枯枝かれえだ)” の例文
さて例のとほり人家を避けて、籔陰やぶかげの辻堂を捜し当てた。近辺から枯枝かれえだを集めて来て、おそる/\焚火たきびをしてゐると、瀬田が発熱ほつねつして来た。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そこで、その日はいつもよりたくさんに枯枝かれえだ落葉おちばを拾ってきて、中には生木なまきの枝までも交えて、煙が多く出るようにしました。
お山の爺さん (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
花売とはいうけれども門松かどまつ年木としぎ、または尋常のまき枯枝かれえだもあり、或いはぬれた松明たいまつとか、根無しつるという植物とかっている例も喜界島きかいじまにはある。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ぼくどもは枯枝かれえだをひろひ石をあつめてかりかまどをなし、もたせたる食物を調てうぜんとし、あるひは水をたづねて茶をれば、上戸は酒のかんをいそぐもをかし。
くろ枯枝かれえだくろえるおうちうら桑畠くはばたけわきで、毎朝まいあさぢいやはそこいらからあつめて落葉おちばきました。あさ焚火たきびは、さむふゆるのをたのしくおもはせました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
果して枯枝かれえだが大分出来たが、肝腎かんじんいのちは取りとめて、り残されの枝にホンの十二三りんだが、美しい花をつけたのである。彼はあらためてつく/″\と其花を眺めた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
うけて見よと眞向まつかう振翳ふりかざして切てかゝる此時吾助は身に寸鐵すんてつおびざれども惡漢しれものなればすこしも恐れずそばに落たる松の枯枝かれえだおつ取て右にうけひだりに流ししばし戰ひ居たりしが吾助は元來もとより劔術けんじゆつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
れから車を沼のへりまで引き込み、の荷をおろし、二人で差担さしかつぎにして、沼辺ぬまべり泥濘道ぬかるみみちを踏み分け、よしあし茂るかげえまして、車夫は心得て居りますから、枯枝かれえだなどを掻き集め
野邊のべ草木くさきにのみ春は歸れども、世はおしなべて秋の暮、枯枝かれえだのみぞ多かりける。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
もと枯枝かれえだまじつた杉垣すぎがきがあつて、となりには仕切しきりになつてゐたが、此間このあひだ家主やぬしれたときあなだらけの杉葉すぎは奇麗きれいはらつて、いまではふしおほ板塀いたべい片側かたがは勝手口かつてぐちまでふさいで仕舞しまつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あひだには與吉よきち背負せおつてはやしなかあるいてたけ竿さをつくつたかぎ枯枝かれえだつては麁朶そだたばねるのがつとめであつた。おつぎは麥藁むぎわら田螺たにしのやうなかたちよぢれたかごつくつてそれを與吉よきちたせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
僧は枯枝かれえだ小腋こわきにして帰って来た。
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
枯枝かれえだ去歳こぞの嵐に吹き折られ
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
村から少し離れた山のふもとに、松やかしわやくぬぎやしいなどの雑木林ぞうきばやしがありました。秋のことで、枯枝かれえだ落葉おちばなどがたくさん積もっていました。
お山の爺さん (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ぼくどもは枯枝かれえだをひろひ石をあつめてかりかまどをなし、もたせたる食物を調てうぜんとし、あるひは水をたづねて茶をれば、上戸は酒のかんをいそぐもをかし。
風吹き通す台所だいどこに切ってある小さなに、木片こっぱ枯枝かれえだ何くれとされる限りをくべてあたっても、顔は火攻ひぜめせな氷攻こおりぜめであった。とめやが独で甲斐々々しくけ廻った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「どうだ勘次かんじ以來いらいつゝしめるか、つぎにこんなことがつたら枯枝かれえだ一つでもゆるさないからな、今日けふはまあれでかへれ、くぬぎ此處こゝいてくんだぞ」勘次かんじ草刈籠くさかりかごおろさうとした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
是には如何に貧しい者でも野山に入って、自由に持ってこられるしば枯枝かれえだが、水の彼方かなたの国だけでそれほどにも貴重であったというところに、最初の重点がおかれていたのではなかったろうか。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
紅茶々碗を持つた儘、書斎へ引き取つて、椅子へこしを懸けて、茫然ぼんやりにはながめてゐると、こぶだらけの柘榴ざくろ枯枝かれえだと、灰色はいいろみき根方ねがたに、暗緑あんりよく暗紅あんかうはした様なわかい芽が、一面に吹きしてゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
お宮のまわりの森も、草が抜かれ枯枝かれえだが折られ、立派なみちまで出来て、公園のようになりました。朝と晩には、神殿しんでんの前にお燈明とうみょうがあげられました。
狸のお祭り (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
わたしなどの若いころには、どの地方へ旅行して見ても、瓦を焼くけむりの見られないところはなかった。燃料はたいてい松の枯枝かれえだで、土はそこいらの粘土ねんどを持ってきて、水でこねてかたにとった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
けれど、あまりたくさん煙が出ないようにと、枯枝かれえだや枯葉を少ししか集めませんでした。
お山の爺さん (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
しかもその部屋の広さが限りない上に、燈火ともしびの光もなく、何の飾りもなく、足下あしもとにはじゅうたんのかわりに、名も知れぬ気味きみ悪いかずらいばらが、積もり積もった朽葉くちば枯枝かれえだの上にはいまわっています。
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
何しろ誰もはいったことのない山の森で、昼でさえその中はまっ暗なほどおい茂っていて、枯枝かれえだ朽葉くちはの積もり積もった上に、いばらかずらがはい廻っていて、いくら象でもなかなか上って行けませんでした。
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)