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ふりがな文庫
“
既
(
も
)” の例文
砧村
(
きぬたむら
)
の
途中
(
とちう
)
で
磨石斧
(
ませきふ
)
を
拾
(
ひろ
)
ひ、それから
小山
(
こやま
)
の
上
(
あが
)
り
口
(
くち
)
で、
破片
(
はへん
)
を
拾
(
ひろ
)
つたが、
既
(
も
)
う
此所
(
こゝ
)
までに五
里
(
り
)
近
(
ちか
)
く
歩
(
ある
)
いたので、
余
(
よ
)
は
少
(
すこ
)
しく
參
(
まゐ
)
つて
來
(
き
)
た。
探検実記 地中の秘密:05 深大寺の打石斧
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
秋も
既
(
も
)
う末——十月下旬の短い日が、何時しかトツプリと暮れて了つて、霜も降るべく
鋼鉄色
(
はがねいろ
)
に冴えた空には白々と天の河が
横
(
よこた
)
はつた。
赤痢
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
町の
尽頭
(
はずれ
)
まで来た時に、お杉は初めて
立止
(
たちどま
)
った。尾行して来た人々も
既
(
も
)
う散って
了
(
しま
)
った。お杉は柳屋の
門
(
かど
)
に寄って、
皴枯
(
しわが
)
れた声で
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
もう可いから、彼方へ御行で……お前の云った事は、
既
(
も
)
う充分解ってる。其処を退いたら可いだろう。邪魔だよ、何時までも一人で、其処を
昇降場
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
燈籠というものはその庭を一と目眺めたときに、
既
(
も
)
うその位置が宿命的に定っているほど動かないところにあるものである。
庭をつくる人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
▼ もっと見る
女は
既
(
も
)
う泣声ではなかった。こう云い乍ら半帕に伏せた眼を上げた。彼は此時、本能的とでも云った様に其名刺を引込めた。
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
すると女の答えるには、其の眼鏡を懸けたおふささんには、
既
(
も
)
う情人が付いて居て、其の夜も其の男の来るのを待って居るとの事で有りました。
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
論語は
善
(
よ
)
い本だ。
善
(
よ
)
い本だからと言つて、それで人生が
引
(
ひつ
)
くり
覆
(
かへ
)
るものなら、この世は幾度か
既
(
も
)
う引くり覆つてゐる筈だ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
私は自分の用事を済してから根気よく人々の間を泳いで探し廻ったが、問題の老婦人の姿は
既
(
も
)
う何処にも見えなかった。
日蔭の街
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
既
(
も
)
ういつの間にか去つて微かに遠雷のやうに聞こえる嵐の音に耳を傾けながら、降る如く一面に星の現はれた空をぽかんと仰向いて見上げてゐた時
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
ヂュリ いゝえ、
母樣
(
かゝさま
)
、
明日
(
あす
)
の
式
(
しき
)
に
相應
(
ふさは
)
しい
入用
(
いりよう
)
な
品程
(
しなほど
)
は
既
(
も
)
う
撰出
(
えりだ
)
しておきました。それゆゑ、
妾
(
わたし
)
にはお
介意
(
かまひ
)
なう、
乳母
(
うば
)
はお
傍
(
そば
)
で
夜中
(
よぢゅう
)
お
使
(
つか
)
ひ
下
(
くだ
)
されませ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
既
(
も
)
う
紅葉
(
もみじ
)
するのは、して、何時か
末枯
(
すが
)
れて了っている中に、ひょろ/\ッと、
身長
(
せい
)
ばかり伸びて、
勢
(
せい
)
の無いコスモスが三四本わびしそうに咲き遅れている。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
ほんの僅かの間に、其處には
既
(
も
)
う私の見るを厭つた大爭鬪が石段の半ば以上に亙つて開かれてゐた。
