正体しょうたい)” の例文
旧字:正體
これがおれの正体しょうたいじゃないか。今まで不安を忘れたり、避けたりして、ごまかして来たんじゃないか。おれだけじゃなく、みんな。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
が、どちらが正体しょうたいでどちらが影法師かげぼうしだか、その辺の際どい消息になると、まだ俊助にははっきりと見定めをつける事がむずかしかった。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
大体だいたいおいもうしますと、天狗てんぐ正体しょうたい人間にんげんよりはすこおおきく、そして人間にんげんよりはむしけものり、普通ふつう全身ぜんしんだらけでございます。
そのうちにだんだんおさけのききめがあらわれてきて、酒呑童子しゅてんどうじはじめおにどもは、みんなごろごろたおれて、正体しょうたいがなくなってしまいました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「いや、もうじきにくるだろう。」と、おばけかなんかのように、そのつじうらりの正体しょうたいがわからないので、気味きみわるがっていたのです。
つじうら売りのおばあさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
稀に来る都人士には、彼の甲斐々々しい百姓姿を見て、一廉いっかど其道の巧者こうしゃになったと思う者もあろう。村の者は最早もう彼の正体しょうたいを看破して居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
こうして、何だか正体しょうたいの分らないこの妙な事件は、田鍋課長側と目賀野側との間に喰いちがいのあるままでそれから先を別々に進行していった。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それを、大人おとなたちは、しんみょうなかおつきでおがんでいますが、いったい、おいなりさんの正体しょうたいはどんなものか、それをしりたくてたまりません。
おじさんはあせをかいて、へとへとになり、それでもあきらめずに、なんとかして鉄棒の化けものをたたき落として正体しょうたい見破みやぶろうと、追いつづけ
この男は、お祭りのこないさきからぐでんぐでんによっぱらって、朝から晩まで、正体しょうたいもなく寝こけている。
自分の頭の中には、今見て来た正体しょうたいの解らない黒い空が、すさまじく一様に動いていた。それから母や兄のいる三階の宿が波を幾度となくかぶって、くるりくるりと廻り出していた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その男の正体しょうたいが、小幡民部こばたみんぶであることはいうまでもない。なまじ町人すがたにばけたりなどすると、かえってさきが、ゆだんをしないと見て、生地きじのままの反間苦肉はんかんくにくがみごとに当った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
千三は一足先に家へ帰った、母はまだ正体しょうたいがない。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
これで、毎年まいねんむららして、人身御供ひとみごくう荒神あらがみ正体しょうたいが、じつはさるものであったことがかって、むらのものはやっと安心あんしんしました。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかし近頃ちかごろではもうそんなへた真似まねはいたしません。天狗てんぐがどんな立派りっぱ姿すがたけていても、すぐその正体しょうたい看破かんぱしてしまいます。
前髪の垂れた若侍、——そう云うのを皆甚内とすれば、あの男の正体しょうたいを見分ける事さえ、到底とうてい人力には及ばない筈です。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
このものは、考えれば考えるほど、おそろしい正体しょうたいを持っていると思われてくるのです。まさに二十世紀がわれわれに、おきみやげをする奇蹟きせきである。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大人おとなたちは、かみさまの正体しょうたいをみるなどということは、だいそれたことで、ばちがあたってがつぶれたり、あしがまがってしまうぞ、とおどかすばかりで
「なんだ、からすがとまってもなんでもないじゃないか。」といって、どっとしよせてきました。そして、ながあいだ自分じぶんたちをだましていた正体しょうたい見破みやぶってしまいました。
からすとかがし (新字新仮名) / 小川未明(著)
呂宋兵衛るそんべえ以下、野獣やじゅうのごとき残党輩ざんとうばら竹童ちくどうのあげた狼煙のろしも、伊那丸軍いなまるぐんの出動も知らず、みなゆだんしきッた酒宴さかもり歓楽最中かんらくさいちゅう。なかにはすでにいつぶれて、正体しょうたいのない野武士のぶしさえある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老人は少々不機嫌のていに蓋を払いのけた。下からいよいよすずり正体しょうたいをあらわす。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いかりくるった男は、ついにじぶんから正体しょうたいをあらわしたのだった。
十六人の女たちは、ほとんど正体しょうたいもないらしかった。彼等の口から洩れるものは、ただ意味のない笑い声か、苦しそうな吐息といきの音ばかりであった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「どうしても、許しがたいのは、それからあとのお前の所業しわざだ。おまえはエックス線で、わたしの正体しょうたいを知ろうとした。この神聖なわたしの正体を!」
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ひめさまのおとうさまとおかあさまは、ふしぎにおもって、どうかしてそのお婿むこさんの正体しょうたい見届みとどけたいとおもいました。そこである日おひめさまにかって
三輪の麻糸 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あのおいなりさんの正体しょうたいをみてからも、諭吉ゆきち生活せいかつには、べつだんかわったことがありませんでした。
かれは、まち植木屋うえきやびました。そして、ひかるものの正体しょうたいさぐりにゆこうといいだしました。
大根とダイヤモンドの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
(この奇妙きみょうな男の正体しょうたいを見きわめてやれ!)
