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熱燗
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あつかん
ふりがな文庫
“
熱燗
(
あつかん
)” の例文
「おっ、
鰯
(
いわし
)
だな」「鰯よ、こっちを酢にしてこっちを塩焼きにして、
熱燗
(
あつかん
)
で一杯という趣向なんだ」「悪くない、おれもなにか手伝おう」
恋の伝七郎
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
澄夫は
恭
(
うやうや
)
しく大盃を
押戴
(
おしいただ
)
いたが、伝六郎が
在合
(
ありあ
)
う
熱燗
(
あつかん
)
を丸三本分
逆様
(
さかさま
)
にしたので、飲み悩んだらしく下に置いて口を拭いた。
笑う唖女
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
鶯谷はさて置いて柳原にもない顔だ、於雪と云うのはどうしたろう、おや女の名で、また寒くなった、これじゃ晩に
熱燗
(
あつかん
)
で一杯遣らずばなるまい。
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それを
熱燗
(
あつかん
)
に解かして、一本の徳利に仕込みました——此處に酒の入つた徳利が二本ございます。いづれも模樣も何んにもない、
伊萬里
(
いまり
)
の白い徳利。
銭形平次捕物控:237 毒酒薬酒
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
熱燗
(
あつかん
)
を頼んでグビグビやりながら、隅の方を見ると、一人の洋服青年が、こちらに顔を向けて、ニヤニヤ笑っていた。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
お
愛想
(
あいそ
)
ぶりにちょっと行燈をかき立てて、注文の
小皿
(
こざら
)
盛りと
熱燗
(
あつかん
)
を守人の前へ置いてから、老爺はまた安へ向かって
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「全くその通りだ。さ、おりかさん、御馳走を頼むよ。今日こそは蟒の頭から
熱燗
(
あつかん
)
一合ぶつかけてやるから。」
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
「現金な奴めが。了見の狭いところが少し気に入らぬが、力を貸してつかわすゆえに、家へ帰ったならば家内共に
熱燗
(
あつかん
)
でもつけさせて、首長う待っていろよ」
旗本退屈男:03 第三話 後の旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
二杯たべて出がけにもう一本
正宗
(
まさむね
)
の
罎
(
びん
)
を
熱燗
(
あつかん
)
につけさせたのを手に
提
(
さ
)
げながら饂飩屋の亭主がおしえてくれた渡し場へ出る道というのを
川原
(
かわら
)
の方へ下って行った。
蘆刈
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
大鍋の中の
油汁
(
けんちん
)
は
沸々
(
ふつ/\
)
と煮立つて来て、甘さうな
香
(
にほひ
)
が炉辺に
満溢
(
みちあふ
)
れる。
主婦
(
かみさん
)
は其を
小丼
(
こどんぶり
)
に盛つて出し、酒は
熱燗
(
あつかん
)
にして、一本づゝ古風な徳利を二人の膳の上に置いた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
鵬
(
ぼう
)
となる大願発起痴話
熱燗
(
あつかん
)
に骨も肉も
爛
(
ただ
)
れたる俊雄は相手待つ間歌川の二階からふと
瞰下
(
みおろ
)
した隣の
桟橋
(
さんばし
)
に歳十八ばかりの
細
(
ほっ
)
そりとしたるが
矢飛白
(
やがすり
)
の袖夕風に吹き
靡
(
なび
)
かすを
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
昔なら
土堤八丁
(
どてはっちょう
)
とか、
浅草田圃
(
あさくさたんぼ
)
などというところで
朝餉
(
あさげ
)
に
熱燗
(
あつかん
)
でねぎまとくると、その美味さ加減はいい知れぬものがあって、一時に元気回復の栄養効果を上げるそうである。
鮪を食う話
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
一学は
熱燗
(
あつかん
)
の酒をぐっと一杯ひっかけ、ハ、ハ、ハ、と、はずみのついた声で笑いながら
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
「そりや面白うごわすな、一つ
演
(
や
)
つてみようぢやごわりませんか。」安物の武士道の鼓吹者は血を
啜
(
すゝ
)
るやうな気持で、ぐつと
熱燗
(
あつかん
)
の酒を
呷飲
(
あふ
)
つた。「お互に一
世
(
せ
)
一代の積りでな。」
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「ははあ、麦の酒ですか、麦の酒じゃ、
熱燗
(
あつかん
)
にして飲むわけにゃあいきますまい」
大菩薩峠:28 Oceanの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
するに空腹なる時は途中にて
困
(
こま
)
るならんと
只
(
と
)
ある杉酒屋へ入て酒を五合
熱燗
(
あつかん
)
に
誂
(
あつら
)
へ何ぞ
肴
(
さかな
)
はなきやと問に最早
皆
(
みな
)
賣切
(
うりきれ
)
鰹
(
かつを
)
の
鹽辛
(
しほから
)
ばかりなりと答へけるを
夫
(
そ
)
は何よりの品なりとて五合の酒を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
