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酉
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とり
ふりがな文庫
“
酉
(
とり
)” の例文
今その上さんが熊手持って忙しそうに帰って行くのは内に居る子供が
酉
(
とり
)
の
市
(
いち
)
のお土産でも待って居るのかとも見えるがそうではない。
熊手と提灯
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
大鷲
(
おおとり
)
神社の傍の田甫の
白鷺
(
しらさぎ
)
が、一羽
起
(
た
)
ち二羽起ち三羽立つと、明日の
酉
(
とり
)
の
市
(
まち
)
の売場に新らしく掛けた小屋から二三
個
(
にん
)
の人が現われた。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
「うんにゃ、よくあるやつよ。こりゃあどうも惑信沙汰に違えねえて。」と半ば独言のように藤吉は憮然として、「今日は
酉
(
とり
)
だのう?」
釘抜藤吉捕物覚書:06 巷説蒲鉾供養
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
十二支というのは、子、
丑
(
うし
)
、
寅
(
とら
)
、卯、
辰
(
たつ
)
、
巳
(
み
)
、
午
(
うま
)
、
未
(
ひつじ
)
、
申
(
さる
)
、
酉
(
とり
)
、
戌
(
いぬ
)
、
亥
(
い
)
の十二で、午の年とか酉の年とかいうあの呼び方なのです。
大金塊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
申
(
さる
)
の
刻
(
こく
)
から
酉
(
とり
)
の
下刻
(
げこく
)
まで、わずかまだ一刻半(三時間)のあいだでしかない。野に満ちていた味方の
旗幟
(
きし
)
は、いずれへ
潰
(
つい
)
え去ったのか。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
往還
(
わうくわん
)
よりすこし
引入
(
ひきい
)
りたる
路
(
みち
)
の
奥
(
おく
)
に
似
(
に
)
つかぬ
幟
(
のぼり
)
の
樹
(
た
)
てられたるを何かと問へば、
酉
(
とり
)
の
市
(
まち
)
なりといふ。
行
(
ゆ
)
きて見るに
稲荷
(
いなり
)
の
祠
(
ほこら
)
なり。
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
お
酉
(
とり
)
さま前後から春へかけて、お庄は随分働かされた。一日立詰めで、夜も一時二時を過ぎなければ、火を落さないようなこともあった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
石を撫でながら、なにげなく石の裏を見ると、そこに、「二十一、
酉
(
とり
)
の女の墓」と小さく刻んであるのが、
図
(
はか
)
らず眼に触れてゾッとしました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
家士たちの絶叫が聞え、わっというどよめきが屋敷の内と外とに巻起った……時に寛永十八年四月十九日
酉
(
とり
)
の上刻であった。
三十二刻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
天頂より
未申
(
ひつじさる
)
、やや
酉
(
とり
)
に寄るフン……と? よし、これだな。今井君、そこの岩に登って下さい。たしかこの辺から真壁の町の灯が見える筈だ。
天狗外伝 斬られの仙太
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
きょうは風が南に変って、珍らしく暖いと思っていると、
酉
(
とり
)
の上刻に又
檜物町
(
ひものちょう
)
から出火した。おとつい焼け残った
町家
(
まちや
)
が、又この火事で焼けた。
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
幸ひにこの騷ぎが片付かなかつたので、内儀のお
酉
(
とり
)
も、手代の文治も、店へは歸らずにこの寮に止まり、内々はお里の悲歎を見張つて居ります。
銭形平次捕物控:232 青葉の寮
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
東京浅草に
鷲
(
おおとり
)
神社があって、毎年十一月の
酉
(
とり
)
の日にその社の祭礼がある。ここに
参詣
(
さんけい
)
するものは、おのおのクマデを買って帰ることになっている。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
朔日
(
ついたち
)
が
酉
(
とり
)
でしたから、……酉、
戌
(
いぬ
)
、
亥
(
い
)
……、あっ、
子
(
ね
)
の四日……。それで、鼠が四匹か……。どっちみち、あの碁石を
顎十郎捕物帳:12 咸臨丸受取
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
この加頭一家は、十一月の
酉
(
とり
)
の町には吉原土手へ店を出した。熊手の
簪
(
かんざし
)
を売ったこともあったが、
篠
(
ささ
)
に通したお芋を売った。がりがりの赤目芋だった。
旧聞日本橋:06 古屋島七兵衛
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
此年
(
このとし
)
三の
酉
(
とり
)
まで
有
(
あ
)
りて
中
(
なか
)
一
日
(
にち
)
はつぶれしかど
前後
(
ぜんご
)
の
上天氣
(
じやうてんき
)
に
大鳥神社
(
おほとりじんじや
)
の
賑
(
にぎわ
)
ひすさまじく、
此處
(
こゝ
)
かこつけに
檢査塲
(
けんさば
)
の
門
(
もん
)
より
亂
(
みだ
)
れ
入
(
い
)
る
若人達
(
わかうどたち
)
