温泉おんせん)” の例文
「あのやまのあちらの温泉おんせんへ、どうかつれていってください。」と、会長かいちょうが、みんなにわって、北国ほっこくからきたすずめにたのみました。
温泉へ出かけたすずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
別府は土地の下一面に温泉おんせんである。それが第一の天恵である。瀬戸内海という大道路がすぐ玄関に着いている。これも天恵の一つである。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
すすむこと一里半にしてきふ暖気だんきかんず、俯視ふしすれば磧礫間温泉おんせんありて数ヶ所にづ、衆皆くわいぶ、此処はあざはな或は清水沢しみづさはと称し
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
其他そのたあらたに温泉おんせん冷泉れいせんはじめることもあり、また炭酸瓦斯たんさんがす其他そのた瓦斯がす土地とちからして、とり地獄じごくむし地獄じごくつくることもある。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
がなかなかそれらの説諭には承服せない、一揆の与党には温泉おんせん郡、和気わけ郡、風早かざはや郡、野間郡等も加わって、残る処は周布郡桑村郡のみであった。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
ただ這入はいる度に考え出すのは、白楽天はくらくてん温泉おんせん水滑みずなめらかにして洗凝脂ぎょうしをあらうと云う句だけである。温泉と云う名を聞けば必ずこの句にあらわれたような愉快な気持になる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
降れば馬を雇つて澤渡さわたり温泉おんせんまで行かうと決めてゐた。起きて見れば案外な上天氣である。大喜びで草鞋を穿く。
みなかみ紀行 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
南村山郡の高松たかまつには「麻布あざぶ」と呼ぶごく薄手の紙をきます。かみやま温泉おんせんには遠くありません。この紙は漆をすのになくてはならない紙なのであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「それはどうしても温泉おんせんに行くほかありますまい。」と、影はまたたずねてきて、こういいました。
これは温泉おんせんの作用ですよ。この裂け目を通った温泉のために凝灰岩が変質へんしつけたんです。〕
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
……その前日ぜんじつ、おなじやま温泉おんせん背戸せどに、物干棹ものほしざをけた浴衣ゆかたの、日盛ひざかりにひつそりとしてれたのが、しみせみこゑばかり、微風かぜもないのに、すそひるがへして、上下うへしたにスツ/\とあふつたのを
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たとえば越智おち郡では鳥生とりうの土居構には鳥生氏住し、野間郡池原の土居構には池原氏おり、温泉おんせん郡桑原の土居構には桑原氏おり、同じく松末まつすえの土居構には松末氏住みて、一にまた松末館とも書いてある。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
あるとき近所きんじょ温泉おんせんはいってきずのりょうじをしていました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
、いったところであるから、みちまよ心配しんぱいもなかった。二のすずめは、やまえて、湯気ゆげのぼ温泉おんせんへついたのでした。
温泉へ出かけたすずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
かような状態じようたいにある土地とちおいて、從來じゆうらい温泉おんせん湧出量ゆうしゆつりようしたり、したがつて温度おんどのぼることあるは當然とうぜんである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
し此地に移住いじゆうし来るものあらんか、湯の小屋の温泉おんせんまたあらはれて繁栄はんえいおもむくや必せり。
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
岩にけ目があるでしょう。ここを温泉おんせんが通って岩を変質へんしつさせたのです。風化ふうかのためにもこうう赤いしまはできます。けれどもここではほかのことから温泉の作用ということがわかるのです。〕
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
同 温泉おんせん郡 7
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そのまちなかに、あかはたが、ながいさおのさきにひらめいています。それは、万病まんびょうなお不思議ふしぎ温泉おんせんのわきるところでありました。
金の魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
岩石のけ目に沿って赤く色がかわっているでしょう。裂け目のないところにも赤いすじの通っているところがあるでしょう。この裂け目を温泉おんせんが通ったのです。温泉の作用で岩が赤くなったのです。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
また七八十年前しちはちじゆうねんぜんから土地とち次第しだい隆起りゆうきしつゝあつたが、噴火後ふんかごもとどほりに沈下ちんかしたのである。そのほか温泉おんせん冷泉れいせんがその温度おんどたかめ、あるひ湧出量ゆうしゆつりようし、あるひあらたに湧出ゆうしゆつはじめたようなこともあつた。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ゆきいただいた、しろやまして、すずめは、温泉おんせんにあこがれてんでいきました。からすのいったことは、うそではなかった。
温泉へ出かけたすずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
その温泉おんせんへいってはいって、病気びょうきがみななおってしまったのです。そんなゆめ金持かねもちはたのでありました。
金の魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たとえ、そのように、いい温泉おんせんがあったにしても、すこしのかねをもたない少年しょうねんには、その温泉おんせんへいって治療ちりょうをすることは、容易よういなことではなかったのであります。
石をのせた車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、ここに別荘べっそうてます。うつくしいはないているし、果物くだものは、みのっているし、温泉おんせんがわいている。こんないいところはありません。どんなうつくしいひともくるでしょう。
花咲く島の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
温泉おんせんがあって、果物くだものがあって……、ああ、なんといういいところだろう? そんないいところが、このなかにあるでしょうか?」と、うたうたいは、をまるくしました。
花咲く島の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そんないい温泉おんせんがあって、このからだ達者たっしゃになれるものなら、いまんでしまっては、なんのやくにもたたない。どうかして、その温泉おんせんへいってからだつよくしてこなければならない。
石をのせた車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ねん、十ねんのちには、りっぱな楽園らくえんとなるでしょう。果物くだものは、いまでも、みんなのべきれぬほどみのっています。うみからはさかなれますし、また、やまにゆけば温泉おんせんがわいています。
花咲く島の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「そういうところは、わたしは、いくしょました。みかんのそのやまにあって、そのしたうみがあって、まちのあるところで温泉おんせんるところは、いくしょました。」と、薬売くすりうりはいいました。
金の魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、おじいさんはいいました。ふもとには、温泉おんせんもわいていたのであります。
白すみれとしいの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「これはめずらしいいしだ。」といって、どうかってくれないかとたのみました。少年しょうねんは、いしよりもっと自分じぶんいのちがたいせつだと、温泉おんせんきのことをおもって、主人しゅじんうつくしい紫色むらさきいしってやりました。
石をのせた車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やまのあちらには、うみがあり、また、温泉おんせんなどもありますから、そこへいくひとたちでにぎわっていたのでしょう。それにしても、あなたのきずが、たいしたことがありませんで、ようございましたこと。
負傷した線路と月 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はえや、たいするはらだたしさが、ついやとにんのほうへまわってきましたから、たまりません。せめて、このなつあいだなり、すずしいやま温泉おんせんにでもまいられたらといって、おじいさんにすすめました。
夏とおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)