色香いろか)” の例文
夢心地ゆめごこちをドンとひとたれたやうに、そも/\人口じんこう……まん戸數こすう……まんなる、日本につぽん第二だいに大都だいと大木戸おほきどに、色香いろかうめ梅田うめだく。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
年三十をこえると、色香いろかはとぼしい。従って良縁のさきも狭い。だが分別はできてくる。人間、人生の見さかいも備わっていよう。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
太夫たゆうめておどったとて、おせんの色香いろかうつるというわけじゃァなし、芸人げいにんのつれあいが、そんなせまかんがえじゃ、所詮しょせんうだつはがらないというものだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
僕はつねに思うに、庭の樹を見ても年々歳々同じからずして、老行おいゆくとともに元気も衰えるが、手入れをしたり、肥料をほどこすと、再び色香いろかを増すを見る。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
こひしい、なつかしい、ヂュリエット、なんとして今尚いまなうも艶麗あてやかぢゃ? しやかたちのない死神しにがみそなた色香いろかまようて、あのほねばかりの怪物くわいぶつめが、おの嬖妾おもひものにしようために
驚き見れば長高たけたかき老紳士の目尻もあやしく、満枝の色香いろかに惑ひて、これは失敬、意外の麁相そそうをせるなりけり。彼は猶懲なほこりずまにこの目覚めざまし美形びけいの同伴をさへしばら目送もくそうせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
女が再び面をあげた時、涙に輝いた眼と、情に熱した頬とは、一方ひとかたならぬ色香いろかを添えつ
のこんの色香いろかを墨染の袖に包んでいる尼と狭い一室にひざをつき合わせ、彼女の孤独を慰めたり自分の無躾ぶしつけびたりしながら、少しずつ身の上話を手繰たぐり出すようにしたのであろう。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
起せり友次郎も始はお花が色香いろかまよ出國しゆつこくしたるあやまちは有どものちにお花が助太刀すけだちして美名びめい世上せじやうに上たる事是ひとへに岡山侯の賢良けんりやうなるより下にも又斯る人々ありしと其頃世上にうはさせり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかも若い女が多数をめていた。それがまた普通の令嬢や細君と違って、色香いろかを命とする綺麗きれいな人ばかりなので、その中にまじるこの母は、ただでさえくすぶり過ぎて地味じみなのである。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこでこちらも早速さつそくに「君が色香いろかもかんばせも」と鸚鵡返あうむがへしをしておいた。したが、あらしに打たれる花は、さぞ色褪せることだらう。……ぴかりと稻妻いなづまはたたがみ、はつとばかりに氣がついた。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「愛」の色香いろかこぼちたる憎き「死」の神。
深張ふかばり涼傘ひがさの影ながら、面影おもかげは透き、色香いろかほのめく……心地ここちすれば、たれはばかるともなく自然おのずから俯目ふしめ俯向うつむく。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
つとめて幼少の時にえがいた理想をやしなうことは年々歳々ねんねんさいさいれゆく心の色香いろかを新たむるの道であろうと信ずる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
春の色香いろかでたるはあはれむべく、打霞うちかすめる空に来馴きなるるひよのいとどしく鳴頻なきしきりて、午後二時を過ぎぬる院内の寂々せきせきたるに、たまたま響くは患者の廊下をゆるう行くなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
昼は千早振ちはやぶる神路山かみじやまの麓、かたじけなさに涙をこぼした旅人が、夜は大楼の音頭おんど色香いろかえんなるに迷うて、町のちまたを浮かれ歩いていますから、夜のにぎわいも、やっぱり昼と変らないくらいであります。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
はなさうわけがない屹度きつとお光さんの色香いろかに迷ひ私があれ程に言て置た事をも打忘れて自分じぶんから迷惑めいわくこしらへ私に相談も無い者だ夫と云も日頃から身のたしなみのわるい故とはややきかけし女房は可笑をかしくも又道理もつともなり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その色香いろかをかきむしッてやる。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とげふる色香いろかとも知れ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
既に、草刈り、しば刈りの女なら知らぬこと、髪、化粧けわいし、色香いろかかたちづくった町の女が、御堂みどう、拝殿とも言わず、このきざはし端近はしぢかく、小春こはる日南ひなたでもある事か。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
宛然さながら色香いろかほしいままにせる牡丹ぼたんの枝を咲撓さきたわめたる風情ふぜいにて、彼は親しげに座を進めつ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
のこんの色香いろか人を迷わしむるものがあって、浅井亡びた後の論功行賞としては、この美しい後家さんを賜わりたいということに、内心、織田の宿将どもがしのぎを削ったが、そこは貫禄と言い、功績と言い
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
とげふる色香いろかとも知れ。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
色香いろかはないが
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
にしき面影おもかげめた風情ふぜいは、山嶽さんがく色香いろかおもひくだいて、こひ棧橋かけはしちた蒼空あをぞらくも餘波なごりのやうである。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふぢはなむらさきは、眞晝まひる色香いろかおぼろにして、白日はくじつゆめまみゆる麗人れいじん面影おもかげあり。憧憬あこがれつゝもあふぐものに、きみかよふらむ、高樓たかどのわた廻廊くわいらうは、燃立もえた躑躅つゝじそらかゝりて、宛然さながらにじへるがごとし。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
みちをしたうててふないが、さそたもと色香いろかときめく。……
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)