の
勢
(
いきほ
)
ひとては
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
あかつきの
卯
(
う
)
の刻(午前六時)から
午
(
うま
)
の刻(十二時)までの半日を泰親の祈祷と定め、午の刻から
酉
(
とり
)
の刻(午後六時)までの半日を玉藻の祈祷と定め
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
京都内外の古い大きな神社でも、
申
(
さる
)
の日
酉
(
とり
)
の日または
卯
(
う
)
の日等を以て、毎年の例祭を執り行うものが、稀ではない。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
此年三の
酉
(
とり
)
までありて中一日はつぶれしかど前後の上天気に大鳥神社の
賑
(
にぎは
)
ひすさまじく、此処をかこつけに検査場の門より乱れ入る若人達の勢ひとては
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
四谷の須賀神社の祭礼と神輿、山の手方面ただ一つの
酉
(
とり
)
の
市
(
いち
)
、等についても語りたかったがもう紙数がつきた。
四谷、赤坂
(新字新仮名)
/
宮島資夫
(著)
吉原の
酉
(
とり
)
の市なんか僕も見たかった。二、三日漫然とあるきたい。手紙をかくだけでも随分骨が折れる。以上。
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
たしか
酉
(
とり
)
の町の日でしたろう、お隣の
仕舞屋
(
しもたや
)
の
小母
(
おば
)
さんから、「お嬢さん、面白いものを見せてあげましょう」
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
だが三の
酉
(
とり
)
に私は美佐子と徹夜で遊んだ。それを何かドサ貫が誤解しているらしいということだけはわかった。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
この日の
戦
(
いくさ
)
も
酉
(
とり
)
の終までには片づきまして、その夜は打って変ってさながら
狐
(
きつね
)
につままれたような静けさ。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
一の
酉
(
とり
)
が済んで七五三の祝い日ごろに成ると、大拡の木の葉が吹き落され、毎日こがらしが吹きすさむ。
こがらし:――南駅余情――
(新字新仮名)
/
岩本素白
(著)
隣の座敷では二人の小娘が声を
揃
(
そろ
)
えて、
嵯峨
(
さが
)
やお
室
(
むろ
)
の花ざかり。長吉は首ばかり
頷付
(
うなずか
)
せてもじもじしている。お糸が手紙を
寄越
(
よこ
)
したのは
一
(
いち
)
の
酉
(
とり
)
の
前
(
まえ
)
時分
(
じぶん
)
であった。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
浅草の観音さまにも遠くはないし、吉原
遊廓
(
ゆうかく
)
は目と鼻のさきだし、お
酉
(
とり
)
さまはここが本家である。
安い頭
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
他の者の知らない間に
主婦
(
おかみ
)
さんが、もう
一昨日
(
おととい
)
から断られないお客様にお約束を受けていて、つい今、お
酉
(
とり
)
さまに連れられて行ったから、今晩は遅くなりましょうッて。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
年中行事の
酉
(
とり
)
の
市
(
まち
)
、この市は深川にも四谷乃至巣鴨にもあるが、どうしても浅草に落を取られる。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
甲戌
(
こうじゅつ
)
大
(
おおい
)
に
斉眉山
(
せいびざん
)
に戦う。
午
(
うま
)
より
酉
(
とり
)
に至りて、
勝負
(
しょうはい
)
相
(
あい
)
当
(
あた
)
り、燕の
驍将
(
ぎょうしょう
)
李斌
(
りひん
)
死す。燕
復
(
また
)
遂に
克
(
か
)
つ
能
(
あた
)
わず。南軍
再捷
(
さいしょう
)
して
振
(
ふる
)
い、燕は
陳文
(
ちんぶん
)
、
王真
(
おうしん
)
、
韓貴
(
かんき
)
、李斌等を失い、諸将皆
懼
(
おそ
)
る。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
土地の話の
序
(
ついで
)
だ。この辺の神棚には大きな目無し
達磨
(
だるま
)
の飾ってあるのをよく見掛ける。上田の
八日堂
(
ようかどう
)
と言って、その縁日に達磨を売る市が立つ。丁度東京の
酉
(
とり
)
の
市
(
いち
)
の
賑
(
にぎわ
)
いだ。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
左様
(
さやう
)
でございますか、
私
(
わたし
)
は
久
(
ひさ
)
しい
以前
(
いぜん
)
二の
酉
(
とり
)
の時に
一人
(
ひとり
)
伴
(
つれ
)
があつて
丸屋
(
まるや
)
に
上
(
あが
)
り、あなたが出て
下
(
くだ
)
すつて親切にして
下
(
くだ
)
すつた、
翌年
(
よくねん
)
のやはり二の
酉
(
とり
)
の時に
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りで
丸屋
(
まるや
)
へ
上
(
あが
)
ると
鰍沢雪の夜噺(小室山の御封、玉子酒、熊の膏薬)
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
舞はまだ午四剋から
酉
(
とり
)
四剋まで続くのであるがあとは略して右の三例を考えてみよう。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
