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窃
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ぬす
ふりがな文庫
“
窃
(
ぬす
)” の例文
旧字:
竊
市九郎がしばしの暇を
窃
(
ぬす
)
んで、托鉢の行脚に出かけようとすると、洞窟の出口に、思いがけなく一椀の
斎
(
とき
)
を見出すことが多くなった。
恩讐の彼方に
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そこで昔かの邸で金皿を
窃
(
ぬす
)
みそれより身代を持ち返した仔細を告げ、代金と礼物を納められよと勧めたが取り合わず。汝は実に狂人だ。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
とにかく六ヶ月
前
(
ぜん
)
から巧みに変装して、ジエルミノーの書記に住み込み、あの方の死ぬ前の晩、金庫を破壊して
窃
(
ぬす
)
み取ったのです。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
康子が清三の顔を
窃
(
ぬす
)
むようにして云った、清三は黙って座を立った、清三が
外套
(
がいとう
)
を着て食堂を出ると、康子も一緒に
従
(
つ
)
いて来た。
須磨寺附近
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
いつの間にやらちゃんと
窃
(
ぬす
)
まれてて、れいれいしいに写真に出されましたのんで、取ったとしたらお梅どんより外にないさかい
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
如何
(
どう
)
考
(
かんが
)
へても
聖書
(
バイブル
)
よりは
小説
(
せうせつ
)
の
方
(
はう
)
が
面白
(
おもしろ
)
いには
違
(
ちが
)
ひなく、
教師
(
けうし
)
の
眼
(
め
)
を
窃
(
ぬす
)
んでは「よくッてよ」
派
(
は
)
小説
(
せうせつ
)
に
現
(
うつゝ
)
を
抜
(
ぬ
)
かすは
此頃
(
このごろ
)
の
女生徒
(
ぢよせいと
)
気質
(
かたぎ
)
なり。
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
と云って、如何に単純でたくらみがないとは云え、
窃
(
ぬす
)
んだ物を台所に置きっ放しにして平気でいられようとは思われなかった。
窃む女
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
湿
(
ぬ
)
れた糸は自由に電気を通す。フランクリンは危険を忘れてその指で盛んな火花を出して、雷の秘密を
窃
(
ぬす
)
んだ歓びに夢中になつてゐました。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
枕元の障子をすこしずつすこしずつ音を立てないように開けて廊下に出て、足音を
窃
(
ぬす
)
み窃み
渡殿
(
わたりどの
)
伝いに
母屋
(
おもや
)
の様子を窺った。
笑う唖女
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それ我に悪因を結べば善果来たり、我に善因を結べば悪果来たる。
鈎
(
こう
)
を
窃
(
ぬす
)
む者は
誅
(
ちゅう
)
、国を窃む者は侯、侯の門仁義存す。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
帝の
同寓
(
どうぐう
)
するところの僧、帝の詩を見て、
遂
(
つい
)
に建文帝なることを
猜知
(
すいち
)
し、
其
(
その
)
詩を
窃
(
ぬす
)
み、
思恩
(
しおん
)
の
知州
(
ちしゅう
)
岑瑛
(
しんえい
)
のところに至り、
吾
(
われ
)
は建文皇帝なりという。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
柿江は自分をそこに見出すと、また
窃
(
ぬす
)
むようにきょときょととあたりを見廻した。人通りはまったく途絶えていた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
シカモ大筋ニ臨ムニ
迨
(
および
)
テ私情ニ
拘
(
かか
)
ハリ公義ヲ失フニ非ラザレバ
則
(
すなわち
)
畏縮退避シテ活ヲ草間ニ
窃
(
ぬす
)
ムモノ往往ニシテアリ。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
宮はこの散歩の間に
勉
(
つと
)
めて気を
平
(
たひら
)
げ、色を
歛
(
をさ
)
めて、ともかくも人目を
逭
(
のが
)
れんと計れるなり。されどもこは酒を
窃
(
ぬす
)
みて酔はざらんと欲するに
同
(
おなじ
)
かるべし。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
その
半面
(
よこがお
)
を文三が
窃
(
ぬす
)
むが如く眺め
遣
(
や
)
れば、眼鼻口の美しさは常に
異
(
かわ
)
ッたこともないが、月の光を受けて些し蒼味を
帯
(
お
)
んだ
瓜実顔
(
うりざねがお
)
にほつれ掛ッたいたずら髪
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
かかる深夜に人目を
窃
(
ぬす
)
みて他の門内に侵入するは賊の
挙動
(
ふるまい
)
なり。われははからずも賊の挙動をしたるなりけり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
行脚僧か修験者か知らないが名のみ聞く武蔵坊弁慶とはこんな人かと想わせる風体に、主も少なからず驚いた様子であるし、私は恐れて片隅から
窃
(
ぬす
)
み見ていた。
木曽駒と甲斐駒
