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蹄
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ひづめ
ふりがな文庫
“
蹄
(
ひづめ
)” の例文
馬は、重荷のために
後退
(
あとすざ
)
りするのを防ごうとして、
蹄
(
ひづめ
)
にこめた満身の力でふるえながら、脚をひろげ、鼻息をふうふう
喘
(
はず
)
ませている。
乞食
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
やがて人々の出て行く気配があり、馬の馳け去る
蹄
(
ひづめ
)
の音が
街
(
まち
)
の外に消えました。しばらくして奥さんがひとり静かに戻つて来ました。
亜剌比亜人エルアフイ
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
それから彼は私の右手をなで、ひどく感心している様子でしたが、
蹄
(
ひづめ
)
に
挟
(
はさ
)
まれて手が痛くなったので、私は思わず大声をたてました。
ガリバー旅行記
(新字新仮名)
/
ジョナサン・スウィフト
(著)
その想像を
足
(
た
)
して有村に
逐一
(
ちくいち
)
のことを話していると、さらにまた五、六騎、大地をうってくる
蹄
(
ひづめ
)
の音が、闇の街道を乱れあってきた。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
志保は庭へおりて菊を
剪
(
き
)
っていた。いつまでも
狭霧
(
さぎり
)
の
霽
(
は
)
れぬ朝で、道をゆく馬の
蹄
(
ひづめ
)
の音は聞えながら、人も馬もおぼろにしか見えない。
菊屋敷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
橋の上にはしばらくの間、
行人
(
こうじん
)
の跡を絶ったのであろう。
沓
(
くつ
)
の音も、
蹄
(
ひづめ
)
の音も、あるいはまた車の音も、そこからはもう聞えて来ない。
尾生の信
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
蹄
(
ひづめ
)
の音高らかに門内に乗り入れたのは出羽判官光長、前庭に控えると、静まり返った御所の隅にまで轟くばかりの大音声をあげた。
現代語訳 平家物語:04 第四巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
私が縦に倒れた上を馬車が真っ直ぐに通過したのみならず、馬の
蹄
(
ひづめ
)
も私を踏まずに飛び越えたので、何事も無しに済んだのである。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
猟犬ジャムはその袖の下を、ちゃぶちゃぶと泳ぎ、義作は夕立の
背
(
せな
)
を干して、
傍
(
かたわら
)
に立っていた、水はやや駒の
蹄
(
ひづめ
)
を没するばかり。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ただしそれは、ちょうど馬がふるえながら、
蹄
(
ひづめ
)
を挙げ耳を動かして、走り出す合図をじりじりと待っているような立ちどまりかたであった。
衣裳戸棚
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
「あのこめかみの傷跡は、馬の
蹄
(
ひづめ
)
にしては小さ過ぎると思つたよ。棒の先に分銅を縛つて後ろから、喰はせると丁度あんな傷になるのだが」
銭形平次捕物控:199 蹄の跡
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
一匹の牛が皮の前掛を振うか、あるいは乾いた地面を
蹄
(
ひづめ
)
で
蹴
(
け
)
るかすると、虻の雲が
唸
(
うな
)
り声を立てて移動する。ひとりでに
湧
(
わ
)
いて出るようだ。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
が、その時
蹄
(
ひづめ
)
の音! つづいて上った鬨の声! 馬上の浜路を真っ先に、五六十人の萩原住民、サーッと丘へのっ立てて来た。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
『大英百科全書』またいわく、時として家馬の
蹄
(
ひづめ
)
の側に、蹄ある小趾を生ずる事あり。稀にはまた三、四趾を
駢
(
なら
)
び生ずるあり。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
ペガッサスも、
蹄
(
ひづめ
)
をなるべく土地にくっつけるようにして駆けることは、少し骨が折れましたが、ちょっとそんなことをやってみたのです。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
わたしが立ち止まると、左右の
蹄
(
ひづめ
)
でかわるがわる土を
掘
(
ほ
)
ったり、けたたましい声を立てて、わたしの痩せ馬の首ったまに
噛
(
か
)
みついたりした。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
滑桁
(
すべりけた
)
のきしみと、凍った雪を蹴る
蹄
(
ひづめ
)
の音がそこにひびくばかりであった。それも、曠野の沈黙に吸われるようにすぐどこかへ消えてしまった。
橇
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
……宵の明星が本丸の
櫓
(
やぐら
)
の北角にピカと見え
初
(
そ
)
むる時、遠き方より又
蹄
(
ひづめ
)
の音が昼と夜の境を破って白城の方へ近づいて来る。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
