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慮
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おもんぱか
ふりがな文庫
“
慮
(
おもんぱか
)” の例文
こういうかけ声をしながら、息せききって
走
(
は
)
せつけて来るものがあるのですから、源松は、その行手を
慮
(
おもんぱか
)
らないわけにはゆきません。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
もっとも、かなりの護衛兵は必要ですが、これだって、実際上の危険を
慮
(
おもんぱか
)
ってのことではなく、つまらない邪魔を避けるためです。
撥陵遠征隊
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
衆人の攻撃も
慮
(
おもんぱか
)
る所にあらず、美は簡単なりといふ古来の標準も棄てて
顧
(
かえりみ
)
ず、卓然として複雑的美を成したる蕪村の功は没すべからず。
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
「おいおい、叔父貴たち、あんまり騒がない方がお身のためだぜ。それを、
慮
(
おもんぱか
)
ってこッちはそっと立退いてやろうとしているのに——」
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
喜三郎はその
夜
(
よ
)
、近くにある
祥光院
(
しょうこういん
)
の門を
敲
(
たた
)
いて
和尚
(
おしょう
)
に仏事を修して貰った。が、万一を
慮
(
おもんぱか
)
って、左近の
俗名
(
ぞくみょう
)
は
洩
(
も
)
らさずにいた。
或敵打の話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
「
凡
(
およ
)
そ人事を
区処
(
くしょ
)
する、
当
(
まさ
)
に
先
(
ま
)
ずその結局を
慮
(
おもんぱか
)
り、
而
(
しか
)
して後に手を下すべし、
楫
(
かじ
)
無
(
な
)
きの舟を
行
(
や
)
る
勿
(
なか
)
れ、
的
(
まと
)
無
(
な
)
きの
箭
(
や
)
を発する
勿
(
なか
)
れ」
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
資本家が資本を投じ、事業家が事業を営むのは、ただ
徒
(
いたずら
)
に自己の福利を
慮
(
おもんぱか
)
り、一家の繁栄を祈るがためのみではありますまい。
国民教育の複本位
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
さればとて舊主を裏切っては武士の
一分
(
いちぶん
)
がすたれることを
慮
(
おもんぱか
)
って、
孰方
(
どちら
)
へも義理が立つように失明の手段を取ったのであると。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
辛くもその家を遁走したりけるが家に帰らんも勘当の身なり、
且
(
かつ
)
は婦人に
捜出
(
さがしい
)
だされんことを
慮
(
おもんぱか
)
りて、遂に予を
便
(
たよ
)
りしなり。
黒壁
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
またこの二人の情死を
慮
(
おもんぱか
)
り、自分の恋を断念して尼になるおみつの犠牲の苦しみにも、我々の承服し得べき内的必然性を認め得るであろうか。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
ついに決断して青森行きの船出づるに投じ、
突然
(
とつぜん
)
此地を後になしぬ。
別
(
わかれ
)
を
訣
(
つ
)
げなば
妨
(
さまた
)
げ多からむを
慮
(
おもんぱか
)
り、ただわずかに一書を友人に
遺
(
のこ
)
せるのみ。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
したがって余の死後、この遺言状作製当時の余の精神状態が問題となるべきを
慮
(
おもんぱか
)
り、あらかじめ一言ここに自証しておく。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
前夜、先ず、
山鹿
(
やまが
)
南関の間の要衝に兵を派して厳戒せしめた。これは薩軍が迂回して背後を衝くのを
慮
(
おもんぱか
)
ったからである。
田原坂合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それでゾシマ長老も万一の場合を
慮
(
おもんぱか
)
って、額でこつんをやったのさ。後で何か起こったときに、『ああ、なるほど、あの
上人
(
しょうにん
)
が予言したとおりだ』
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
しかし五百は独り脩の
身体
(
しんたい
)
のためにのみ憂えたのではない。その新聞記者の悪徳に化せられんことをも
慮
(
おもんぱか
)
ったのである。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
万一を
慮
(
おもんぱか
)
って、凡ゆる停車場、桟橋、飛行機発着場、バスの停車場、タクシの溜り、それらに厳重に見張りが立って、完全に飛ぶ機会を押えている。
アリゾナの女虎
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
リオネロの長い回復期を過ごしてパリーに帰り、パッシーに小さな邸宅を借りて住んでからは、彼女はもう「世評を
慮
(
おもんぱか
)
る」だけの注意もしなかった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
別れぎわに浪士らは、稲雄の骨折りを感謝し、それに報いる意味で記念の陣羽織を贈ろうとしたが、稲雄の方では幕府の
嫌疑
(
けんぎ
)