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
雪を
欺
(
あざむ
)
くとか玉の肌とかいふのはこんなのを指すのであらうかと、まだ物心のつかぬ少年の私も、何となく一種眩しい思ひなしに
窃
(
ぬす
)
み見ることも出来なかつた。
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
その弟子が
窃
(
ぬす
)
み聴いてその咒を
記
(
おぼ
)
えて、道士の留守を
伺
(
うかご
)
うて鬼を
喚
(
よ
)
んだ。鬼は現われて水を
灑
(
ま
)
き始めた。
鴎外漁史とは誰ぞ
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
私が林檎樽で彼の話を
窃
(
ぬす
)
み聞きしたことは彼は知らなかったのだが、それでも、この時分には、私は彼の残忍さと二枚舌と勢力とには非常に怖しくなっていたので
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
従
(
したが
)
って
家内
(
いえ
)
中で
腫
(
はれ
)
ものにでも触るような態度を取り、そばを歩くに、足音さえも
窃
(
ぬす
)
むようになる。
良人教育十四種
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
其処には此方を
窃
(
ぬす
)
み見するようにしている少女の眼があった。少女は
惶
(
あわ
)
てて往ってしまった。
竇氏
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
一日に二三枚は
窃
(
ぬす
)
んで来られた。いい板一枚に家持の小市民は十
哥
(
カペーキ
)
ずつ呉れる。この仕事には仲のいい徒党があつまっていた。モルトヷ人の乞食の十歳になる息子のサーニカ。
マクシム・ゴーリキイの伝記:幼年時代・少年時代・青年時代
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
一、古句を半分位
窃
(
ぬす
)
み用うるとも半分だけ新しくば苦しからず。時には古句中の好材料を取り来りて自家の用に供すべし。あるいは古句の調に
擬
(
ぎ
)
して調子の変化をも
悟
(
さと
)
るべし。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
孔子曰く、
苟
(
まこと
)
に子にして欲するなくんば、これを賞すと
雖
(
いえど
)
も
窃
(
ぬす
)
まじ。しかれども魯
終
(
つい
)
に孔子を用うること
能
(
あた
)
わず。孔子もまた仕うることを求めず。(『孔子全集』、一九六一)
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
無分別にも
不図
(
ふと
)
悪心を起し、
己
(
おのれ
)
が預りの金子八十両を
窃
(
ぬす
)
み出し、
此方
(
こなた
)
へ出て見ると今の男が証拠に置いて行ったものか、
予
(
かね
)
て見覚えあるお梅の
金巾着
(
かねぎんちゃく
)
が
其処
(
そこ
)
に
抛
(
ほう
)
り出してあった
闇夜の梅
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
男女
(
ふたり
)
は
窃
(
ぬす
)
み笑いをした。ジャンは注意していたので早くもそれを見て取った。そして彼は何か物をいいそうにしたが、そのまま黙って首をうな垂れて自分の持場の方へ歩いて行った。
麦畑
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
といふ挨拶を読むと、「ふふん」と鼻の上に皺を寄せて笑つたが、直ぐ気が付いたやうに、
其処
(
そこ
)
に手持不沙汰で坐つてゐる男をちらと
窃
(
ぬす
)
み
見
(
み
)
をして、今度はまた
口許
(
くちもと
)
でにやつと笑つた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「よし、思いついた。この春の雪の積んでいる時に、人間世界にどこに桃がある。ただ
西王母
(
せいおうぼ
)
の
園
(
はたけ
)
の中は、一年中草木が
凋
(
しぼ
)
まないから、もしかするとあるだろう。天上から
窃
(
ぬす
)
むがいいや。」
偸桃
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
縁側を過ぎながら、閉めきった障子の
硝子
(
ガラス
)
越しに、茶の間の隣りの座敷内を
窃
(
ぬす
)
み見た。盃を唇にあてているイエの姿が眼に入った。緊張しているのが感ぜられた。イエの傍にはイエの母もいた。
前途なお
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
彼は右へ曲ろうとするはずみに、ちらりと交番所のなかを
窃
(
ぬす
)
み見した。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
東坡
固
(
もと
)
より牧之の詩を
窃
(
ぬす
)
む者に非ず、然かも
竟
(
つひ
)
に是れ前人已に之を
道
(
い
)
へるの句、何んすれぞ文潜之を愛するの深きや、豈に別に
謂
(
おも
)
ふ所あるか。
聊
(
いささ
)
か之を記し以て識者を
俟
(
ま
)
つ。(老学庵筆記、巻十)
放翁鑑賞:07 その七 ――放翁詩話三十章――
(新字旧仮名)
/
河上肇
(著)
母を
窃
(
ぬす
)
む者の財布を盗むは何でもないと思ったのであろう。親分は是れ幸と巡査を頼んで巳代公を告訴し、巳代公を監獄に入れようとした。巳代公を入れるより
彼
(
あの
)
二人
(
ふたり
)
を入れろ、と村の者は罵った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
あるは、
木履
(
きぐつ
)
を
曳
(
ひ
)
き悩み、あるは
徒跣
(
はだし
)
に
音
(
ね
)
を
