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賑
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にぎわ
ふりがな文庫
“
賑
(
にぎわ
)” の例文
天王寺の前から曲れば、この
三崎北町
(
さんさききたまち
)
あたりもまだ店が締めずにある。公園一つを中に隔てて、
都鄙
(
とひ
)
それぞれの
歳暮
(
さいぼ
)
の
賑
(
にぎわ
)
いが見える。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
ただその一つさえ祭の太鼓は
賑
(
にぎわ
)
うべき処に、
繁昌
(
はんじょう
)
が
合奏
(
オオケストラ
)
を
演
(
や
)
るのであるから、鉦は鳴す、笛は吹く、続いて踊らずにはいられない。
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
文反古
(
ふみほご
)
にて
腰張
(
こしばり
)
せる壁には
中形
(
ちゅうがた
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
かかりて、その
傍
(
かたわら
)
なる
縁起棚
(
えんぎだな
)
にはさまざまの
御供物
(
おくもつ
)
賑
(
にぎわ
)
しきが
中
(
なか
)
に大きなる
金精大明神
(
こんせいだいみょうじん
)
も見ゆ。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
大門際
(
おほもんぎわ
)
に
喧嘩
(
けんくわ
)
かひと
出
(
で
)
るもありけり、
見
(
み
)
よや
女子
(
をんな
)
の
勢力
(
いきほひ
)
と
言
(
い
)
はぬばかり、
春秋
(
はるあき
)
しらぬ五
丁町
(
てうまち
)
の
賑
(
にぎわ
)
ひ、
送
(
おく
)
りの
提燈
(
かんばん
)
いま
流行
(
はや
)
らねど
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
それゆえに前には船の形を致しました石塚でありましたそうで、其の頃は
毎月
(
まいげつ
)
廿五日は御縁日で
大分
(
だいぶ
)
賑
(
にぎわ
)
いました由にございます。
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
女中や書生等の家人たちが、さも
大手柄
(
おおてがら
)
の大発見をしたように、功を争ってヘルンの所へ
馳
(
かけ
)
つけるので、いつも家中が
和
(
なご
)
やかに
賑
(
にぎわ
)
っていた。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
当分話題は
賑
(
にぎわ
)
わせることでしょうが、現在の世界にどれほどの影響を与えるという、本質的な問題なぞでは決してありませぬ。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
とあるキャフェで軽い昼食を摂りながら娘に都大路の祭りの
賑
(
にぎわ
)
いを見せていると、新吉はいろ/\のことが眼の前の情景にもつれて頭に湧いた。
巴里祭
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
コンポステラの
伽藍
(
がらん
)
に尊者の屍を安置し霊験灼然とあって、中世諸国より巡礼日夜至って、押すな突くなの
賑
(
にぎわ
)
い
劇
(
はげ
)
しく、欧州第一の参詣場たり。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
憲法発布の日には、時の文相
森有礼
(
もりありのり
)
が暴漢のために刺殺された。事実の痛ましさはめでたい記念日の
賑
(
にぎわ
)
いに浮き立っていた誰しもの胸を打った。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
日
(
ひ
)
の
暮方
(
くれがた
)
の町の
賑
(
にぎわ
)
いが、晴れやかに二人の
周囲
(
まわり
)
を取り巻いた。市中一般に、春の
齎
(
もたら
)
した喜びが
拡
(
ひろが
)
っていて、それが無意識に人々に感ぜられると見える。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
江戸時代のことは、故老の話に聴くだけであるが、自分の眼で
視
(
み
)
た明治の東京——その新年の
賑
(
にぎわ
)
いを今から振返ってみると、文字通りに隔世の感がある。
年賀郵便
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
欅
(
けやき
)
の樹で囲まれた村の旧家、
団欒
(
だんらん
)
せる平和な家庭、続いてその身が東京に修業に行ったおりの若々しさが
憶
(
おも
)
い出される。
神楽坂
(
かぐらざか
)
の夜の
賑
(
にぎわ
)
いが眼に見える。
一兵卒
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
足もとの声をそら耳にして、秀吉の眼はただ下の市の
賑
(
にぎわ
)
いに見とれている。ひそかに彼は、主君信長に従って赴いた北陸や伊勢の陣を思いくらべていた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこへ引越して行ったのは、その頃開かれてあった博覧会の
賑
(
にぎわ
)
いで、土地が大した盛場になっていた為であった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
今夜一晩と極ったため、階下の
炬燵
(
こたつ
)
には皆なが集まった。珍らしく親爺も加わって何かしら話が
賑
(
にぎわ
)
っていたが、辰男一人は相変らず、二階にじっとしている。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
多くの商人は殊に祭の
賑
(
にぎわ
)