を
慮
(
おもんぱか
)
って受けなかった。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
故に人来ればたちまち逃れて山中に走る、器用なるは戸棚に入り食せんとする時、人の来るを
慮
(
おもんぱか
)
りわざと戸を閉づ。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
彼は少なくとも自然の経済を重んじて、注意深い
慮
(
おもんぱか
)
りをもってその犠牲者を選び、死後はその
遺骸
(
いがい
)
に敬意を表する。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
われは物語の昔日の
過
(
あやまち
)
に及ばんことを
慮
(
おもんぱか
)
りしに、この
御館
(
みたち
)
を遠ざかりたりしことをだに言ひ出づる人なく、老公は優しさ舊に倍して我を
欵待
(
もてな
)
し給ひぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
ずっと前、南支那海で海賊船がノサバッた時に、万一の場合を
慮
(
おもんぱか
)
って、何度も何度も
秘密
(
ないしょ
)
で研究して、手加減をチャント呑込んでいたんだから訳はない。
焦点を合せる
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
形体は残っても、それは抽象せられた生命なき
形骸
(
けいがい
)
ではないか。特に自然と建築との調和を
慮
(
おもんぱか
)
った古人の注意を無視して、それが如何なる意義を保つであろう。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
京子の傷口が
癒
(
い
)
えて病院から自邸に帰ったのは、それから一月ばかり後であった。その間大江蘭堂は、賊の危害を
慮
(
おもんぱか
)
って、恋人を見舞うことさえ慎しんでいた。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼等の床に近づく前に道徳知識の世界は影を隠してしまう。二人の男女は全く愛の本能の
化身
(
けしん
)
となる。その時彼等は彼等の隣人を顧みない、彼等の生死を
慮
(
おもんぱか
)
らない。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
慮
(
おもんぱか
)
りの深い芸の力と、その一座のまえにいったその舞台の上の美しい統一とが、いまゝで嫌いでそうした「書生芝居」をみなかった人たちをさえ魅了するものがあった。
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
なお登勢は坂本のことを
慮
(
おもんぱか
)
って口軽なおとみもしばらく木屋町の手伝いに
遣
(
や
)
った。ところがある日おとみはこっそり帰ってきて言うのには、お寮はん、えらいことどっせ。
蛍
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
まずその娘の父母はいつ頃花聟さんの方から
媒介人
(
なこうど
)
が出て来るであろうとちゃんと
慮
(
おもんぱか
)
って居る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
されば真に国の将来を
慮
(
おもんぱか
)
り、独力によって、どこまでも文明を進め得るようにと望むならば、英断をもってその妨げとなるべき事柄を除くことが、まずもって必要であろう。
理科教育の根底
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
公設展覧会出品の裸体画は絵葉書とする事を禁ぜられ、
心中
(
しんじゅう
)
情死の文字ある狂言の
外題
(
げだい
)
は劇場に出す事を許さず。当路の
有司
(
ゆうし
)
衆庶
(
しゅうしょ
)
のこれがために春情を催す事を
慮
(
おもんぱか
)
るが故なり。
猥褻独問答
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
我々の最も慎重に
慮
(
おもんぱか
)
るべきは、実際上にどれだけ多く正当な科学的精神を反映せしめ得るかという点に存するのであって、しかも国家の安危さえもこれに関わることを思うならば
社会事情と科学的精神
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
世間の人々の
嘲笑
(
てうせう
)
を
慮
(
おもんぱか
)
つて、小さくなつて、自分の失恋を恥ぢ隠さうとしてゐたのが、世間の同情が、全く予期に反して、
翕然
(
きふぜん
)
として、自分の一身に集つて来るらしいのを見て取ると
良友悪友
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
然れども余は存生中の人を評論するに於て、二箇のおもしろからぬ事あるを
慮
(
おもんぱか
)
るなり、其一は、もし賞揚する時に
諛言
(
ゆげん
)
と誤まられんか、若し非難する時に
詬評
(
こうひやう
)
と思はれんか、の恐れあり。
明治文学管見:(日本文学史骨)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
また何百という若いお
弟子
(
でし
)
たちのことを
慮
(
おもんぱか
)
らねばなりませぬ。あの迷いやすい羊たちの群れをな。若い時の心はわしも知っている。あなたが女を恋しく思われるのを無理とは思いませぬ。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
彼は
啻
(
ただ
)
に手代として
能
(
よ
)
く働き、顧問として能く
慮
(
おもんぱか
)
るのみをもて、鰐淵が信用を得たるにあらず、彼の
齢
(
よはひ
)
を以てして、色を近けず、酒に親まず、浪費せず、遊惰せず、勤むべきは必ず勤め
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
というのは、彼は感電騒ぎを知るや
