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榎
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えのき
ふりがな文庫
“
榎
(
えのき
)” の例文
森と言っても崖ぎしの家に過ぎない、ただ非常に古い
榎
(
えのき
)
と
椎
(
しい
)
とが屋根を覆うていて、おりおり路上に鷺の白い糞を見るだけであった。
後の日の童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
市場の西の大
榎
(
えのき
)
の下では、“
醜草市
(
しこぐさいち
)
”とも、ただ“クサ市”ともよぶ泥棒市がときどき立つが、それさえ、かれには、愉快に見えた。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
というから粥河はこれを飲んでは大変と
顔色
(
がんしょく
)
が変りまする。其の
間
(
うち
)
海の方に月は追々昇って来ますると、庭の
榎
(
えのき
)
に縛られて居る小兼が
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
袂
(
たもと
)
に
黒
(
くろ
)
く、こんもりと
濃
(
こ
)
い
緑
(
みどり
)
を
包
(
つゝ
)
んで、
遙
(
はる
)
かに
星
(
ほし
)
のやうな
遠灯
(
とほあかり
)
を、ちら/\と
葉裏
(
はうら
)
に
透
(
すか
)
す、
一本
(
ひともと
)
の
榎
(
えのき
)
の
姿
(
すがた
)
を、
前
(
まへ
)
に
斜
(
なゝめ
)
に
見
(
み
)
た
處
(
ところ
)
で
月夜車
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
夜、父が寄席へ出かけた留守中、浜子は新次からお
午
(
うま
)
や
榎
(
えのき
)
の夜店見物をせがまれると、留守番がないからと言ってちらりと私の顔を見る。
アド・バルーン
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
▼ もっと見る
一緒に
榎
(
えのき
)
の実を集めたり、時には
橿鳥
(
かしどり
)
の落して行った青い
斑
(
ふ
)
の入った羽を拾ったりした少年時代の遊び友達の側へ帰って行った。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
何しろ二十年ちかく昔の事であるから、記憶も薄くなつてはつきりしないが、お宮の坂の下の、
榎
(
えのき
)
小路、といふところだつたと覚えてゐる。
津軽
(新字旧仮名)
/
太宰治
(著)
平次の指さしたのは、塀の内から大きな
榎
(
えのき
)
の枝が差出たあたり、塀から二間ばかり離れて流れて居る、三尺ほどの溝川でした。
銭形平次捕物控:173 若様の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
後世にも峠を境木峠と呼ぶもの多く、その木は主として
榎
(
えのき
)
であったゆえにまた榎峠の多いことは、昨年の『考古学雑誌』にもこれを述べた。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「こは
訝
(
いぶ
)
かし、路にや迷ふたる」ト、
彼方
(
あなた
)
を
透
(
すか
)
し見れば、年
経
(
ふ
)
りたる
榎
(
えのき
)
の
小暗
(
おぐら
)
く茂りたる陰に、これかと見ゆる洞ありけり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
墓を囲んだ
杉
(
すぎ
)
や
榎
(
えのき
)
が燃えるような芽を出している。僕にはなぜか苦しすぎる風景であった。夜が待ち遠しい位だ。早く夜になってくれるといい。
魚の序文
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
と呼びながら、
身長
(
せい
)
の高い肩幅の広い男が、大
榎
(
えのき
)
の
裾
(
すそ
)
の、
藪
(
やぶ
)
の蔭から、ノッソリと現われて来た。その声で解ったと見え
甲州鎮撫隊
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
海晏寺の前の
榎
(
えのき
)
の傍で擦れちがい、八幡祠の
諍闘
(
けんか
)
の際に見た女にそっくりであった。女は広巳と眼をあわすなり
莞
(
にっ
)
とした。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
わたくしは此句を
黙誦
(
もくしょう
)
しながら、寝間着のまま
起
(
た
)
って窓に
倚
(
よ
)
ると、崖の
榎
(
えのき
)
の黄ばんだ其葉も大方散ってしまった
梢
(
こずえ
)
から、鋭い
百舌
(
もず
)
の声がきこえ
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
すると直ぐそこから
榎
(
えのき
)
が芽を出して、正月の十七日にはその枝に沢山の大判小判の金貨がなりました。正月にかざる繭玉の由来はこれだと申します。
竜宮の犬
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
向う座敷は障子をあけ放して、その縁側に若い女客が長い洗い髪を日に乾かしているのが、
榎
(
えのき
)
の大樹を隔ててみえた。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
川向こうを見ると城の
石垣
(
いしがき
)
の上に
鬱然
(
うつぜん
)
と茂った
榎
(
えのき
)
がやみの空に物恐ろしく広がって
汀
(
みぎわ
)
の茂みはまっ黒に眠っている。
花物語
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
榎
(
