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ひるが
ふりがな文庫
“
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(
ひるが
)” の例文
旧字:
飜
脚絆
(
きゃはん
)
わらじは元より、着物をすべて脱ぎ捨てる。そして、腹巻一つの真っ裸になると、魚のように、身を
翻
(
ひるが
)
えして、川の中へ
躍
(
おど
)
り込んだ。
魚紋
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鳰鳥は
颯
(
さっ
)
と身を
翻
(
ひるが
)
えし、岩を伝って逃げようとした。その裾を素早く踏み止めた大力無双の甚五衛門は憐れむように声を落とし
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
村に入って見ると、祭なるがためにかえって静かで、ただ遠く
高柱
(
たかはしら
)
の
徴
(
しる
)
しの
幟
(
のぼり
)
が、定まった場所に白く
翻
(
ひるが
)
えるを望むのみである。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
と叫ぶ与一の声と共に、眩しい西日の中で白い冷たい虹が
翻
(
ひるが
)
えった。はだかったマン丸いお八代の右肩へ、抜討ちにズッカリと斬り込んだ。
名君忠之
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
爪の
垢
(
あか
)
ほど
先
(
せん
)
を制せられても、取り返しをつけようと意思を働かせない人は、教育の力では
翻
(
ひるが
)
えす事の出来ぬ宿命論者である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
竹「お別れ申しても仕方がございませんけれども、貴方の迷いの心を
翻
(
ひるが
)
えしてさえくだされば、私に
於
(
おい
)
てはお恨みとも何とも存じませんから」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
思い/\て夜を明し藻西太郎は確に無罪なりと思い
詰
(
つむ
)
るに至りしかど又
翻
(
ひるが
)
えりて目科の細君が言たる所を考え見れば
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
ふっと表情をかえたあなたは「ぼんち映画みに行かないの」といい
棄
(
す
)
てたまま、くるりと身を
翻
(
ひるが
)
えし、
甲板
(
かんぱん
)
の
端
(
はし
)
の映画場のほうへ行ってしまいました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
大助はかれらの話を黙って聞いていたが、どうして校川宗兵衛の決心を
翻
(
ひるが
)
えさせるかというところで口を揷んだ。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
同胞新聞の楼上なる、
編輯室
(
へんしふしつ
)
の
暖炉
(
ストウブ
)
の
辺
(
ほとり
)
には、四五の記者の立ちて新聞を
猟
(
あ
)
さるあり、椅子に
凭
(
よ
)
りて手帳を
翻
(
ひるが
)
へすあり、今日の勤務の打ち合はせやすらん
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
本篇の主人公
雉本静也
(
きじもとしずや
)
が、失恋のために自殺を決心し、又忽ちそれを
翻
(
ひるが
)
えして、却って殺人を行うに至ったのも、こういう雰囲気の然らしめたところである。
死の接吻
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
私は曽て和蘭陀の旅中で群を成して居る船の旗の美を喜んだが、戎克の旗が赤や青や黄を
翻
(
ひるが
)
へしてゐるのも曇天の
下
(
もと
)
の濁流と対照して、一種の壮美であつた。
満蒙遊記:附 満蒙の歌
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
アウグスチヌスも「神の意志は不変であって時に欲し時に欲せず、
況
(
いわ
)
んや前の決断を後に
翻
(
ひるが
)
えす如きものにあらず」といっている(Conf. XII. 15)。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
『
海蛇丸
(
かいだまる
)
來
(
きたる
)
!
