トップ
>
禿
>
は
ふりがな文庫
“
禿
(
は
)” の例文
年齡よりは
老
(
ふ
)
けて見える物腰、よく
禿
(
は
)
げた前額、柔和な眼——すべて典型的な番頭でこの男だけは惡いことを
企
(
たくら
)
みさうもありません。
銭形平次捕物控:162 娘と二千両
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
坂を下りた処の店は狭いのですが、年を取った頭の
禿
(
は
)
げた主人が、にこやかで気安いのでした。そこへもちょいちょい立止りました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
今に、その傷が
禿
(
は
)
げて
凹
(
くぼ
)
んでいるが、
月代
(
さかやき
)
を
剃
(
そ
)
る時は、いつにても剃刀がひっかかって血が出る、そのたび、長吉のことを思い出す。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しかし頭は
禿
(
は
)
げ、身体は肥満し、顔色は黄色く、眠そうな様子をし、下唇は少したれ下がり、退屈そうな
不機嫌
(
ふきげん
)
な口つきをしていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「へえ。若い時東京に奉公をいたしておりましたから、いくらか違いますのでございましょう」と云って、
禿
(
は
)
げた頭を
掻
(
か
)
いている。
蛇
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
わけてもひどいのは、半分ほどきかけの、女の汚れた
袷
(
あわせ
)
をそのまま丸めて懐へつっこんで来た頭の
禿
(
は
)
げた上品な顔の御隠居でした。
老ハイデルベルヒ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
大蛇
(
だいじや
)
などが出て来て頭の
禿
(
は
)
げた
猟人
(
かりうど
)
を
呑
(
の
)
むところをやると、児童らは大ごゑをあげて、アア! などといふのでひどく愉快である。
イーサル川
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
当直
(
とうちょく
)
は、記者に囲まれたなり、ふかぶかと椅子の中に背を落とした。そして帽子を脱いで机の上に置くと、ボリボリと
禿
(
は
)
げ頭を
掻
(
か
)
いた。
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
禿
(
は
)
げ
上
(
あが
)
った
額
(
ひたい
)
にも、
近眼鏡
(
きんがんきょう
)
を
透
(
す
)
かした目にも、短かに刈り込んだ
口髭
(
くちひげ
)
にも、——多少の誇張を敢てすれば、
脂光
(
やにびか
)
りに光ったパイプにも
十円札
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
甲府を過ぎて、わが
来
(
こ
)
し方の東の空うすく
禿
(
は
)
げゆき、
薄靄
(
うすもや
)
、紫に、
紅
(
くれない
)
にただようかたえに、富士はおぐらく、柔かく浮いていた。
雪の武石峠
(新字新仮名)
/
別所梅之助
(著)
額の上に
禿
(
は
)
げ残った毛を真中からテイネイに二つに分けて、
詰襟
(
つめえり
)
の白い洋服を着ていたが、トテモ人のいい親切らしい
風付
(
ふうつ
)
きで
鉄鎚
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
反対のかたすみには、
支那
(
しな
)
服を着た、大きな男がいました。顔は平たく、長い
口髭
(
くちひげ
)
をはやしていて、頭がひどく
禿
(
は
)
げていました。
金の目銀の目
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
すっかり
禿
(
は
)
げ上った白髪を総髪に垂らして、
額
(
ひたい
)
に年の波、鼻
隆
(
たか
)
く、
褪
(
あ
)
せた
唇元
(
くちもと
)
に、和らぎのある、上品な、六十あまりの老人だ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
またその
殃禍篇
(
おうかへん
)
に、美濃の
御嶽
(
おんたけ
)
村の土屋某、
日来
(
ひごろ
)
好んで鶏卵を食いしが、いつしか頭ことごとく
禿
(
は
)
げて、
後
(
のち
)
鶏の
産毛
(
うぶげ
)
一面に生じたと載す。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
子飼からその道の飯をくって、
生
(
は
)
え
際
(
ぎわ
)
の
禿
(
は
)
げ上がりかけている彼らとしては、当然、そういう
嘲笑
(
ちょうしょう
)
にくすぐられるのも、むりはなかった。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ボースンは、ストキから、西沢、西沢から、波田へ、その
禿
(
は
)
げた頭をつるつるなでながら、一生懸命で、仕事をしてくれるように頼んだ。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
その廊下の突当りにある帳場のところで捨吉はまた見知った顔に逢った。須永さんと言って、小父さんと同郷の頭の
禿
(
は
)
げた人だ。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
赤ら顔の頭の