窃
(
ぬす
)
み
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
とにかく時を
窃
(
ぬす
)
んで本をお読みなさい。
人格の養成
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
(大正
三
(
ママ
)
年十二月六日起稿、大竜の長々しいやつを大多忙の暇を
窃
(
ぬす
)
んで書き続け
四
(
ママ
)
年一日夜半成る)(大正五年三月、『太陽』二二ノ三)
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
月
(
つき
)
雪
(
ゆき
)
花
(
はな
)
は
魯
(
おろ
)
か
犬
(
いぬ
)
が
子
(
こ
)
を
産
(
う
)
んだとては
一句
(
いつく
)
を
作
(
つく
)
り
猫
(
ねこ
)
が
肴
(
さかな
)
を
窃
(
ぬす
)
んだとては
一杯
(
いつぱい
)
を
飲
(
の
)
み
何
(
なに
)
かにつけて
途方
(
とはう
)
もなく
嬉
(
うれ
)
しがる事おかめが
甘酒
(
あまざけ
)
に
酔
(
ゑ
)
ふと
仝
(
おな
)
じ。
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
軒下の暗がり伝いに足音を
窃
(
ぬす
)
み窃み、台所の角に取付けた新しいコールタ
塗
(
ぬり
)
の
雨樋
(
あまどい
)
をめぐって、裏手の風呂場と、納屋の物置の
廂合
(
ひさしあ
)
いの下に来た。
笑う唖女
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
私は犬飼現八と立ち廻りをしながら、
隙
(
ひま
)
を
窃
(
ぬす
)
んで、見物席の何時も貴女が、坐っていた辺りを見ますと、私の感じは私をあざむいてはおりませんでした。
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
……柿江は思わずそれを考えている自分の顔つきが、森村という鏡に映ってでもいるように、素早くその顔を
窃
(
ぬす
)
みみた。しかし森村の顔は
木彫
(
きぼり
)
のようだった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
佐知子は
窃
(
ぬす
)
むように笑った、「フランスではもっともっとひどいのが平気で展覧会に陳列してありますよ」
正体
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
窃
(
ぬす
)
み出してから八日目に議院に夫を尋ねて参りまして、二十四時間以内に三万
法
(
フラン
)
の金を出せ。出さなければあれを発表して社会から葬ってやると脅迫しました。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
「分限紳士」というのは明かに普通の海賊のことに違いなく、
(註五一)
私の
窃
(
ぬす
)
み聞きしたこの小場面は、実直な船員の一人が堕落させられる最後の一幕だったのだ。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
さて此の首尾を
全
(
まっと
)
うした愛想話が客にどういう効果を与えたか老獪にちょっと
此方
(
こちら
)
を
窃
(
ぬす
)
み視た。
ガルスワーシーの家
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
かえって月に一雞を
窃
(
ぬす
)
むの
姑息
(
こそく
)
手段を行なわざるべからざらしめたるゆえんのものはなんぞや。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
其の話はお岩の
産
(
さん
)
の手伝に雇入れた
小平
(
こへい
)
と云う
小厮
(
こもの
)
が民谷家の家伝のソウセイキと云う薬を
窃
(
ぬす
)
んで逃げたことであった。其の時
屏風
(
びょうぶ
)
の中から手が鳴った。宅悦は腰をあげた。
南北の東海道四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
その業務として行はざるべからざる残忍刻薄を自ら
強
(
し
)
ふる痛苦は、
能
(
よ
)
く彼の痛苦と
相剋
(
あひこく
)
して、その
間
(
かん
)
聊
(
いささ
)
か
思
(
おもひ
)
を遣るべき余地を
窃
(
ぬす
)
み得るに慣れて、彼は
漸
(
やうや
)
く忍ぶべからざるを忍びて為し
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
持って逃げても
矢張
(
やっぱ
)
り
窃
(
ぬす
)
まれた
家
(
うち
)
へ戻って来るという、それが弘法さまの
御利益
(
ごりやく
)
で
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
面
(
おもて
)
合すに
憚
(
はばか
)
りたれば、ソと物の蔭になりつ。ことさらに隔りたれば
窃
(
ぬす
)
み聴かむよしもあらざれど、
渠等
(
かれら
)
空駕籠は持て来たり、大方は家よりして
迎
(
むかい
)
に
来
(
きた
)
りしものならむを、手を空しゅうして帰るべしや。
清心庵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
野にあるうちはどれだけ大食するか知れぬ至極の難物だが、このものの奇質は貯蓄のため食物を盗みまた自分の害になる
係蹄
(
わな
)
を
窃
(
ぬす
)
み隠すのみか
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
窃
常用漢字
中学
部首:⽳
9画
“窃”を含む語句
窃盗
剽窃
窃々
窃取
心窃
窃視
窃笑
窃盜
窃窕
強窃盗
窃比我於老彭
露窃
窃眇
窃盗狂者
窃盗狂
窃盗事件
窃書
窃伺
尚窃
小窃偸
...