海蛇丸
(
かいだまる
)
來
(
きたる
)
!。』と
私
(
わたくし
)
が
絶叫
(
ぜつけう
)
した
時
(
とき
)
、
虎髯大尉
(
こぜんたいゐ
)
は
身
(
み
)
を
翻
(
ひるが
)
へして
戰鬪樓
(
せんとうらう
)
の
方
(
かた
)
へ
走
(
はし
)
り
去
(
さ
)
つた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
いろいろと宮の御意志を
翻
(
ひるが
)
えさせようと院が言葉を尽くしておいでになるうちに夜明け方になった。
源氏物語:36 柏木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
空
(
くう
)
を撃ったお杉は力余って、思わず一足前へ
蹌踉
(
よろめ
)
く
機会
(
はずみ
)
に、
恐
(
おそら
)
く岩角に
蹉
(
つまず
)
いたのであろう、身を
翻
(
ひるが
)
えして穴の底へ真逆さまに転げ
墜
(
お
)
ちた。蝋燭は消えて真の闇となった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
行商体の男が手を差伸べると、なお
頻
(
しき
)
りに唸りつづけていたムクは、急に身を
翻
(
ひるが
)
えして家の土間を
潜
(
くぐ
)
り抜けて裏手の方へ飛んで行きましたが、そこでまた烈しく吠えます。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
郵便脚夫
(
ゆうびんきゃくふ
)
にも
燕
(
つばめ
)
や
蝶
(
ちょう
)
に春の来ると同じく春は来たのであろう。郵便という声も陽気に軽やかに、
幾個
(
いくつ
)
かの郵便物を投込んで、そしてひらりと燕がえしに身を
翻
(
ひるが
)
えして去った。
野道
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
葛
(
くず
)
の
生繁
(
おいしげ
)
っているのを
靡
(
なび
)
かす秋風が吹く度毎に、阿太の野の萩が散るというのだが、二つとも初秋のものだし、一方は広葉の
翻
(
ひるが
)
えるもの、一方はこまかい紅い花というので
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
君は維新のおん帝、御十七の
若帝
(
わかみかど
)
、御束帯に
御冠
(
みかんむり
)
、
御板輿
(
おんいたごし
)
に打乗らせ、天下取ったる
公卿
(
くげ
)
将卒に前後左右を
護
(
まも
)
らして、錦の御旗を五十三
駅
(
つぐ
)
の雄風に
翻
(
ひるが
)
へし、東下りを
果
(
はた
)
し玉ひぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
すると足もとからするすると旗が上り、妙に細長い白い旗が見あげる天空に
翻
(
ひるが
)
えった。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
瀬波に
翻
(
ひるが
)
える
状
(
さま
)
に、背尾を
刎
(
は
)
ねた、皿に余る尺ばかりな塩焼は、まったく美味である。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一人の武士が頭上を狙い、もう一人の武士が胴を眼がけ、同時に葉之助へ切り込んだのを、一髪の間に身を
翻
(
ひるが
)
えし、一人を例の袈裟掛で
斃
(
たお
)
し、一人の太刀を受け止めたのであった。
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
六騎
(
ろつきゆ
)
の活氣ある一團は六十餘艘の小舟に鮟鱇組の旗じるしを
翻
(
ひるが
)
へしながら遠洋漁業の途にのぼるかして、わかい子弟の東京へゆくものさへ、誰一人この因循な故郷に歸らうとはせぬ。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
あれは警察から自白を
強
(
し
)
いられたからなんだと、俄かに陳述を
翻
(
ひるが
)
えして、犯行を否定しはじめたんです……それで被告の云うには、いちばん始めに警察で申上げた通り、事件のあった晩
あやつり裁判
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
年若き教師の、詩読む心にて記憶のページ
翻
(
ひるが
)
えしつつある間に、翁が上にはさらに悲しきこと起こりつ、すでにこの世の人ならざりしなり。かくて教師の詩はその最後の一
節
(
せつ
)
を
欠
(
か
)
きたり。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
二十六日は浅草で終日遊んだと云う申立の三つは尽く再び自ら
翻
(
ひるが
)
えすに至った。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
空が
旗
(
はた
)
のようにぱたぱた光って
翻
(
ひるが
)
えり、火花がパチパチパチッと
燃
(
も
)
えました。
種山ヶ原
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
楽しげに
銀鱗
(
ぎんりん
)
を
翻
(
ひるが
)
えす
魚族
(
いろくず
)
どもを見ては、
何故
(
なにゆえ
)
に我一人かくは心
怡
(
たの
)
しまぬぞと思い
侘
(
わ
)
びつつ、
渠
(
かれ
)
は毎日歩いた。途中でも、目ぼしい
道人
(
どうじん
)
修験者
(
しゅげんしゃ
)
の類は、
剰
(
あま
)
さずその門を
叩
(
たた
)
くことにしていた。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
ところで眼を
翻
(
ひるが
)
えして現代を観ると、世の横着者どもが社会に対しても個人に対しても悪いと知りつつ、いいたい事を我慢して好い加減な事をいっておいて、自分一人が好児になろうとしている。
福沢先生の処世主義と我輩の処世主義
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
彼は、久しい以前から、このお妙を
口説
(
くど
)
きつづけて来たのだが、いまそのお妙がお尋ね者の神尾喬之助を恋している!——と聞くと、かれはさっと身を
翻
(
ひるが
)
えして、おもて通りへ
駈
(
か
)
け出たのだった。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
直ぐその考えを
翻
(
ひるが
)