忽
(
たちま
)
ちにして警察の取調べがこの天井裏の電線に及ぶのを
慮
(
おもんぱか
)
って、
其処
(
そこ
)
は秘密を持つ身の弱さ、望遠鏡を外すために人知れず
梯子
(
はしご
)
を昇って
這
(
は
)
い上ったのである。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
実に夢幻泡沫で
実
(
じつ
)
なきものと云って、実は
真
(
まこと
)
に無いものじゃ、世の人は此の
理
(
り
)
を
識
(
し
)
らんによって
諸々
(
もろ/\
)
の
貪慾執心
(
どんよくしゅうしん
)
が深くなって
名聞利養
(
みょうもんりよう
)
に心を
焦
(
いら
)
って
貪
(
むさぼ
)
らんとする、是らは只
今生
(
こんじょう
)
の事のみを
慮
(
おもんぱか
)
り
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
霧の晴れた場合を
慮
(
おもんぱか
)
って、それに少し不気味でもあったので、木に登って待っていると、遠く近く、彼方からも此方からも、ピューンピューンと澄んだ細い声が地の底から湧くように聞えてくる。
大井川奥山の話
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
尤
(
もっと
)
も、寺に
戸籍
(
こせき
)
のあった時代で、祝言も
仲人
(
なこうど
)
もなく、勝手に
後家
(
ごけ
)
といっしょになった場合は、世間への名聞も
憚
(
はばか
)
って、表向は
後取
(
あとと
)
りと言えないわけで、それを
慮
(
おもんぱか
)
って、源左衛門は店や蔵の
譲受
(
ゆずりうけ
)
を
銭形平次捕物控:282 密室
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
現場の
扉
(
ドア
)
は、鉄板のみで作られた頑丈な二重
扉
(
ドア
)
で、その外側には
鍵孔
(
かぎあな
)
がなかった。というのは、万が一クローリン
瓦斯
(
ガス
)
が発生した際を
慮
(
おもんぱか
)
ったからで、むろん開閉は内側からされるようになっていた。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
兼
(
かね
)
て
工夫
(
くふう
)
慘憺
(
さんたん
)
の
由
(
よし
)
仄
(
ほのか
)
に
耳
(
みゝ
)
にせしが、
此度
(
このたび
)
いよ/\
機
(
き
)
熟
(
じゆく
)
しけん、
或
(
あるひ
)
は
他
(
た
)
に
慮
(
おもんぱか
)
る
處
(
ところ
)
ありてにや、
本月
(
ほんげつ
)
初旬
(
しよじゆん
)
横濱
(
よこはま
)
の
某
(
ぼう
)
商船會社
(
しやうせんくわいしや
)
より
浪
(
なみ
)
の
江丸
(
えまる
)
といへる一
大
(
だい
)
帆走船
(
ほまへせん
)
を
購
(
あがな
)
ひ、
密
(
ひそ
)
かに
糧食
(
りようしよく
)
、
石炭
(
せきたん
)
、
氣發油
(
きはつゆう
)
、
※卷蝋
(
くわけんらう
)
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
彼女と葛城の
縁談
(
えんだん
)
も、中に立って色々骨折る人があったが、彼女の父は断じて許さなかった。葛城の人物よりも其無資産を
慮
(
おもんぱか
)
ったのである。葛城の母、兄姉も皆お馨さんの渡米には不賛成であった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
書肆
(
しよし
)
も無論賛成で既に印刷に回して活字に組み込まうと
迄
(
まで
)
した位である。所が
其頃
(
そのころ
)
内閣が変つて、著書の検閲が急に
八釜敷
(
やかまし
)
くなつたので、書肆は万一を
慮
(
おもんぱか
)
つて、直接に警保局長の意見を確めに行つた。
『煤煙』の序
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
これら後日の大悔となるべきを
慮
(
おもんぱか
)
り公平の談判あらんことを欲す。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
殿様の万一を
慮
(
おもんぱか
)
る家来が思案に暮れている矢先き
青バスの女
(新字新仮名)
/
辰野九紫
(著)
小山の妻君はお登和嬢のために
慮
(
おもんぱか
)
る所あり
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
なお、してみると、あの絵馬は、特に自分の筋道を
慮
(
おもんぱか
)
って、そうして目印に、こちらの目につき
易
(
やす
)
いようにとの親切でしたことだ。
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
衆人の攻撃も
慮
(
おもんぱか
)
るところにあらず、美は簡単なりという古来の標準も
棄
(
す
)
てて顧みず、卓然として複雑的美を成したる蕪村の功は没すべからず。
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
しかし彼女の
年齢
(
ねんれい
)
境遇
(
きょうぐう
)
等に照らしにわかに独立する必要があったろうとは考えられないこれは恐らく佐助との関係を
慮
(
おもんぱか
)
ったのであろうというのは
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
あれほど体面を
慮
(
おもんぱか
)
る青年が、——一生自分の存在を無視して、自分を知りもしなければ覚えてもいず、もちろん、たといわが子の願いであろうとも
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
慮
常用漢字
中学
部首:⼼
15画
“慮”を含む語句
焦慮
憂慮
思慮
考慮
無遠慮
苦慮
配慮
遠慮
顧慮
念慮
遠慮勝
深慮
不慮
慮外
無慮
浅慮
叡慮
凡慮
熟慮
短慮
...