“図(ず)” の例文
旧字:圖
おのが恋を捨てても! と一図(ず)に決して、さてこそあの、裏で手を合わせて表に毒づくあいそづかし……お艶も江戸の女であった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
当主の、福子の良人には父にあたるその人は、温厚(おんこう)一途(いちず)が取(と)り柄(え)で、仕事の上のことでは、まだまだ隠居の差(さ)し図(ず)の下にいた。
万年青 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
この木彫(きぼり)や金彫(かねぼり)の様々な図(ず)は、瓶(かめ)もあれば天使もある。羊の足の神、羽根のある獣(けもの)、不思議な鳥、または黄金色(こがねいろ)の堆高(うずたか)い果物。
軍配(ぐんばい)のてはずを、残りなくいいわたした民部(みんぶ)は、ひとりそこに踏(ふ)みとどまり、人穴攻(ひとあなぜ)めの作戦図(ず)を胸にえがきながら、無月(むげつ)の秋の空をあおいで
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし御承知の通り父はとても凝(こ)り性(しょう)でしたので、指(さ)し図(ず)がなかなか八釜(やかま)しくて職人は面喰い通しだったそうです。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
こんないい景色(けしき)ァ、毎朝(まいあさ)見(み)られる図(ず)じゃァねえッて。——ごらんなせえやし。お前(まえ)さんの姿(すがた)が見(み)えたら、つぼんでいた花(はな)が、あの通(とお)り一遍(ぺん)に咲(さ)きやしたぜ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
さもさも衰(おとろ)えた形(かたち)で、永代(えいたい)の方から長く続いて居るが、図(ず)に描(か)いて線を引くと、文明の程度が段々此方(こっち)へ来るに従(したご)うて、屋根越(やねごし)に鈍(にぶ)ることが分るであろう。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なんでも、その図(ず)は、中国人(ちゅうごくじん)らしい、一人(ひとり)の女(おんな)が、赤(あか)いたもとをひるがえして、おどっているのでした。
太陽と星の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
何某という軍医、恙の虫の論に図(ず)など添(そ)えて県庁にたてまつりしが、こはところの医のを剽窃(ひょうせつ)したるなり云々。かかることしたり顔(がお)にいい誇(ほこ)るも例の人の癖(くせ)なるべし。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
彼は悪魔に別れた後(のち)、校舎の中へ靴(くつ)を移した。教室は皆がらんとしている。通りすがりに覗(のぞ)いて見たら、ただある教室の黒板の上に幾何(きか)の図(ず)が一つ描(か)き忘れてあった。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
第十二 学者雪ニヨリテ理学ノ諸支ヲ悟り詞人画工ニ至ルマデ詩賦(しふ)ノ工(こう)ヲ添ヘ山川ノ美景ヲ図(ず)セシム
雪 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
器量美しく学問音曲(おんぎょく)のたしなみ無(なく)とも縫針(ぬいはり)暗からず、女の道自然と弁(わきま)えておとなしく、殿御(とのご)を大事にする事請合(うけあい)のお辰を迷惑とは、両柱(ふたはしら)の御神以来図(ず)ない議論、それは表面(うわべ)
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
此処は西欝々(うつうつ)とした杉山(すぎやま)と、東若々(わかわか)とした雑木山(ぞうきやま)の緑(みどり)に囲(かこ)まれた田圃で、遙(はるか)北手(きたて)に甲州街道が見えるが、豆人(とうじん)寸馬(すんば)遠く人生行路(じんせいこうろ)の図(ず)を見る様で、却(かえっ)てあたりの静(しず)けさを添(そ)える。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
もしねずみの言(い)うことをお取(と)り上(あ)げになって、わたくしどもがまたつながれるようなことになりますと、いよいよやつらは図(ず)に乗(の)って、どんなひどいいたずらをするかわかりません。
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
『何(なん)としても爰(ここ)から離(はな)れたくない……』私(わたくし)は一図(ず)にそう思(おも)い込(こ)んで居(お)りました。
或は良心を傷(きずつ)けて自重の気を拉(とりひし)いで課長の鼻息を窺(うかが)い得るかも知れぬが、如何(いか)に窮したればと云ッて苦しいと云ッて、昇に、面と向ッて図(ず)大柄(おおへい)に「痩我慢なら大抵にしろ」ト云ッた昇に
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
要するに僕は図(ず)を披(ひら)いて地理を調査する人だったのだ。それでいて脚絆(きゃはん)を着けて山河(さんか)を跋渉(ばっしょう)する実地の人と、同じ経験をしようと焦慮(あせ)り抜いているのだ。僕は迂濶(うかつ)なのだ。僕は矛盾なのだ。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
見込が有るに依て実は彼奴(きゃつ)の意見の底を探りたいと下から出て煽起(おだて)れば図(ず)に乗てペラ/\と多舌(しゃべ)りやがる、ヘン人(ひと)、彼奴が経験経験と経験で以て探偵すれば此方は理学的と論理的で探偵するワ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
