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客樣
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きやくさま
さあ、
遣らつせえまし、
蕨は
自慢だよ。これでもへい
家で
食ふではねえ。お
客樣に
賣るだで、
澤山沙魚の
頭をだしに
入れて
炊くだアからね。
賣やと容子を尋ねけるに親十兵衞が
云々にて年貢のお金に
差支へ
據ころなく身を
賣時宜なれば何卒お
抱へ下されたく
如何樣の
憂ひ
悲しひ事成とも御主人大事御
客樣を
その
玉のように、
輝やいていらつしやる
美しいお
客樣を、どうぞ
内らへ、と
御案内申し
上げてくれ。
菊の
井のお
力は
行ぬけの
締りなしだ、
苦勞といふ
事はしるまいと
言ふお
客樣もござります、ほんに
因果とでもいふものか
私が
身位かなしい
者はあるまいと
思ひますとて
潜然とするに
『あのね、
奧さんに
珍らしいお
客樣が……。』と
言つたまゝ
私の
方に
向直り
「あんたは
白瓜一
本、それつきり」といひました。お
客樣が
外の
事でもござりませんが、
手前は
當年はじめての
御奉公にござりますが、
承りますれば、
大殿樣御誕生の
御祝儀の
晩、お
客樣がお
立歸りに
成りますると
お
客樣を
乘せやうが
空車の
時だらうが
嫌やとなると
用捨なく
嫌やに
成まする、
呆れはてる
我まゝ
男、
愛想が
盡きるでは
有りませぬか、さ、お
乘りなされ、お
供をしますと
進められて
そこの
家にお
客樣がきました。すると
鸚鵡が
外の
事でもござりませんが、
手前は
當年はじめての
御奉公にござりますが、
承りますれば、
大殿樣御誕生のお
祝儀の
晩、お
客樣が
御立歸りに
成りますると、
手前ども
一統にも
今歳は
別きてお
客樣の
數多く、
午後三
時よりとの
招待状一つも
空しう
成りしは
無くて、
暮れ
過ぐるほどの
賑ひは
坐敷に
溢れて
茶室の
隅へ
逃るゝもあり、二
階の
手摺りに
洋服のお
輕女郎
差出がましうござんすが、お
座興にもと
存じて、お
客樣の
前ながら、
申上げます、とお
孃樣、
御口上。——
内に、
日本と
云ふ、
草毟の
若い
人が
居りませう……ふと
思ひ
着きました。
美くしい
眦に
良人が
立つ
腹をも
柔げれば、
可愛らしい
口元からお
客樣への
世辭も
出る、
年もねつから
行きなさらぬにお
怜悧なお
内儀さまと
見るほどの
人褒め
物の、
此人此身が
裏道の
働き
何處へお
客樣にあるいて
居たのと
不審を
立てられて、
取越しの
御年始さと
素知らぬ
顏をすれば、
嘘を
言つてるぜ
三十日の
年始を
受ける
家は
無いやな、
親類へでも
行きなすつたかと
問へば
「だつてお
前樣はお
客樣ぢやあないかね、お
客樣なら
私ン
處の
旦那だね、ですから、あの、
毎度難有う
存じます。」と
柳に
手を
縋つて
半身を
伸出たまゝ、
胸と
顏を
斜めにして、
與吉の
顏を
差覗く。
女ならぬお
客樣は
手前店へお
出かけを
願ひまするとも
言ふにかたからん、
世は
御方便や
商買がらを
心得て
口取り
燒肴とあつらへに
來る
田舍ものもあらざりき、お
力といふは
此家の一
枚看板
「お
客樣だつて、あの、
私は
木挽の
小僧だもの。」
それは
何ぞのお
間違ひなるべし
私お
客樣にお
懇親はなし
池の
端よりお
供せしに
相違は
無けれど
車代賜るより
外に
御用ありとは
覺えず
其譯仰せられて
車代の
頂戴お
願ひ
下されたしと
一歩も
動かんとせぬ
芳之助を