トップ
>
辛
>
つら
ふりがな文庫
“
辛
(
つら
)” の例文
それに其の間だつて、別の
辛
(
つら
)
さで生活の苦しみを
嘗
(
な
)
めて来た晴代は、決して木山と一緒になつてふら/\遊んでゐる訳ではなかつた。
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
しかもこの老貴婦人の憐れな話し相手リザヴェッタが、
居候
(
いそうろう
)
と同じような
辛
(
つら
)
い思いをしていることを知っている者は一人もなかった。
世界怪談名作集:03 スペードの女王
(新字新仮名)
/
アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン
(著)
間もなくお種さんに逢わせてあげますが、こういうあなたの姿をお種さんが見たらどのように歎くかと思い、それが
辛
(
つら
)
くてなりません
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
いやに儀式ばった
挨拶
(
あいさつ
)
を来る人たちへ
強
(
し
)
いられたり、着たくもない妙な
仰々
(
ぎょうぎょう
)
しい着物を着せられるのであるそれが泣くほど
辛
(
つら
)
かった。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
蘿月は六十に近いこの年まで
今日
(
きょう
)
ほど困った事、
辛
(
つら
)
い感情に
迫
(
せ
)
められた事はないと思ったのである。妹お豊のたのみも無理ではない。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
そのあなた方と別れなければならないことも、大変
辛
(
つら
)
い、私よりも子供たちの方が一層それを辛がっている、と云うような話をした。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そのたびごとに宿役人どもはじめ御伝馬役、小前のものの末に至るまで
一方
(
ひとかた
)
ならぬ
辛
(
つら
)
き勤めは筆紙に尽くしがたいことも言ってある。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「八時過ぎまで起きているのは
辛
(
つら
)
いですよ。年鑑を出して読んで見ることもあるんですが、じき鼻を紙へくっつけて眠ってしまいます」
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
毎日のように、空井戸を掘っては、病牛の
屍
(
かばね
)
を埋めるのが仕事だったほど
辛
(
つら
)
い時代はなかったと、父はよく後々まで述懐していた。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
若しも戻つて来よると、讃岐屋の旦那はんやもんな。其の時復讐をしられるのが
辛
(
つら
)
いよつてな。取引先も考へて見ると気の毒なもんや。
鱧の皮
(新字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
その
辛
(
つら
)
い気持ちをお
互
(
たが
)
いにざっくばらんにいえないだけに、余計焦々して私はピントを合せるのに、微笑の顔が
歪
(
ゆが
)
みそうであった。
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
「もうかうなつちや、
迚
(
とて
)
も助かりつこは無い。君がいつ迄も苦しんでるのを見るのは僕も
辛
(
つら
)
いから、一思ひに打ち殺してやらう。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
それをみすみす人に飲まれて、自分は指をくわえながら、料理方を承わっている
辛
(
つら
)
さ
口惜
(
くや
)
しさというものは容易なものではないのでした。
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「なんてまア遅いんだろう。いやになっちゃうなア。名探偵は
辛
(
つら
)
いです。天下に名高い大辻……うわッ……ハーハックション!」
地中魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
品物も届けてくれた。それを断わるのも
辛
(
つら
)
し、受け取るのも辛いので、栄之丞はそのたびごとに言うに言われない
忌
(
いや
)
な思いをさせられた。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
言わば息子をあすこに置いとくことは、息子に離れてる
辛
(
つら
)
い気持ちとやりとりの私達の命がけの
贅沢
(
ぜいたく
)
なんですよ。…………てね。
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
己
(
おの
)
が胡服を
纏
(
まと
)
うに至った事情を話すことは、さすがに
辛
(
つら
)
かった。しかし、李陵は少しも弁解の調子を交えずに事実だけを語った。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
多くの先輩が
金
(
きん
)
に見えた。相当の教育を受けたものは、みな
金
(
きん
)
に見えた。だから自分の
渡金
(
めつき
)
が
辛
(
つら
)
かつた。早く
金
(
きん
)
になりたいと
焦
(
あせ
)
つて見た。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
お目にかかれないのが何より——病の
苦痛
