
つて、私は四五段も辷り落ち、
肘
(
ひぢ
)
をしたたか
磨
(
す
)
り剥いたのだが、驚いてとんで来た医者に、抱き取られながらも、いい気味だいい気味だ
亡弟
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
だが、まだ浴場とのあいだに
磨
(
す
)
りガラスの戸がある。ガラガラと音を立ててそれがひらかれた。
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
二度表から潜り戸を引っ張ってみたり、
欞子窓
(
れんじまど
)
の
磨
(
す
)
り
硝子
(
ガラス
)
の障子の
隙
(
すき
)
から家の中を窺いてみようとしたけれど、
隣家
(
となり
)
の女房が見ているので、押してそうすることもならず
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
矢五太夫は、人々に、こういいながら、机の前へ坐って、急いで、墨を
磨
(
す
)
り出していた。女房が
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
その一はカポッキオにちかづき、牙を
項
(
うなじ
)
にたてゝ彼を曳き、堅き底を腹に
磨
(
す
)
らしむ 二八—三〇
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
もうちっとしたら貰えましょうと慰めるのも油になって、やゝ久しく無言で居たが、筆をと云うに女が
硯筥
(
すずりばこ
)
を持来り、
磨
(
す
)
りましょうという下からもはや筆を溜り水に染めて
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
それが自分の部屋の東向きの窓障子の
磨
(
す
)
りガラスに明るく映って、やはり日増に
和
(
やわ
)
らいでくる気候を思わせるのだが、電線を鳴らし、窓障子をガタピシさせている風の音には
死児を産む
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
物理学者や化学者は物質を
磨
(
す
)
り砕いて原子の内部に運転する電子の系統を探っている。そうして同一物質の原子の中にある
或
(
あ
)
る「個性」の
胚子
(
はいし
)
を認めんとしているものもある。
春六題
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
次の日、ふと道助は昨日腹立ち
紛
(
まぎ
)
れに物置の中へ
抛
(
はふ
)
り込んでそのまゝになつてゐる小鳥のことを思ひ出した。もう昼近くのことで
磨
(
す
)
り
餌
(
ゑ
)
をやる時刻はとつくに過ぎてゐたのだ。
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
磨
常用漢字
中学
部首:⽯
16画
“磨”を含む語句
磨上
達磨
磨滅
銷磨
琢磨
消磨
磨臼
本磨
播磨
磨硝子
切磋琢磨
達磨船
歯磨
磨針峠
研磨
銀磨
達磨茶屋
磨製石斧
米磨桶
磨師
...