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手甲
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てっこう
ふりがな文庫
“
手甲
(
てっこう
)” の例文
そのほかに二人、一人は初めて見る顔で、旅の者らしい、
手甲
(
てっこう
)
脚絆
(
きゃはん
)
に
草鞋
(
わらじ
)
をはき、
合羽
(
かっぱ
)
を着て、頭に
塵
(
ちり
)
よけの手拭をかぶっている。
夜の蝶
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
梶子は旅なれた武家の女房、そういったような扮装をし、
道行
(
みちゆき
)
などを軽やかに着、絹の
手甲
(
てっこう
)
脚絆
(
きゃはん
)
などをつけ、菅笠などをかむっていた。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
万筋
(
まんすじ
)
の野暮ったい
袷
(
あわせ
)
に、
手甲
(
てっこう
)
脚絆
(
きゃはん
)
をつけ、置手拭までした恰好は、誰に教わったか知りませんが、すっかり行商人の板についております。
銭形平次捕物控:008 鈴を慕う女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
手甲
(
てっこう
)
甲掛けの花売娘であったり、どんどろ大師のお弓であったりしたが、お篠お婆さんに似て
小股
(
こまた
)
のきりりとした
優形
(
やさがた
)
であった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そのいずれもが日焼けをいとうらしい白の
手甲
(
てっこう
)
をはめ、男と同じような参拝者の風俗で、解き放たれて歓呼をあげて行くかにも見えていた。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
白の
脚絆
(
きゃはん
)
手甲
(
てっこう
)
に白木の杖、その身ごしらえから察しますに、この辺りでは珍しからぬ旅人、
石尊詣
(
せきそんまい
)
りの行きか帰りの
大山行者
(
おおやまぎょうじゃ
)
でありましょう。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あんぺら帽子を
阿弥陀
(
あみだ
)
かぶり、
縞
(
しま
)
の
襯衣
(
しゃつ
)
の
大膚脱
(
おおはだぬぎ
)
、赤い
団扇
(
うちわ
)
を帯にさして、
手甲
(
てっこう
)
、
甲掛
(
こうがけ
)
厳重に、荷をかついで続くは亭主。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お喜代は、
紺飛白
(
こんがすり
)
のさっぱりした着物をつけて、赤い帯をしめ、手拭を髪の上に垂らして、
手甲
(
てっこう
)
脚絆
(
きゃはん
)
のかいがいしいいでたちで入って来ました。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
大きな
鼈甲
(
べっこう
)
ぶちの
眼鏡
(
めがね
)
を鼻の上にのせて、紫に
葵
(
あおい
)
を白くぬいた
和鞍
(
わぐら
)
や、
朱房
(
しゅぶさ
)
の
馬連
(
ばれん
)
や
染革
(
そめかわ
)
の
手甲
(
てっこう
)
などをいじっていた。
旧聞日本橋:14 西洋の唐茄子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
着物の裾を
褰
(
から
)
げて浅葱の股引をはき、筒袖の絆纏に、
手甲
(
てっこう
)
をかけ、履物は草鞋をはかず草履か雪駄かをはいていた。
巷の声
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それは背に当てるが、別に
胸当
(
むなあて
)
をも作る。多くは紺地の布で、形は長方形である。そうして背と前とを
帯紐
(
おびひも
)
で結ぶ。さて次には
手甲
(
てっこう
)
(てうえ)をはめる。
陸中雑記
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
在りし日と姿かわった司馬先生は、経かたびら、頭巾、さらし木綿の
手甲
(
てっこう
)
脚絆をまとい、六文銭を入れたふくろを首に、珠数を手に、
樒
(
しきみ
)
の葉に埋まっている。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
彼にはその歌の節廻しと、
白羽二重
(
しろはぶたえ
)
の
手甲
(
てっこう
)
に同じ
脚絆
(
きゃはん
)
を
穿
(
は
)
いて、上り
框
(
がまち
)
で番頭に草履の
紐
(
ひも
)
を結んで貰っていたお久の今朝のいでたちとが、かわるがわる心に浮かんだ。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
編笠
(
あみがさ
)
を
被
(
かぶ
)
って白い
手甲
(
てっこう
)
と
脚袢
(
きゃはん