樹木とその葉:14 虻と蟻と蝉と
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
相変らずの
油照
(
あぶらでり
)
、手も顔も
既
(
も
)
うひりひりする。残少なの水も一滴残さず飲干して了った。
渇
(
かわ
)
いて渇いて耐えられぬので、
一滴
(
ひとしずく
)
甞める
積
(
つもり
)
で、おもわずガブリと皆飲んだのだ。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
時々ふッと
既
(
も
)
う駄目だろうと思うと、
錐
(
きり
)
でも刺されたように、急に胸がキリキリと痛む。何とも言えず苦しい。
馴染
(
なじみ
)
の町々を通っても、何処を
如何
(
どう
)
車が走るのか分らない。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
『
然
(
さ
)
ういはずと行つてやつて呉れたまへな、
對手
(
むかふ
)
では
既
(
も
)
う一生懸命になつてるんだから。』
媒介者
(旧字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
なに、
既
(
も
)
う知つてゐる? 中々油断のならない狼連だ。旦那や
夫人
(
おくさま
)
が御心配なさるのも無理は無い。併し嬢様は滅法お
怜悧
(
りこう
)
だから子、君達のやうな間抜に喰はれる筈はないワ。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
平吉は
既
(
も
)
う五十の上、女房はまだ
二十
(
はたち
)
の上を、二ツか、多くて三ツであろう。この姉だった平吉の
前
(
ぜん
)
の家内が死んだあとを、十四、五の、まだ鳥も宿らぬ花が、
夜半
(
よわ
)
の嵐に散らされた。
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
風早學士は、此の醫學校の解剖學擔任の教授で、今日の屍體解剖の執刀者だ。年は四十に
尚
(
ま
)
だ二ツ三ツ間があるといふことであるが、頭は
既
(
も
)
う胡麻鹽になツて、顏も年の割にしなびてゐる。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
必ず一点の
汚涜
(
をどく
)
もありません——貴方の為めに
禍
(
わざはひ
)
の種となるのです、——篠田さん、我が
夫
(
つま
)
、何卒
御赦
(
おゆる
)
し下ださいまし、貴方の博大の御心には泣いて居るのです、私は
既
(
も
)
う決心致しました
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
要するに、そんな事は何うでも
宜
(
よ
)
かった。今は
既
(
も
)
う日本の土地を離れ切った。そして坂本新太郎は死んだのである。其の犯人として日本警察に狩立てられている森為吉も既に存在しないのである。
上海された男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
じっさい、日本を出てから、その時で
既
(
も
)
う一年近く経っていた。
踊る地平線:12 海のモザイク
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
鉄道工事も
既
(
も
)
う
竣
(
をは
)
つた。
椋のミハイロ
(新字旧仮名)
/
ボレスワフ・プルス
(著)
笑
(
わら
)
ひ
事
(
ごと
)
では
無
(
な
)
い、
既
(
も
)
う
何
(
なに
)
か
出
(
で
)
ても
好
(
い
)
い
頃
(
ころ
)
だと、
心中
(
しんちう
)
いろ/\
苦悶
(
くもん
)
して
居
(
ゐ
)
るが
如何
(
どう
)
も
出
(
で
)
ない、
破片
(
はへん
)
、
獸骨
(
じうこつ
)
、そんな
處
(
ところ
)
しか
見出
(
みいた
)
さぬ。
探検実記 地中の秘密:20 大森貝塚の発掘
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
二人は又
接穂
(
つぎほ
)
なさに困つた。そして長い事
黙
(
もだ
)
してゐた。吉野は
既
(
も
)
う顔の
熱
(
ほて
)
りも忘られて、
酔醒
(
よひざめ
)
の佗しさが、何がなしの心の
要求
(
のぞみ
)
と戦つた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
今度は
既
(
も
)
う諦めたのか、
但
(
ただ
)
しは病中の為か、
流石
(
さすが
)
のお杉も執念深く追っては来なかったので、これを幸いに重蔵は又もや