私
(
わたし
)
の
坊
(
ばう
)
やはね、
蹄
(
ひづめ
)
が二つに
割
(
わ
)
れてゐて、
毛色
(
けいろ
)
はぶちで
尻
(
し
)
つぽもちやんとついてゐて、
私
(
わたし
)
を
呼
(
よ
)
ぶときは、もう/\つて
可愛
(
かあい
)
い
聲
(
こゑ
)
で
呼
(
よ
)
びますよ。」
お母さん達
(旧字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
それは沢山の馬の
蹄
(
ひづめ
)
の痕で出来上ってゐたのです。達二は、夢中で、短い笑ひ声をあげて、その道をぐんぐん歩きました。
種山ヶ原
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
ちやうどその時、車輪の音と、馬の
蹄
(
ひづめ
)
の地を蹴る音とが、
砂利
(
じやり
)
の上から聞えて來た。
驛傳馬車
(
えきばしや
)
が近づいて來るのであつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
そこらに生えた
青紫蘇
(
あおじそ
)
を、四つの
蹄
(
ひづめ
)
が踏みしだいている。そして立ちすくんだまま、
頸
(
くび
)
を不自然に前に伸ばして、おくびをするような仕草をした。
庭の眺め
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
あわれなるわたしである。果報
拙
(
つたな
)
きわたしである。天晴れ仏果を得て人中の
芬陀利華
(
ふんだりけ
)
と咲くことを望んだ身が、畜生も
蹄
(
ひづめ
)
を避ける醜草と変るのだ。
阿難と呪術師の娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
馬車は無数の
礫
(
つぶて
)
を投げつけるような
蹄
(
ひづめ
)
の音を、かつかつと巻き上げつつ、層々と連なりながら、大路小路を駆けて来た。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
船をたずねて
波止場
(
はとば
)
へ行く道を人に尋ねると、人はよく教えてくれましたから、お君は、その通りに行こうとする時分に、後ろから
喧
(
けたた
)
ましい
蹄
(
ひづめ
)
の音。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
霰
(
あられ
)
の音か。
否々
(
いやいや
)
。馬の
蹄
(
ひづめ
)
の音だ。何という高い蹄の音であろう。何という
疾
(
はや
)
い馬であろう。あれ、王宮の
周囲
(
まわり
)
を街伝いに、もう一度廻ってしまった。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
やんわりとした髪の毛の
撫
(
な
)
で心地、………そしておりおり
洩
(
も
)
れて来るほのかな
囁
(
ささや
)
き、………長い間
悍馬
(
かんば
)
のようなナオミの
蹄
(
ひづめ
)
にかけられていた私には
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
頭より尾に至る長さ千余丈、
蹄
(
ひづめ
)
より背上に至る高さ八百丈。大音に呼ばわって
曰
(
いわ
)
く、
儞
(
なんじ
)
悪猴
(
わるざる
)
今我をいかんとするや。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
全く
敗亡
(
まいっ
)
て、ホウとなって、殆ど人心地なく
臥
(
ね
)
て
居
(
おっ
)
た。ふッと……いや心の迷の空耳かしら? どうもおれには……おお、
矢張
(
やっぱり
)
人声だ。
蹄
(
ひづめ
)
の音に話声。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
砂埃
(
すなぼこり
)
が馬の
蹄
(
ひづめ
)
、車の
轍
(
わだち
)
に
煽
(
あお
)
られて
虚空
(
こくう
)
に舞い上がる。
蝿
(
はえ
)
の群が往来を横ぎって家から家、馬から馬へ飛んであるく。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
冷い街路を踏んで行く馬の
蹄
(
ひづめ
)
の音までが耳についた。彼は思ったよりも
寂寞
(
せきばく
)
とした巴里に帰って来たことを感じた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
遠くで
角笛
(
つのぶえ
)
の音がする。やがて犬の吠声、駒の
蹄
(
ひづめ
)
の音が聞えて、それがだんだんに近付いて来る。
汀
(
みぎわ
)
の草の中から鳥が飛び立って
樹立
(
こだち
)
の闇へ消えて行く。
ある幻想曲の序
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
パッカ、パッカと街道のうしろから近づいて来たのは、どうやら
駿馬
(
しゅんめ
)
らしい
蹄
(
ひづめ
)
の音です。釣に心を奪われているかに見えたが、さすがに武人の
嗜
(
たしな
)
みでした。
旗本退屈男:05 第五話 三河に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
その角燈の光で彼は馬車の形をはっきり見て取ることができた。小さな白馬に引かれた小馬車であった。彼が聞いた物音は、
舗石
(
しきいし
)
の上の馬の
蹄
(
ひづめ
)
の音だった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
背から受ける夕日に、
鶴尖
(
つるはし
)
やスコップをかついでいる姿が前の方に長く影をひいた。ちょうど
飯場
(
はんば
)
へつく山を一つ廻りかけた時、後から馬の
