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忰
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せがれ
ふりがな文庫
“
忰
(
せがれ
)” の例文
二十二三の
忰
(
せがれ
)
に八十の老爺、その二人だけの家内といふのが氣になるわけなのに、それをすら好條件の一個條に仲人はあふりたてた。
「郭子儀」異変
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
謡曲
(
うたひ
)
が済む頃になると、
其家
(
そこ
)
の
忰
(
せがれ
)
が蓄音機を鳴らし出す。それがまた奈良丸の
浪花節
(
なにはぶし
)
一式と来てゐるので、
迚
(
とて
)
も溜つたものではない。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
お絹お常のまめまめしき働きぶり、幸衛門の
発句
(
ほっく
)
と塩、神主の
忰
(
せがれ
)
が新聞の取り次ぎ、別に変わりなく夏過ぎ秋
逝
(
ゆ
)
きて冬も来にけり。
置土産
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
懐中
(
ふところ
)
から
塵紙
(
ちりがみ
)
を
出
(
だ
)
して四つに
折
(
を
)
つて
揚子箸
(
やうじばし
)
で
手探
(
てさぐ
)
りで、
漸
(
や
)
うく
餅
(
もち
)
を
挟
(
はさ
)
んで
塵紙
(
ちりがみ
)
の
上
(
うへ
)
へ
載
(
の
)
せて
忰
(
せがれ
)
幸之助
(
かうのすけ
)
へ渡して自分も一つ取つて、乞
大仏餅。袴着の祝。新まへの盲目乞食
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その左衛門が、自殺の直後、
忰
(
せがれ
)
左門へ宛てて
認
(
したた
)
めた遺書には、万難を排して天国を探し出し、伊東忠右衛門一族に示せよとあった。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
四時頃になって、上本町の家を預かっている「音やん」の
忰
(
せがれ
)
の庄吉が大阪から訪ねて来てくれたのが、見舞としては一番早かった。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「しかたがない。これ、
忰
(
せがれ
)
。死人の首でも取ッてごまかして功名しろ」と腰に弓を張る
親父
(
おやじ
)
が水鼻を
垂
(
た
)
らして軍略を皆伝すれば
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
不沙汰
(
ぶさた
)
見舞に来ていたろう。この
婆
(
ばばあ
)
は、よそへ
嫁附
(
かたづ
)
いて今は産んだ
忰
(
せがれ
)
にかかっているはず。忰というのも、
煙管
(
きせる
)
、
簪
(
かんざし
)
、同じ事を
業
(
ぎょう
)
とする。
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
隣宿
妻籠
(
つまご
)
の本陣、青山
寿平次
(
じゅへいじ
)
の妹、お
民
(
たみ
)
という娘が半蔵の未来の妻に選ばれた。この
忰
(
せがれ
)
の結婚には、吉左衛門も多くの望みをかけていた。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
するとその時に
廿歳
(
はたち
)
になっていた
忰
(
せがれ
)
の友太郎も、
親父
(
おやじ
)
が行くならというので
艫櫓
(
ともろ
)
を受持ってくれたから吾輩、ホッと安心したよ。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「この頃は弟さんに御眼にかかると、いつも試験の話ばかりです。やはり宅の
忰
(
せがれ
)
なんぞが受験準備をしているせいですな。——」
お律と子等と
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
種物屋
(
たねものや
)
の娘は
廂髪
(
ひさしがみ
)
などに
結
(
ゆ
)
ってツンとすまして歩いて行く。
薬種屋
(
やくしゅや
)
の
隠居
(
いんきょ
)
は相変わらず
禿
(
はげ
)
頭をふりたてて
忰
(
せがれ
)
や小僧を叱っている。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
斯
(
か
)
う
言
(
い
)
つて
居
(
を
)
りました「
私
(
わたくし
)
の
忰
(
せがれ
)
は
私
(
わたくし
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
容
(
き
)
かずに、
十月
(
じふぐわつ
)
の
祟
(
たゝり
)
の
日
(
ひ
)
に
家出
(
いへで
)
をしたばかりに、
海蛇
(
うみへび
)
に
捕
(
と
)
られてしまひました。」
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
大学の先生ときくと、いつでも伯父は、「
忰
(
せがれ
)
が——私のことを忰というのである——東京で、T博士の助手をして研究をしておりますわい」
由布院行
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
さのみ
間
(
ひま
)
をとるべき用にもあらざりければ、家内
不審
(
ふしん
)
におもひ
忰
(
せがれ
)
家僕
(
かぼく
)
をつれて其家にいたり
父
(
ちゝ
)
が事をたづねしに、こゝへはきたらずといふ。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
忰
(
せがれ
)
の方は思いだしたように茶碗を持って茶を飲んだが、立って往く時に
己
(
じぶん
)
