“既:も” の例文
“既:も”を含む作品の著者(上位)作品数
室生犀星10
石川啄木7
松本泰4
江見水蔭4
岡本綺堂4
“既:も”を含む作品のジャンル比率
文学 > 英米文学 > 戯曲33.3%
文学 > ロシア・ソヴィエト文学 > 小説 物語3.2%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.3%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
「ほんとうにいんですか。まだ血色が不良よくないようだが……。何しろ、飛んだ災難でお気の毒でしたねえ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大丈夫だいじやうぶだといふところで、望生ぼうせいに一たい如何どうしたのかとうてると
池の縁を通りかかったとき、前夜道路を横切っていった女の後姿が、チラと脳裡に浮んだが、公園を出るとうすっかり忘れていた。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
燈籠というものはその庭を一と目眺めたときに、うその位置が宿命的に定っているほど動かないところにあるものである。
庭をつくる人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
松下のり方は、他人ひとを見ればかたきと思つた封建時代の遺習で、型としてはかびが生えてゐる。
単に俳句を作るといふやうなノンビリさはそこにはう見えなくなつて、凡ゆる芸術制作の苦しさばかりがあるのである。
俳句は老人文学ではない (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
奥様は七つ違いの二十三で、御縁組になってからう六年になるそうですが、まだ御子様は一人もございませんでした。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私は自分の用事を済してから根気よく人々の間を泳いで探し廻ったが、問題の老婦人の姿はう何処にも見えなかった。
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
「冬子さん、うだね。気分は悉皆すっかりいのかね。」と、安行は霎時しばらくして口を切った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
年は四十にだ二ツ三ツ間があるといふことであるが、頭はう胡麻鹽になツて、顏も年の割にしなびてゐる。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「オヤ、うお帰宅かえりになったな」と思いながら、軽く扉を叩いたが、一向応答がない。そこで恐る恐る扉を開けて、中を覗いてみた。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
すると女の答えるには、其の眼鏡を懸けたおふささんには、う情人が付いて居て、其の夜も其の男の来るのを待って居るとの事で有りました。
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
その日は帰途かへりに雨に会つて来て、食事に茶の間に行くと、外の人はう済んで私一人限ひとりきりだ。
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『初めよう。僕は先刻さつきから待つてる。』と言つたが、その実私はう大した話でも無い様に思つてゐた。
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
論語はい本だ。い本だからと言つて、それで人生がひつくりかへるものなら、この世は幾度かう引くり覆つてゐる筈だ。
う凾館からは引上げて小樽に來てゐるのであるが、さう何時までも姉の家に厄介になつても居られないので、それやこれやの打合せに來たのだ。
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
わたしはうお寺の鐘の音をきいただけでも、おそろしい阿闍利さまの悪相をしのばずにはおられません。
あじゃり (新字新仮名) / 室生犀星(著)
ヂュリ いゝえ、母樣かゝさま明日あすしき相應ふさはしい入用いりよう品程しなほど撰出えりだしておきました。
吉野はう顔のほてりも忘られて、酔醒よひざめの佗しさが、何がなしの心の要求のぞみと戦つた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それよりもう永い間、おかにいる為吉には機関の震動とその太い低音とが此の上なく懐しかった。
上海された男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
——その二人はつて了つて穢ない室の、補布つぎだらけな五六の蚊帳の隅つこに、脚を一本蚊帳の外に投出して、あふのけに臥てゐた。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ういはずと行つてやつて呉れたまへな、對手むかふではう一生懸命になつてるんだから。』
媒介者 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
吉野は、今日町に行つて加藤で御馳走になつた事までも、う五六日も十日も前の事の様に思はれた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ほんの僅かの間に、其處にはう私の見るを厭つた大爭鬪が石段の半ば以上に亙つて開かれてゐた。
「雪岡さん。あなたう好い情婦おんなが出来たんですってねえ。大層早く拵えてねえ。」と、あの婆さんのことだから、言葉に情愛を付けて面白く言う。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
秋もう末——十月下旬の短い日が、何時しかトツプリと暮れて了つて、霜も降るべく鋼鉄色はがねいろに冴えた空には白々と天の河がよこたはつた。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
時々ふッとう駄目だろうと思うと、きりでも刺されたように、急に胸がキリキリと痛む。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
眠元朗は黙って、心でう娘にもそう見えるかなと思うと、それが得も言われず温かい気もちになったが、また反対にがっくりと腰が折れ込んだような気もした。
みずうみ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
吉野はう顏のほてりも忘られて、醉ひ醒めの侘しさが、何がなしの心の望と戰つた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
たゞ口腹こうふくよくたすといふのみで、甚麼物どんなものも皆同じ様にんでぐつとくだすに過ぎなかつた。
茸の香 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
わが歩いてる径の彼方から白手拭が見える、と、かれうホクホク嬉しくてならぬ。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
童子は、そういうと家の中をさし覗いた。ココア色をした小鳥が離亭はなれの柱に、その朱塗の籠のなかで往き来し、かげは日影のひいたあたりにはう無かった。
後の日の童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
平吉はう五十の上、女房はまだ二十はたちの上を、二ツか、多くて三ツであろう。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
