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渉
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わた
ふりがな文庫
“
渉
(
わた
)” の例文
水を怖るるのかと問うに、尾が水を払うて王に懸るを恐ると答えた。
即
(
やが
)
てその尾を結び
金嚢
(
きんのう
)
に盛り、水を
渉
(
わた
)
って苑に至り遊ぶ事多日。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
小便の海を
渉
(
わた
)
り歩いて小便壺まで
辿
(
たど
)
りつかねばならぬような時もあった。客席の便所があのようでは、楽屋の汚なさが思いやられる。
日本文化私観
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
子之助は父を
畏
(
おそ
)
れて、湊屋の下座敷から庭に飛び下り、海岸の浅瀬を
渉
(
わた
)
って逃げようとしたが、使のものに見附けられて
捉
(
とら
)
えられた。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
波
(
なみ
)
がうごき波が足をたたく。日光が
降
(
ふ
)
る。この水を
渉
(
わた
)
ることの
快
(
こころよ
)
さ。
菅木
(
すがき
)
がいるな。いつものようにじっとひとの目を見つめている。
台川
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
鬼怒川を
渉
(
わた
)
った頃から、セルの羽織に鳥打ちをかぶった芸人風の男が四五人同乗した。絶えず小唄みたいなものを口ずさんでいた。
旧師の家
(新字新仮名)
/
若杉鳥子
(著)
▼ もっと見る
毎日海へ出たり、溪谷を
渉
(
わた
)
つてゐると、やがてこの世界の栄達といふやうな事を願はなくなり、金とり仕事などが厭になつてくる事だ。
日本の釣技
(新字旧仮名)
/
佐藤惣之助
(著)
水を
渉
(
わた
)
る
状
(
すがた
)
に
似
(
に
)
たるゆゑにや、又
深田
(
ふかた
)
を
行
(
ゆく
)
すがたあり。
初春
(
しよしゆん
)
にいたれば雪
悉
(
こと/″\
)
く
凍
(
こほ
)
りて
雪途
(
ゆきみち
)
は石を
布
(
しき
)
たるごとくなれば
往来
(
わうらい
)
冬よりは
易
(
やす
)
し。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
砂地を歩いたり水を
渉
(
わた
)
ったりして
暢気
(
のんき
)
に歩いて行く。雨は小降りになったが、雲は低く垂れて上流も下流もまだ暗く閉されている。
秋の鬼怒沼
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
対岸の正面よりやや
下流手
(
しもて
)
の岸から、一隊の敵が、騎馬
徒歩
(
かち
)
をまぜておよそ千二、三百、一陣になって、河を斜めに、駈け
渉
(
わた
)
りだした。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これらの会見始末は
精
(
くわ
)
しく三山に通信して来たそうだが、また国際上の機微に
渉
(
わた
)
るが故に世間に発表出来ないと三山はいっていた。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
葉子は一緒に歩くことをも
憚
(
はばか
)
るように、急いで向う側へ
渉
(
わた
)
ると、そこでガタ車を一台呼び止め、彼の来るのを待ってドアをしめた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
気むづかしさうに波が焦立つて、その上を
渉
(
わた
)
つて行くものには、何物にでも白い歯を剥き出して、噛みつくやうに跳りかゝる様も見える。
海潮の響
(新字旧仮名)
/
吉江喬松
(著)
それに、小川を
渉
(
わた
)
ったり、草原を歩いたりすることは、何よりも好きなので、今日の遠足にも、ちゃんと牛の皮の深靴を
履
(
は
)
いて来ていた。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
潭
(
ふち
)
が深くて、
渉
(
わた
)
れないから、崖に
攣
(
よ
)
じ上る。矢車草、車百合、ドウダンなどが、
栂
(
つが
)
や白樺の、
疎
(
まば
)
らな木立の下に、もやもやと茂っている。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
もしそうだとすれば犯人はわりに長い時間(といつても一分か二分だが)に
渉
(
わた
)
つて非常な危険に身をさらしたというべきである。
殺人鬼
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
この四面に
渉
(
わた
)
ってもっとも高き理想を有している文芸家は同時に人間としてももっとも高くかつもっとも広き理想を有した人であります。
文芸の哲学的基礎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
謹啓、厳寒の
砌
(
みぎ
)
り愈〻
御清穆
(
ごせいぼく
)
に
渉
(
わた
)
らせられ大慶の
至
(
いたり
)
に存じ上げます。毎々多大の御厚情を
蒙
(
こうむ
)
り有難一同深く感謝致して居ります。
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
こういう問答は専門に
渉
(
わた
)
ったことでありますからこれから後の分も略します。だんだん仏教の話が
