失望しつばう)” の例文
竹村たけむらは一ねんたつかたゝないうちに、大久保おほくぼかへつてたのに失望しつばうしたが、大久保おほくぼ帰朝きてうさびしかつたことも、すくなからずかれいたましめた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「さうですな、拜見はいけんてもうがす」とかる受合うけあつたが、べつつた樣子やうすもないので、御米およねはらなかすこ失望しつばうした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ぎがてにあいちやんは、たなひとつから一かめ取下とりおろしました、それには『橙糖菓オレンジたうくわ』と貼紙はりがみしてありましたが、からだつたのでおほいに失望しつばうしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
と、思返おもひかへしたものゝ、猶且やはり失望しつばうかれこゝろ愈〻いよ/\つのつて、かれおもはずりやう格子かうしとらへ、力儘ちからまかせに搖動ゆすぶつたが、堅固けんご格子かうしはミチリとのおとぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
をんなよわいものゆゑにたやすく失望しつばうをし、そしてたやすく自棄やけにもなります。やがて私達にもそれがやつて來ました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
彼等かれら丁度ちやうどくじくやうに屹度きつとひとつはあたはずのどつぺを悉皆みんなこゝろあてにつかんでくのである。一ごと失望しつばう滿足まんぞくとが悉皆みんなかほにそれからそれとうつつてく。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
はすぐに、村役場むらやくば證明書しようめいしよもらひにつたが、失望しつばうしてかへつてた。證明書しようめいしよなるものが下附かふされるには、十かゝるか二十日はつかかゝるか、わからないといふことだつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
つひ失望しつばう落膽らくたんし、今更いまさ世間せけんへも面目めんもくなく、はておもせまつておほいに決心けつしんしてたのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
わたくしこの光景くわうけいじつ失望しつばうした、見渡みわたしたところこのしま模樣もやううたがひもなき無人島むじんとう! かく全島ぜんたうやまと、もりと、たにとでおほはれてつては、今更いまさら何處どこへと方向ほうがくさだめること出來できぬのである
下人は、老婆の答が存外、平凡へいぼんなのに失望した。さうして失望しつばうすると同時に、又前の憎惡が、冷な侮蔑ぶべつと一しよに、心の中へはいつて來た。すると、その氣色けしきが、先方へも通じたのであらう。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
おもはずあツといつて失望しつばうしたとき轟々がう/\がうといふなみおと
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
んだ、きみもですか、これは如何どう失望しつばうした。
あいちやんはすこぶ失望しつばうしてだれかにたすけてもらはうとおもつてた矢先やさきでしたからうさぎそばたのをさいはひ、ひく怕々おど/\したこゑで、『萬望どうぞ貴方あなた——』とひかけました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
さうしてつかまう/\とする要求えうきうはげしくなればなるほど強くなつて來るのは、それにたいする失望しつばうの心でした。私達はやみの中に手探てさぐりで何かを探しまはつてゐました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
で、かれももう思慮かんがへること無益むえきなのをさとり、全然すつかり失望しつばうと、恐怖きようふとのふちしづんでしまつたのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
くきいためてもかまはぬ拗切ちぎりやうを失望しつばう憤懣ふんまんじやうとを自然しぜん經驗けいけんせざるをなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
土井は最初そこへいたばん、筆を執るやうな落着きがないのに、ちよつと失望しつばうしたが、家主やぬしすまつてゐる家のはなれを一しつりておいたからと、甥が言ふので、彼はそれを信じて
(新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
もととほり自分じぶんなので失望しつばうするばかりだとつて、宗助そうすけわらはした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かれ自分じぶん瘡痍きずかる醫者いしやから宣告せんこくされたときなんとなく安心あんしんされたのであつたが、しかまた漸次だんだん道程みちのりはこびつゝ種々いろいろ雜念ざふねんくにれて、失望しつばう不滿足ふまんぞくこゝろいだきはじめた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
けつして失望しつばうなさること御座ございません。たゞ熱心ねつしん大切たいせつです。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)