)” の例文
信幸怒ってまさに幸村を斬らんとした。幸村は、首をねることは許されよ、幸村の命は豊家のために失い申さん、志なればと云った。
真田幸村 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ひたっと、体を、牢格子のじょうへ押しつけた蔵六の手は、わなわなと、腰の鍵を外していた。ガチッと、掌のなかで、錠のつのねた。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其処そこけては我等わしらふなぢや。案山子かゝしみのさばいてらうとするなら、ぴち/\ねる、見事みごとおよぐぞ。老爺ぢい広言くわうげんくではねえ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、徳利をつかんだまま、よろよろと、立ちあがると、ガタピシとぶすまをあけ立てして、庫裡くりの戸棚の中の、ぶたね上げる。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
負け傾いて来ている大斜面を、再びぐっとね起き返すある一つの見えない力、というものが、もしあるのなら誰しも欲しかった。
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
平野老人は首を振ってうけがいませんでした。市川の言ったことをねつけることによって、自分がもてあました言葉尻が立て直りました。
即ちそれを見ていた人の話を私は聞いたが、彼は腹を一文字に切ってから、尖切を咽へ刺して前へね切ろうとしたが、切れなかった。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
ヘロデは近ごろ洗礼者ヨハネの首をねたというではないか。彼は今後ますます監視を厳重にして自分を捕えようとするであろう。
そうなった暁には、あいつらの首をねるくらいじゃ足りないぞ、なぜといって、あいつらは進歩を妨げたんだからなあ、イワン
女王樣ぢよわうさまこと大小だいせうかゝはらず、すべての困難こんなん解决かいけつする唯一ゆゐいつ方法はうはふ御存ごぞんじでした。『れのあたまねよ!』と四邊あたりずにまをされました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「鐘巻流では皆伝だよ。年二十三で皆伝になる、まあまあよほど強い方さ」一式小一郎は唇をね、ニヤニヤ笑ったものである。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
が、こっちの軍刀に触れたのは、相手の軍帽でもなければ、その下にある頭でもない。それを下からね上げた、向うの軍刀のはがねである。
首が落ちた話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
つまり、そんなところへ関係すると、働きもしない奴に、頭をねられるだろう? それが馬鹿らしいというのさ。あの人に言わせると。
街底の熔鉱炉 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
弓馬きゅうばの家に生れながら、そんな卑怯なことは出来ない。飽くまで自分の力を以て敵をたおすのだ。そうして其奴の首をね、鼻を斬るのだ。
蒲団ふとんをばねて、勢好いきほいよく飛起きた。寢衣ねまき着更きかへて、雨戸をけると、眞晝まひるの日光がパツと射込むで、眼映まぶしくツて眼が啓けぬ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
受付でねられたら、法が附かん。おれたちの家くらいなら、どこからでも入りこんで、逢いたいもんに面会出来るとじゃが、……
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
坊ばはそのくらいな事で辟易へきえきする訳がない。坊ばは暴君である。今度は突き込んだ箸を、うんと力一杯茶碗の底からね上げた。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
饒舌しゃべりもし、飛びわりね廻わりして、至極しごく活溌にてありながら、木に登ることが不得手ふえてで、水を泳ぐことが皆無かいむ出来ぬと云うのも
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
個人としての親しげな態度にはぴんとねかえすものがあった。身分から来るなじめないものの反撥はんぱつであった。けれども堀は語りつづけた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
僕はどうかするとあの仏殿の地蔵様の坐っている真下が頸をねる場所で、そこで罪人がやられている光景が想像されたり
父の出郷 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
私が書院の障子をあけて見ると、川の上におちるのや、庭のおち葉をたたきながらねかえる霰は、まるで純白の玉を飛ばしたようであった。
性に眼覚める頃 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
さるを後には老女を彼賊の同類なりとし、ことし數人の賊と共に彼老女をさへねて、ネピの石垣の上にけたりと語りぬ。
「けちんぼうだな!」と彼は云つた、「お金が欲しいといふ願ひをねつけるなんて! 五ポンドお寄越しなさい、ジエィン。」
あくまで残忍な悪戯者いたずらものは、その身悶えするさまを快げに打ち眺めていたが、時分はよしと、やにわに抜く手も見せず、犬の頭をねてしまった。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
これがすむと別の土壇に据えて首をねる。ついでその首を土壇に埋め、額だけ露出させ、二人の刑手が板の両端をもって首の頭上を抑えている。
せいばい (新字新仮名) / 服部之総(著)