嵩
(
こう
)
じてとうとう夕暮になってしまった。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
其が、赤彦の
嗜
(
たし
)
む古典のがっしり調子と行きあって、方向を転じて了うたが、『氷魚』の末から『太虗集』へ
渉
(
わた
)
る歌口なのだ。
歌の円寂する時
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
三左衛門は
路
(
みち
)
に注意した。岩が
甃
(
いしだたみ
)
を敷いたようになっていて
前岸
(
むこう
)
へ
渉
(
わた
)
るにはぞうさもなかった。二人はその岩を伝って往った。
竈の中の顔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
私は彼女のために食を求め、衣を求め、敵を防ぎ、あの雌を率いるけだもののごとくに山を越え、谷を
渉
(
わた
)
り、淋しき森影にともに
棲
(
す
)
みたい。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
紳士貴婦人が互に
相親睦
(
あいしんぼく
)
する集会で、談政治に
渉
(
わた
)
ることは少ないが、宗教、文学、美術、演劇、音楽の品定めがそこで成立つ。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
友を迎えにやったのであろう、一人の童子が大きな牛に
騎
(
の
)
り、笛をふきながら水を
渉
(
わた
)
って帰ってくる。すべてが自然の中に溶けこんでいる。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
素
(
も
)
と人間には儼然として侵すべからざる権利が存在するもので、これは万人に
渉
(
わた
)
って等しく固有なるべきはずのものである。
永久平和の先決問題
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
之を以てレッシングは仏国の思想がライン河を
渉
(
わた
)
りて、
縦
(
ほしいまゝ
)
に其の郷国の思想を横領するを
悪
(
にく
)
みて、大に国民の夢を醒したり。
国民と思想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
実際このような
慌
(
あわただ
)
しい乱世に、しかも諸国を
渉
(
わた
)
り歩かねばならぬ連歌師の身であってみれば、今宵の話が明日は遺言とならぬものでもあるまい。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
池の水面には小さなモーターボートでも通ったように、二条の波紋が長くあとを引いていた。どうして彼が池を
渉
(
わた
)
り越えたのやら分らなかった。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
日は山蔭にかくれて、池の面を
渉
(
わた
)
る風は冷い。半ば水に浸されている足の爪先は、針を刺すように、寒さが全身に伝わる。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
ここにおいて徂徠派の病弊を指摘し、その偏見を道破し、
汎
(
あまね
)
く支那歴代の文教を一般に
渉
(
わた
)
って批判攻究すべきことを説く新しい学派が
勃興
(
ぼっこう
)
した。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
売卜
(
ばいぼく
)
先生をして聞かしめば「この縁談初め善く末わろし狐が川を
渉
(
わた
)
りて尾を濡らすといふかたちなり」などいはねば善いがと思ふ。(四月一日)
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
「エラいもんですな、昔の豪傑を眼の前へ持って来たようなもんです、役者もあれまでにやるには、剣道の極意に
渉
(
わた
)
らなければやれませんなあ」
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
若し将門が攻めて行つたのを
禦
(
ふせ
)
いだものとしては、子飼川を
渉
(
わた
)
つたり
鬼怒
(
きぬ
)
川
(
がは
)
を渡つたりして居て、地理上合点が行かぬ。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
終夜
(
しうや
)
雨
(
あめ
)
に
湿
(
うるほ
)
ひし為め、水中を
歩
(
あゆ
)
むも
別
(
べつ
)
に意となさず、二十七名の一隊
粛々
(
しゆく/\
)
として
沼
(
ぬま
)
を
渉
(
わた
)
り、
蕭疎
(
しようそ
)
たる
藺草
(
いくさ
)
の間を
過
(
す
)
ぎ、
悠々
(
いう/\
)
たる
鳧鴨
(
ふわう
)
の群を
驚
(
おどろ
)
かす
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
だから、僕にはあらゆる状況に
渉
(
わた
)
って、ラザレフの意志が現われているように思われるのだがね。熊城君、僕はラザレフの死に自殺を主張するぜ。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
この法律の年代の考証論は非常に興味の多いものであるが、また非常に細密の点に
渉
(
わた
)
るものであるから、これを夜話の題とするには不適当である。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
ところで、このわたしは、幼年時代から七十年の長期に