いを期待する。養蚕から得た報酬がすくなくもこの時には費されるのであるから。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
翌日番町へ行ったら、岡田一人のために
宅中
(
うちじゅう
)
騒々しく
賑
(
にぎわ
)
っていた。兄もほかの事と違うという意味か、別に
苦
(
にが
)
い顔もせずに、その
渦中
(
かちゅう
)
に
捲込
(
まきこ
)
まれて黙っていた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
こうした時刻は、しかし彼には前にもどこかで経験したことがあるようにおもえた。郷里から次兄と
嫂
(
あによめ
)
がやって来たので、狭い家のうちは人の気配で
賑
(
にぎわ
)
っていた。
死のなかの風景
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
門の扉がカタンカタンしてどうっと人が這入ってくる、根岸庵空前の
賑
(
にぎわ
)
いである、予が先生、僕の方であるとほとんど婚礼という感じですナアというと、先生は
竹乃里人
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
石燈籠が、ずらりと両側に並んで、池の端から、下谷の花柳界の
賑
(
にぎわ
)
いの灯が、
樹間
(
このま
)
に美しく眺められた。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
時ならぬ
賑
(
にぎわ
)
いが古びたお館をふいに明るくした。奥方は勇気に満ちてあれこれと
淀
(
よど
)
みなく指図するのだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
志士やごろつきで
賑
(
にぎわ
)
いかえる
珈琲
(
コーヒー
)
店、大道演説、三色旗、自由帽、サン・キュロット、ギヨティン、そのギヨティンの形になぞらえて造った玩具や菓子、囚人馬車
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
祠は急に
賑
(
にぎわ
)
い出した。或る農婦の、一昼夜も断続していた
胃痙攣
(
いけいれん
)
が、その
御供物
(
おくもつ
)
の一つの菓子でぴったりと止んだからだった。そして森の中には白い二本の大旗が立った。
或る部落の五つの話
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
市場の
賑
(
にぎわ
)
うのは朝だけです。近在から集まる農家の人々は、前日から心がけて、洗い上げた野菜を前晩に荷造して車に積上げて、
被
(
おお
)
いをして置き、夜の明方に荷を引出します。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
「県の何某が
女
(
め
)
のここにあるはまことか」と云うと、
鍛冶
(
かじ
)
の老人が出て、「この家三とせばかり前までは、
村主
(
すぐり
)
の何某という人の
賑
(
にぎわ
)
しくて
住侍
(
すみはべ
)
るが、
筑紫
(
つくし
)
に
商物
(
あきもの
)
積みてくだりし、 ...
蛇性の婬 :雷峰怪蹟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
お
対手
(
あいて
)
の
弾手
(
ひきて
)
や三味線の方の
女
(
ひと
)
も現れて来て、琴の会のような
賑
(
にぎわ
)
しいことになっている。
江木欣々女史
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
一本
(
ひともと
)
の
淋
(
さび
)
しきにもあれ
千本八千本
(
ちもとやちもと
)
の
賑
(
にぎわ
)
しきにもあれ、自然のままに
生茂
(
おいしげ
)
ッてこそ見所の有ろう者を、それをこの辺の菊のようにこう
無残々々
(
むざむざ
)
と作られては、興も
明日
(
あす
)
も覚めるてや。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
殊
(
こと
)
に
私
(
わたくし
)
が
神
(
かみ
)
に
祀
(
まつ
)
られました
当座
(
とうざ
)
は、
海嘯
(
つなみ
)
で
助
(
たす
)
けられた
御礼詣
(
おれいまい
)
りの
人々
(
ひとびと
)
で
賑
(
にぎわ
)
いました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
曰
(
いわ
)
く、フネノフネ。曰く、クロネコ。曰く、美人座。何が何やら、あの頃の銀座、新宿のまあ
賑
(
にぎわ
)
い。絶望の乱舞である。遊ばなければ損だとばかりに眼つきをかえて酒をくらっている。
十五年間
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
当麻
(
たぎま
)
の
邑
(
むら
)
は、此頃、一本の草、
一塊
(
ひとくれ
)
の石すら、光りを持つほど、
賑
(
にぎわ
)
い
充
(
み
)
ちて居る。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
肴町
(
さかなまち
)
十三日町
賑
(
にぎわ
)
い
盛
(
さかん
)
なり、
八幡
(
はちまん
)
の祭礼とかにて
殊更
(
ことさら
)
なれば、見物したけれど足の痛さに
是非
(
ぜひ
)
もなし。この日岩手富士を見る、また北上川の源に沼宮内より
逢
(
あ
)
う、共に
奥州
(
おうしゅう
)
にての名勝なり。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ここは全南の都で町々は
賑
(
にぎわ
)
う。私たちは泉屋旅館に旅装を解いた。夜は料亭春木楼で松本知事主催の歓迎宴が吾々のために設けられた。知事始め、内務部長、
府尹
(
ふいん
)
、その他光州知名の紳士列席。
全羅紀行
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
昼は
