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ふりがな文庫
“
赴
(
おもむ
)” の例文
六月十二日、予は独り新富座に
赴
(
おもむ
)
けり。去年今月今日、予が手に
仆
(
たふ
)
れたる犠牲を思へば、予は観劇中も
自
(
おのづか
)
ら会心の微笑を禁ぜざりき。
開化の殺人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ミリエル氏はそこに
赴
(
おもむ
)
いた九十五人の司教の一人であった。しかし彼はただ一回の会議と三、四回の特殊協議に出席しただけだった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
陵の叔父(李広の次男)
李敢
(
りかん
)
の最後はどうか。彼は父将軍の
惨
(
みじ
)
めな死について衛青を
怨
(
うら
)
み、自ら大将軍の邸に
赴
(
おもむ
)
いてこれを
辱
(
はずか
)
しめた。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
もっといのちの
赴
(
おもむ
)
くまゝに、
単的
(
ママ
)
な男女の組合せがありそうなものじゃないかと、近所の船の者が見返るほど暴れて騒ぎ出しました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
更に一二年すると同好同學の伴侶にも都門を去つて遠く任に
赴
(
おもむ
)
く人さへも出來て來た。
會者定離
(
ゑしやぢやうり
)
の悲が葉櫻の頃には心を動かした。
すかんぽ
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
▼ もっと見る
すると満願の夜霊夢のお告げがあって、早速江戸に
赴
(
おもむ
)
き竹女と申す
婢女
(
はしため
)
を捜せ、それこそはわが生身の形容に間違いもないとの仰せじゃ
奇談クラブ〔戦後版〕:15 お竹大日如来
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
わたしの
霊
(
たましい
)
はここを離れて、天の喜びに
赴
(
おもむ
)
いても、坊の行末によっては満足が出来ないかも知れません、よっくここを
弁
(
わきま
)
えるのだよ……
忘れ形見
(新字新仮名)
/
若松賤子
(著)
「いき」の芸術形式がいわゆる「美的小{2}」と異なった方向に
赴
(
おもむ
)
くものであることは、これによってもおのずから明白である。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
十一月頃に定家自ら九条家に
赴
(
おもむ
)
いて道家・
教実
(
のりざね
)
父子に草本を示したところ、用捨の事ありというので、百首あまり切り棄てられた。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
高山地方は本居宣長の高弟として聞こえた田中
大秀
(
おおひで
)
のごとき早く目のさめた国学者を出したところだから、半蔵が任地に
赴
(
おもむ
)
いたら
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
翌朝、わが素人探偵戸針康雄は、大平氏宅に
赴
(
おもむ
)
いて殺人現場の捜査を行った。といっても、別に系統的な捜査を行うのではない。
好色破邪顕正
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
勢ひの
赴
(
おもむ
)
くところ、もうどうすることもできず、大泉を先頭に、ぞろぞろ玄関へ繰り出した。彼の自家用が車寄せに着いてゐた。
落葉日記
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
それで大村は警察に渡すには忍びない気持と持前の信心深さから、お寺へ
赴
(
おもむ
)
き坐禅修行をして早く謹慎の状でも見せろと命じたのである。
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
大原の声を聞きて妻君は座敷の
方
(
かた
)
へ
赴
(
おもむ
)
けり。お登和嬢も続いて立ちぬ。さりながら妻君の今の言葉が少しく気にかかりて足も前へ進まず。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
それにしてもより稀薄に支配階級の血を伝えた私生児中にかかる気勢が見えはじめたことは、大勢の
赴
(
おもむ
)
くところを予想せしめるではないか。
片信
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
この気合で押して行く以上はいかに複雑に進むともいかに
精緻
(
せいち
)
に
赴
(
おもむ
)
くともまたいかに解剖的に説き入るとも調子は依然として同じ事である。
写生文
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
然れども、今日の子弟にして政治・法律の二学に
赴
(
おもむ
)
き、
滔々
(
とうとう
)
として所在
皆
(
み
)
なこれなるは、決して偶然に出るにあらざるなり(喝采、拍手)。
祝東京専門学校之開校
(新字新仮名)
/
小野梓
(著)
庚子
(
かうし
)
は天保十一年で、拙堂は藤堂
高猷
(
たかゆき
)
に
扈隨
(
こずゐ
)
して津から江戸に
赴
(
おもむ
)
いたのであらう。記を作つたのは安政中の事かとおもはれる。
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
二度目の妻が亡くなってのち三、四年たって、南ロシアへ
赴
(
おもむ
)
