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下婢
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かひ
ふりがな文庫
“
下婢
(
かひ
)” の例文
夜は兵をあつめて宿舎の周囲を守らせ、妻を室内に深く閉じ籠めて、
下婢
(
かひ
)
十余人を付き添わせて置くと、その夜は暗い風が吹いた。
中国怪奇小説集:07 白猿伝・其他(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「誰?」と言いかけて走り出で、障子の
隙間
(
すきま
)
より
戸外
(
おもて
)
を見しが、彼は早や町の
彼方
(
かなた
)
に
行
(
ゆ
)
く、その後姿は、隣なる広岡の家の
下婢
(
かひ
)
なりき。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
けれども、マドレーヌ氏のただ一人の
下婢
(
かひ
)
であって同時に工場の門番をしていた女は、彼の室の
燈火
(
あかり
)
が八時半に消されたのを見た。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
併
(
しか
)
し特に
下婢
(
かひ
)
などの
寡
(
すくな
)
い、
或
(
あるひ
)
は
全
(
まつた
)
く
其
(
それ
)
等の者を有して居ない
処
(
ところ
)
の一婦人に於て家庭の仕事を節減する方法が
何
(
ど
)
うして有りませうか。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
此の時、宛も
下婢
(
かひ
)
の持ち出でゝ、膳の脇に据えたる
肴
(
さかな
)
は、鮒の甘露煮と焼
沙魚
(
はぜ
)
の三杯酢なりしかば、主人は、ずツと反身になり
元日の釣
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
▼ もっと見る
見ると、
萩
(
はぎ
)
の乱るる垣根越しに白い横顔——
下婢
(
かひ
)
を連れてたたずんだのが、細かい葉の間から
艶
(
なま
)
めかしい姿をチラつかせている。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それから店の
下婢
(
かひ
)
のなかから珍らしく
可憐
(
かれん
)
なうら寂しい、そして
何処
(
どこ
)
か
愛嬌
(
あいきょう
)
ぶかいお作といふ小娘を
見出
(
みいだ
)
したこともあつた。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
神が汝に与えし貧ちょう好機械を利用して汝の徳を高め汝の家を清めよ、快楽なる「ホーム」を造るに風琴の
備附
(
そなえつけ
)
、
下婢
(
かひ
)
下男
(
げなん
)
の
雇入
(
やといいれ
)
を要せず
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
下宿屋
(
げしゆくや
)
の
下婢
(
かひ
)
が
彼
(
かれ
)
を
嘲
(
あざ
)
けりて
其
(
その
)
爲
(
な
)
すところなきを
責
(
せ
)
むるや「
考
(
かんが
)
へる
事
(
こと
)
を
爲
(
な
)
す」と
云
(
い
)
ひて
田舍娘
(
いなかむすめ
)
を
驚
(
おどろ
)
かし、
故郷
(
こきやう
)
よりの
音信
(
いんしん
)
に
母
(
はゝ
)
と
妹
(
いもと
)
との
愛情
(
あいじやう
)
を
示
(
しめ
)
して
罪と罰(内田不知庵訳)
(旧字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
朝などはその女が
下婢
(
かひ
)
に何とか言いつけているきれいな声が
洩
(
も
)
れたりした。しかし合宿所を引き上げるまで、とうとうその女は姿を見せないでしまった。
競漕
(新字新仮名)
/
久米正雄
(著)
みどうでは台所と縫い張のために、五十歳以上の
下婢
(
かひ
)
を何人か置くほか、召使はすべて、若い男に限られていた。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
昨日は三度ならず四度までも留守宅へ御来臨の上
下婢
(
かひ
)
に向って妾ら身の上に関する種々なる質問を発せられ、それのみならず無断にて人の家を捜索なされ
倫敦消息
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
酔余
(
すいよ
)
の興にその家の色黒く
痩
(
や
)