えのき
)
の古株の多年地中にうずもれしが、このごろ掘り出だされしために、
燐光
(
りんこう
)
を放ちしものなることが判明せりとぞ。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
つい下の
榎
(
えのき
)
離れて
唖々
(
ああ
)
と飛び行く
烏
(
からす
)
の声までも
金色
(
こんじき
)
に聞こゆる時、雲
二片
(
ふたつ
)
蓬々然
(
ふらふら
)
と赤城の
背
(
うしろ
)
より浮かび
出
(
い
)
でたり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
ここだと思いやしたから急に
榎
(
えのき
)
の姿を隠してアハハハハと源兵衛村中へ響くほどな大きな声で笑ったやりやした。
琴のそら音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
塀
(
へい
)
の向うは
松平相模守
(
まつだいらさがみのかみ
)
の中屋敷で、大きな
榎
(
えのき
)
が五本並んでおり、その裸になった枝に雀が群れていて、ときどきぱっと飛び立ってはまたべつの枝にとまり
あだこ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ある小駅につづく露次では、うず高くつみ重ねられた芋俵をめぐって、人が
蟻
(
あり
)
のように動いていた。よじくれた
榎
(
えのき
)
と
叢
(
くさむら
)
のはてに、浅い海が白く光っていた。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
炭坑事務所から二十間ばかり離れて、三四本の大きな
榎
(
えのき
)
が立っていた。その下に、三匹の馬が繋がれていた。
狂馬
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
だんなは物知りだからご存じでしょうが、下谷の
練塀
(
ねりべい
)
小路の三本
榎
(
えのき
)
の下に、榎妙見というのがありますね。
右門捕物帖:24 のろいのわら人形
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
からからに乾いて巻き
縮
(
ちぢ
)
れた、
欅
(
けやき
)
の落葉や
榎
(
えのき
)
の落葉や杉の枯葉も交った、ごみくたの類が、家のめぐり庭の隅々の、ここにもかしこにも一団ずつ
屯
(
たむろ
)
をなしている。
新万葉物語
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
欝蒼とした
欅
(
けやき
)
、
榎
(
えのき
)
、杉、松の巨木に囲まれた万延寺裏手の墓地外れに一際目立つ「蔵元
家
(
や
)
先祖代々之墓」と彫った
巨石
(
おおいし
)
が立っているのが、木の間隠れに往来から見える。
狂歌師赤猪口兵衛:博多名物非人探偵
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
榎
(
えのき
)
のようでもあるし、
楠
(
くす
)
の木のようでもあるが、といって話しあっていると、畳の上に寝そべって、紙の上に絵をかいていた俵的が、むくむくと起きあがったと思うと
親馬鹿入堂記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
庭の隅に一本の
榎
(
えのき
)
の大木があった。その枝の間を、まんまるい月がそろそろと昇りはじめた。初秋の風が、しのびやかに葉末をわたるごとに、露がこぼれ落ちそうだった。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
女はこの
界隈
(
かいわい
)
を、のたうち廻ったものらしく、二、三町隔たった広場にある、大きな
榎
(
えのき
)
の下に、下駄や
櫛
(
くし
)
のようなものが散っていた。自身に毒を
服
(
の
)
んだという話もあった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
榎
(
えのき
)
の
幹
(
みき
)
をたたいてきたえただけのことがあった。尾沢生は口先ばかりだ。ただ堀口生にけしかけられて気が強くなっているのだから、一
騎打
(
きう
)
ちでは元来正三君の敵でない。
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
参宮道の真中の
榎
(
えのき
)
の大樹の下に立つと、何かいい知れず悲しくなって、その大樹に身を寄せて
面
(
おもて
)
を
蔽
(
おお
)
うているうちに、いつしか、しくしくと泣いている自分を発見しました。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
金竜山
(
きんりゅうざん
)
浅草寺
(
せんそうじ
)
名代の
黄粉
(
きなこ
)
餅、伝法院大
榎
(
えのき
)
下の
桔梗屋安兵衛
(
ききょうややすべえ
)
てんだが、いまじゃア所変えして大
繁昌
(
はんじょう
)
だ。馬道三丁目入口の角で、
錦袋円
(
きんたいえん
)
と廿軒茶屋の間だなあ。おぼえときねえ
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
高知市外の
潮江
(
うしおえ
)
天満宮には、
椋
(
むく
)
と
榎
(
えのき
)
の並木があった。大粒で肉付きのよい椋の果は小粒で色の美しい榎の果より、はるかに甘く、一合も食べたら、結構おやつの代りになった。
甘い野辺
(新字新仮名)
/
浜本浩
(著)
西側は、
欅
(
けやき
)
や
椋
(
むく
)
、
榎
(
えのき
)
などの大樹が生い茂り、北側は、濃い竹林が
掩
(
おお
)
いかぶさっている。
桑の虫と小伜
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
枸杞
(
くこ
)
(葉)。イロハカヘデ(葉)。山吹の新芽。藤の芽と蕾。
榎
