ほが)” の例文
ひかりは、ほのかにあしもとをあたためて、くさのうちには、まだのこったむしが、ほそこえで、しかし、ほがらかにうたをうたっていました。
丘の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たいへんほがらかな、可愛かわいい娘さん達なので、喜んで、一緒に写真をとったり名刺めいしもらったり、手振てぶり身振りで会話をしたりしました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
また、もうひとりのほうは、まなこほがらかに、眉濃く、背丈すぐれ、四肢びやかな大丈夫で、両名とも、孫策の前につくねんと立ち
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
テムプル先生は、いつも彼女の容子に何か靜かなほがらかなものを、態度にどことない威嚴ゐげんを、言葉にはひんよく穩かなものを持つてゐた。
「図書係の京町きょうまちミチ子嬢。こちらは今日から入所された理学士古屋恒人ふるやつねと君。よろしく頼むよ」四宮理学士の声はほがらかであった。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
、あのようにほがらかにうたっております。……このごろ破門を許されまして、舞台に立つことができましたので、元気になったのでござります
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私たちも一寸ちょっと芝居気しばいぎを出して、パナマや雀頭巾すずめずきんを振る。童話の中の小さな王子のお蔭で、ほがらかに朗らかに私たちも帽子が振れるというものだ。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
チァイコフスキイのほがらかに憂鬱な曲が、静かにオーケストラ・ボックスを漏れてきた。指揮者のバトンが彼の胸をコトン、コトン! と叩いた。
(新字新仮名) / 池谷信三郎(著)
常に山頂の風力の強暴なるに似ず、日光のほがらかなるを見て、時としてさいなどはもし空気が目に見ゆるものならば、このはげしき風を世人せじんに見せたし
そういって感慨にふけっているようであるが心はほがらかである。鶴見は自分の年とったことは余り考えずに、梅の老木になって栄えているのを喜んでいる。
世界が今ほがらかに成つた許りの色をしてゐる。めしまして茶をんで、縁側に椅子を持ち出して新聞を読んでゐると、約束通り野々宮君が帰つて来た。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
笑うこともまれに、こぐにも酒の勢いならでは歌わず、醍醐だいごの入江を夕月の光くだきつつほがらかに歌う声さえ哀れをそめたり、こは聞くものの心にや、あらず
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ほがらかに答えたが、母は落ちついて、それを幾人でわけるのですか、と言ったので、私はがっかりした。
帰去来 (新字新仮名) / 太宰治(著)
儀式らしく、ほがらかに、さわやかに、彼は兄貴のフェリックスのうしろへ並んで立つ。兄貴のフェリックスは総領である姉のエルネスチイヌの後ろに控えている。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
真紅の花の咲満さきみちた、雲の白い花園に、ほがらかな月の映るよ、とその浴衣の色を見たのであった。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さも自分をトーナメントに出場した中世の騎士きしのように想像したり——ああ、わたしの耳にきつける風のなんとほがらかだったことよ! ——あるいは顔を大空へ振向けて
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
ほがらかに笑う新三郎を伏し拝んで、平次は八丁堀の往来へ飛出しました。襟へベットリ冷汗。
そして吉備きび中山なかやまおびにしてゐるといふようなことは、べつめづらしくもなんともないのであるにもかゝはらず、われ/\はそれにたいして、ほがらかな氣持きもちをけずにゐられません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
彼はほがらかな青空を背にして、鉄棒かなぼうに腰を掛けながらさも愉快そうに声高く叫びました。
金色の死 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
だが、実に奇妙なことには、この激情のさなかに、人もなげなるほがらかな哄笑が響き渡ったのである。しかもその哄笑の主は、四人の男に組み敷かれた明智小五郎その人ではなかったか。
黒蜥蜴 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ああなんというほがらかな晩だったろう。子ども心にも私はほっと一安心した。
(新字新仮名) / 金子ふみ子(著)
歯切れのいい口調で、まるで朗読しているようなほがらかな声で堂々というのでしょう。あたしすっかり聞き惚れちゃったわ。外の人もみんなそうだったの。ところがね。下村さんだけがね。
ニッケルの文鎮 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
恋愛に就いて、正直も純粋も大切だとはおもうが、もっと大切なことは、自分の周囲にを散らさぬ用心だろう。つつましいほがらかな恋愛だったら、不貞と云いきれないような気がする。
恋愛の微醺 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