せこけた無学の
下婢
(
かひ
)
をこの魚容に押しつけ、結婚せよ、よい縁だ、と傍若無人に勝手にきめて、魚容は大いに迷惑ではあったが
竹青
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
下婢
(
かひ
)
を雇わない二人ぎりの家庭では、必ず妻が独りで食事の準備をすべきものとは思っていません。一緒に、何でも二人のために都合よくと考えて行動します。
男女交際より家庭生活へ
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
しかしそれは両者の立場を混同して、科学の中に哲学を入れるという如きことではない。唯、科学隆盛以来、哲学は科学の
下婢
(
かひ
)
となったという感なきを得ない。
デカルト哲学について
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
年老いた
下婢
(
かひ
)
がひとり彼女のそばに附いていて、その女が時折り飲物をのませたり、小さな冷肉の
片
(
きれ
)
を口のところまで持っていって食べさせてやったりしていた。
狂女
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
そして、その教師が厳格な目上の人達でなくて、つぎ/\に変つて行つた
下婢
(
かひ
)
であることを思出した。
犬
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
其
(
その
)
下婢
(
かひ
)
も
矢張
(
やはり
)
鍵を
預
(
あづか
)
つて
居
(
ゐ
)
る
家
(
うち
)
を知らなかつた。けれど
態々
(
わざ/″\
)
家
(
いへ
)
に入つて聞いて
呉
(
く
)
れたので
漸
(
やうや
)
く
解
(
わか
)
つた。
父の墓
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
勝手の方で
下婢
(
かひ
)
とお婆さんと顔を見合わしてくすくすと笑った。店の方で大きなあくびの声がした。
忘れえぬ人々
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
下婢
(
かひ
)
と書生の三人暮しにていよ/\世間婦人の常道を歩み始めんとの
心構
(
こゝろがま
)
へなりしに、事実は之に反して、
重井
(
おもゐ
)
は最初
妾
(
せふ
)
に誓ひ、
将
(
は
)
た両親に誓ひしことをも忘れし如く
母となる
(新字旧仮名)
/
福田英子
(著)
いろ/\の
厚
(
あつ
)
き
待遇
(
もてなし
)
を
受
(
う
)
けた
後
(
のち
)
、
夜
(
よる
)
の八
時
(
じ
)
頃
(
ごろ
)
になると、
當家
(
たうけ
)
の
番頭
(
ばんとう
)
手代
(
てだい
)
をはじめ
下婢
(
かひ
)
下僕
(
げぼく
)
に
至
(
いた
)
るまで、
一同
(
いちどう
)
が
集
(
あつま
)
つて
送別
(
そうべつ
)
の
催
(
もようし
)
をする
相
(
さう
)
で、
私
(
わたくし
)
も
招
(
まね
)
かれて
其
(
その
)
席
(
せき
)
へ
連
(
つら
)
なつた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
彼女らを
賤
(
いや
)
しい不健全な半
下婢
(
かひ
)
の身分に
陥
(
おとしい
)
れて、彼女らの不幸とわれわれの不幸とを共に
醸
(
かも
)
し出してる、その状態から脱せんために、三十年来彼女らがなしてる大努力は
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
夫の留守にはこの家の
主
(
あるじ
)
として、彼は
事
(
つか
)
ふべき
舅姑
(
きゆうこ
)
を
戴
(
いただ
)
かず、気兼すべき
小姑
(
こじうと
)
を
抱
(
かか
)
へず、
足手絡
(
あしてまとひ
)
の幼きも
未
(
ま
)
だ有らずして、
一箇
(
ひとり
)
の
仲働
(
なかばたらき
)
と
両箇
(
ふたり
)
の
下婢
(
かひ
)
とに
万般
(
よろづ
)
の
煩
(
わづらはし
)
きを
委
(
まか
)
せ
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
ある夕べ、
下婢
(
かひ
)
が食品を買いに出かけ、宅に帰る途中、墓間を通行せるに、白衣を着たる幽霊が現出しいたりとて、驚き走ってほとんど気絶せんばかりになって帰って来た。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