蹄
(
ひづめ
)
の音が聞えた。
人を殺す犬
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
彼はなお車輪の音と馬の
蹄
(
ひづめ
)
の音とを聞いていた。白い
靄
(
もや
)
が一面に牧場の上を流れていた。凍った樹木の込み合った枝から
雫
(
しずく
)
がたれていた。そよとの風もなかった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その神鹿の
蹄
(
ひづめ
)
の
痕
(
あと
)
、及び犬岩・握飯岩などの遺跡もあると言うから、とにかく土地では実際あったこととして伝えていたので、化して鳥となる点はいわぬけれども
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
幕末の
比
(
ころ
)
、
某
(
ぼう
)
と云う医師があって夜遅く病家へ往って帰っていた。それは月の明るい晩であった。其の大手を通っていると、
戞戞
(
かつかつ
)
と云う
夥
(
おびただ
)
しい馬の
蹄
(
ひづめ
)
の音が聞えて来た。
首のない騎馬武者
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
この
時
(
とき
)
太子
(
たいし
)
のお
歩
(
ある
)
きになった
馬
(
うま
)
の
蹄
(
ひづめ
)
の
跡
(
あと
)
が、
国々
(
くにぐに
)
の
高
(
たか
)
い山に
今
(
いま
)
でも
残
(
のこ
)
っているのでございます。
夢殿
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
別当は馬の手入をしまって、
蹄
(
ひづめ
)
に油を塗って、勝手口に来た。手には
飼桶
(
かいおけ
)
を持っている。主人に会釈をして、勝手口に置いてある麦箱の
蓋
(
ふた
)
を開けて、麦を飼桶に入れている。
鶏
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
むざんな
蹄
(
ひづめ
)
のあとである。医者は
眉
(
まゆ
)
をひそめた。巡査は医者に向かって、怪我人は車輪に引っかかったまま、舗石道を三十歩ばかり引きずられて行った、と話して聞かせた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
大きな
蹄
(
ひづめ
)
が音立てて街上を踏んでいるのを見ると、寂しい留学生の心はいつも
和
(
なご
)
んで来た。
玉菜ぐるま
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
ところが秀吉の方は大軍堂々と
愈々
(
いよいよ
)
北条征伐に遣って来たのだ。サア信書の往復や使者の馬の
蹄
(
ひづめ
)
の音の取り遣りでは無くなった、今正に上方勢の旗印を読むべき時が来たのだ。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ある時は、荷馬車の馬が、突然あばれ出して、通りかかった明智を
蹄
(
ひづめ
)
にかけようとした。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
此方
(
こちら
)
は小松の並木で一本も外の
樹
(
き
)
はありません。真堀の
岩上
(
いわがみ
)
の方から粥河圖書は来るに相違ないと、山三郎は馬を乗り据え、
向
(
むこう
)
に眼を
注
(
つ
)
けて居ると、遥かに
蹄
(
ひづめ
)
の音がいたします。
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
小鳥に踏み落されて阪道にこぼれたる
団栗
(
どんぐり
)
のふつふつと
蹄
(
ひづめ
)
に砕かれ杖にころがされなどするいと心うくや思いけん端なく草鞋の間にはさまりて踏みつくる足をいためたるも面白し。
旅の旅の旅
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
ある朝、ル氏がいつものやうに馬に騎つて出掛けると、爺さんは窓に
凭
(
もた
)
れて、紐育の新聞を読んでゐたが、
予
(
かね
)
て聞き馴れた馬の
蹄
(
ひづめ
)
がぽかぽか鳴るので、じつと眼を離して外を見た。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
殿様のゐる頃には大小を
挟
(
たばさ
)
んだ侍が通つたり、騎馬の武士が
蹄
(
ひづめ
)
を鳴して勇しく渡つて行つたりしたもので、昔は
徒士
(
かち
)
や足軽の子供などはそこに寄りつけもしなかつたものであつたが
花束
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
箒
(
ほうき
)
みたいに短くなった尻尾は、蠅をおっ払うため精一杯振ってももう
腿
(
もも
)
には届かなかった。次の道中にそなえるため、すり減った
蹄
(
ひづめ
)
を削り削り何度新しい鉄を
嵌
(
は
)
め換えたか知れない。
蕎麦の花の頃
(新字新仮名)
/
李孝石
(著)
果てなき原の草の上、
巌角
(
いわかど
)
するどき
険崖
(
がけ
)
の
際
(
きわ
)
、鉄の
蹄
(
ひづめ
)
の馬立てて、
討手
(
うちて
)
に進む我が心
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
“蹄”の解説
蹄(ひづめ、en: hoof, 複数形: hooves)は、哺乳動物が四肢端に持つ角質の器官。爪の一種である。
(出典:Wikipedia)
蹄
漢検準1級
部首:⾜
16画
“蹄”を含む語句
蹄鉄
馬蹄
係蹄
蹄音
馬蹄形
蹄鉄形
羊蹄
後方羊蹄
碧蹄館
鉄蹄
蹄係
馬蹄型
蹄鉄屋
毀蹄
馬蹄銀
飛塵馬蹄
軌条蹄鉄
馬蹄喊声
馬蹄螺
蹄血斑
...