ざま)” の例文
火縄を取つて、うしろざまの、肩越かたごしに、ポン、と投げると、杉の枝に挟まつて、ふつと消えたと思つたのが、めら/\と赤く燃上もえあがつた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
呼んでもすかしても出て来ねえんで——いつにねえこったが変だなあ、と不審ぶって来て見るてえと、このざまじゃごわせんか。
「面目ないことじゃ、実は少々酔いが廻ったものだから、酔醒めの水を飲もうと、水を汲みかけてこのざまじゃ——して貴殿方はどうしてここへ」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そこへ私にも出ろと仰ゃって下さるんだけれど、何ぼ何でもざまが状だから出る訳に行きゃしねえ。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
今じゃア此のからッぺたの恒あにいに削らせた釘を打ちなさるから、此ん通りでざまい、アハヽヽ
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
らちもなきざまにあらずや百獸の王の日向に眠れる見れば
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
振向ふりむざまに、ぶつきらぼうつて、握拳にぎりこぶしで、ひたいこすつたのが、悩乱なうらんしたかしらかみを、掻毮かきむしりでもしたさうにえて、けむりなび天井てんじやうあふいだ。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それア二十年もめえのことだ、もう六十を越して眼も利かなくなり、根気もけて、此の頃ア板削いたけずりまで職人にさせるから、つやが無くなって何処となしに仕事があらびて、見られたざまアねえ
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ところが、前に駈けて行く大男は、身体こそ頑丈がんじょうそうだが、駈け方は存外不器用で、何か河原の石ころか、くいかにつまずいて仰向けにひっくりかえったざまは、見られたものではありません。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
全体癪の介抱は、色男の儲役もうけやくだが、対手あいてがこのざまではおさまらねえ。手を入れたらしらみつぶすくらいが取柄だ。弱ったな。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ざまあ! 女郎手前てめえに嫌われてさいわいだ。好かれてたまるかい。」と笹を持ったのが、ぐいとそのさおを小脇に引くと、やあ、斜に構えて前に廻った。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先刻さっきどうした、牛込見附でどうしたよ。慌てやあがって、言種いいぐさもあろうに、(女中が寝ていますと失礼ですから。)と駈出した、あれは何のざまだ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見よかし羆の袖を突出し、腕をあごのあたりへ上げざまこまぬいた、手首へつら引傾ひっかたげて、横睨よこにらみにじろじろと人を見る癖。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
きり田川たがわの水を、ほのじろい、ざるき/\、泡沫あわを薄青くすくひ取つては、細帯ほそおびにつけたびくの中へ、ト腰をひねざまに、ざあと、光に照らして移し込む。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
色気も娑婆気しゃばけも沢山な奴等やつらが、たかが暑いくらいで、そんなざまをするのではありません。実はまるで衣類がない。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ざまあ見やがれ、もっと先から来ていたんだ。家風に合わねえも、近所の外聞もあるもんか、わらかしゃあがら。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ほっと吹く酒の香を、横ざまらしたのは、目前めさき歴々ありありとするお京の向合むきあった面影に、心遣いをしたのである。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(さ、さ、さ、みんな、膳につけ、膳につけ。)(いや、あのざまでも名誉心があるかなあ。きとるわけだ。)
(ぶらつく体をステッキ突掛つッかくるさま、疲切ったる樵夫きこりのごとし。しばらくして、叫ぶ)畜生、ざまを見やがれ。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぐるりと一廻ひとまはりして、いつしよいはほえぐつたやうなとびら真黒まつくろつてはいつたとおもふと、ひとつよぢれたむかざまなる階子はしごなかほどを、灰色はいいろうねつてのぼる、うしまだらで。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
(ぶらつく体をステッキ突掛つっかくるさま疲切つかれきつたる樵夫きこりの如し。しばらくして、叫ぶ)畜生ちくしょうざまを見やがれ。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おんな二人、生命いのちを預る……私は、むくと起きて、しにみに覚悟して、蚊帳をねた、その時、横ゆれになびいて、あとへさがったそのおんなが、気にされてざまに板敷を
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と向うざまに、椅子のかかり俯伏うつぶせになると、抜いて持ったかんざしの、花片が、リボンを打って激しく揺れて
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(おのれ、不義もの……人畜生にんちくしょう。)と代官婆が土蜘蛛つちぐものようにのさばり込んで、(やい、……動くな、そのざまを一寸でも動いてくずすと——鉄砲あれだぞよ、弾丸あれだぞよ。)
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其時そのとき、おつぼねが、階下へ導いてざまに、両手でしっかと、くせもののかたな持つ方の手をおさへたのである。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
日向ひなたへのッそりと来た、茶の斑犬ぶちが、びくりと退すさって、ぱっと砂、いや、そのざまあわただしさ。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お有難や、有難や。ああ、苦を忘れてが抜けた。もし、太夫様。」と敷居をまたいで、蹌踉よろけざまに振向いて、「あの、そのお釵に……」——「え。」と紫玉が鸚鵡をる時
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
身のおきどころがなく成つて、紫玉のすそが法壇に崩れた時、「ざまを見ろ。」「や、身を投げろ。」「飛込とびこめ。」——わツと群集の騒いだ時、……たまらぬ、と飛上とびあがつて、紫玉をおさへて
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
乱杭、歯くそかくし鉄漿かねをつけて、どうだい、そのざまで、全国の女子の服装を改良しようの、音楽を古代にかえすの、美術をどうのと、鼻のさきで議論をして、舌で世間をめやがる。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
紫玉のすそが法壇に崩れた時、「ざまを見ろ。」「や、身を投げろ。」「飛込め。」——わッと群集の騒いだ時、……たまらぬ、と飛上って、紫玉をおさえて、生命いのちを取留めたのもこの下男で
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ざまやがれ。」とあとをもず、かたいからして、ひぢつて、すた/\る。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
背中せなかに、むつとして、いきれたやうな可厭いやこゑこれは、とると、すれちがつて、とほざま振向ふりむいたのは、真夜中まよなかあめ饂飩うどんつた、かみの一すぢならびの、くちびるたゞれたあの順礼じゆんれいである。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
雪枝ゆきえ一文字いちもんじまへ突切つゝきつて、階子段はしごだん駆上かけあがざまに、女中ぢよちゆう摺違すれちがつて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「何だ、ざまは。小町こまちしずかぢやあるめえし、増長をしやがるからだ。」
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「何だ、ざまは。小町やしずかじゃあるめえし、増長しやがるからだ。」
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
極りも悪し、ざま退しさった。心は苛立つ、胸は騒ぐ。……
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ざまを見ろ、弱虫め、誰だと思うえ、小烏の三之助だ。」
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、座長の角面かくづらがつゞけざま舌打したうちをしながら言つた。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
門附になる前兆さ、ざまを見やがれ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はす仰向あおのざまにぐたりとなった。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ざまあ見ろ、へへん。」
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)