えしてしまったという校長先生の保証の言葉との間に立ってわたくしはその真相が全く掴めなかったのに、いま決定的に悲観説が
明
(
あきらか
)
になって来たので異常なショックを覚えました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
左手で頁を
翻
(
ひるが
)
えし、右手には
鵝
(
が
)
ペンを持って何か書きつけている。
愛書癖
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
無数の帆ばしらの
尖
(
さき
)
から
翻
(
ひるが
)
へる
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
いい捨てクルリと身を
翻
(
ひるが
)
えすと、兄の死を痛み悲しんでいた、もう今までの甚内ではない。熟練をした勇敢な、風浪と戦うかこであった。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
あとから、すぐ新しい音が耳を
掠
(
かす
)
めて、
翻
(
ひるが
)
える
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
と共にまた北の方へ走る。碌さんは首を縮めて、えっと舌打ちをした。
二百十日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
又之丞は、なお唯七の考えを
翻
(
ひるが
)
えさせようとするらしかったが、同志の誰でも知っているように、云い出すと
肯
(
き
)
かないことを、又之丞も知っていた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
身体
(
からだ
)
の軽い事。まるで木の葉のようにヒラヒラと身を
翻
(
ひるが
)
えす。赤いお盆がそれこそサーチライトのようにギラリギラリと輝きまわり屈折しまわる。
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
悪戯
(
いたずら
)
ッ
児
(
こ
)
のように、くるくる動く
黒眼勝
(
くろめがち
)
の、
睫
(
まつげ
)
の長い
瞳
(
ひとみ
)
を、輝かせ、
靨
(
えくぼ
)
をよせて
頬笑
(
ほほえ
)
むと、
袂
(
たもと
)
を
翻
(
ひるが
)
えし
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
宮崎はすなわち東端
越後境
(
えちござかい
)
の
海角
(
かいかく
)
であって、是から吹きつける風のみが
大伴家持
(
おおとものやかもち
)
らの
袂
(
たもと
)
を
翻
(
ひるが
)
えし、能登から吹くアイは山に
遮
(
さえぎ
)
られて、この
辺
(
あた
)
りでは心づかれなかったので
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
御傷
(
おんいた
)
はしくもまた口惜く、云ひ甲斐無くも
過
(
あやま
)
たせたまふものかな、烈日が前の片時雨、聖智が
中
(
うち
)
の御一失、
疾
(
と
)
く/\御心を
翻
(
ひるが
)
へしたまひて、三趣に沈淪し四生に
※※
(
れいへい
)
するの醜さを出で
二日物語
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
一通りは頁を
翻
(
ひるが
)
えしてみたこともあるにはあるが、全然、空想と誇張の産物で、現実を救うに夢を以てするようなもの——要するに、過去と無智とが産んだ正直な空想の産物と見ておりました。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
わたしの机の紙を
翻
(
ひるが
)
へし
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
こう云うや弦四郎は身を
翻
(
ひるが
)
えして、騎馬の一団の走って来る方へ、脱兎のようにひた走ったが、走りながらも茅野雄へ云った。
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
周囲の事情が母の意思を
翻
(
ひるが
)
えさせるため自然と彼女に圧迫を加えて来るのを待つ一種の逃避手段に過ぎないと思われた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
然
(
しか
)
るに又、
翻
(
ひるが
)
へつて、将門を罪に召すの
使
(
し
)
を給ふ。心、
甚
(
はなは
)
だ安からず。誠に、
鬱悒
(
うついふ
)
の至りなり。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
材
(
き
)
を
釿
(
はつ
)
る
斧
(
よき
)
の音、板削る
鉋
(
かんな
)
の音、
孔
(
あな
)
を
鑿
(
ほ
)
るやら
釘
(
くぎ
)
打つやら丁々かちかち響き
忙
(
せわ
)
しく、
木片
(
こっぱ
)
は飛んで疾風に木の葉の
翻
(
ひるが
)
えるがごとく、
鋸屑
(
おがくず
)
舞って晴天に雪の降る感応寺境内普請場の
景況
(
ありさま
)
賑
(
にぎ
)
やかに
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
こうした幸福の持続が、あんまり
恐
(
おそろ
)
しく、身体を
翻
(
ひるが
)
えし、バック台の方へ
逃
(
に
)
げて行き、こっとん、こっとん、
微笑
(
びしょう
)
のうちに、二三回ひいてから、また、手摺まで走って行ってはあなたに手をあげ
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
つかつかと進んだのは花嫁の前、円座にむずと押し坐ると、グイと芳江姫を打ち眺めたが、つとその眼を
翻
(
ひるが
)
えすとオースチン師へじっと据えた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
西暦一千九百二年秋忘月忘日白旗を寝室の窓に
翻
(
ひるが
)
えして下宿の婆さんに降を乞うや否や、婆さんは二十貫目の
体躯
(
たいく
)
を三階の
天辺
(
てっぺん
)
まで運び上げにかかる
自転車日記
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
翻
常用漢字
中学
部首:⽻
18画
“翻”を含む語句
翻弄
翻然
翻筋斗
翻々
翩翻
虞翻
掀翻
翻身
翻覆
翻訳
海翻車
翻案
任翻
翻意
翻倒
翻訳料
翻訳名義集
翻訳書
翻訳的
翻訳口調
...