千早振
(
ちはやぶる
)
神路山
(
かみじやま
)
の麓、かたじけなさに涙をこぼした旅人が、夜は大楼の
音頭
(
おんど
)
の
色香
(
いろか
)
の
艶
(
えん
)
なるに迷うて、町の
巷
(
ちまた
)
を浮かれ歩いていますから、夜の
賑
(
にぎわ
)
いも、やっぱり昼と変らないくらいであります。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ところが、その
翌
(
あく
)
る年の七月二十四日の陶器祭、この日は瀬戸物町に陶器作りの人形が出て、年に一度の
賑
(
にぎわ
)
いで、私の心も浮々としていたが、その
雑鬧
(
ざっとう
)
の中で私はぱったり文子に出くわしました。
アド・バルーン
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
評論の方も可成り
賑
(
にぎわ
)
い、千葉亀雄氏、馬場孤蝶氏、前田河広一郎氏、梅原北明氏、戸川貞雄氏、藤井真澄氏、甲賀三郎氏、平林初之輔氏、佐藤春夫氏、石上是介氏等が、直接に間接に意見を吐露され
探偵文壇鳥瞰
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
もうそれだけの人数でも可なりガヤガヤ
賑
(
にぎわ
)
っていました。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
春田博士
(
はるたはかせ
)
邸では、朝食で
賑
(
にぎわ
)
っていた。
骸骨島の大冒険
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彩
(
あや
)
に
人
(
ひと
)
よぶ
賑
(
にぎわ
)
ひに
全都覚醒賦
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
興行あるごとに
打囃
(
うちはや
)
す
鳴物
(
なりもの
)
の音
頼母
(
たのも
)
しく、野衾の恐れも薄らぐに、
行
(
ゆ
)
きて見れば、木戸の
賑
(
にぎわ
)
いさえあるを、内はいかにおもしろからむ。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
新しき女の持っている情緒は、夜店の
賑
(
にぎわ
)
う郊外の新開町に立って苦学生の弾奏して銭を乞うヴァイオリンの唱歌を聞くに等しきものであった。
十日の菊
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
此年
(
このとし
)
三の
酉
(
とり
)
まで
有
(
あ
)
りて
中
(
なか
)
一
日
(
にち
)
はつぶれしかど
前後
(
ぜんご
)
の
上天氣
(
じやうてんき
)
に
大鳥神社
(
おほとりじんじや
)
の
賑
(
にぎわ
)
ひすさまじく、
此處
(
こゝ
)
かこつけに
檢査塲
(
けんさば
)
の
門
(
もん
)
より
亂
(
みだ
)
れ
入
(
い
)
る
若人達
(
わかうどたち
)
の
勢
(
いきほ
)
ひとては
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
金帛
(
きんはく
)
を以て謝することの出来ぬものも、米穀
菜蔬
(
さいそ
)
を
輸
(
おく
)
って
庖厨
(
ほうちゅう
)
を
賑
(
にぎわ
)
した。後には遠方から
轎
(
かご
)
を以て迎えられることもある。馬を以て
請
(
しょう
)
ぜられることもある。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
それでげすから軍艦が碇泊したというと品川はグッと景気づいてまいる。殊に貸座敷などは一番に
賑
(
にぎわ
)
しくなるんで、随分大したお金が落るそうにございます。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
この事件に棚田判事が
抜擢
(
ばってき
)
されて、裁判長として法廷に臨み、被告を懲役三年半に処す! と厳酷な刑を宣言しているところなどが、新聞を
賑
(
にぎわ
)
せていたのです。
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その時分を、この安土では、さながら盆と正月を、一度に迎えたような
賑
(
にぎわ
)
いで、全城全市、盛装していた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おいおいと、広間のうちは、
湧
(
わ
)
くような
賑
(
にぎわ
)
いであった。それぞれ一人の例外もなく個性を持った声が、酔を帯びて無数の高低強弱をぶちまけ、ぶっつけ合っている。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
花のたよりが都下の新聞を
賑
(
にぎわ
)
し始めた一週間の
後
(
のち
)
になっても、Hさんからは何の通知もなかった。自分は失望した。電話を番町へかけて聞き合せるのも
厭
(
いや
)
になった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
松崎は
鮎
(
あゆ
)
釣が好きだったところからそれをかこつけに同業の伯父から紹介状を貰って河内屋に泊り込んでいた。X町のそばには鮎のいる瀬川が流れて季節の間は相当
賑
(
にぎわ
)
った。
汗
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
土地の話の
序
(
ついで
)
だ。この辺の神棚には大きな目無し
達磨
(
だるま
)
の飾ってあるのをよく見掛ける。上田の
八日堂
(
ようかどう
)
と言って、その縁日に達磨を売る市が立つ。丁度東京の
酉
(
とり
)
の
市
(
いち
)
の
賑
(
にぎわ
)
いだ。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
賑
漢検準1級
部首:⾙
14画
“賑”を含む語句
殷賑
賑合
賑々
大賑
賑恤
賑々敷
御賑
内賑
賑本通
賑済
賑町
開倉廩賑給之