今日浅草にいたかと思えばあしたは奥州街道に、——ゆうべ武蔵野をゴソゴソ歩いていたかと思えば
今朝
(
けさ
)
は音羽の
筑波
(
つくば
)
屋あたりで、
熱燗
(
あつかん
)
の湯豆腐に首をつッこんでいようというあんばい。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
先生の
熱燗
(
あつかん
)
はこうした生物嫌いの結果ですが、そのお燗の熱いのなんのって、私共が手に持ってお酌が出来るような熱さでは勿論駄目で、煮たぎったようなのをチビリチビリとやられました。
泉鏡花先生のこと
(新字新仮名)
/
小村雪岱
(著)
それから早速
草鞋
(
わらぢ
)
を脱ぎの、行燈を下げた
婢
(
をんな
)
と一しよに、二階座敷へせり上つたが、まづ一風呂暖まつて、何はともあれ
寒
(
さむ
)
さ
凌
(
しの
)
ぎと、
熱燗
(
あつかん
)
で二三杯きめ出すと、その越後屋重吉と云ふ野郎が
鼠小僧次郎吉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「いや、
昔日
(
せきじつ
)
の面影なしさ。早い話が、風邪をひいても、こんなに何時までもぬけない。ゴホン、そら、
咳
(
せき
)
が出たろう? 以前は牛肉を一斤食って
熱燗
(
あつかん
)
を一本ひっかければ直ぐに治ったものだ」
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「どうも、あんまり結構な話でもねえ。面白くねえだろうから止めにして、台所には
白鳥
(
はくちょう
)
が一本おったっている。
熱燗
(
あつかん
)
をつけて、これで
中々
(
なかなか
)
好い
音声
(
のど
)
なんだ。小意気な江戸前の唄でもきかせようか」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
それでもって拭い拭い
熱燗
(
あつかん
)
のお酒を呑みつづけるのでした。
兄たち
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「ただ
熱燗
(
あつかん
)
に
漬
(
つ
)
け物でも添えてもらえりゃ結構だ。」
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
熱燗
(
あつかん
)
に泣きをる
上戸
(
じょうご
)
ほつておけ
六百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
「すごい
熱燗
(
あつかん
)
だ」
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
「そんな時は、これに限る。
熱燗
(
あつかん
)
をぐっと引っかけて、その勢いで寝るんですな。ナイフの一
挺
(
ちょう
)
なんざ、
太神楽
(
だいかぐら
)
だ。小手しらべの一曲さ。さあ、一つ。」
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「今
熱燗
(
あつかん
)
で一本やるから、それを呑んで寢てしまへ。俺はこれから八丁堀へ行つて、明日の朝迎ひに來る」
銭形平次捕物控:071 平次屠蘇機嫌
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
捨吉は急にかしこまって、小さな
猪口
(
ちょく
)
を友達の前に置いた。ぷんと
香気
(
におい
)
のして来るような
熱燗
(
あつかん
)
を注いで勧めた。一口
嘗
(
な
)
めて見たばかりの菅はもう顔を
渋
(
しか
)
めてしまった。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
漸
(
ようや
)
く酒が出て、ウォツカと、ビールと、ビールのコップに盛られた
熱燗
(
あつかん
)
の日本酒とが交ぜこぜに勧められたが、露西亜人達のうちでも「お婆ちゃん」とカタリナとは日本酒を好んで飲んだ。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
今、駒井能登守の屋敷を覗いて、米友に叱り飛ばされた折助も、おそらくは誰かに利用されて、隙見に来たものでありましょうが、この酒場へ逃げ込むと大急ぎで
熱燗
(
あつかん
)
を注文して飲みました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「なあに、今さ。ちょうどよかった。まア、一杯やって、暖まろう」と、中へ入って、型のごとき煮込や
熱燗
(
あつかん
)
をとって、ほどよく酒も
腸
(
はらわた
)
にまわってきた頃——阿能はさっそく口をきり出した。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
まもなく久助は、命じられた
熱燗
(
あつかん
)
の徳利を持って来て、お駒の前へ置いた。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
御覧
(
ごらん
)
よ、まだあの
小父
(
おぢ
)
さんが
居
(
ゐ
)
るよと
小守娘
(
こもりむすめ
)
の指を差し
候
(
そろ
)
によれば
其
(
その
)
時の
小生
(
せうせい
)
は
小父
(
おぢ
)
さんに
候
(
そろ
)
。
猶
(
なほ
)
こゝに
附記
(
ふき
)
すべき
要件
(
えうけん
)
有之
(
これあり
)
兄
(
あに
)
さんの帰りは必ずよその
家
(
いへ
)
に飲めもせぬ一抔の
熱燗
(
あつかん
)
を呼び
候
(
そろ
)
へども。
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
「冷じゃあやっぱり
美味
(
うま
)
くねえ、こんな晩は
熱燗
(
あつかん
)
でねえと、——」
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