禿
(
は
)
げた滝床は、大通りの大店をもっている廻り髪結さんだったのだ。だから酒屋さんの店にいるときはすけない。
旧聞日本橋:14 西洋の唐茄子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
十余年
前
(
ぜん
)
に
悉
(
ことごと
)
く伐採したため
禿
(
は
)
げた
大野
(
おおの
)
になってしまって、一
ト
夕立
(
ゆうだち
)
しても相当に渓川が
怒
(
いか
)
るのでして、既に当寺の仏殿は最初の洪水の時
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
禿
(
は
)
げた、書類にかがみこんだ相手の頭をながめ、自分の話がすべて無益だと、いつ工場主が気づくだろうかと自問してみることだけにした。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
あれは子ープルスの
家
(
いへ
)
の三
階
(
がい
)
から
見
(
み
)
へるエリノ
島
(
しま
)
にその
儘
(
まんま
)
です
事
(
こと
)
、
此方
(
こなた
)
のは
頭
(
あたま
)
の
禿
(
は
)
げた
老爺
(
おぢい
)
さんが
魚
(
さかな
)
を
釣
(
つ
)
つて
居
(
を
)
る
形
(
かたち
)
によく
似
(
に
)
て
居
(
ゐ
)
ますねえ。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
片手に
洋傘
(
こうもり
)
、片手に扇子と日本手拭を持っている。頭が
奇麗
(
きれい
)
に
禿
(
は
)
げていて、カンカン帽子を冠っているのが、まるで
栓
(
せん
)
をはめたように見える。
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
頸窪
(
ぼんのくぼ
)
に
胡摩塩斑
(
ごましおまだら
)
で、赤
禿
(
は
)
げに額の抜けた、
面
(
つら
)
に、てらてらと
沢
(
つや
)
があって、でっぷりと肥った、が、小鼻の
皺
(
しわ
)
のだらりと深い。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
白い絹のワイシャツを、帆のように扇風器の風でふくらましたこの頭の
禿
(
は
)
げた男は、私を事務机の前に連れて行ってくれた。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
橋を渡りながら、重吉は
上海
(
シャンハイ
)
事変の号外よりも、お千代が初めて銀座通で頭の
禿
(
は
)
げた杉村の
袖
(
そで
)
を引いた時のことを想像した。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
叔父はにやにやしながら、
禿
(
は
)
げた頭の真中を大事そうに
撫
(
な
)
で廻した。気のせいかその禿が普通の時よりは少し赤いように、津田の眼に映った。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
『アハハハハハばかを言ってる、ドラ寝るとしよう、皆さんごゆっくり』と、幸衛門の
叔父
(
おじ
)
さん
歳
(
とし
)
よりも早く
禿
(
は
)
げし頭をなでながら内に入りぬ。
置土産
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そうしては理由もなく
喧嘩
(
けんか
)
を吹きかけるのだが、多分、しょっちゅうみんなが自分のからだつきや、
禿
(
は
)
げ上がった頭や
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「渡辺章三のお父さんは頭が
禿
(
は
)
げているの。あれぐらいでもあんなに笑うんだから、お祖父さんなら
迚
(
とて
)
も笑われますよ」
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
額が
禿
(
は
)
げあがって、首のあたりが紅を塗ったように赤い。典型的なワシ鼻で、マックァーサーの顔に、どこか似ていた。
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ここの家の様子をよく知っている、頭の
禿
(
は
)
げた年取った方の将校は、ふらふらと追っかけて行く芳太郎の姿を見ると、次の部屋から出て来て見た。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
赤々と
禿
(
は
)
げた、
肥
(
ふと
)
った
翁
(
おやじ
)
が丸い
鉄火鉢
(
てつひばち
)
を
膝子
(
ひざっこ
)
のように抱いて、
睡
(
ねむ
)
たそうに店番をしていた
唐物屋
(
からものや
)
は、長崎屋と言った。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
やがて、老人は筆を
措
(
お
)
いて、こちらへ向き直った。額の広く
禿
(
は
)
げあがった、角張った顔つきで、口のまわりから
顎
(
あご
)
へかけてびっしり髯が生えている。
赤ひげ診療譚:01 狂女の話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
額のあたり少し
禿
(
は
)
げ、
両鬢
(
りょうびん
)
霜ようやく
繁
(
しげ
)
からんとす。体量は二十二貫、アラビア
種
(
だね
)
の
逸物
(
いちもつ
)