漂泊
(
さすらい
)
の旅路に
上
(
のぼ
)
った。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
画を逆さまに掛けて置いてそれが逆さまだと判るやうだつたら、
既
(
も
)
う一
廉
(
かど
)
の鑑定家といつて
可
(
い
)
い。その上の心得は余り画を愛しないといふ事だ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
というより不意に、足や額に痛みを感じ、感じるときは
既
(
も
)
う額ぎわを切られていた。——それ故城下の剣客は誰一人として立向うことができなかった。
天狗
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
然
(
しか
)
しながら線香の匂は、あながち彼の幻覚
計
(
ばか
)
りではなかった。隣りでは
既
(
も
)
う親戚の者が集って仏の仕末をしていた。
秘められたる挿話
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
と、
捨鉢
(
すてばち
)
になって彼も勝手な理窟を考えた。五六十円と睨んだ彼女の懐中は
既
(
も
)
う自分の様に思えだした。
乗合自動車
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
初め
此方
(
こっち
)
が世話になったのは、
既
(
も
)
う
夙
(
とっく
)
に恩は返している。何倍此方が尽しているか知れやしない。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
だが、母もマリヤもおれがこう
踠死
(
もがきじに
)
に死ぬことを風の
便
(
たより
)
にも知ろうようがない。ああ、母上にも
既
(
も
)
う逢えぬ、いいなずけのマリヤにも
既
(
も
)
う逢えぬ。おれの恋ももう
是限
(
これぎり
)
か。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
私が手を洗って二階へ
上
(
あが
)
って見たら、お糸さんは
既
(
も
)
う裾を
卸
(
おろ
)
したり、
襷
(
たすき
)
を外したりして、
整然
(
ちゃん
)
とした常の
姿
(
なり
)
になって、突当りの部屋の前で膝を突いて、何か用を聴いていた。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
はれ、
無慚
(
むざん
)
な! こゝに
若殿
(
わかとの
)
が
殺
(
ころ
)
されてござる、のみならず、
既
(
も
)
う
二日
(
ふつか
)
も
葬
(
はふむ
)
られてござったヂュリエットどのが、つい
今
(
いま
)
がた
死
(
し
)
なっしゃれたやうに
血
(
ち
)
を
流
(
なが
)
して、
温
(
ぬく
)
いまゝで。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
那
(
あれ
)
も
造物者
(
ざうぶつしや
)
が作ツた一個の
生物
(
せいぶつ
)
だ………だから立派に存在している………とすりや俺だツて、何
卑下
(
ひげ
)
することあ有りやしない。然うよ、此うしてゐるのが
既
(
も
)
う立派に存在の資格があるんだ。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
それでも
既
(
も
)
う今夜はあの娘も
斷念
(
あきら
)
めたと見えて、それを話し出した時には
流石
(
さすが
)
に泣いてゐたけれども、平常のやうに父親の惡口も言はず
拗
(
す
)
ねもせずあの通りに元氣よくして見せて呉れるので
姉妹
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
貴方、浅草の
寿座
(
ことぶきざ
)
に掛って居る芝居見た事ある? 其の人は一座の
女形
(
おやま
)
なんですって、今夜も
既
(
も
)
う今頃はお娯しみの最中よ、そりゃ仲が良くって、妾達
妬
(
や
)
ける位だわ、と野放図も無く喋り立てます。
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
油臭い
蒲団
(
ふとん
)
の中で、朝為吉が眼を覚ました時には、隣の夜具は空だった。彼は別に気に止めなかった。それよりも
既
(
も
)
う永い間、
陸
(
おか
)
にいる為吉には機関の震動とその太い低音とが此の上なく懐しかった。
上海された男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
「ヘエ、そして
芳
