はじ)” の例文
で、げないばかりに階子はしごあがると、続いた私も、一所にぐらぐらと揺れるのに、両手を壇のはじにしっかりすがった。二階から女房が
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれどわたし如何どういふものか、それさはつてすこしもなく、たゞはじ喰出はみだした、一すぢ背負揚しよいあげ、それがわたし不安ふあん中心点ちうしんてんであつた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
彼女はきんの入った厚い帯のはじを手に取って、夫の眼に映るように、電灯の光にかざした。津田にはその意味がちょっとみ込めなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「この切出しは手前のだろう。版木屋か、彫物師でもなければ使わない道具だ。とうを巻いて、はじっこに(新)という字が書いてある」
そこには、斧が一部分を伐り開いたところや、耕された畠が食いこんでいるところに見られるようなはじにおける生硬さ、不完全さがない。
最初は唐辛のはじなめても辛いといった人が後には一本食べても平気になります。そうなると身体に毒で強壮な人でも種々の弊害を惹起ひきおこします。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
お繁婆さんは木皿へ盛って出されたカステラをしげしげと見ていろいろの讚辞を呈してから大切そうにはじから崩して行く。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
それには左のはじに点のある三角形が書いてある。扉を調べると、三角形の鉄の小板こいたが四隅にある。そしてその板には大きな釘が打ちつけてある。
片手に握つてしまへばはじも現はれない樣な百圓札の十枚ばかりは直ぐに消えてしまつた。けれどもそんな小さな金ばかりの問題ではない筈であつた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
さて、かようにして、私達は愈々いよいよ、諸戸の故郷である紀州のはじの一孤島へと旅立つことになったのだが、ここで一寸書添えて置かねばならぬことがある。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼は突然に立上つて路の向うのはじまで歩いて行つた。そして歸つて來た時には、彼は何か歌を口ずさんでゐた。
「家人をお助けくだされたよし、あれは小間使いとはいうものの、愚妻の縁辺でござってな、血筋の通った親類はじ、ようお助けくだされた。玄卿お礼を申しますじゃ」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あの長い桿には、はじというものがないですからね。どこまでも一本ものとして続いているでしょう。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たしかに昨日見ました巻物で、はじ金襴きんらんの模様や心棒(軸)の色に見覚えが御座います。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それを裏書するように、花簪はなかんざしの小女が、最後の料理を持って来て並べて了うと、ちらりと新兵衛に目交ぜを投げておいて、かくれるように向うはじの暗い部屋の中へ這入っていった。
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
それからいたはじとこからそろつとてえしてつとよひくちにやさうでもねえのがひやつとさきみづさあつたときにや悚然ぞつとするやうでがしたよ、それからはあふね枕元まくらもとつないでたんだが
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
爺さんはそう言いながら、そばに置いてある箱から長い綱の大きな玉になったのを取り出しました。それから、その玉をほどくと、綱の一つのはじを持って、それをいきおいよく空へ投げ上げました。
梨の実 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
突当りの芥溜ごみためわきに尺二けんあががまち朽ちて、雨戸はいつも不用心のたてつけ、さすがに一方口いつぱうぐちにはあらで山の手の仕合しやわせは三尺ばかりの椽の先に草ぼうぼうの空地面、それがはじを少し囲つて青紫蘇あをぢそ
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「八の字の右の棒の、一ばんはじのところだ。」
八の字山 (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
そのはじは向ふの青い光に尖り
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
... 片方のはじをぐいと引張って釣し上げたものと見るのです」「つまり西洋洗濯屋のシャツのように女がぶら下ったと見れば好いんだろう」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
第九十八 トースプデン はパンを二分位の厚さに切ってそれを二きれだけはじの固い処を切り捨ててまた二つずつに切ってベシン皿へ並べます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「一番上、右の方にブラ下げたのはだよ。その次は紐だが輪にしてはじつこを結んであるぢやないか。その下はかもじだ。これを續けて讀んでご覽」
女中はハイハイとうけ合って居たっけがそのまんま忘れて午後になって見ると大根のきれはじやお茶がらと一緒に水口の「古馬ふるばけつ」の中に入って居る。
秋毛 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
おゆうはまだ水気の取りきれぬ髪のはじに、紙片かみきれまきつけて、それを垂らしたまま、あたふた家を出ていった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
少年ははらばいながら岬のはじへ出て下を覗き込んだ。少年のすぐ眼の下に底の知れない蒼海あおうみ真只中まっただなかから、空中につっ立っている一つの大きな大きな巌がある。
右臀部からの(これが一番大きい傷口なのだが)血の流れは横に流れ、腰を通って下腹部の左のはじ近くまで、つまり腰の部分を殆ど一周しているという有様であった。