というより不意に、足や額に痛みを感じ、感じるときはう額ぎわを切られていた。
天狗 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「ひょっとすると気がふれたかも知れない。あの眼はただごとではないぞ。ひょっとするとだ。だがとっくに狂れてしまった後の瞬間かも知れないのだ。」そう思って、
香爐を盗む (新字新仮名) / 室生犀星(著)
三十八ねん、三十九ねん電車でんしやつうじたし。
母は気が弱いので、う目尻を袖口で拭つて、何か独りで囁※ぶつぶつこぼしながら、それでも弟に呍吩いひつけられたなりに、大鍋をガチヤ/\させて棚から下してゐた。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ああ、母上にもう逢えぬ、いいなずけのマリヤにもう逢えぬ。
此日このひかぎり、探檢たんけんにはかなかつた。何故なにゆゑならば、とて主墳發見しゆふんはつけん見込みこみいからであつた。
まことに彼女を失つてからう三年の春がめぐつて来たのであります。
ザボンの実る木のもとに (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
「ヘエ、そしてよつちやん、う牢屋へ行らしつたのですか」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
其邊はう場末で、通り少なき廣い街路まちは森閑として、空には黒雲が斑らに流れ、その間から覗いてゐる十八九日許りの月影に、街路に生えた丈低い芝草に露が光り、蟲が鳴いてゐた。
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
だが、肝腎の腹はその瞬間にすつかりきまつてゐるのだ。
部屋へ来てみると、ランプを細くしてう床もってある。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
じっさい、日本を出てから、その時でう一年近く経っていた。
わけても電車のなかや街路や商店の入口などで、はっとするほどの女の顔をみた瞬間から、かれ自身がうみずから呼吸するところの空気を、別なものに心でえがき、心で感じるからであった。
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「わたくしもう行くところがなく、里下がりが命じられそうな気がいたします。わたくしたちは我儘わがままな思うままの二人を世間に見せびらかしていたようなものでございますもの。」
花桐 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
相変らずの油照あぶらでり、手も顔もうひりひりする。
五六十円と睨んだ彼女の懐中はう自分の様に思えだした。
乗合自動車 (新字新仮名) / 川田功(著)
なに、う知つてゐる? 中々油断のならない狼連だ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
隣りではう親戚の者が集って仏の仕末をしていた。
秘められたる挿話 (新字新仮名) / 松本泰(著)
松潜まつくゞりはかへでの枝に居らぬ。
茸の香 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
それに掛っては如何どうにも成らなかった。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
こんな時彼はう見得も外聞も考えない。
偽刑事 (新字新仮名) / 川田功(著)
知っていなかったとすれば尚おのこと、知られたくなかったのだが、う斯う突き止められた上に、悪戯いたずら岡妬おかやきの強い人間と来ているから、此の形勢では早晩いずれ何とかずにはいまい。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
女はう泣声ではなかった。こう云い乍ら半帕に伏せた眼を上げた。彼は此時、本能的とでも云った様に其名刺を引込めた。此時、彼女も彼も殆んど同時に、今や町を巡廻して来る一人の巡査を眼の前に見付け出した。
偽刑事 (新字新仮名) / 川田功(著)
どこかでう一番鶏の歌う声が聞えた。
黄八丈の小袖 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
『もう可いから、彼方へ御行で……お前の云った事は、う充分解ってる。其処を退いたら可いだろう。邪魔だよ、何時までも一人で、其処を占領しているのは。御覧、皆さんが彼様に立って居らッしゃるじゃないか。』
昇降場 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
今はう日本の土地を離れ切った。
上海された男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
難有い/\と言ひ續けながら、やがてはどうせ私もう長い事は無いし、いつか一度思ふ存分飮んで見度いと思つてゐたが、矢つ張り阿彌陀樣あみださまのお蔭かして今日旦那に逢つて斯んな難有ありがたいことは無い
山寺 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
貴方、浅草の寿座ことぶきざに掛って居る芝居見た事ある? 其の人は一座の女形おやまなんですって、今夜もう今頃はお娯しみの最中よ、そりゃ仲が良くって、妾達ける位だわ、と野放図も無く喋り立てます。
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
冗談じょうだんじゃアない。あの方はA嬢と仰有おっしゃる私共の大切なお客様ですよ。お父様の病気見舞にいらしって、今日でう一週間も御滞在になっているのですよ。」と笑いながらいったが、フト声を落して、
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
あれ造物者ざうぶつしやが作ツた一個の生物せいぶつだ………だから立派に存在している………とすりや俺だツて、何卑下ひげすることあ有りやしない。然うよ、此うしてゐるのがう立派に存在の資格があるんだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
彼がその涙にうるんだ眼で、ういつの間にか去つて微かに遠雷のやうに聞こえる嵐の音に耳を傾けながら、降る如く一面に星の現はれた空をぽかんと仰向いて見上げてゐた時、突然何か驚くべきものを見たやうに彼は「アツ」と云つた。
はれ、無慚むざんな! こゝに若殿わかとのころされてござる、のみならず、二日ふつかはふむられてござったヂュリエットどのが、ついいまがたなっしゃれたやうにながして、ぬくいまゝで。
砧村きぬたむら途中とちう磨石斧ませきふひろひ、それから小山こやまあがくちで、破片はへんひろつたが、此所こゝまでに五ちかあるいたので、すこしくまゐつてた。
我がつま、何卒御赦おゆるし下ださいまし、貴方の博大の御心には泣いて居るのです、私はう決心致しました、私は父から全く離れました、家庭からも全く離れました、教会からも離れました、私は天の神様をのみ父とし母として、地に散在するあはれなる兄弟と
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
わたくしがつた時分には勿論もちろん何事もなかつたのです。それからも別に変つた様子もなくつて、宿の女中にたのんで、雨のためにう一日逗留するといふ電報を東京のうちへ送つたさうです。さうして、食卓ちゃぶだいにむかつて手紙をかき始めたさうです。
それでもう今夜はあの娘も斷念あきらめたと見えて、それを話し出した時には流石さすがに泣いてゐたけれども、平常のやうに父親の惡口も言はずねもせずあの通りに元氣よくして見せて呉れるので、それを見ると却つて可哀相でと、母は切りに水洟みづばなを拭いてゐる。
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)