「よォし。今夜は、一つ正体しょうたいを確かめてやろう。いいか、みんな夜中の十二時を廻ったら、裏門前に集るんだ!」
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたしはとうとう泰成やすなりのためにいのせられて、正体しょうたいあらわしてしまいました。そしてこの那須野なすのはらんだのです。けれども日本にっぽん弓矢ゆみやくにでした。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
殊に「御言葉みことば御聖徳ごしょうとくにより、ぱんと酒の色形いろかたちは変らずといえども、その正体しょうたいはおんあるじ御血肉おんけつにくとなり変る」
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
まち人々ひとびとは、こうはなしをきめたのであります。そして、その正体しょうたいとどけようとおもいました。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこで毎晩まいばん御所ごしょまも武士ぶしおおぜい、天子てんしさまのおやすみになる御殿ごてん床下ゆかしたずのばんをして、どうかしてこのあやしいごえ正体しょうたい見届みとどけようといたしました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「きさまらは、X号の一味のくせに、ぼくの正体しょうたいがわからないのか。ぼくこそ、ほんとうの谷博士だぞ」
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
お蓮はそう尋ねながら、相手の正体しょうたいを直覚していた。そうしてこのの抜けた丸髷まるまげに、小紋こもんの羽織のそでを合せた、どこか影の薄い女の顔へ、じっと眼を注いでいた。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
おどろいたのは、ねずみよりも自動車じどうしゃ運転手うんてんしゅだったのです。正体しょうたいのわからぬ、くろいものをひいてはたいへんだとおもったのでしょう、にわかにハンドルをげて、けようとしました。
ねずみの冒険 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「うん、判ったぞオ。これは怪力線かいりょくせんに違いない。うわさに聞いた怪力線の出現。ああ、そうだ。紙洗大尉の奴、井筒副長から何か言われてたっけが、あれが『天佑てんゆう』の正体しょうたいなんだな」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たいまつをとぼし、ろうそくをつけて正体しょうたいをよくますと、あたまはさる、背中せなかはとら、はきつね、あしはたぬきという不思議ふしぎなばけもので、ぬえのようなごえしていたことがわかりました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「何か正体しょうたいの知れないものを、——言わばロックを支配している星を。」
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
青二には、このあやしい動物の正体しょうたいを、はっきりいいあてることができなかった。
透明猫 (新字新仮名) / 海野十三(著)
って、したつづみをうって、ばばあじるのおかわりをして、夢中むちゅうになってべていました。それをてたぬきのおばあさんは、おもわず、「ふふん。」とわらうひょうしにたぬきの正体しょうたいあらわしました。
かちかち山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
兄は、私から渡された例の白毛しらげのことを思い出し、それの正体しょうたい一刻いっこくも早く知りたい気持で一ぱいで、小田原の警備隊の中からひとり脱け出でると、この谷村博士邸へ帰ってきたのだそうです。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのとき六部ろくぶは、「どうもかみさまといっているが、これはきっとなにかのわるものちがいない、ちょうどさいわ今夜こんやはここに一晩ひとばんまって、悪神わるがみ正体しょうたい見届みとどけてやろう。」という決心けっしんをしました。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
僕は水中電話器を通して、何者とも正体しょうたいの知れない土塊どかいに声をかけた。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「なんだい、あの化物の正体しょうたいは」
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)