足袋(たび)は図(ず)なしと言われるほど大きなものをはき、腕の力とても相応にある半蔵のような人をいれる場処とあって、障子を立てる部分には特にその外側に堅牢な荒い格子(こうし)を造りつけることにした。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ますます図(ず)に乗って、しまいには、女たちが女神のお召物(めしもの)を織っている、機織場(はたおりば)の屋根を破って、その穴(あな)から、ぶちのうまの皮をはいで、血まぶれにしたのを、どしんと投げこんだりなさいました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
またそのうしろには三本の脚(あし)のついた小さな望遠鏡(ぼうえんきょう)が黄いろに光って立っていましたし、いちばんうしろの壁(かべ)には空じゅうの星座(せいざ)をふしぎな獣(けもの)や蛇(へび)や魚や瓶(びん)の形に書いた大きな図(ず)がかかっていました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しかし、もうよほど前から彼の計略が図(ず)にあたっている。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
さっさと図(ず)をひいたり、せつめいをかいてわたします。
ワッフル鍋(なべ)の図(ず) 春 第八十二 ワッフル
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「——あなたは図(ず)う/\しいのね。」
大阪万華鏡 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
へたな言葉をさし挟んで、相手のしゃべる図(ず)をはずすまいと、眼八、大事そうにソッとひとつうなずいた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お声に応じて、横手の、唐子(からこ)が戯(たわむ)れている狩野派(かのうは)の図(ず)をえがいた塗り扉をあけて、ひょっくりあらわれた人物を見ると、……誰だってちょっとびっくりするだろう。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
抽斎は平素画(え)を鑑賞することについては、なにくれとなく教(おしえ)を乞い、また古器物(こきぶつ)や本艸(ほんぞう)の参考に供すべき動植物を図(ず)するために、筆の使方(つかいかた)、顔料(がんりょう)の解方(ときかた)などを指図してもらった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ますますはげしく射(い)かけましたから、さすがに乱暴(らんぼう)な荒(あら)えびすも総崩(そうくず)れになって、かなしい声(こえ)をあげながら逃(に)げ出(だ)しました。味方(みかた)はその図(ず)をはずさず、どこまでも追(お)っかけて行きました。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
面と向ッて図(ず)大柄(おおへい)に、「痩我慢なら大抵にしろ」と昇は云ッた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
一図(ず)に小供(こども)の後(あと)を追(お)ったのでございました……。
スープ鍋(なべ)の図(ず) 春 第三十 万年スープ
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
直接の主人である忠左衛門も、この男の真心と一図(ず)なのには持て余して、山科にいた頃も、江戸の石町へ移ってからも、二、三度連れて、父の所へ来た事がある。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
肉挽器械(にくひききかい)の図(ず) 夏 第百四十一 肉料理
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「ちッ、この阿女(あま)がッ……」と馬春堂、真似もできない顔をして、耳がとれるか手を離さすか、大きな図(ず)ウ体(たい)を不器用にどたばたさせて、その胸元を食ッてかかる。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とばかり智深を拒(こば)んで、その大きな図(ず)ウ体(たい)を突きもどし、さらに山門前の石段へ突きころがした。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「民蔵(たみぞう)、そのほうの奇策(きさく)はまんまと図(ず)にあたった。こなたより奉行所(ぶぎょうしょ)へ密告(みっこく)したため、アレ見よ、沖(おき)でも、この通りなさわぎをしているわい……小きみよい悪党(あくとう)ばらの最後じゃ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると蜀勢は、その夜から翌日へかけて、続々と退いてゆく様子である。さては恐れをなして道を変更したなと見たので、秦良は、この図(ず)をはずすなと、にわかに、追撃をかけた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
立場を変えていえば、尊氏の水軍戦略が、みごと、図(ず)にあたっていたのである。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
図(ず)を外(はず)さず、藤吉郎は別間に控えさせておいた治郎左衛門を連れて来た。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……はッと、私は立ちふさがり、私も、女の一図(ず)で、争いました。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(この図(ず)に乗って、打(ぶ)っ倒せ)と、呼応して出た形もある。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いよいよ図(ず)にのって、減(へ)らず口(ぐち)をたたきだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大きな図(ず)う体(たい)を
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
設計二図(ず)
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)