)
を着けた
月琴弾
(
げっきんひき
)
の若い女の休んでいる汚ない茶店の婆さんに同じ
問
(
とい
)
をかけたら、婆さんは案外にもすぐそこだと
容易
(
たやす
)
く教えてくれたので
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
九蔵の久吉、
浅黄
(
あさぎ
)
のこくもちに白のおひずる、濃浅黄のやつし
頭巾
(
ずきん
)
を
冠
(
かぶ
)
り、浅黄の
手甲
(
てっこう
)
、
脚半
(
きゃはん
)
にてせり上げの間
後向
(
うしろむき
)
にしやがみ、楼門の柱に「石川や」の歌をかき居る。
両座の「山門」評
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
よごれの無い
印半纏
(
しるしばんてん
)
に、藤色の
伊達巻
(
だてまき
)
をきちんと締め、手拭いを
姉
(
あね
)
さん被りにして、
紺
(
こん
)
の
手甲
(
てっこう
)
に紺の
脚絆
(
きゃはん
)
、真新しい
草鞋
(
わらじ
)
、
刺子
(
さしこ
)
の肌着、どうにも、余りに
完璧
(
かんぺき
)
であった。
善蔵を思う
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
鼠色の行衣に
籠手
(
こて
)
臑当
(
すねあて
)
と見まごう
手甲
(
てっこう
)
に脚袢、胡桃の実程もある大粒の水晶の珠数を
襷
(
たすき
)
のようにかけ、手に
握太
(
にぎりぶと
)
の柄をすげた
錫杖
(
しゃくじょう
)
を突き、背には重そうな
笈
(
おい
)
を負うていた。
木曽駒と甲斐駒
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
しめった草の根から
湧
(
わ
)
きだす
糠
(
ぬか
)
のようなぶよが、
脚絆
(
きゃはん
)
のあいめ、
手甲
(
てっこう
)
の結びめなどのやわらかい皮膚に忍びこんで来た。汗と
垢
(
あか
)
と
脂
(
あぶら
)
と、ふんぷんとした体臭をまき散らした。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
足袋
(
たび
)
屋が足袋だか
手甲
(
てっこう
)
だかの
裁型
(
たちがた
)
、それに屋号を大文字、掛物と称する砂糖製の菓子店は大きな
金米糖
(
こんぺいとう
)
の形、いずれも屋根付きで店頭高く掲げられ、糸屋は生麻の長いバレン
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
飾りけのない
手甲
(
てっこう
)
脚絆
(
きゃはん
)
の仕事衣は、マンを、キリッと、甲斐々々しく見せる。そして、若さの内部に充実している、なにかの力が、マンに溌剌としたかがやきをあたえている。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
足袋二枚はきて
藁沓
(
わらぐつ
)
の
爪
(
つま
)
先に
唐辛子
(
とうがらし
)
三四本足を
焼
(
やか
)
ぬ
為
(
ため
)
押し入れ、毛皮の
手甲
(
てっこう
)
して
若
(
もし
)
もの時の助けに
足橇
(
かんじき
)
まで
脊中
(
せなか
)
に用意、充分してさえ
此
(
この
)
大吹雪、容易の事にあらず、
吼立
(
ほえたつ
)
る
天津風
(
あまつかぜ
)
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
男は
股引
(
ももひき
)
に腹かけ一つ、
黒
(
くろ
)
鉢巻
(
はちまき
)
の
経木
(
きょうぎ
)
真田
(
さなだ
)
の帽子を
阿弥陀
(
あみだ
)
にかぶって、
赤銅色
(
しゃくどういろ
)
の
逞
(
たくま
)
しい腕に
撚
(
より
)
をかけ、
菅笠
(
すげがさ
)
若くは手拭で
姉様冠
(
あねさまかぶ
)
りの若い女は
赤襷
(
あかだすき
)
手甲
(
てっこう
)
がけ、腕で額の汗を拭き/\
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
手甲
(
てっこう
)
、
脚絆
(
きゃはん
)
、仕着せはんてんにお定まりの身ごしらえをして、手口は一目
瞭然
(
りょうぜん
)
、絞殺にまちがいなく、かぶっている
菅笠
(
すげがさ
)
のひもがいまだになおきりきりと堅く首を巻いたままでした。
右門捕物帖:30 闇男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
脚絆
(
きゃはん
)
に
手甲
(
てっこう
)
のいでたちで、夕靄の山陰からひよいと眼前へ現れてくる女達の身の軽さが、牝豹の快い弾力を彷彿させ、
曾
(
かつ
)
て都会の街頭では覚えたことがないやうな新鮮な聯想を与へたりする。
木々の精、谷の精
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
頭には昔ながらの小さい
髷
(
まげ
)
を乗せて、小柄ではあるが、色白の小粋な男で、
手甲
(
てっこう
)
脚袢
(