(
よつ
)
ちやん、
既
(
も
)
う牢屋へ行らしつたのですか」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
茶店
(
ちやみせ
)
の
老人夫婦
(
らうじんふうふ
)
とは
懇意
(
こんい
)
に
成
(
な
)
つて『
旦那
(
だんな
)
又
(
また
)
石拾
(
いしひろ
)
ひですか。
然
(
さ
)
う
始終
(
しじう
)
見
(
み
)
えては、
既
(
も
)
う
有
(
あ
)
りますまい』と
笑
(
わら
)
はれる
位
(
くらゐ
)
にまでなつた。
探検実記 地中の秘密:04 馬籠と根方
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
宿の
内儀
(
かみさん
)
は
既
(
も
)
う四十位の、亡夫は道庁で
可也
(
かなり
)
な役を勤めた人といふだけに、品のある、気の
確乎
(
しつかり
)
した、言葉に西国の訛りのある人であつた。
札幌
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
奥様は七つ違いの二十三で、御縁組になってから
既
(
も
)
う六年になるそうですが、まだ御子様は一人もございませんでした。
三浦老人昔話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ココア色をした小鳥が
離亭
(
はなれ
)
の柱に、その朱塗の籠のなかで往き来し、かげは日影のひいたあたりには
既
(
も
)
う無かった。
後の日の童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
池の縁を通りかかったとき、前夜道路を横切っていった女の後姿が、チラと脳裡に浮んだが、公園を出ると
既
(
も
)
うすっかり忘れていた。彼は
市街
(
まち
)
へ帰った。
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
吸物
(
すひもの
)
は
吸
(
す
)
ひ尽した。小僧は『お
代
(
かは
)
りを』といつて、塗の剥げた盃をさしつけた。
松潜
(
まつくゞ
)
りは
既
(
も
)
う
楓
(
かへで
)
の枝に居らぬ。
茸の香
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
部屋へ来てみると、ランプを細くして
既
(
も
)
う床も
敷
(
と
)
ってある。私は
桝
(
ます
)
でお糸さんと膝を列べている時から、妙に気が
燥
(
いら
)
って、今夜こそは日頃の望をと、芝居も碌に身に
染
(
し
)
みなかった。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
こんな時彼は
既
(
も
)
う見得も外聞も考えない。
貪
(
むさぼ
)
る様に
覗
(
のぞ
)
き込んだ。彼の心は叫びを上げた。「素敵だッ」と。湯の中へ寒暖計を投げ込んだ様に、彼の満足は目盛の最高頂へ飛び上った。
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
「雪岡さん。あなた
既
(
も
)
う好い
情婦
(
おんな
)
が出来たんですってねえ。大層早く拵えてねえ。」
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
何
(
なん
)
と
圖星
(
づぼし
)
であらうが?……(ロミオらに對ひ)ようこそ!
吾等
(
われら
)
とても
假面
(
めん
)
を
被
(
つ
)
けて、
美人
(
びじん
)
の
耳
(
みみ
)
へ
氣
(
き
)
に
入
(
い
)
りさうな
話
(
はなし
)
を
囁
(
さゝや
)
いたこともござったが、あゝ、それは
既
(
も
)
う
過去
(
むかし
)
ぢゃ、
遠
(
とほ
)
い/\
過去
(
むかし
)
ぢゃ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
やがてはどうせ私も
既
(
も
)
う長い事は無いし、いつか一度思ふ存分飮んで見度いと思つてゐたが、矢つ張り
阿彌陀樣
(
あみださま
)
のお蔭かして今日旦那に逢つて斯んな
難有
(
ありがた
)
いことは無い、毎朝私は御燈明を上げながら
山寺
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
既
常用漢字
中学
部首:⽆
10画
“既”を含む語句
既往
既望
既成
既知
既寿永昌
既倒
皆既日蝕
爾既徳行無取
既記
衆生既信伏質直意柔軟
皆既蝕
既西堂
既製洋服
既製
衆生既信伏
既立兮王業成
回瀾既倒
既發見
既決
既早
...