(
えのき
)
の新芽。ギバウシユ。ナヅナ。ヤブカンザウ(新芽)。ツハブキ(莖)。雪の下の嫩葉。ミミナグサ。スズメノヱンドウ。
すかんぽ
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
隣りの寺の屋敷にある大きな、高い
榎
(
えのき
)
の
梢
(
こずえ
)
が、寂寞に堪えないといったような表情をして(実際、そんなに感ぜられた)軽くふわふわとそよいでいた。僕はわけもなく悲しくなって来た。
六月
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
昼さがりからは冬の陽の衰えた薄日も射さず、雪こそは降り出さなかったが、その気配を見せている灰色の雲の下に、骨を削ったような
榎
(
えのき
)
や樫の木立は、寒い凩に物凄い叫びをあげていた。
不幸
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
着
(
き
)
縫止
(
ぬひとめ
)
のはせ返りし
菅笠
(
すげがさ
)
と錢は
僅
(
わづか
)
百廿四文ばかりの身上にて
不※
(
ふと
)
立出
(
たちいで
)
江戸へ行んとせしが又甲斐國へ赴かんと
籠坂峠
(
かごさかたうげ
)
まで到りしが頃は六月の大暑
故
(
ゆゑ
)
榎
(
えのき
)
の
蔭
(
かげ
)
に
立寄
(
たちより
)
清水
(
しみづ
)
を
掬
(
むす
)
びて顏の
汗
(
あせ
)
を流し足を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
支那でいわゆる冬瓜蛇はこの族のものかと
惟
(
おも
)
うが日本では一向見ぬ。『西遊記』一に、肥後五日町の古い
榎
(
えのき
)
の
空洞
(
ほら
)
に、
長
(
たけ
)
三尺余
周
(
めぐ
)
り二、三尺の白蛇住む。その形犬の足なきかまた芋虫に
酷
(
よく
)
似たり。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
夜目
(
よめ
)
ながら
老木
(
おいき
)
の
榎
(
えのき
)
洩る月のしろがねの網に狂ふものあり
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
或日わざ/\前年彼を見た
榎
(
えのき
)
の蔭に行つてみた。
古い村
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
半日の閑を
榎
(
えのき
)
や
蝉
(
せみ
)
の声
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
「
榎
(
えのき
)
さ。」
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
雀
(
すゞめ
)
だつて、
四十雀
(
しじふから
)
だつて、
軒
(
のき
)
だの、
榎
(
えのき
)
だのに
留
(
と
)
まつてないで、
僕
(
ぼく
)
と
一所
(
いつしよ
)
に
坐
(
すわ
)
つて
話
(
はな
)
したら
皆
(
みんな
)
分
(
わか
)
るんだけれど、
離
(
はな
)
れてるから
聞
(
き
)
こえませんの。
化鳥
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
弟はまた弟で、
榎
(
えのき
)
の実の落ちた裏の
竹藪
(
たけやぶ
)
のそばの細道を遊び回るやら、
橿鳥
(
かしどり
)
の落としてよこす青い
斑
(
ふ
)
の入った小さな羽なぞを
探
(
さが
)
し回るやら。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「親分も知つて居なさるでせう、十二
社
(
そう
)
の
榎
(
えのき
)
長者——新宿から角筈へかけて、一番大地主で、家には鎌倉の
執權
(
しつけん
)
とかの、お墨附を持つて居る」
銭形平次捕物控:249 富士見の塔
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
古い城下の、
椎
(
しい
)
や
榎
(
えのき
)
やタモの大木のある裏町には、星ぞらがともすれば
蔽
(
おお
)
われがちで、おけらがぶるぶると、
溝汁
(
どぶじる
)
の暗い片かげに啼いていた。
蛾
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
ヨワン
榎
(
えのき
)
は
伴天連
(
バテレン
)
ヨワン・バッティスタ・シロオテの墓標である。
切支丹
(
キリシタン
)
屋敷の裏門をくぐってすぐ右手にそれがあった。
地球図
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
道しるべの古びた石の立っている
榎
(
えのき
)
の木蔭。曼珠沙華の真赤に咲いている道のとある曲角に、
最前
(
さいぜん
)
から荷をおろして休んでいた一人の婆さんがある。
買出し
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
向座敷は障子をあけ放して、その縁側に若い女客が長い洗い髪を日に乾かしているのが、
榎
(
えのき
)
の大樹を隔ててみえた。
秋の修善寺
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
“榎(エノキ)”の解説
エノキ(榎、学名: Celtis sinensis)は、アサ科APG体系ではアサ科に分類されるが、古いクロンキスト体系や新エングラー体系ではニレ科に分類されていた。エノキ属の落葉高木。別名では、ナガバエノキ、マルバエノキともよばれる。
(出典:Wikipedia)
榎
漢検準1級
部首:⽊
14画
“榎”を含む語句
榎町
大榎
榎本武揚
乳房榎
南榎町
一本榎
二本榎
榎本
榎木
榎坂
時雨榎
榎本釜次郎
榎樹
榎物語
麻布二本榎
牛込南榎町
芝二本榎
榎津
衣裳榎
榎本虎彦
...