作りは父の好みで、彼女の爲めに
酉
(
とり
)
の歳に
因
(
ちな
)
んで
金無垢
(
きんむく
)
の雞の
高彫
(
たかぼ
)
りを
目貫
(
めぬき
)
に浮き出させ、鞘は
梨子地
(
なしぢ
)
で、黒に金絲を混ぜた
總
(
ふさ
)
付きの下げ緒が長く垂れ、赤地金襴の袋に入つてゐる。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
主に台所道具で、上等のものではないにしても何か
活々
(
いきいき
)
したものを感じます。浅草の
歳
(
とし
)
の
市
(
いち
)
や
酉
(
とり
)
の
市
(
いち
)
など、昔に比べては格が落ちたでありましょうが、それでも心をそそる光景を示します。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
御しゅえんがはじまりましたのは宵の
酉
(
とり
)
のこくごろでござりましたろうか。
盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
早手廻しに、もうその年の
酉
(
とり
)
の市を連れて
歩行
(
ある
)
いた。従って、旅費の残りどころか、国を出る時、
祖母
(
としより
)
が襟にくけ込んだ分までほぐす、羽織も着ものも、脱ぐわ
剥
(
は
)
ぐわで、暮には下宿を
逐電
(
ちくでん
)
です。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
余事なれど
酉
(
とり
)
の市とは、生たる鶏を売買せし也。農人の市なれば也。
江戸の玩具
(新字旧仮名)
/
淡島寒月
(著)
「いや、あわてるだけのことはありますよ。私は
酉
(
とり
)
の年ですからね」
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
維
(
い
)
あたれる
歳次
(
さいじ
)
、
治承
(
じしょう
)
元年
丁
(
ひのと
)
の
酉
(
とり
)
、月の並びは
十月
(
とつき
)
二月
(
ふたつき
)
、日の数、三百五十余カ日、吉日
良辰
(
りょうしん
)
を選んで、かけまくも、かたじけなく、霊顕は日本一なる
熊野
(
ゆや
)
三所権現、
飛竜大薩埵
(
ひりゅうだいさった
)
の
教令
(
きょうりょう
)
のご神前に
現代語訳 平家物語:02 第二巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
「唐の芋、そら、お
酉
(
とり
)
さまで、笹に通して売ってるでしょう、あれ」
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「考えてみなさい、もう去年の十一月からたよりがないじゃないかの、どうせ今は正月だもの、本気に考えがあれば来るがの、あれは少し気が小さいけん仕様がない。
酉
(
とり
)
年はどうもわしはすかん。」
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
そしてなにの歳だといつたからおとなしく
酉
(
とり
)
の歳だと答へたら
銀の匙
(新字旧仮名)
/
中勘助
(著)
また
西北
(
いぬい
)
の一方は岩石聳え、密林しげり、毒蛇や
悪蝎
(
あっかつ
)
の
類
(
たぐい
)
多く、鳥すら
翔
(
か
)
けぬ嶮しさで——ただ一日中の
未
(
ひつじ
)
、
申
(
さる
)
、
酉
(
とり
)
の時刻だけしか往来できぬ
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
天頂より
未申
(
ひつじさる
)
、稍々
酉
(
とり
)
に寄るフン……と? よし、これだな。今井君、そこの岩に登って下さい。たしかこの辺から真壁の町の燈が見える筈だ。
斬られの仙太
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
文久
辛
(
かのと
)
の
酉
(
とり
)
年は八月の
朔日
(
ついたち
)
、焼きつくような九つ半の陽射しに日本橋もこの界隈はさながら禁裡のように静かだった。
釘抜藤吉捕物覚書:06 巷説蒲鉾供養
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
大きな縁起棚の傍には、つい三四日前の
酉
(
とり
)
の
市
(
いち
)
で買って来た熊手などが景気よく飾られて、諸方からの附届けのお歳暮が、山のように積まれてあった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その裏に下駄の歯入れが住んでいて、その婆さんのお
酉
(
とり
)
というのが朝晩の手伝いに来ていたと、家主は説明した。
半七捕物帳:55 かむろ蛇
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
酉
(
とり
)
の下刻と思われる頃であった。文吉が
背後
(
うしろ
)
から九郎右衛門の袖を引いた。九郎右衛門は文吉の視線を
辿
(
たど
)
って、左手一歩前を行く背の高い男を見附けた。
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
隣りの部屋には、越後屋の内儀のお
酉
(
とり
)
と、伊三郎の父親——志賀屋の主人の伊左衞門と、お里、お勢、お露の三人姉妹が
脅
(
おび
)
えきつた顏を揃へて居りました。
銭形平次捕物控:232 青葉の寮
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
“酉”の意味
《名詞》
とり。十二支の10番目。
(出典:Wiktionary)
“酉”の解説
酉(とり、ゆう)は、十二支のひとつ。通常十二支の中で第10番目に数えられる。
前は申、次は戌である。
(出典:Wikipedia)
酉
漢検準1級
部首:⾣
7画
“酉”を含む語句
己酉
辛酉
酉刻
丁酉
酉陽雑俎
酉年
癸酉
酉刻半
酉様
子酉
乙酉
初酉
酉歳
酉藏
酉町
酉陽雑爼
酉兵衛
酉樣
酉松
酉也
...