(
くるしみ
)
より
辛
(
つら
)
う御座います。吉野
様
(
さん
)
、
何卒
(
どうか
)
私がなほるまでこの村にゐて下さい。何卒、何卒。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
いいえ、
勿体
(
もったい
)
ないより、
済
(
す
)
まないのはあたしの
心
(
こころ
)
。
役者家業
(
やくしゃかぎょう
)
の
憂
(
う
)
さ
辛
(
つら
)
さは、どれ
程
(
ほど
)
いやだとおもっても、
御贔屓
(
ごひいき
)
からのお
迎
(
むか
)
えよ。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
姫君にも暮らしの
辛
(
つら
)
い事は、だんだんはつきりわかるやうになつた。しかしそれをどうする事も、姫君の力には及ばなかつた。
六の宮の姫君
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「叔母もそれでこう
辛
(
つら
)
く当るのだな」トその心を
汲分
(
くみわ
)
けて、どんな可笑しな処置振りをされても文三は眼を
閉
(
ねむ
)
ッて黙ッている。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「はあどうか
仕
(
し
)
あんしたんべか、お
内儀
(
かみ
)
さん」
勘次
(
かんじ
)
は
怪訝
(
けげん
)
な
容子
(
ようす
)
をして
且
(
かつ
)
辛
(
つら
)
い
厭
(
いや
)
なことでもいひ
出
(
だ
)
されるかと
案
(
あん
)
ずるやうに
怖
(
お
)
づ/\いつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
子供たちは「意気地なし」「弱虫」「ブルジヨア」などと云はれるのが
辛
(
つら
)
さに、両足がもつれもつれでも走つて行きました。
文化村を襲つた子ども
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
「今度は何といふのをお書きなさるの? また毎日癇癪が起きる事でせうぞのい。あゝ/\————の時は私は作るあなたよりも
辛
(
つら
)
かつた。」
胡瓜の種
(旧字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
婆やも
吃驚
(
びつくり
)
して風呂から出て来た。二人掛りでなだめたり、すかしたりして白状させた。——やはり
辛
(
つら
)
くて戻つて来たのだ。
愚かな父
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
しかし、これからの
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
へ
出
(
で
)
て、ひとり
立
(
だ
)
ちしていくには、どこにいても、
今朝
(
けさ
)
の
小僧
(
こぞう
)
さんのように
辛
(
つら
)
いめにもあうことがあるだろう……。
波荒くとも
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
泣きながら、修造のところへは、まだ手紙の返事さえもこないことを思い、修造が帰ってきても、手ばなしでは喜べない
辛
(
つら
)
さをも感じていた。
風
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
それが善五郎には何より
辛
(
つら
)
かった。その有峰杉之助の
刃
(
やいば
)
を、不自由な身体でどうして防ぎきれよう——善五郎はそう考えた。
銭形平次捕物控:114 遺書の罪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
こういう懼れで心が乱れていたので、宝探しの連中の速い歩調に後れずについて行くのは私には
辛
(
つら
)
かった。折々私は
躓
(
つまず
)
いた。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
見て扨は重五郎
日頃
(
ひごろ
)
我に
辛
(
つら
)
く當りしは
却
(
かへつ
)
て
情
(
なさけ
)
有
(
あり
)
し事かと
龍門
(
りうもん
)
の
鯉
(
こひ
)
天へ
昇
(
のぼ
)
り
無間地獄
(
むげんぢごく
)
の
苦痛
(
くつう
)
の中へ
彌陀如來
(
みだによらい
)
の
御來迎
(
ごらいかう
)
ありて助を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
いちばん
辛
(
つら
)
いのはおれなんだぜ、みんなにとっては向う河岸の火事だろう、痛くも
痒
(
かゆ
)
くもないだろう、だがおれにとっては
源蔵ヶ原
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それ程
辛
(
つら
)
い思を女がするだらうと思つてるのに、そのつらさうな顔を見に行くのは、私はあまり
惨
(
むご
)
い
為打
(
しうち
)
であると思つた。
二黒の巳
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
そしてこんな
有様
(
ありさま
)
はそれから
毎日
(
まいにち
)
続
(
つづ
)
いたばかりでなく、
日
(
ひ
)
に
増
(
ま
)
しそれがひどくなるのでした。
兄弟
(
きょうだい
)
までこの
哀
(
あわ
)
れな
子家鴨
(
こあひる
)
に
無慈悲
(
むじひ
)
に
辛
(
つら
)
く
当
(
あた
)
って