き、ついにオデッサまで行って、そこに何年か引き続いて暮らしたのであった。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
我が日本の開国についで政府の革命以来、全国人民の気風は開進の一方に
赴
(
おもむ
)
き、その進行の勢力はこれを
留
(
とど
)
めて
駐
(
とど
)
むべからず。
徳育如何
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
なぜなら、戦国の世に敵地へ
赴
(
おもむ
)
いて間牒の任務に服するのには普通の武士では思うように行かないので、しば/\座頭を用いたのであった。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と一座も、それを承認したかのように、力を入れてうなずいて、なお、その曲の
赴
(
おもむ
)
くところを終りまで聞いたことがあります。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
男のほうからは、あすリュクサンブールの博物館で会うことを命令する、一種の最後
通牒
(
つうちょう
)
を送ってきた。彼女はそれへ
赴
(
おもむ
)
いた。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
思いの
赴
(
おもむ
)
くにまかせて、斬ってきって斬りまくった彼は、相手方が一人ふたりずつ数の減ってゆくのを、意識するだけだった。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
梅雨
(
つゆ
)
のあくるを待ち兼ねてその年の
土用
(
どよう
)
に
入
(
い
)
るやわれは朝な朝な八重に
誘
(
いざな
)
はれて
其処
(
そこ
)
此処
(
ここ
)
と草ある処に
赴
(
おもむ
)
きかの薬草
摘
(
つ
)
むにいそがしかりけり。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
文運日を追ふて隆盛に
赴
(
おもむ
)
く時に
方
(
あた
)
りて、木くづ竹ぎれにも劣りてつまらぬ貞門の俳諧がいつまでか能く人心を喜ばしむべき。
古池の句の弁
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
ガラシヤは、当然他にも起るはずだった、多くの悲劇を、身一つで
堰
(
せ
)
き止めた。幾多の犠牲を救いあげて、今は、もっとも
容易
(
たやす
)
い死へ
赴
(
おもむ
)
いた。
日本名婦伝:細川ガラシヤ夫人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
火曜日の朝ごとに各の身分に応じ隊伍を編み泉水に
赴
(
おもむ
)
き各その定めの場について夥しく快げにかつ
徐
(
しず
)
かにその
膀胱
(
ぼうこう
)
を
空
(
あ
)
くる。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
雪
(
すゝが
)
ん物と思ふより庄兵衞に會ひ云々と申すに因て
僥倖
(
さいはひ
)
なれば只今よりして彼方へ
赴
(
おもむ
)
き
仇
(
あだ
)
を殺して身の明を立んと思へど我私しの
恨
(
うらみ
)
を以て他人を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
だが、しばし考へてみると先年浅間山の北
麓
(
ろく
)
六里ヶ原へ
山女魚
(
やまめ
)
釣に
赴
(
おもむ
)
いたとき、そこの養狐場へ厄介になつたことがある。
たぬき汁
(新字旧仮名)
/
佐藤垢石
(著)
お前は平安の都に残って、
孜々
(
しし
)
として勉学にはげみ、立派な学者となる。私は東国の任地に
赴
(
おもむ
)
き、武を練り、人格を磨いて、立派な武人となる。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
云い出したからには、事務長、勢いよく
赴
(
おもむ
)
くところ、何とも仕方がなく、開かれたトランクの
内容
(
ないよう
)
如何
(
いかん
)
と
覗
(
のぞ
)
きこんだ。が、途端に
怪訝
(
けげん
)
な面持で
戦時旅行鞄:――金博士シリーズ・6――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
涼しき真夜中の
幽静
(
しずか
)
なるを喜びつつ、福井の金主が待てる旅宿に
赴
(
おもむ
)
かんとて、そこまで来たりけるに、ばらばらと小蔭より
躍
(
おど
)
り出ずる
人数
(
にんず
)
あり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
法水は相変らず茫漠たるものを
仄
(
ほの
)
めかしただけで、それから鍵孔に湯を注ぎ込み、実験の準備をしてから、演奏台のある階下の礼拝堂に
赴
(
おもむ
)
いた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
剛一は千葉地方へ遠足に
赴
(
おもむ
)
きて二三日、顔を見せざるなり、雨
蕭々
(
せう/\
)
として孤影
蓼々
(
れう/\
)
、梅子は燈下、思ひに悩んで夜の
深
(
ふ
)
け行くをも知らざるなり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
で、正面から衝突したならば勝ち目があろうとは思われなかった。そこで勢いの
赴
(
おもむ
)
くところ
詭計
(
きけい
)
を用いざるを得なかった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
気持が急速に荒廃に
赴
(