の顔をじっと
覗
(
のぞ
)
き込んで往った女の眼がどこかにこびりついていた。
参宮がえり
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
彼が組頭の爺さんが、
忰
(
せがれ
)
は足がわるいから消防長はつとまらぬと辞退するのを、皆が寄ってたかって無理やりに
納得
(
なっとく
)
さす。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
私も頭を
掻
(
か
)
いて笑った。その当時K君の
忰
(
せがれ
)
は病床に
横
(
よこた
)
わっていたが、病院へ入ってから少しは
良
(
い
)
いということであった。
二階から
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
取
(
と
)
らへて
郡長
(
ぐんちやう
)
の
忰
(
せがれ
)
づらが
些少
(
いさゝか
)
の
恩
(
おん
)
鼻
(
はな
)
にかけての
無理難題
(
むりなんだい
)
やり
返
(
かへ
)
して
遣
(
や
)
りたけれど
女子
(
をなご
)
の
身
(
み
)
は
左樣
(
さう
)
もならず
柳
(
やなぎ
)
にうけるを
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
この
敵
(
かたき
)
はきっと
忰
(
せがれ
)
に討たしてくれよ、と一言いい して、
船艙
(
キャアル
)
の口から飛び込んで船底に頭を打ちつけてごねやした。
ノンシャラン道中記:06 乱視の奈翁 ――アルル牛角力の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「いや、きっと帰れるさ。相手はソビエットだもんのう。おれたち貧乏人の
忰
(
せがれ
)
を、殺すなんてことはせんもんだ。」
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
国香の
忰
(
せがれ
)
は将門を殺さうとしてゐたといふ事を認め、そして殺さぬを残念と思つたほどの
葛藤
(
かつとう
)
が既に存在して居たと睨まねばならぬことになるのである。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
惣領
(
そうりょう
)
の
忰
(
せがれ
)
も来年は大学にはいるはずです。わたしは人の世話をしたからとてその人から礼を言われたいなぞとそんな卑劣な考えは
微塵
(
みじん
)
も持ってはいません。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
云い終った母は
悄然
(
しょうぜん
)
として下を向いた。同時に
忰
(
せがれ
)
の紙の上に三角が出来た。三角が三つ重なって
鱗
(
うろこ
)
の紋になる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
忰
(
せがれ
)
どもも一人前になって毎度御噂を致しいる、女ながらも西大陸の獣中王たる
妾
(
わたし
)
が
御恩報
(
ごおんがえ
)
しに腕を見せましょうと、口に言わねど畜生にも相応の人情ありて
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
彼のやうな三代相続の都会人の
忰
(
せがれ
)
は趣味に浮いて、ともすれば軽薄な香水に気化してしまふ
惧
(
おそ
)
れがあつた。
川
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
わたしは自分の
忰
(
せがれ
)
の航海日誌に書かれている、北極星号の船長の死に関する不思議な出来事を通読した。
世界怪談名作集:09 北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
その
小供
(
こども
)
は
相当
(
そうとう
)
地位
(
ちい
)
のある
人
(
ひと
)
……たしか
旗本
(
はたもと
)
とか
申
(
もう
)
す
身分
(
みぶん
)
の
人
(
ひと
)
の
忰
(
せがれ
)
でございまして、
平生
(
へいぜい
)
は
江戸住
(
えどずま
)
いなのですが、お
附
(
つ
)
きの
女中
(
じょちゅう
)
と
申
(
もう
)
すのが
諸磯
(
もろいそ
)
の
漁師
(
りょうし
)
の
娘
(
こ
)
なので
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
会員というのは、靴屋の小僧とか、魚屋の
忰
(
せがれ
)
とか、トンカツ屋のあんちゃんとか、
蕎麦
(
そば
)
屋の出前持とか、円タクの助手とか、
鍍金
(
めっき
)
工場の職工とか、ああくたびれる。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
「そりゃいかん、局では、お前は我が輩の
忰
(
せがれ
)
じゃなくて、一介の
属吏
(
ぞくり
)
じゃからなあ。局長の車を属吏に使用させるわけにゃいかん。急ぐなら円タクを呼べばいいだろう」
鉄の規律
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
話が相前後するが、この前年から私は三遊亭圓馬の門を叩いて、ことごとくその神技に傾投、間もなく圓馬の
忰
(
せがれ
)
分となり、また圓馬夫人の媒酌で世帯を持つことになった。
わが寄席青春録
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
漸
(
ようや
)
く高名となってからは下駄屋を
罷
(
や
)
めて
手習
(
てならい
)
師匠となり、晩年には飯田町の家は娘に婿を取って家主の株を継がせ、自分は
忰
(
せがれ
)
宗伯
(
そうはく
)
のために買った
明神下
(
みょうじんした
)
の家に移って同居したが
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