死罪しざいこと追放つゐはうといはッしゃるは、黄金わうごん斧鉞まさかりわしくびねておいて、そち幸福しあはせぢゃとわらうてござるやうなものぢゃ。
普通の事情位は退けて、再婚すべしと言ひたいのであるが、今日の軍人遺族は、おそらく自分の説をれて呉れまい。
未亡人と人道問題 (新字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
これより先地中海の大神ポセイドン、馬や鳥の形に化けて醜女怪メズサを孕ませ、勇士ペルセウスがメの首をねた鮮血より飛馬ペガソス生まれた。
雨が飛石とびいしをうってねかえる。目に入る限りの緑葉あおばが、一葉々々に雨をびて、うれしげにぞく/\身を震わして居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
申し込まれた時分にはどんな者でもあと退くというような事はしない。退けばその時限り壮士坊主の仲間から退けられて寺に居ることが出来ない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
大の野心家であつた伊達だて政宗さへ、此年少気鋭な三代将軍の承職に当つて江戸に上つた際、五十人の切支丹の首が鈴ヶ森でねられるのを眼のあたり見て
順作は驚いて眼のせいではないかと思って見なおそうとした。同時に右から来た電車が順作をね飛ばして往った。順作はそのまま意識を失ってしまった。
藍瓶 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
業盛も父の気性を受けたなかなかの武将だったが、さすがに晴信の軍配には敵しがたく、ほとんど全滅のかたちで敗れ、彼また自らねていさぎよく死んだ。
一人ならじ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「日当弐円五拾銭だちって、こうなると、五拾銭引いてやがる。おまけに、会場の方は俺達の分を四円位にしといてピンをねるンだから、やりきれないさ」
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
如何にして? 顔を黒く隈取くまどって戦うことによってではない。家に火を放つことによってではない。豚を殺し、傷つける敵の首をねることによってではない。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そこへ立ち寄ると、平地に倒れた草が、ね返り、起きあがる所であった。鮮かな、まぶしい朝日が、藪の青葉の上にも、平地にも、緑色の草の上にも流れている。
森の暗き夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
私たちは窓のないがらんどうの部屋へはいって、建物の幅木はばきを取りのけ、それから床板ゆかいたをめくると、垂木たるきの下に屑をもっておおわれたね上げの戸が発見された。
その傷は極めて異様なもので、左の耳の後から咽喉仏のどぼとけの方へ偃月形みかづきがたに弧を描いてねあげられている。
顎十郎捕物帳:04 鎌いたち (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
とても逃げおおせることは出来ないと覚悟して、呉はかの剣をもってみずから首をねて死にました。
今迄はこの山王山をめぐる外廓となつて、下町から来る塵埃ぢんあいを防いでゐた、烈しい生存競争から来る呻り声も、此森林の厚壁に突き当つては、手もなくね返されてゐた
亡びゆく森 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
「基地で味方の不時着機にね飛ばされたぐらいのもんです。背中を十針ばかり縫いましたが……」
光は影を (新字新仮名) / 岸田国士(著)
雄鶏はねたましげに蹴爪けづめの上に伸び上って、最後の決戦を試みようとする。その尾は、剣がね上げるマントのひだそのままである。彼は、鶏冠とさかに血を注いで戦いを挑む。
一萬三千人いちまんさんぜんにんくびねたりとばるゝ、にもおそるべき斬頭刄ギラチンかたち髣髴ほうふつたる、八個はつこ鋭利えいりなる自轉伐木鉞じてんばつもくふとの仕掛しかけにて、行道ゆくてふさがる巨木きよぼくみきよりたほ
「さよう、わざわざ鎌倉へ連れてゆくにも及ぶまい。そなたのよきように、どこぞで首をねよ」
「いけません。五円頭をねられるんじゃ気が咎めます。大勉強ですよ。商売があがったりです」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
獣の路をうて前の木立に潜り込む、人ひとりの重さ位にはビクともしない頑強な枝が意地悪るく邪魔をする、押し倒そうにもね除けようにも手に合ったものではない。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
たといどんな理由わけがあったにしろ、殿中である、その殿中で、ああ鮮かに上役の首をね、そいつを窓からほうり込んで、自分は今日まで雲隠れしていた程の豪の者である。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
... げたのだね、生牡蠣は衣がつかんで油へ入れるとねて困るがどうすると揚がるね」主人
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
またもや頭巾をねのけ荷物をおろし、顔より先に眼を洗つたり、焼焦やけこげだらけの洋服の塵を払つたりした後、棒のやうになつた両足を投出して、どつさり其場に寝転んでしまつた。
にぎり飯 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
日頃罪人一同の喰物くいものの頭をね、あまつさねんに二度か三度のお祭日まつりび娑婆飯しゃばめしをくれません、余り無慈悲な扱いゆえ、三人の総代を立てゝ只管ひたすら歎願たんがんいたしました処が、聞入れないのみか
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)