も将軍の座下に汗すという。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
頭の
真中
(
まんなか
)
が
河童
(
かっぱ
)
の
臀
(
しり
)
のように
禿
(
は
)
げて居ります、若い
中
(
うち
)
ちと泥水を飲んだと見えて、大伴蟠龍軒の
襟
(
えり
)
に附きまして友之助の前へ憎々しく出て来まして
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
頭がそろそろ
禿
(
は
)
げかかっていたが、彼は平気で自ら言っていた、「三十歳にして禿げ、四十歳にして腰が立たず。」
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そしてその内側には、そのホテルの主人らしい、すこし頭の
禿
(
は
)
げかかった、私たちよりも背の低いくらいな
毛唐
(
けとう
)
が、ノッブを握ったまま突っ立っていた。
旅の絵
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
このとき突然、一行の傍へ一人いいかげんの年のいった、少々頭の
禿
(
は
)
げた男が、ゆったりした夏外套を着て、甘ったるい目つきをしながら近寄って来た。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
選挙人は頭の
禿
(
は
)
げた
老人
(
としより
)
で、自分達の選挙した代議士と差向ひに
食卓
(
テーブル
)
に就くのが、何よりも愉快で溜らなかつた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「あんた、ちよツとも
白髮
(
しらが
)
がおまへんな。毛も多いし、入れ毛してなはるんか、眞ン中は
禿
(
は
)
げてまツしやろ。」
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
いままで始終、快活な微笑を浮かべていた暮松は、急に真顔になって、警部の半ば
禿
(
は
)
げかかった広い額と、やや陰鬱な、威厳のある眼をじろじろ見入った。
凍るアラベスク
(新字新仮名)
/
妹尾アキ夫
(著)
駒
(
こま
)
ヶ
嶽
(
だけ
)
であろう頂上の
薙
(
な
)
ぎ
禿
(
は
)
げた大きな山の姿が頭の上にあった。その山の
頂
(
いただき
)
の処には
蒼白
(
あおじろ
)
い雲が流れていた。
竈の中の顔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
額が
禿
(
は
)
げあがった、この
大兵
(
たいひょう
)
な老人は、
疎
(
まばら
)
にはなったが丈夫そうな歯を
剥
(
む
)
き出して、元気よく宮内を待遇した。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
軒下をあるきながら竹永米屋の前まで来ると、でッぷりした赤ら顔の、
禿
(
は
)
げのこりの白髪頭を仰向けて、空を
睨
(
にら
)
めあげていた親父がフッとこっちを向いた。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
やはり緩やかな外衣を着けていたが、長い白髭は両胸に垂れ、頭は
禿
(
は
)
げて、もうかなりの年配らしく、威厳あたりを払わんばかりの堂々たる人物であった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
と篠田の
暫
(
し
)
ばし其名を思ひ出し得ざるに、花吉が「あの、
金山
(
かなやま
)
伯爵でせう、——小米さんも
嫌
(
いや
)
がつて居たんですよ、頭の
禿
(
は
)
げた七十近い
老爺
(
おぢい
)
さんでしてネ」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
そして眼鏡をはずす間もなく、両手を顔にあてて、下の方から、
禿
(
は
)
げ上がった
両鬢
(
りょうびん
)
へとはげしくなで上げた。
親子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
つるりと
禿
(
は
)
げ上った大きい額と、鼻の先にのせた
金縁
(
きんぶち
)
の眼鏡とが、三年前に見た時とちっとも変っていない。
由布院行
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
そうして、凡一月は、後から後から替った色のが匂い出て、
禿
(
は
)
げた岩も、一冬のうら枯れをとり返さぬ
柴木山
(
しばきやま
)
も、若夏の青雲の下に、はでなかざしをつける。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
そのひょろ長い
恰好
(
かっこう
)
や、頬髯や、ちょっぴり
禿
(
は
)
げ上がった
額
(
ひたい
)
ぎわなどには、一種こう従僕めいたへりくだった所があるし、おまけに甘ったるい微笑を浮かべて
犬を連れた奥さん
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
“禿”の解説
禿(かぶろ、かむろ)とは、頭に髪がないことを言い、肩までで切りそろえた児童期の髪型、あるいはその髪型をした子供を指す。狭義では、江戸時代の遊廓に住む童女をさす。
『平家物語』では、平安京に放たれる平家方の密偵として見える。
(出典:Wikipedia)
禿
漢検準1級
部首:⽲
7画
“禿”を含む語句
禿頭
禿顱
禿茶瓶
禿木
薄禿
禿鷹
禿筆
禿鷲
中禿
赭禿
赤禿
禿山
切禿
禿上
馬禿山
愚禿
禿安
禿頭病
禿鳶
禿松
...