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ながれに添って、かみの方へ三町ばかり、商家あきないやも四五軒、どれも片側の藁葺わらぶきを見て通ると、一軒荒物屋らしいのの、横縁のはじへ、煙草盆を持出して、六十ばかりの親仁おやじが一人。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
他の方法としては、自分の前に並べる十七憧のいずれかの一方のはじの二枚か、又は両端の四枚をかねて、目をつけて置いた飜牌ファンパイなどにして置き、これを持牌とうまくりかえる。
麻雀インチキ物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
小説もアクドイ翻訳ものか好色本のたぐいでなければ手にしなくなった。しまいにはそれさえも飽きて来て、神経の切れはじを並べたような新体詩や、近代画ばかり買うようになった。
鉄鎚 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかし、何かゞ、彼の眼をとらへた。彼は、ひつたくるやうにその紙を取り上げた。彼はそのはじを眺めた。それから、何んとも知れぬ、奇妙な、まつたくわけの分らぬ一瞥いちべつを私に投げた。
それお内儀かみさん、兩方りやうはうけんだつてういにしばつてなかへたぐめたはじあかくなくつちやつともねえつてね、そんなところどうでもよかんべとおもふんだが、もつと其處そこは一しやくでえゝなんていふんでさ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
突當つきあたりの芥溜ごみためわきに九しやくけんあががまちちて、雨戸あまどはいつも不用心ぶようじんのたてつけ、流石さすがに一ぱうぐちにはあらでやま仕合しやわせは三じやくばかりゑんさきくさぼう/\の空地面あきぢめん、それがはじすこかこつて青紫蘇あをぢそ、ゑぞぎく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こういうはじから多右衛門はグーグーいびきをかくのであった。
日置流系図 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
二三日前にあたまを刈つたと見えて、かみが甚だみぢかい。ひげはじが濃く出てゐる。はなむかふをひてゐる。鼻の穴がすうすう云ふ。安眠だ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「一番上、右の方にブラ下げたのはだよ。その次は紐だが輪にしてはじっこを結んであるじゃないか。その下は髢だ。これを続けて読んで御覧」
左のはじの小板の釘を動かしてみたが、それは違うのか、扉は開かない。少年は数字の44というのに気づいた。自分たちが今立っているのは四十五段目である。
「今日は雨ですよ。とても帰れやしませんよ」お島はえんはじへ出て、水分の多い曇空を眺めながらつぶやいた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
このおなじ店が、むしろ三枚、三軒ぶり。かさた女が二人並んで、片端に頬被ほおかぶりした馬士まごのような親仁おやじが一人。で、一方のはじの所に、くだんの杢若が、縄に蜘蛛の巣を懸けて罷出まかりいでた。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
第三十七 パン粉 古くないパンもサンドイッチを作る時はじの固い処を切って取りますし、トースに焼く時も丁寧ていねいにすると端を切りますがその端の処を捨ててはなりません。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
だん/\と私は彼をかなりらせた末、とう/\彼が怒つて部屋のずつと向うのはじに引込んでしまふと、私は立上つて私らしい、いつものうや/\しい態度で、「お休み遊ばせ。」と云つて
その名探偵が系図帳を手に入れたばかりか、態々紀州のはじの一孤島まで出掛けて来た。もう捨てて置けない。探偵の進行を妨げる為にも、系図帳を手に入れる為にも、深山木氏を生かして置けない。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それから紐のあまりを、一方の手首にまきつけてはじをむすんだ。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
巻き納めぬ手紙は右の手からだらりと垂れて、清三様……孤堂とかいたはじが青いカシミヤの机掛の上に波を打って二三段に畳まれている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
照国の誠一は、屋上の庭園のはじっこまで歩み寄って、胸壁から下をのぞきながら、こんな大変なことを言うのでした。
九つの鍵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
十分間ほど過ぎてその毛布を退けて茶筒の蓋を明けて見ると中の物がはじの方だけ凍りかけて真中まんなかがドロドロでいますから、杓子しゃもじでよく攪き混ぜてまた蓋をして毛布をかけておきます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
しんのある部分ぶゞんさはつてると、しんかたく、何物なにものはいつてゐさうにもおもへぬ。が、ひねつてみると、カサヽヽとおとがして、なにやら西洋紙せいやうしのやうなかんじもする。わたしいそいで、はじからつてた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
幕のはじから、以前の青月代あおさかやきが、黒坊くろんぼの気か、俯向うつむけに仮髪かつらばかりをのぞかせた。が、そこの絵の、狐の面が抜出したとも見えるし、古綿の黒雲から、新粉細工の三日月が覗くともながめられる。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白い長い花弁が中心から四方へ数百片延び尽して、延び尽したはじからまた随意にり返りつつ、あらん限りの狂態を演じているのがある。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「兎に角、この手拭を持つて行つて、何處で染めたか突き止めてくれ。はじつこに印があるから、商賣人が見たら判るだらう。紺屋が判つたら、誂主あつらへぬしを訊くんだぜ」