きゃはん
)
の
甲斐甲斐
(
かいがい
)
しい
扮装
(
いでたち
)
をして、肩にはおでんの荷を
担
(
かつ
)
ぎ、手には
渋団扇
(
しぶうちわ
)
を持って、おでんやおでんやと呼んで来る。
思い出草
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
手甲
(
てっこう
)
、
脚絆
(
きゃはん
)
、たすきがけで、頭に白い手ぬぐいをかぶった村嬢の売り子も、このウルトラモダーンな現代女性の横行する銀座で見ると、まるで星の世界から
天降
(
あまくだ
)
った
天津乙女
(
あまつおとめ
)
のように美しく見られた。
試験管
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
巡礼というのは、まだ三十歳ばかりの女で、
菅笠
(
すげがさ
)
、
手甲
(
てっこう
)
、
脚絆
(
きゃはん
)
、
笈摺
(
おいずる
)
、みなさっぱりしたみなりでしたが、胸に赤ん坊をだいていました。おずおずと庭にはいってきて、静かなひくい声でいいました。
山の別荘の少年
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
と折から
印半纒
(
しるしばんてん
)
を着て
手甲
(
てっこう
)
を
篏
(
は
)
めた女に呼びかけられたのである。
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
朝、首を揃えて集まると、その日その日、いろんな
雑役
(
ざつえき
)
を親方から命じられる。杭打ちと称するヨイトマケの女たちも
手甲
(
てっこう
)
脚絆
(
きゃはん
)
で大勢集まった。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、その馬の背の辺りへ、
手甲
(
てっこう
)
を
穿
(
は
)
めた二本の腕が、素早くかかったと思ったが、その時には一人の旅
装
(
よそお
)
いをした武士が、既に馬背に乗っていた。
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
笠をかぶって、馬乗袴のマチの高いのを
穿
(
は
)
いて
手甲
(
てっこう
)
脚絆
(
きゃはん
)
のいでたち、たった一人、神社の石段を下りて、鳥居をくぐって、街道へ歩み出しました。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
手甲
(
てっこう
)
見たような、腕へだけ
嵌
(
は
)
まる毛糸で編んだ、
萌黄
(
もえぎ
)
の手袋を嵌めて、赤い
襯衣
(
しゃつ
)
を着て、例の目を光らしていたのさ。
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
紺がすりの着物に、
手甲
(
てっこう
)
をはめ、荷物をしょった行商姿の風俗の女がいく組も来て、遠く越後のほうでとれた海草を
信濃
(
しなの
)
の山の上まで売りに来ます。
力餅
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
かず子は
塵除
(
ちりよ
)
けの被布をぬいで下僕に渡した。下は
白装束
(
しろしょうぞく
)
で、
手甲
(
てっこう
)
、
脚絆
(
きゃはん
)
、草鞋をはき、
襷
(
たすき
)
を掛けていた。
失蝶記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
脚袢
(
きゃはん
)
に
手甲
(
てっこう
)
がけ、
編笠
(
あみがさ
)
かぶった女の、四人五人、
高箒
(
たかほうき
)
と熊手を動し、落葉枯枝をかきよせているのをば、時々は不思議そうに
打眺
(
うちなが
)
めながら、
摺鉢山
(
すりばちやま
)
の
麓
(
ふもと
)
を鳥居の方へと急いだ。
曇天
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
笠ははね飛ばされて、
月代
(
さかやき
)
の青い地頭が出ておりますが、
白粉
(
おしろい
)
を塗って、引眉毛、眼張りまで入れ、
手甲
(
てっこう
)
、
脚絆
(
きゃはん
)
から、
笈摺
(
おいずる
)
まで、芝居の巡礼をそのまま、この上もない念入りの
扮装
(
こしらえ
)
です。
銭形平次捕物控:063 花見の仇討
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
柴車
(
しばぐるま
)
を
挽
(
ひ
)
いて来るおばさんも、
苅田
(
かりた
)
をかえして居る娘も、木綿着ながらキチンとした
身装
(
みなり
)
をして、
手甲
(
てっこう
)
かけて、足袋はいて、髪は
奇麗
(
きれい
)
に
撫
(
な
)
でつけて居る。労働が
余所目
(
よそめ
)
に美しく見られる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
手甲
(
てっこう
)
脚絆
(
きゃはん
)