古今、支那・日本の風俗を見るに、一男子にて
数多
(
あまた
)
の婦人を
妻妾
(
さいしょう
)
にし、婦人を取扱うこと
下婢
(
かひ
)
の如く、また罪人の如くして、かつてこれを恥ずる色なし。浅ましきことならずや。
中津留別の書
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
オースティン少年と
下婢
(
かひ
)
のファアウマとが其の籠をファニイの所へ持って行く。ファニイが一つの籠に一つの種子を埋め、それをヴェランダに並べる。一同綿の如くに疲れて了った。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
先
(
ま
)
ずこの様子なら
降
(
ふ
)
りではなかろう、主人の注意と
下婢
(
かひ
)
の働きで、それぞれの準備を終り、穂高よりすぐ下山する者のためにとて、特に案内者一名を
傭
(
やと
)
い、午前の四時、まだ
昧
(
くら
)
いうち
穂高岳槍ヶ岳縦走記
(新字新仮名)
/
鵜殿正雄
(著)
その一つは夫人、もう一つは当時の
下婢
(
かひ
)
の顔を写したものだそうである。前者の口からかたかなで「ケタケタ」という
妖魔
(
ようま
)
の笑い声が飛び出した形に書き添えてあるのが特別の興味を引く。
小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
是
(
これ
)
は
何
(
なん
)
でも
下婢
(
かひ
)
か
下男
(
げなん
)
が
窃取
(
くすね
)
るに
相違
(
さうゐ
)
ない、一
番
(
ばん
)
計略
(
はかりごと
)
を
以
(
もつ
)
て
試
(
ため
)
してやらう。
(洋)金の勘定を仕ずに来た
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
服装のみならず、その容貌もまた東京の町のいずこにも見られるようなもので、即ち、看護婦、派出婦、
下婢
(
かひ
)
、女給、女車掌、女店員など、地方からこの首都に集って来る若い女の顔である。
寺じまの記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その様は男女十人ばかり(男三分女七分位なるが多く、
下婢
(
かひ
)
下男抔もまじる事あり)ある家に打ち
集
(
つど
)
ひ食物または金銭を賭け(善き家にては多く食物を賭け一般の家にては多く金銭を賭くとぞ)
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
宿に着きても油断せず、合客の様子、家居の間取等に心づけ、
下婢
(
かひ
)
が「風呂に召されよ」と言いしも「風邪の心地なれば」とて辞し、夜食早くしたためて床に入りしが、既往将来の感慨に夢も結ばず。
良夜
(新字新仮名)
/
饗庭篁村
(著)
『台所が手不足なれば、いくらでも、
下婢
(
かひ
)
下男を雇えと申してあるのに、はて……貧乏癖の抜けぬ奴じゃ。……水を持って来い』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
貞子の
方
(
かた
)
はいと不興げにそのまま帰らせたまいける。綾子は再び出で
来
(
きた
)
らず、膳を
進
(
まい
)
らせんと
入行
(
いりゆ
)
きたる
下婢
(
かひ
)
のお松を戒めて、固く人の出入を禁じぬ。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その夜、うちわだけで別宴が催され、下男
下婢
(
かひ
)
たちにも酒肴が出された。伊東七十郎は甲斐とは逆に
上方
(
かみがた
)
へゆくそうで、さかんに飲んで毒舌をふるった。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
下婢
(
かひ
)
と書生の三人暮しにていよいよ世間婦人の常道を歩み始めんとの
心構
(
こころがま
)
えなりしに、事実はこれに反して、重井は最初妾に誓い、
将
(
は
)
た両親に誓いしことをも忘れし如く
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
同じ傾向から殆んど
双生児
(
ふたご
)
のやうにして産み出した作物の
中
(
うち
)
に、私はある線路番人のことを写した。毎日主人の子供を
負
(
おぶ
)
つて鉄道の踏切のところを通る
下婢
(
かひ
)
のことを書いた。
突貫
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
「仲居というのは
娼家
(
しょうか
)
の
下婢
(
かひ
)