どうか
忰
(
せがれ
)
が中学を卒業する迄首尾よく役所を勤めて居たい、其迄に小金の少しも溜めて、いつ
何時
(
なんどき
)
私に
如何
(
どん
)
な事が有っても、妻子が路頭に迷わぬ程にして置きたいと思うだけだが
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
父は、初めから
忰
(
せがれ
)
の
企画
(
もくろみ
)
を賛成してはゐなかつた。忰が生涯を捧げようとまでしてゐる理想に対しても、たゞ、ほんの若い者の
気紛
(
きまぐ
)
れ位にしか考えてゐなかつた。父は二言目にはよく
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
親爺が
忰
(
せがれ
)
に向って、忰や、いま向うを通ったのは八百屋の伝兵衛さんではないか、とたずねたところが、その忰が言うことには、なあに、お父さん、あれは八百屋の伝兵衛さんですよ
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
武州川越領内駒林村の百姓甚五兵衛とその
忰
(
せがれ
)
四郎兵衛の両人が、甚五兵衛の娘「むす」の夫なる伊兵衛という者を、彼がその当時住居していた江戸から、宿元なる同村へ一寸帰って来た際に
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
何一ツ入れるべき
隠処
(
かくしどころ
)
もありません。紙一枚入っておりませんですからあのアンジアンの夜襲も無駄、レオナールの殺害も
無益
(
むえき
)
、
忰
(
せがれ
)
の捕縛も
無益
(
むだ
)
、私の努力のすべても
無益
(
むだ
)
になってしまいました
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
「今日は
忰
(
せがれ
)
が来ている。丁度好い都合だから紹介して置こう」
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「ウム、
忰
(
せがれ
)
もつかみ肥料つくり上手になったぞい」
麦の芽
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
「
忰
(
せがれ
)
や。」
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
如何成ることの願ひ有て奉行所へ
盲人
(
まうじん
)
の身にて
駈込訴
(
かけこみそ
)
に及びしや城富ヘイ
御意
(
ぎよい
)
に御座ります私し儀は武州埼玉郡幸手宿杉戸屋富右衞門と申者の
悴
(
せがれ
)
なるが十二歳の
時
(
とき
)
より江戸長谷川町城重方へ
養子
(
やうし
)
に
參
(
まゐ
)
りし者なりと
答
(
こた
)
ふるに大岡殿
然
(
しか
)
らば其方は幸手宿富右衞門が
忰
(
せがれ
)
成
(
な
)
るか當時養父城重といふ者
達者
(
たつしや
)
成るや城富ヘイ
養父儀
(
やうふぎ
)
は
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
一文不通
(
いちもんふつう
)
の木具屋の
忰
(
せがれ
)
が、今では何うやら斯うやら手紙の一本も書け、
十露盤
(
そろばん
)
も覚え、少しは剣術も覚えたのは、皆大旦那のお蔭
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
さしづめ愛国婦人会の会員達は、下らないお
喋舌
(
しやべり
)
の会合などは
止
(
や
)
めにして、先づ自分の
忰
(
せがれ
)
の歯を掃除してやらなければならない事になる。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「青山さん、まあきょうは一日ゆっくりなすってください。お宮の方へ御案内すると言って、
忰
(
せがれ
)
のやつもしたくしています。」
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そんな奴も
差配
(
さはい
)
内になくッちゃあお祭の時幅が利かねえ。
忰
(
せがれ
)
は稼いでるし、稲荷町の差配は店賃の取り立てにやあ
歩行
(
ある
)
かねえッての、むむ。
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「親たちは何も知らへんのんと違いますやろか。知ってたらこいさんを
忰
(
せがれ
)
の嫁に貰う云うこと、許す筈がないやありませんか」
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「家の
忰
(
せがれ
)
もはア、色気が附いて来ただで、近い中に湯田中に遣らずばなるめい、お
前方
(
めいがた
)
附いて居て、間違の
無
(
ね
)
いやうに遊ばして呉らつしやれ」
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
主翁は兎も角
忰
(
せがれ
)
や親戚の者共とも相談の上追って御返事すると云うた。「
六ヶ敷
(
むつかし
)
いな」彼は斯く思いつゝ帰途に就いた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
それを知っているのは、由兵衛夫婦とお妻だけで、
忰
(
せがれ
)
の由三郎も他の奉公人らもそんな秘密をいっさい知らなかった。
経帷子の秘密
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「捕るなら腕で来い」といったスゴイ調子で南鮮沿海を荒しまわる事五年間……
忰
(
せがれ
)
の友太郎も
十歳
(
とお
)
の年から
櫓柄
(
ろづか
)
に掴まって玄海の荒浪を押し切った。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
忰
漢検1級
部首:⼼
7画
“忰”を含む語句
小忰
憔忰
世忰
忰奴