、荒い滝縞の裾高くはしょって、一本ざし——見覚えがある。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
京の町々を歩くと、珍らしくも
紺絣
(
こんがすり
)
の着物に
前垂掛
(
まえだれがけ
)
、頭には
手拭
(
てぬぐい
)
、手には
手甲
(
てっこう
)
、足には
脚絆
(
きゃはん
)
に
草鞋
(
わらじ
)
の
出立
(
いでたち
)
で、花や柴木を頭に山と載せ、または車に積んで売り歩く女たちの姿を見られるでしょう。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
体の木の葉をハタきながら、抱えて来た包みをそこへ押ッぽり出し、
脚絆
(
きゃはん
)
、
草鞋
(
わらじ
)
、
手甲
(
てっこう
)
などを取りひろげ、ゆうゆうと、旅支度にかかり出します。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その人たちが男を助けて外でかいがいしく働く時の風俗は、ももひき、きゃはんで、めくらじまの
手甲
(
てっこう
)
をはめています。かぶりものは編みがさです。
力餅
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
女は
菅
(
すげ
)
の笠をかぶって、女合羽を着て、
手甲
(
てっこう
)
脚絆
(
きゃはん
)
をした、すっかり、旅の仕度の出来ているところ、兵馬とは十分しめし合わせた道づれのようであります。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
紺の
脛巾
(
はばき
)
に紺の股引き、紺の腹掛けに紺の
半被
(
はっぴ
)
、紺の
手甲
(
てっこう
)
に紺の手拭い、一切合切紺ずくめ、腰に竹細工の
魚籃
(
びく
)
を下げ、手に手鉤を持っている。
草鞋
(
わらじ
)
の紐さえ紺である。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
折から、裏門のくぐりを開けて、「どうも、わりいものが降りやした。」と鳶の頭清五郎がさしこの
頭巾
(
ずきん
)
、
半纒
(
はんてん
)
、
手甲
(
てっこう
)
がけの
火事装束
(
かじしょうぞく
)
で、町内を廻る第一番の雪見舞いにとやって来た。
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
おふさは
手甲
(
てっこう
)
をし
脚絆
(
きゃはん
)
を掛け、
裾
(
すそ
)
を
端折
(
はしょ
)
った上に
塵除
(
ちりよ
)
けの
被布
(
ひふ
)
をはおっていた。荷物は小さな風呂敷包が一つで、頭は手拭のあねさまかぶり、いかにも旅馴れたような軽い
拵
(
こしら
)
えであった。
おさん
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と、急にそっちへ駈けだしてみると、振り向きもせず洞窟へ向って行くのは、白い
手甲
(
てっこう
)
脚絆
(
きゃはん
)
をまとったお綱であった。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
隣室に詰めていた蜈蚣衆、その頭領の
琢磨
(
たくま
)
小次郎が、黒小袖に黒頭巾、黒の鼻緒の
草鞋
(
わらじ
)
を
穿
(
は
)
き、黒の伊賀
袴
(
ばかま
)
に黒
手甲
(
てっこう
)
、眼だけ頭巾の隙から出し、
膝行
(
しっこう
)
して末座へ平伏した。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
手甲
(
てっこう
)
をはめ、
浅黄
(
あさぎ
)
の
襷
(
たすき
)
を掛け、腕をあらわにして、働いている女もあった。草土手の上に寝かされた乳呑児が、急に眼を覚まして泣出すと、若い母は鍬を置いて、その児の方へ馳けて来た。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
月の
斑
(
ふ
)
が、チラチラと視覚を
紛
(
まぎ
)
らわして、はっきりと判らないが、
脚絆
(
きゃはん
)
手甲
(
てっこう
)
をかけている
百姓態
(
ひゃくしょうてい
)
の大男だった。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
門口に近い柱に
倚
(
よ
)
って、
甲斐絹
(
かいき
)
の
手甲
(
てっこう
)
と
脚絆
(
きゃはん
)
とをつけ、水色の
扱
(
しご
)
きで裾をからげた、三十かそれとも二十八、九歳か、それくらいに見える美しい女が、そう云ったのでございます。
犬神娘
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“手甲”の解説
手甲(てっこう、てこう・手っ甲)とは、衣類、あるいは武具(防具)の一種。
(出典:Wikipedia)
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
甲
常用漢字
中学
部首:⽥
5画
“手甲”で始まる語句
手甲脚絆
手甲摺
手甲脚半
手甲擦
手甲盛
手甲脚絆草鞋穿