にあたるものですかな」「まだよく研究はして見ませんが仲居は茶屋の下女で、遣手というのが
女部屋
(
おんなべや
)
の
助役
(
じょやく
)
見たようなものだろうと思います」
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
日課を終え、午後六時ごろ旅亭に帰り浴湯し、まさに
晩餐
(
ばんさん
)
を喫せんとす。旅亭の
下婢
(
かひ
)
、左側の障子を開き、手に電報を持ち、予に告げて曰く、「ただ今、君へ電報到着せり」と。
妖怪報告
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
若い屈強な
下婢
(
かひ
)
が二人左右に——姉も妹も
痩
(
や
)
せ形ながら人並より高い背丈を、二人の下婢の肩にかけた両手の力で危ふく支へて
僅
(
わず
)
かに自由の残る片足を
覚束
(
おぼつか
)
なげに運ばせて来る。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
聲に應じて出で來りたるは、此家の
下婢
(
かひ
)
とも覺しき十七八歳の田舍女なるが、果してわれの姿の亂れたるに驚きたりと覺しく、
其處
(
そこ
)
に立ちたるまゝ、じつとわれの顏を
訝
(
いぶか
)
り見ぬ。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
このごろ新しく雇いいれたわが家の
下婢
(
かひ
)
に相違なかった。名前は、記憶してなかった。
古典風
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それから家は貧乏だけれども
活計
(
くらし
)
は大きい。借金もある様子で、その借金の
云延
(
いいのば
)
し、
新
(
あらた
)
に借用の申込みに行き、又
金談
(
きんだん
)
の手紙の代筆もする。
其処
(
そこ
)
の家に
下婢
(
かひ
)
が一人に下男が一人ある。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
呉
(
ご
)
の将、
朱桓
(
しゅかん
)
という将軍がひとりの
下婢
(
かひ
)
を置いたが、その女は夜中に
睡
(
ねむ
)
ると首がぬけ出して、あるいは
狗竇
(
いぬくぐり
)
から、あるいは窓から出てゆく。その飛ぶときは耳をもって
翼
(
つばさ
)
とするらしい。
中国怪奇小説集:03 捜神記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
我々の家では
下婢
(
かひ
)
も置かぬ位の事で、まして看護婦などを雇ふてはない、そこで家族の者が看病すると言つても、食事から掃除から洗濯から裁縫から、あらゆる家事を勤めた上の看病であるから
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
と
好
(
い
)
い程に其の場を外して
下婢
(
かひ
)
は下へ降りて仕舞いました。
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
四、五日すると、世話する者があって、
下婢
(
かひ
)
と同じ村の者という男が、中間奉公を望んで来た。また、一人の
若党
(
わかとう
)
も、べつな方から召し抱えた。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
宿の
下婢
(
かひ
)
などの戯れならんと思いければ、ただ黙して注視しいたるに少時して隠れたり。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
遊びに
行
(
ゆ
)
きし時、その
理由
(
わけ
)
問いたるに、何ゆえというにはあらず、飽きたればなりとのたまう。されど
彼家
(
かしこ
)
なる
下婢
(
かひ
)
の、
密
(
ひそか
)
にその
実
(
まこと
)
を語りし時は、
稚心
(
おさなごころ
)
にもわれ嬉しく思い
染
(
そ
)
みぬ。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
森三之助が相右衛門の
妾腹
(
しょうふく
)
の子だということは、おいちは森家の
下婢
(
かひ
)
から聞いた。
つばくろ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
“下婢”の意味
《名詞》
召使いの女中。下女。
(出典:Wiktionary)
下
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
婢
漢検1級
部首:⼥
11画
“下婢”で始まる語句
下婢共