渉
(
わた
)
って、日本料理を研究し続けているので、普通人とは少しばかり違うなにかを持っている。
鮟鱇一夕話
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
白髪、
江
(
こう
)
を
渉
(
わた
)
り、もとの路をたずぬ。何年も江戸を明けたわけではないけれど、しきりに、そんな気がしてならない。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
倘
(
も
)
し并せて返納せば、
益々
(
ますます
)
不恭に
渉
(
わた
)
らん。因って今、領受し、薄く
土宜
(
どぎ
)
数種を
晋
(
すす
)
め、以て報謝を表す。
具
(
つぶ
)
さに別幅に録す。
却
(
しりぞ
)
くるなくんば幸甚なり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
春に「新春」が出て、秋の十一月十一日に、さしも五年に
渉
(
わた
)
って世界を荒らした大戦がばったり止んだのであります。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
村落
(
むら
)
の
子供等
(
こどもら
)
は「三
平
(
ぺい
)
ぴいつく/\」と
雲雀
(
ひばり
)
の
鳴聲
(
なきごゑ
)
を
眞似
(
まね
)
しながら、
小笊
(
こざる
)
を
持
(
も
)
つたり
叉手
(
さで
)
を
持
(
も
)
つたりしてぢやぶ/\と
快
(
こゝろ
)
よい
田圃
(
たんぼ
)
の
水
(
みづ
)
を
渉
(
わた
)
つて
歩
(
ある
)
いた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
一
(
ひ
)
と
渉
(
わた
)
り四方を見まわしておいて、まっすぐに宿へ帰ると、給仕にちょっと
躯
(
からだ
)
をささえられながら階段を登って、さっさと自分の部屋へ入ってしまった。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
国文に関した研究もの、国史、
支那稗史
(
しなはいし
)
から材料を採つた短篇小説、校釈、対論文、戯作、和歌、紀行文、随筆等、生涯の執筆は実に
多岐
(
たき
)
に
渉
(
わた
)
つてゐる。
上田秋成の晩年
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
「
径路
(
けいろ
)
窄
(
せま
)
きところは、一歩を留めて、人に行かしめ、
滋味
(
じみ
)
濃
(
こまや
)
かなるものは、三分を減じて人に
譲
(
ゆず
)
りて
嗜
(
たしな
)
ましむ、これは
是
(
こ
)
れ、世を
渉
(
わた
)
る一の
極安楽法
(
ごくあんらくほう
)
なり」
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
事業の全躰を以て文章なりと
曰
(
い
)
はゞ固より
誤謬
(
ごびう
)
なるべし。然れども文章世と相
渉
(
わた
)
らずんば言ふに足らざるなり。
明治文学史
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
私の大好きな場處は、小川のちやうど中程に白々と
乾
(
かわ
)
いて現はれてゐる、
滑
(
なめ
)
らかな大きな石の上で、其處へは水の中を
跣足
(
はだし
)
で
渉
(
わた
)
つて行くより外はなかつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
或
(
あるひ
)
は
摧
(
くだ
)
けて死ぬべかりしを、
恙無
(
つつがな
)
きこそ天の
佑
(
たすけ
)
と、彼は数歩の内に宮を追ひしが、流に
浸
(
ひた
)
れる
巌
(
いはほ
)
を
渉
(
わた
)
りて、既に渦巻く
滝津瀬
(
たきつせ
)
に
生憎
(
あやにく
)
! 花は散りかかるを
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
ばけものゝ一
面
(
めん
)
は
極
(
きは
)
めて
雄大
(
ゆうだい
)
で
全宇宙
(
ぜんうちう
)
を
抱括
(
はうくわつ
)
する、
而
(
しか
)
も
他
(
た
)
の一
面
(
めん
)
は
極
(
きは
)
めて
微妙
(
びめう
)
で、
殆
(
ほとん
)
ど
微
(
び
)
に
入
(
い
)
り
細
(
さい
)
に
渉
(
わた
)
る。
妖怪研究
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
只、一体が
穏当
(
おだやか
)
でない
性質
(
たち
)
の処へ、料理人に
殆
(
ほと
)
んど共通な、慢心ッ気が手伝って到る所で衝突しては飛出す、一つ所に落着けず、所々方々を
渉
(
わた
)
り歩いたものだ。
越後獅子
(新字新仮名)
/
羽志主水
(著)
大和までは七里の道のりで、二つの峠を越え一つの川を
渉
(
わた
)
り、後は原っぱや山路を通らなければならなかったが、道は丁度長いなだらかな山腹にかかっていた。
蕎麦の花の頃
(新字新仮名)
/
李孝石
(著)
彼の大地が静かに永遠に抱き葬つた
百千
(
もゝち
)
の霊魂とともに未来永劫に
渉
(
わた
)
つて可能なる無限無数のまだ生れない生命とともに、さては地の喜びを
頒
(
わか
)
つ空の星とともに
愛は、力は土より
(新字旧仮名)
/
中沢臨川
(著)
渉
常用漢字
中学
部首:⽔
11画
“渉”を含む語句
交渉
跋渉
干渉
徒渉
渉猟
渡渉
盤渉調
没交渉
渉漁
盤渉
博渉家
沒交渉
関渉
畿内跋渉
猟渉
無交渉
漫渉
渡渉退却
秇苑日渉
行渉
...