おもむ
)
くのを感じながら、宇治は顔をぐりぐり膝頭に押しつけた。
眼花
(
めばな
)
が暗く入り乱れた。
暫
(
しばら
)
く経った。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
朝早く露西亜の中部スチエキノ停車場から百姓の馬車に乗ってトルストイ
翁
(
おう
)
のヤスナヤ、ポリヤナに
赴
(
おもむ
)
く時、朝露にぬれそぼった小麦畑を通ると
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
それよりは
漸次
(
ぜんじ
)
快方に
赴
(
おもむ
)
きければ、
単
(
ひとえ
)
に神の
賜物
(
たまもの
)
なりとて、夫婦とも感謝の意を表し、その
後
(
のち
)
久しく参詣を怠らざりき。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
郷里
(
きやうり
)
から
來
(
き
)
たものに
聞
(
き
)
いて
彼
(
かれ
)
は
勘次
(
かんじ
)
が
次第
(
しだい
)
に
順境
(
じゆんきやう
)
に
赴
(
おもむ
)
きつゝあることを
知
(
し
)
つた。
彼
(
かれ
)
は
心
(
こゝろ
)
が
復
(
ま
)
た
動搖
(
どうえう
)
して
脆
(
もろ
)
く
成
(
な
)
つた
心
(
こゝろ
)
が
酷
(
ひど
)
く
哀
(
あはれ
)
つぽく
情
(
なさけ
)
なくなつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
日本の活動写真界の益々進歩隆盛に
赴
(
おもむ
)
いて来るのは、私のような大の活動写真好きにとっては誠に喜ばしい事である。
活動写真
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
小さな荷物持たされて、正三は順一と一緒に電車の停車場へ
赴
(
おもむ
)
いた。
己斐
(
こい
)
行はなかなかやって来ず、正三は広々とした道路のはてに目をやっていた。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
その下田より
檻輿
(
かんよ
)
江戸に
赴
(
おもむ
)
き、
途
(
みち
)
三島を経るや、警護の穢多に向い、大義を説き、人獣相距る遠からざる彼らをして憤励の気、色に
見
(
あら
)
われしめたり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
日本帝國
(
につぽんていこく
)
のため、
帝國海軍
(
ていこくかいぐん
)
のため、また
櫻木大佐
(
さくらぎたいさ
)
の
光譽
(
くわうよ
)
のために、
我等
(
われら
)
は
全力
(
ぜんりよく
)
を
盡
(
つく
)
して
電光艇
(
でんくわうてい
)
の
應援
(
おうえん
)
に
赴
(
おもむ
)
きませう。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
去
(
さる
)
四月二十四日東京を発して当県に来る事となりました、劍山に登らんと
企
(
くわだ
)
てましたのは七月の二日で、
先
(
ま
)
ず芦峅村に
赴
(
おもむ
)
き人夫を
雇
(
やと
)
おうと致しましたが
越中劍岳先登記
(新字新仮名)
/
柴崎芳太郎
(著)
支配者によって未来のどの道へ
赴
(
おもむ
)
かせられるのであろうと、こんなことをいろいろと想像しながら
般若心経
(
はんにゃしんぎょう
)
の章句を唱えることばかりを源氏はしていた。
源氏物語:04 夕顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
殊
(
こと
)
に男子と女子とは
互
(
たがひ
)
に体質と性情の差に
由
(
よつ
)
て
其
(
その
)
能力に長短があり、同等たることを得ないのは勿論であるが、要するに
其
(
その
)
適した所に
赴
(
おもむ
)
いて可能を
尽
(
つく
)
し
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
眼病も大きに全快の
端緒
(
こぐち
)
に
赴
(
おもむ
)
き、少しずつは見えるように相成ったが、その八橋周馬とか申して堀切村に
居
(
い
)
る奴は、全く
仇敵
(
かたき
)
の大野惣兵衞に相違ないか
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
斗滿川
(
とまむがは
)
は
余
(
よ
)
が
家
(
いへ
)
を
去
(
さ
)
る
半町餘
(
はんちやうよ
)
の
處
(
ところ
)
に
在
(
あ
)
り。
朝夕
(
あさゆふ
)
灌水
(
くわんすゐ
)
に
赴
(
おもむ
)
くに、
如何
(
いか
)
なる
嚴寒
(
げんかん
)
大雪
(
おほゆき
)
の
候
(
こう
)
と
雖
(
いへど
)
も、
浴衣
(
ゆかた
)
を
纒
(
まと
)
ひ、
草履
(
ざうり
)
を
穿
(
うが
)
つのみにて、
他
(
た
)
に
何等
(
なんら
)
の
防寒具
(
ばうかんぐ
)
を
用
(
もち
)
ゐず。
命の鍛錬
(旧字旧仮名)
/
関寛
(著)
流
(
ながれ
)
の女は朝鮮に流れ渡つて後、更に
何處
(
いづこ
)
の
涯
(
はて
)
に漂泊して其
果敢
(
はか
)
ない生涯を送つて居るやら、それとも既に此世を辭して
寧
(
むし
)
ろ靜肅なる死の國に
赴
(
おもむ
)
いたことやら
少年の悲哀
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
赴
常用漢字
中学
部首:⾛
9画
“赴”を含む語句
赴任
赴援
押赴
奉天赴
奔赴
航赴