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
自分の破産を白状するのは容易なことじゃない。まっ正直にやるのは
辛
(
つら
)
い、おそろしく辛い。だから僕は黙っていたのだ。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
辛
(
つら
)
いことも辛いだろうし
口惜
(
くや
)
しいことも口惜しいだろうが、
先日
(
せん
)
のように逃げ出そうと思ったりなんぞはしちゃあ厭だよ。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
かうしてゐれば、
可楽
(
たのしみ
)
な事もある
代
(
かはり
)
に
辛
(
つら
)
い事や、悲い事や、
苦
(
くるし
)
い事なんぞが有つて、二つ好い事は無し、考れば考るほど私は世の中が心細いわ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
漸
(
ようや
)
く
寝床
(
ねどこ
)
を
離
(
はな
)
れたと
思
(
おも
)
えば、モーすぐこのようなきびしい
修行
(
しゅぎょう
)
のお
催促
(
さいそく
)
で、その
時
(
とき
)
の
私
(
わたくし
)
は
随分
(
ずいぶん
)
辛
(
つら
)
いことだ、と
思
(
おも
)
いました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
お前だって、生ッ粋の江戸ッ子じゃあねえか——自分が
辛
(
つら
)
いことを忍んでやってこそ、あッぱれ意気な女というものだぜ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
永年の肺病に
囚
(
とら
)
われて、衰弱に衰弱を重ねております同博士にとりまして、これだけの
労作
(
はたらき
)
は、如何ばかりか
辛
(
つら
)
く、骨身にこたえた事でしょう。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
波瑠子
(
はるこ
)
さん、あまり叱らないでね。わたし、お父さまに叱られるのは我慢するけれども、あなたに叱られるのは
辛
(
つら
)
いわ。
宝石の序曲
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
時どき力のない
咳
(
せき
)
の音が
洩
(
も
)
れて来る。昼間の知識から、私はそれが露路に住む魚屋の咳であることを聞きわける。この男はもう商売も
辛
(
つら
)
いらしい。
交尾
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
飛行場まで送って来てくれたヨハンと別れるときは、梶はその別れが
辛
(
つら
)
かった。廻り始めたプロペラの音を聞きながら
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
彼はそれが
辛
(
つら
)
かったけれど、様子には現わさなかった。彼はもう今では自分の利己心をほとんど殺していた。そのために心の明察力が生じていた。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
とも角、何は
措
(
お
)
いても私は室長に馬鹿にされるのが
辛
(
つら
)
かつた。どうかして、
迚
(
とて
)
も
人間業
(
にんげんわざ
)
では出来ないことをしても、取り入つて可愛がられたかつた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
とうとう決心して「今この墨と別れるのは女房と別れるよりも
辛
(
つら
)
いが」という手紙をつけて、送り返してしまった。
南画を描く話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
すさんだ家庭に
幼
(
ちいさ
)
いから
辛
(
つら
)
い目に会って来た肇はふっくりした、
焼立
(
やきた
)
てのカステーラみたいに香り高い甘味のある
千世子(二)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ロミオ
氣
(
き
)
は
狂
(
ちが
)
はぬが、
狂人
(
きちがひ
)
よりも
辛
(
つら
)
い
境界
(
きゃうがい
)
……
牢獄
(
らうごく
)
に
鎖込
(
とぢこ
)
められ、
食
(
しょく
)
を
斷
(
た
)
たれ、
笞
(
むちう
)
たれ、
苛責
(
かしゃく
)
せられ……(下人の近づいたのを見て)や、
機嫌
(
きげん
)
よう。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
きのうは、あんまり活躍したので、けさになっても、疲れがぬけず、起きるのが
辛
(
つら
)
かった。新しく買ってもらったレインコートをはじめて着て、登校。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「さうお考へになることが、どんなにお
辛
(
つら
)
いか、あたしなんぞには想像も出來ませんわ。」チエスタ孃は言つた。
水車のある教会
(旧字旧仮名)
/
オー・ヘンリー
(著)
“辛”の解説
辛(しん、かのと)は、十干の8番目である。
陰陽五行説では金性の陰に割り当てられており、ここから日本では「かのと」(金の弟)ともいう。
(出典:Wikipedia)
辛
常用漢字
中学
部首:⾟
7画
“辛”を含む語句
辛々
辛苦
辛抱
辛労
塩辛
唐辛
辛夷
鹽辛
鹽辛聲
辛酉
唐辛子
世智辛
苦辛
辛子
居辛
辛防
御辛抱
辛未
辛而
辛気臭
...