花束はなたば
順吉は今でもはつきりとその時のさまを思ひ出すことが出来た。右に石垣、その下に柳の大きな樹が茂つて、向うに橋がある——その橋も、殿様のゐる頃には大小を挟んだ侍が通つたり、騎馬の武士が蹄を鳴して勇しく渡つて行つたりしたもので、昔は徒士や足軽の子 …