熱燗
(
あつかん
)
のコップを交換しているじゃないか。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「今
熱燗
(
あつかん
)
で一本やるから、それを呑んで寝てしまえ。俺はこれから八丁堀へ行って、明日の朝迎いに来る」
銭形平次捕物控:071 平次屠蘇機嫌
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と
蜀江
(
しよくこう
)
の
錦
(
にしき
)
、
呉漢
(
ごかん
)
の
綾
(
あや
)
、
足利絹
(
あしかゞぎぬ
)
もものともしないで、「よそぢや、この
時節
(
じせつ
)
、
一本
(
いつぽん
)
お
燗
(
かん
)
でもないからね、ビールさ。
久
(
ひさ
)
しぶりでいゝ
心持
(
こゝろもち
)
だ。」と
熱燗
(
あつかん
)
を
手酌
(
てじやく
)
で
傾
(
かたむ
)
けて
十六夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
太郎はまたこの新築した二階の
部屋
(
へや
)
で初めての客をするという顔つきで、
冷
(
さ
)
めた徳利を集めたり、それを
熱燗
(
あつかん
)
に取り替えて来たりして、二階と
階下
(
した
)
の間を
往
(
い
)
ったり来たりした。
嵐
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
手酌に重なる
熱燗
(
あつかん
)
の酒と業腹とが煮え合って、馬春堂は急に
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
熱燗
(
あつかん
)
に舌をやきつつ、飲む酒も、ぐッぐと
咽喉
(
のど
)
へ
支
(
つか
)
えさしていたのが、いちどきに、
赫
(
かっ
)
となって、その横路地から、七彩の電燈の火山のごとき銀座の木戸口へ飛出した。
開扉一妖帖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それを
熱燗
(
あつかん
)
に
解
(
と
)
かして、一本の徳利に仕込みました——此処に酒の入った徳利が二本ございます。
銭形平次捕物控:237 毒酒薬酒
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
堪
(
たま
)
らねえ。
女房
(
おかみ
)
さん、銚子をどうかね、ヤケという
熱燗
(
あつかん
)
にしておくんなさい。ちっと飲んで、うんと酔おうという、卑劣な癖が付いてるんだ、お察しものですぜ、ええ、親方。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
熱燗
(
あつかん
)
が待つて居るよ、急がうぜ」
銭形平次捕物控:279 持参千両
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
酒
(
さけ
)
は
熱燗
(
あつかん
)
のぐい
呷
(
あふ
)
り、
雲助
(
くもすけ
)
の
風
(
ふう
)
に
似
(
に
)
て、
茶
(
ちや
)
は
番茶
(
ばんちや
)
のがぶ
飮
(
の
)
み。
料理
(
れうり
)
の
食
(
た
)
べ
方
(
かた
)
を
心得
(
こゝろえ
)
ず。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「お世辞のいいこと、
熱燗
(
あつかん
)
も存じております。どうぞ——さあいらっしゃい。」
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
三番叟
(
さんばそう
)
の
吸
(
すひ
)
もので、
熱燗
(
あつかん
)
と
洒落
(
しやれ
)
のめすと、
罰
(
ばつ
)
は
覿面
(
てきめん
)
、
反返
(
そりかへ
)
つた
可恐
(
おそろ
)
しさに、
恆規
(
おきて
)
に
從
(
したが
)
ひ
一夜
(
いちや
)
不眠
(
ふみん
)
の
立待
(
たちまち
)
して、お
詫
(
わび
)
を
申
(
まを
)
す
處
(
ところ
)
へ、
宵
(
よひ
)
に
小當
(
こあた
)
りに
當
(
あた
)
つて
置
(
お
)
いた、
仇
(
あだ
)
な
年増
(
としま
)
がからかひに
來
(
く
)
る
條
(
くだり
)
である。
大阪まで
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
鶯懷爐
(
うぐひすくわいろ
)
で
春
(
はる
)
めいた
處
(
ところ
)
へ、
膝栗毛
(
ひざくりげ
)
で
少
(
すこ
)
し
氣勢
(
きほ
)
つて、
熱燗
(
あつかん
)
で
蟲
(
むし
)
を
壓
(
おさ
)
へた。
大阪まで
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
あすこいら一帯に、袖のない夜具だから、
四布
(
よの
)
の綿の厚いのがごつごつ
重
(
おもた
)
くって、肩がぞくぞくする。
枕許
(
まくらもと
)
へ
熱燗
(
あつかん
)
を貰って、
硝子盃酒
(
コップざけ
)
の
勢
(
いきおい
)
で、それでもぐっすり疲れて寝た。さあ何時頃だったろう。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
熱燗
(
あつかん
)
三杯、手酌でたてつけた顔を撫でて
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あまっさえ
熱燗
(
あつかん
)
で、
熊
(
くま
)
の皮に
胡坐
(
あぐら
)
で居た。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
熱
常用漢字
小4
部首:⽕
15画
燗
漢検1級
部首:⽕
16画
“熱”で始まる語句
熱
熱心
熱海
熱湯
熱田
熱情
熱鬧
熱病
熱気
熱灰