日の光が町全体に明るく踊って、道ゆく人の足もおのずから早く、あわただしい暮れの気分を作ってるなかにも、物売りの声がゆるやかに流れて、徳川八代泰平の御治世ごじせいは、どこかほがらかである。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
自分でもその自分がとうとう滑稽こっけいになった。土曜日から天気が上った。龍介は初めて修学旅行へ行く小学生のような気持で、晩眠れなかった。その日彼は停車場へ行った。彼はほがらかな気分だった。
雪の夜 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
妾は、久しぶりでほがらかな気持ちで、あの人の帰りをまっていた。
わがやまひたまひしかどほがらにていませばか吾の心はぎぬ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
サーちゃんは、ほがらかに笑った。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
女王きみの御代 これよりほがらに
髪切虫 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
こよひほがらのそらにして
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
ほがらかな 日
秋の瞳 (新字旧仮名) / 八木重吉(著)
なつのはじめの時分じぶんには、どんなに、自分じぶんたちはたのしかったろう。このあたりは、自分じぶんたちのほがらかにうたうたこえでいっぱいであった。
雪くる前の高原の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ご婦人です」助手の須永すながほがらかさをいて隠すような調子で答えた。「しかも年齢としの頃は二十歳はたちぐらいの方です」
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ほがらかになり、「I am a oarsman Rowing.」と漕ぐ恰好をすると、大袈裟おおげさな身振りで
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
中二日なかふつかいて、突然平岡がた。其は乾いたかぜほがらかなそらいて、あをいものがうつる、つねよりはあつい天気であつた。あさの新聞に菖蒲の案内がてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
眞紅しんくはな咲滿さきみちた、くもしろ花園はなぞのに、ほがらかなつきうつるよ、と浴衣ゆかたいろたのであつた。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ほがらかに笑ふ新三郎を伏し拜んで、平次は八丁堀の往來へ飛出しました。襟へベツトリ冷汗。
ああ何というほがらかな晩だったろう。子供心にも私はほっと一安心した。静かな、静かな、平和な晩だ‼ けれど、やがて私達は余りにも静かな生活を余儀なくされなければならなかった。
きみのまなこはほがらかに
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
ほがらにむや神殿しんでん
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「そうすれば、とくちゃんと三にんはしりっこをしよう。」と、きよちゃんは、吉坊よしぼうこころなんかわからず、ほがらかでありました。
父親と自転車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
勝ってかえる人達はとにかく元気でした。陸上の東田良平が、大きなかめの子を二ひき、記念にもらくびひもをつけ、ほがらかに引張って歩いているのが目立っていました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「え、え、」と、ちひさなしはぶきを、彼方かなた二階にかいでしたのが、何故なぜ耳許みゝもとほがらかにたかひゞいた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
秋日和あきびよりのつくほど上天氣じやうてんきなので、徃來わうらいひと下駄げたひゞきが、しづかな町丈まちだけに、ほがらかにきこえてる。肱枕ひぢまくらをしてのきからうへ見上みあげると、奇麗きれいそら一面いちめんあをんでゐる。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
人を縛らない時は、本當にほがらかな平次だつたのです。
そのとき白丘ダリアはほがらかな声で云った。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
にあった、さびしいおかあさんのおかおえて、どこをても、たのしいほがらかなおかあさんのかおわらっていました。
さびしいお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
しばらくすると女はこの紋章の下に書きつけてある題辞をほがらかにじゅした。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
スミレ局長はほがらかにいった。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
日章旗にっしょうきのひるがえる商船しょうせんとか、そんなような、きよらかで、ほがらかなうちにもさびしい、けしきがかぶのだよ。
兄の声 (新字新仮名) / 小川未明(著)