あせ
——お金が汗をかいたわ」 河内屋の娘の浦子はそういって松崎の前に掌を開いて見せた。ローマを取巻く丘のように程のよい高さで盛り上る肉付きのまん中に一円銀貨の片面が少し曇って濡れていた。 浦子はこどものときにひどい脳膜炎を患ったため白痴であった …
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(新字旧仮名)岡本かの子 (著)